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盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

タグ:五葉松


【1億円の五葉松「天帝の松」受賞 ‼︎】

京都の秋を彩る「日本盆栽大観展」

今年の最高賞は 4月末に さいたまアリーナで開催された「世界盆栽大会inさいたま」で
『舩山コレクション』の特別ブースの主飾りに横山大観の名画と共に出品され、
訪れる観客の驚きと溜息を呼んだ 五葉松 銘『天帝の松』でした。
東北 福島の地で、五葉松を愛する舩山氏と無名のこの樹を、
この舞台に運ぶまでの思い出が蘇ります。
私も舩山氏も 盆栽展での "賞レース"的な活動には興味がありませんでした。
それでも 何も運動もせず、ただ審査の方々に委ねた結果に頂いたこの受賞は、
ありがたいものと 感謝しています。

近日の間に福島の住み慣れた舩山邸の庭に戻しますが、
しばらくは もう外に出さず、静かで平穏な日々を樹に過ごして貰おうと思っています。

【150年の五葉松根連り】

朝夕の秋風が身心ともにありがたい季節になりました。
ニューヨーク・ワシントンの講演旅行に 出かける前に、
雨竹亭の応接床の間に、先日 木村正彦先生に整姿針金施術をお願いした、
樹齢150年を超える五葉松の根連りを飾ってみました。

叢雲を抱く澄み切った秋夜の空に煌々と明けき姿を見せる名月。

遠くを仰げば、峻険な山々が刻の流れを嘲笑うように、凛然と山容を見せています。

五葉松の各幹は、それぞれに揺れ立ちながら、ひとつの大きな景色を描き、
まさに"松風を聴く"と言う言葉を一席に現出出来たかと思います。

名僧の残された詩を思い出します
「月落ちて 露光冷やかなり 松根 羅屋を照らす」
本格的な盆栽飾りを楽しむ頃となりました!


【鈴木伸二氏、17年目の邂逅】

9月に開催される京都二条城の盆栽展示、
そして11月の同じく京都秋の恒例「日本盆栽大観展」。
この二大盆栽展に大政奉還150年を記念して、公開が決まった
第15代徳川幕府征夷大将軍 徳川慶喜家旧蔵の盆栽群。
現在の所有者(財)京都国際文化振興財団 通称「慶雲庵」の依頼を受けて、
羽生雨竹亭に保管管理してある非公開培養場に
鈴木伸二氏がお弟子さん二人と仕上げ整姿に訪れました。

この徳川慶喜家の盆栽は、17年前私が銀座の店を切り盛りしている頃、
慶喜公直孫 慶光公夫人  和子様より譲り受け、
当時見る影もなかった樹々の手入れを鈴木氏に依頼して、高木盆栽美術館に納めたものです。
転生輪廻、こうしてまた二人で時代を背負う美術館への展示に向けての取り扱いをすることになるとは、
夢にも思いませんでした。
歴史を秘めた古樹が皆様の前に登場するのはまもなくです。


【手入れの為、高松以来の福島からの出発!】

埼玉アリーナでの世界盆栽大会「日本の盆栽水石 至宝展」に 
20mの特別ブース展示をされる福島市 舩山秋英先生へ事前手入れと構成準備の為、
トラック・ハイエース2台の計3台で 全作品のお預かりに伺いました。
マスコミに"1億円の松"として有名になってしまった五葉松も、
高松大会以来の舩山邸からの"外出"となりました。(積込みも大変!)

舩山邸の盆栽は、国風展出品作品以外は殆どが未公開のものが多く、
ここから1ヶ月の"仕上げ手入れ"で、世界大会に訪れる皆さんへ初公開になります。
雨竹亭・木村正彦先生・森山義彦氏 が手分けして仕事に取り掛かります。
それにしても、舩山先生のコレクションは・・"大型" です!

そして日本最大の真柏も、福島"吾妻富士"を仰ぎながら元気な姿を見せていました!


【九州 福岡みやま市 田中 梅花園さん】

黒松・五葉松の大型古木の買付に初めて九州 長崎・福岡を旅しました!
その中で事前の下調べをした訳でもない中、福岡南部みやま市の梅林で有名な所があると聞いて、立ち寄ってみました。
「梅花園」田中賢司さんと奥さんは、穏やかで優しく、
訪れる方々の為に自らが実生から作出した数々の種類の盆梅を座敷中に飾られていました!
代々松や梅の苗木を作り続けてこられた田中家、盆梅以外にも受け継がれてきたのは
関東では見ることも出来ない枝先まで丹精の限りを尽くした五葉松の名樹達。
どれだけの刻と愛情を費やせばこれ程の樹が出来るものかと、ため息以外がありませんでした。

しかも、この五葉松名樹群は通称"チャボ"と呼ばれ、関東系盆栽界には公開されていないものだそうです。
田中さん夫婦は、梅の実生苗木で生計を立てられ、受け継がれた古木群は流出させる事をためらい、
バブルの時も様々な誘惑を払いのけて持ち込まれました。
同じ盆栽に生きる者として、頭の下がる生き方です!
艶やかな盆梅の世界、積年の培養が作り上げた"真の松柏名樹群"。
羽生から千数百キロ離れた地で、また新しい発見をしました。

見送って下さるご夫婦は最後まで謙虚で温かく、樹と共に生きて来たお二人にたくさんの事を教わりました!
感激!感謝!

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