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盆栽歴47年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 盆栽管理


昨年の春、3年間の日本での修行を終えて、故郷中国へ戻った、ハオ君とツァオ君。

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私と一緒に日本での技術習得を見守って下さった、名人・木村正彦先生も
“稀に見る二人。出来ればもう一度来日してあと数年学べば、紛れもなく、唯一の私の弟子として認められる“
とまで言わしめた逸材達。
故郷のご両親、ビザなどの関係で帰国しましたが、“ここからの更なる向上が大切“と思って、
私が公私共に盆栽家として人として信頼する、中国常州の王永康先生の所に預けて、“生活費は私が出します。
王先生には住居と食事をお願いします“とお願いして、一年半が経ちました。

雨竹亭の10倍はある王先生の「随園」二人はここで日々、数え切れないほどの盆栽の手入れに従事しています。

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一年中、盆栽の手入れが出来る環境。
盆栽家を志す者なら、理想の日々と言える毎日を、彼らは怠る事なく過ごしています。

週に一度ほど、“会長、見て下さい“ と、仕事をする前の樹と針金施術をした後の姿を数多く送ってくれます。
70代の老翁・王先生は、何も言わずに、我が子のように彼らの仕事ぶりと技術の向上を見定めながら、扱う樹の内容と作家としての技術を授けてくれています。
日本の木村先生・中国の王先生。
交流のある二人は、本人達が言うようにまさに“義兄弟“のような盆栽を愛する老翁達です。

私には若き中国の盆栽家友人として大倉という所に孫程輝さんがいます。
商売ばかりが目立つ中国盆栽界(日本も似ていますが・笑)で、“この人は本当の盆栽業を作れる人“と思った人物です。
例えれば、ある日、私と久しぶりに彼の所で会う機会がありました。
当日、彼から連絡があり、
“森前、申し訳ないが、日程を明日にしてくれないか。実は昨日、悪天候で私の大切なお客様の盆栽が、強風で棚から落ちて鉢が割れてしまった。急ぎ弟子達と向かっているので“ と。

盆栽家は、愛好家あってのもの。
この姿勢こそが何よりも大切なのを私達も修行時代に身に付けました。

この孫さんの所に数年前から黒松の名樹を預けています。
培養から芽切りなど、“友人だから気にしないで“と、料金も取らずに守ってくれています。

ここへ先日、ハオ君とツァオ君を王さんの許可をもらって、手入れに派遣しました。
日本で習得した技術。
帰国して王先生の所で磨いた技。

私が思っていた通りの仕事を彼らはしてくれました。

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“商売を考えるな、ひたすら盆栽と向き合え、そうすれば自然に人は集まってくるから“
そう教えて日々応援しています。
コロナなんて、早く消えて、昔のように海を渡って当たり前のように往来したいです。
盆栽を愛する仲間に、国も国境もありません。
若い二人と、もっと“次なる幕開け“を語りたいです。


6月中旬から7月にかけて、黒松・赤松の芽切りをした樹達。
新しい芽が切った所に出てきます。
これをそのままにすると、芽数が多すぎて、ゴチャゴチャになってしまいます。

ピンセットで芽を2~3に減らす調整をしなければなりません。
以前は毎年名木はこの仕事をしたものです。

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芽切りもその後の芽掻きも、時間のかかる大変な仕事ですが、短い美しい葉にしておく大切な作業です。
しかし、この数年、異常気象と言えるほどの“猛暑“が6月あたりからある事で、
芽切りの時期の判断が難しくなっています。

木村正彦先生などは、“東京近郊は、樹の健康を考えると2年に一度くらいの方がいいね“と言われます。
空梅雨💦戻り梅雨💧天候を考えながらのタイミングが大切な仕事です。

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順調に出てきた新芽。

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新しい芽の中で、強いもの、多いものを切り取ります。
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芽数が少なく新しい芽が徒長しているものは、“途中留め“に切ります。
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根気のいる仕事ですが、美しい秋から冬の姿を作る大切な作業です。







埼玉県西部、本庄市のとある農地。
ひとりの古老が、猛暑の中、大きな日除け傘の下、見渡す限りの各種盆栽の苗木素材の手入れをされていました。

約800坪を埋め尽くすビニールポット❗️
真柏(糸魚川から紀州・四国産まで)もみじ(イロハ・山・イタヤ・はうちわ・等々)、
数えきれない樹種が僅かな通路(一輪車1台分)以外を所狭しとビッシリと置かれています。

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元々は“種屋“と呼ばれる全国の山野を周り、実生の種を“大手“サカタのタネ“や“タキイ種苗“へ卸す事を本業にされていた方。
“景気悪くなって、種だけじゃ食べられないから、各地に実生畑を持って、ホームセンターなんかに大量に売っているんだ“と。
聞けば私もよく知っている盆栽園の方々も、量こそ僅かでも、よく“選り抜き“で買付けに来られるよう。
但し、各種の値段を聞けば、“これでやっていけるの?“と耳を疑うばかり。
現状で各地に10~15万の苗木を作っていられるらしいけど、70才を過ぎる中、後継者もおらず、“自分が年中無休で作ってきた分で終わり“とのこと!

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盆栽の素材が激減する中、安く手に入れたいのは誰もが同じですが、
10年かけて作った鉢物素材が、500~1,000円!
これでは誰も跡を継ぐ訳がないと痛感しました。

自分で使えそうな種を合計で1,000~1500本頂くことにしましたが、
これを右から左へ売るのではなく、約2~3割の“筋の良い素材“を寄植えや、文人調に作ってあげたいと思いました。

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社会の中で“ボンサイ“が広く理解していただける時代が来た反面、“次の時代の素材作り“の後継者がいない現状💧
色々な事を考えさせられる日になりました。

“頑張って素材作りを手がけたい“ 
この世界にいる私達は、この事を決して忘れてはいけないと思いました。


大型の山採り素材の入手が不可能に近い激減の中、山採りならず、
“庭採り“で、福島県の旧家にあった真柏の“丸幹“素材を、大型ポットや木箱に入れて1年。

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生育状態も安定している事を受けて、舎利芸を作り上げるための第一弾の“皮剥き“を行いました。
5~7月、真柏が幹中に水をよく吸い上げている時期が大切です。

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幹の動きに合わせて、自然な水の“吸い上げ道“に逆らわず、“ここなら大丈夫“と言う所を見据えて、刃を入れていきます。
何度かに分けての舎利作りが必要で、今回はこの樹の将来を決める大切な刃入れ❗️

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これでおおよその将来の姿の基本が決まります!
枝々の方は、いずれ枝接ぎで、糸魚川真柏へ衣替えします。
まだまだここから始まる「名木への道」‼️
盆栽人は、先達が遺した樹を扱うだけではなく、このように“未来へ繋ぐ新しい名樹盆栽“の創作挑戦もしなければ!
でも、こういう仕事は楽しいです‼️

【祇園祭りの頃、猛暑を避けて遮光設備❗️】

“戻り梅雨“で暑さと潤湿な日が行ったり来たりする7月。
それでも間もなく日中は外に立っていることすらキツい日々が来ます。
今年の暑さは異常で、羽生の培養場も、
昨年まで何ともなかった大阪松の大型太幹までもが、葉が灼けてしまった部分が出たほどです。


大徳寺の庭園も、昨年同様に樹に合わせての木製遮光ネットの設置をしました。
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僅かな遮光で樹々の状態は歴然と違います。
人間で言えば、帽子をちゃんと被っているかいないか?と言う感じです。

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それでもここ京都の北区、送り火の山々の麓、
朝晩の温度やしっとりとした空気が関東平野とはずいぶん違います。
山育ちの五葉松類も、葉色が羽生よりも良いです。

庭を守り、樹を守り、まだ2年。
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ここからどれだけの刻を“守人“として全う出来るか?
樹に庭に寺に教わりながらいきたいものです。

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