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盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 盆栽教室


国風展も終わり、衣装として合わせていた各樹の名鉢達を、戻し植えする作業が続いています。
12~1月に国風展用に入れられた鉢を元鉢に戻す作業は、普段の植替えよりも気を遣います。
本来盆栽は一度の季節に二度の鉢入替えはありません。

ある程度の鉢に入れなければ国風展の審査で減点されてしまいます。
かと言って、普段よりその鉢に入れておける愛好家の数も少ないのが現実です。
特に、二度植えの国風展後の戻し植えの後、樹は最善の管理が大切です。
人間で言えば、短い間に2回手術をするようなものです。

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雨竹亭盆栽教室の生徒でもある「盆栽博士ちゃん」こと、清水ちえりちゃんも、“リベンジ“を果たした五葉松・楓・黄金シダ、の3点、
「京都国際文化振興財団」通称“慶雲庵“田中慶治理事長のご好意で、財団の大切な名鉢を拝借しての出品。

雛祭りを過ぎたちょうど良い頃、培養を重視した鉢に植え戻す作業を行いました。

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五葉松の古渡絵烏泥鉢をそっと抜けば、根は善玉菌がビッシリ❗️
樹の状態の良さを確認できました!
日常の教室で指導する雨竹亭の角田君、春花園一門の盆栽家、養田君達の補助指導を得ながら、丁寧にちえりちゃんも作業を進めました。

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樹達はここから1~2年、次の舞台に飾られるまで、更なる樹格向上と培養に努めます。
作業後、国風展出品まで、一緒に見守って下さった、名匠木村正彦先生へご挨拶!
間もなく中学卒業式を迎えるちえりちゃん、これからは“ちえりさん“と呼ぶべきかな?と、
彼女から見ればお爺さんの私には、ちょっぴり寂しいような気をします(笑)


羽生雨竹亭の盆栽教室に通う、“盆栽博士ちゃん“こと、清水ちえりちゃん。
今年の国風展で見事再びの入選を果たしました。

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小学生だったちえりちゃんが、国風展史上、最年少で入選した事で、協会関係者はもとより、
マスコミも取り上げて、いつの間にか芦田愛菜さんとテレビの「博士ちゃん」に2度も盆栽博士ちゃんで出演するまでになりました。

本来の教室に通うちえりちゃんは、盆栽愛好家のお爺様の影響を受けた物静かな少女。

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お父様お母様の温かい愛情と応援を頂いて、豊かな少女期を過ごされている方です。
昨年、一所懸命手入れをして準備をした作品が、残念ながら国風展落選💧
今だから言えますが、“ギリギリかなあ“と思っていた作品。
勿論落選は辛いものですが、
ちえりちゃんにとっては、人生の佳き経験になってくれたかなと思っています。
高校受験も、見事難関付属高校(この付属は殆ど大学まで行ける優秀校!)に推薦入学を決めました❗️おめでとう‼️
盆栽趣味を持つ女性、才色兼備を絵に描いたような世界‼️
ここまで来る間のたくさんの苦い経験、国風展の落選💦 
それこそがちえりちゃんの“今“を作ってくれたのかなと思います。

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教室に来て今回の樹の手入れを黙々とする姿、高額な盆器や卓を提供してくれた、田中財団理事長や舩山さん。
孫を見るような眼でその成長を見守る多くの方々に、一所懸命御礼を伝える健気な姿は、お手伝いした私達にも清々しく映りました!

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“今度は3〜5年かけて、自分の手で培養した素材からの樹も挑戦しよう“と伝えて、今春には培養をする樹を探すことになりました!
盆栽と共に成長してほしい若い方、ある意味で私達老練の盆栽人達こそが、ちえりちゃんのステップに勉強させられているように思います!
我々、爺い達もちえりちゃんに負けずに頑張るぞ😤


【阿部倉吉邸・舩山コレクション❗️】

吾妻山の大自然と、五葉松や米栂の自生地を満喫して、福島市庭坂の地へ移動しました。
阿部倉吉翁、吾妻五葉松の素晴らしさを生涯をかけて広げた功労者。
90年以上となる同家は、二代健一氏・そして三代大樹氏によって受け継がれています。

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若き頃、“ここが五葉松の聖地・阿部先生の園“と伺った頃と殆ど同じ景色がありました。
“樹は売らずに作れ“・初代の想いを頑なに守り続けた健一氏。

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棚場にある樹には、実生90年を超えるものもあり、伺った教室生徒達は、その年月の結晶に唯々感嘆の声ばりでした。
同行した木村先生のお弟子さん、イタリアのアレッサ君は、
すべての五葉松の葉性の素晴らしさに驚き、特に入口付近にあった根連りが、どこから見ても山採りに見えるのに、実生70年と聞いて目を疑うばかりでした。

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阿部親子の五葉松にかける想いに浸りながら聖地を後にして、北日本を代表する愛好家、舩山邸に伺いました。
圧倒的は名木群、アレッサ君も「こんなに多くの名樹が、1箇所にある愛好家は初めて見ました!」と、驚きを隠せませんでした。

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特に真柏の制作好きな生徒達は、“東北の神“と称される見上げるような真柏の大樹、
しかもそれが現在木村先生の指導で、枝接ぎ技法で、改作途上にある事に圧倒されていました。


初めて企画した生徒達との旅行。
一言で言えば楽しかったです。
商売ではなく、盆栽を愛する人達と、自然を観て、素晴らしい盆栽人生を送られる大家達に触れ、
私の仕事はこういう時間もとても大切な事に気づかされました。

それにしても、吾妻小富士に登頂するのに登った坂!
翌日の足のキツさに、普段の運動不足と寄る年波をつくづく思い知らされました💦

【吾妻山・五葉松、米栂自生地!】

10年以上になる、雨竹亭盆栽教室、初めての研修旅行に選んだのは、盆栽の“原点“と言える自然の自生の姿が見られる、福島県吾妻山。

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活火山として今も噴煙を上げる地、瓦礫のような所に冬季の5メートルを超える雪に潰されながら、
必死に生きる五葉松の姿、観光者も知らない「神々の庭」と呼ばれる、米栂の自生地。

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“子供盆栽博士“としてテレビでも活躍の教室生徒、清水ちえりちゃん、
名匠木村正彦先生の門人として、つい先頃、6年の修行を終えた、イタリアのアレッサ君、
中学生から昭和18年生まれの教室長老まで、皆んなで汗かきながら💦自然を満喫してきました。

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栃木から福島、五葉松と言えば、“那須五葉松“が有名ですが、
本当は那須五葉松の山採り作品は、極めて少なく、盆栽界に那須として伝えられる樹の7~8割の古木は、吾妻五葉松なのです。
天気にも恵まれて、大自然のあるがままの姿と、本当の自然界の厳しい淘汰を実際に見る機会を作ってあげられたと思います。



特に、“秘密の山道“を案内しての、米栂の群生地“神々の庭“は、アレッサ君も“親方・木村先生が作った寄植えそっくり!“と、感激していました。

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1年で1cmしか成長出来ない過酷な環境。その中で人の胴程になるのに、何百年かかるのか?生命の生きる力と長い刻を感じる機会でした。
次は、山を下りて、“五葉松の父“と謳われた、阿部倉吉翁の庭と、
同じ地域にいらっしゃる、“舩山コレクション“こと、舩山邸の見学を報告します。

【特別支援学校での盆栽教室】

昨年から始めた、雨竹亭のある羽生市内の特別支援学校「羽生ふじ高等学園」での盆栽教室。
15才の生徒達は、ここで一生懸命、社会に対応できるように、
農業、園芸、その他様々な技能実習を行なって、3年間を過ごします。

“盆栽の教室をしてくれないか?“と言う依頼に私は快く引き受けました。
今も、小学校2か所で盆栽に対しての授業をボランティアで何年もしていますが、高校生の年代の子達への授業は、ここが初めてです。

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一般の高校に行かず、中学校卒業の経歴にしかならない子達、私も義務教育しか受けられずに社会に出た身。
盆栽を通して、少しでも役に立つならと年に数回の“盆栽の先生“をしています。

真柏の素材を皆んなにプレゼントして、苗木からの植替え、幹への針金掛けをしての基本作り、そして枝作り。

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毎回進むにつれ、ここに生きる生徒達の“心の純粋さ“に、私こそが沢山教わる事があります。
盆栽も同じで、初めは素材として一級とは言えなかった樹が、歳月によって、見違える盆栽になる!
人も同じです!かく言う私こそが、盆栽に出会っていなければ、ろくな人間にならなかったでしょう。

ここで私がこの子達に伝えられる事がどれほどあるか?分かりません。
しかし、自分で手入れをして、年々水や肥料や消毒を続けていった樹が、いつの間にか、ちゃんとボンサイになってゆく。

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この“時間と姿の体験“をさせてあげてる事が、彼等の何処かの記憶に残ってくれればと願っています。
現場実習で、この日も何人かが、工場やスーパーに出かけていました。
出来れば、ここに居る“心のまっすぐでキレイな子達“から、羽生の盆栽培養場で働ける子が作れたら・・そんな事を夢見てます!

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