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盆栽歴47年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 盆栽管理


【森山義彦氏・内閣受賞後初の名樹に挑む❗️】

貴重盆栽として蒋介石が愛培したと伝わる赤松名樹「群鶴」は、蒋介石ゆかりの地、台湾の著名愛好家、陳祥甫氏の愛蔵樹。
ご縁を頂き、長く羽生雨竹亭で管理をしています。

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『第8回世界盆栽大inさいたま』にも、陳氏が出品され、奥様共々来日して、圧倒的な観客の多さに驚かれていました。
昨年の京都大徳寺「芳春院盆栽庭園」開園記念展示にも古都の名刹に拡張高い姿を披露頂きました。

「群鶴」の名で広く盆栽界に知られるこの樹は、戦後間もない頃から展覧会に出品された記録を持ちますが、
年々の培養により、本来この樹が持つ独特の幹芸とそれに合い和す枝作りが、徐々に丸みを帯びた、穏やかな樹相へと変化してゆきました。

日々、樹と過ごす中で、“往時の人達がこの樹に求めたものは何だったのか?“と言う気持ちが大きくなり、
近隣に居を構えて、盆栽作家として王道を歩み始めた若き盆栽作家、森山義彦氏に
“持主の許可が出れば、貴方の作家としての階段のひとつになるような、施術をしてくれるか?“
を尋ね、了諾を得ました。
それから台湾に連絡して、
“本当なら台湾に持ち帰りたい樹、しかし、検疫上、根を洗うことは樹への負担が大きすぎる”
と、以前話した事で、陳氏は“何よりも歴史的な樹の健康を優先してほしい“と理解して下さり、
羽生の地に置いてあるのです。

今回の私の思いを申し上げると「すべてお任せする」と返事を頂き、森山氏の挑戦になりました。

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『月刊近代盆栽』に相談して、この作業のすべては、いずれ近代盆栽に掲載されます。

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盆栽作家の方々は、“改作“と言う名のもとに“この樹がこんなふうになった!“と言う発表が多い昨今ですが、
日本の名樹達は、私達の師匠、そのまた師匠、そしてそれを愛蔵されてきた歴代の大家達の心が守り伝えたものです。
盆栽は生きています。
年々その姿を変えてゆくのは当然ですが、樹の持つ“個性“や、その樹に先人達が求めた美を伝承することはとても大切なことだと思っています。
その為にこの赤松「群鶴」を“今の群鶴において、描ける在り方“を森山氏にお願いしたのです。

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手入れ前・手入れ後の写真をご覧になって、感じて下さい。
盆栽は持主や手入れをする作家が、対峙して感じ取った“貌“になっていきます。
ここから、しばらく森山氏のアトリエで、培養・芽切り・いずれは鉢映りも再考する時もあるかと思います。
近代盆栽にその勇姿が載る時を楽しみにして下さい。


2年半前、四国鬼無地方の盆栽作出者を代表される、小西松楽園さんより、
先代から受け継いできた大型五葉松(銀八・別名宮島五葉・大阪松)の一群を羽生に全品運んで、
根巻の状態から鉢上げ、木箱入れをしたものを、いよいよ本格的な“将来の大型名樹へ“と言うプロセスを始める事になりました。

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80年以上の歳月を労苦を惜しまず丹精されてきた樹達。
ここから樹のひとつずつの“筋“を読んでの、枝々の角度と基本的な“正面“作りに入ります。

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手首程の太い枝、角度を変える事すら不可能と思われる作業。
特殊な手順で、枝が枯れるかギリギリの施術!

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このキツイ“災難“を樹に与えてこそ、一段も二段も格上の作品となる大切な作業です。
枝先だけを見た目の“ごまかし仕事“をするのは簡単ですが、“大枝の下ろし込み“となると、1日1本がやっとの手入れです。

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この樹達を小西さんから譲り受けて間もなく、病に倒れた小西さん。

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療養の日々を送られていますが、まるで神様がそれを見越して私に託したかのようです。

樹が悲鳴をあげるほどの枝への負担。
ここから数年の刻が、“これがあの畑にあった樹?“と言われるくらいの本格名樹へとしてみたいと思っています。

それでも、この仕事が出来る時間も少なく、今年も150点ある中で、僅か15~20本が限界です。
4月15日までが、樹の生理を考えて限界の刻。
焦らず少しずつ作れればいいと思っています。

【宜興・広東の正統を次代に!】

10年前、中国泥物鉢の聖地「宜興」に、いにしえの登り窯“龍窯“の視察と取材に訪れてから、
“本物の継承がしたい“と願って、ようやく日本での本格的な紹介を開始するまでになりました。
「宝山」の名で知られる、紫砂古渡盆器の踏襲をしている周さん・楚さん達。
現代の名工と謳われた、馬先生の技と教えを受け継ぐ人達と、紫砂の泥質の追求、盆器としての“器形の美しさ“の再現に挑戦し続けてきました。
国内の常滑を中心とする盆栽鉢メーカーの減少、勝ち残った鉢作家の高額さ。
多くの愛好家の方々に、“使えば使う程に味わいが増す中国盆器“にやっと辿りつきました。

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大観展や国風展、業界市場での“使ってもらう為の販売“に、2~3年、
木村正彦先生をはじめ、盆栽作家の皆さんに「この鉢は、土も良く、凍て割れなどせず、作行きも良い」・こんな言葉を頂けるようになりました。


併せて、中国南部、広州へも6年前から赴き、“失われた石湾窯の再現“に挑戦しました。
佳き窯元と出会い、半世紀前に途絶えた釉薬の焼成に試行錯誤の格闘。

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初めて納得のいく作品を日本に持ち帰り、プロの市場にかけたところ、
小売価格の数倍まで高値がつき、落札した方に“そんなにしませんからもうひとつ持って行って下さい“と言った記憶が昨日のように甦ります。

釉薬鉢も泥物も、今の日本では幅が65cmを超えると、特注になってしまいます。
“こんな器形があったら“と思う物を少しずつ宜興・広州を行き来しながら、増やしていきました。
今年の国風展売店でも、盆栽業の皆さんに注文を頂くようになり、
“よし!全国に向けてのカタログを作って、誰でも使ってもらえる仕組みを作ろう!“
と思い、全釉薬・全器形の撮影を開始しました。

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愛好家の皆さんに、カタログをお届け出来るのは、まだ数ヶ月先ですが、
ごまかさず、鉢に求められる条件をひとつずつ解決してきたこの2種類の鉢群は、既に国風展にも使用されています。
数十年後、私はもういないでしょうが、鉢はその頃には、持ち込んだ味わいを呈する実用の名器になっているでしょう。

ここから、21世紀の盆栽鉢の歴史がスタートします。
楽しみにしていて下さい。


縁あって、数年前国風展の大賞に輝いた楓の石付が手元に来ました。

若い修行時代、松田松月園氏の扱いで、展覧の席で拝見した時、“これが有名なあの楓“と心躍らせたものでした。

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細身の立石に絡みつくように根をおろした姿。
独特と言える樹相と、印象的な古鏡型の鉢。
40年前の出来事が目の前に甦りました。

羽生に届いた時、“これがあの樹?“  と思うくらい、印象が変わっていました。

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樹の培養状態、作品としての維持と手入れは満点なのに・・鉢映りでした。
培養を考えて和鉢の深みのある楕円に“のんびり“と植えられていました。
2ヶ月、全国の仲間に“古鏡型の中渡り鉢がないか?“と問い続けて、ようやく京都で想いの叶う鉢に巡り会いました。

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半世紀前は、紫泥のおとなしい古鏡。
今回はひとまわり大きくなった樹に合わせて
海鼠の大鍔型の古鏡。
植え付けを終えて、眺めれば、往時の感慨が再び心に甦りました。

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盆栽は鉢を“締め込む“事で、樹相が“大きく“感じられます。
勿論、培養のみを考えれば、楽な合わせが順当なのでしょうが、やはり“衣装“はその樹を変えます。
自分で納得のゆく鉢合わせ、私も和鉢まで入れれば3000点以上の鉢を保有していますが、
それでも、植え替えの時、うまく合わない時は、半日かけてもピッタリと来ない時があります。
48年間、植替えを毎年やってきても、それは変わりません。

盆栽人として、“最良の美なる鉢映り“を、いつも心掛けてゆきたいとあらためて思った楓の石付です。

“深山の更に奥を逍遥すれば、崖上より岸壁にしがみつくように生きる樹々の姿
その梢はあくまで細やかでやさしく、降りおりるような景色“

私の中の石付盆栽の象徴のひとつが“あの頃の姿“になりました。


10月7日、羽生雨竹亭において、業界人専売オークション、第145回「天地会」が開催されました。
台風の影響で1週間の延期通知をしたのも初めてです。
この1週間の間に、新潟県で大切に培養されて来た未公開の真柏逸材を入手する機会を得て、
久々の“ホンモノ“に、商売ではあっても、胸躍るものがあり、
2日間の夜間手入れと植替えで、私が思う“真柏の盆栽はこうでありたい“と思う作品になりました。

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天地会の延期は各方面の仲間達の“台風“に対する配慮で決めた事なので、後悔もしていませんが、
中々逸品がオークションに出品されることがない昨今、“売れなくてもいい“と言う気持ちを持ちながら、出品に踏み切りました!


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結果、中国バイヤーを警戒していましたが、木村正彦先生、小林國雄先生と言う巨頭のオークションバトル!と言う思いもよらない形になりました!
勿論、私が入手した価格よりも数段高いビットが続き、最終的に木村先生が落札された事は、有り難い限り、、なのですが、
不思議に嬉しくもなく、何となく寂しい想いを抱いたのは、この樹が本当に名樹として庭に置いておきたい!気持ちが強かったのかもしれません。
こうして、どれくらいの逸樹をこの庭から送り出したでしょうか?

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考えても仕方がない事、と分かっているのですが、歳でしょうか?不思議なものです。
盆栽で食べながら、良い盆栽は売りたくない!
わがままですよね!
それでも、また明日出会う樹達との一生懸命、生きていきます!

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