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盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 盆栽管理


先日、『WABIチャンネル』の動画撮影をお願いして、名匠木村正彦先生のアトリエに終日お邪魔しました。

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普段からお付き合いのある先生、動画撮影に対しても快く応じて下さいましたが、
まさかここまでの対応をして下さるとは思っておらず、
あらためて盆栽人としての先生の人柄と盆栽に向き合う“生き方“と言える姿に感銘を受けました。

私がお願いしたのは、五葉松の素材、盆中で半世紀を超えているでしょうが、
愛好家があまり手をかけずに“持ち崩した“樹で、直近の業界オークションで、誰も買い手が付かず、僅か1,000円で落札したものです。

“どんな価値の樹でも、愛情を注いで作っていけば、それなりの姿となって応えてくれる“
そんな結論が欲しくてお願いしたのです。

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しかし、木村先生は私の期待を佳き意味で裏切る程の“木村マジック“を披露してくれました。
普段は、名品の改作や、創作に使うアトリエで、1,000円の樹に向き合った瞬間、
先生の目には、金額や樹の優劣など微塵も感じられない姿勢になられたのを身を糺して拝見していました。
冷房もないアトリエ、暑気の中、先生は
4時間かけて、宛ら“醜いアヒルが、白鳥へ“となる技を惜しげもなく披露されたのです。

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“その樹はここをどうにかすれば、5年10年後は、見違えるようになるよ“  いとも簡単に仰いました。
“この方は本当に不世出の盆栽人なんだ“と、心から感じた瞬間でした。
1ヶ月ほどで、手入れの完成、最終的な飾った姿を、前述の『WABIチャンネル』でご覧頂けると思います。
私はこの『1,000円の名樹』をある意味で、羽生雨竹亭の“守り樹“のひとつに迎えようと思っています。
皆さんも、是非『WABIチャンネル』を見て下さい❗️


WABI CHANNEL
(YouTubeに飛びます)


【“未来の名木“へ‼️】

一昨年、某所に30年以上畑植えで培養されていた真柏。

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庭木の素材として若木の頃に“曲付け“されていた樹、それが功を奏して、“この幹なら枝接ぎで大型真柏の盆栽へ変貌出来るかもしれない!“。
こんな思いで、木箱に入れて2年、芽の伸びるこの時期に合わせて、穂を用意して幹への枝接ぎ技法の一種、“胴への予備接ぎ“を行いました。

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太い幹の水をよくあげている所を見極めて、更に将来の樹形を想像して、必要な箇所に注ぎ込みました。

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穂材と幹、双方の形成層を合わせることが難しく、ここから数ヶ月で、活着の是非が確認できます。
現在、日本の真柏素材は枯渇状態!
このような技法で新たな盆栽を作っていく事も、私達の責任です!


1億円の名木「天帝の松」の植替えに続いて、船山邸での“舩山コレクション“の名品達の植替えを3日間かけて行いました。
国内でもこれだけの大型名樹達を1箇所に楽しまれている愛好家はあまりいません。

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日頃からご自身で水掛け・除草・施肥・消毒、80歳になられる中、盆栽に対する愛情と熱意にはプロながら頭が下がります。
ここの手入れを任されて20年、こうして名品達に触れる機会がある事に、有り難さと喜びを感じます。

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ひとつひとつが、長い年月をかけて、多くの人達が守り受け継いできた樹、私達が携わることも、その刻の中のひとつだと思います。
10年後、30年後、そして100年後、私達が居なくなっても、この樹達は誰かに受け継がれるでしょう。

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“今すべきこと“ これを一生懸命頑張るだけです。
それにしても大型植替えと手入れ!
若い者達5名と取り掛かるこの時間!
さすがに体力的に64歳となると、毎朝身体がバキバキになっている自分💦歳ですね💧


五葉松巨大名木として名高い「天帝の松」 10年ぶりの植替えを福島で行いました。
“舩山コレクション“ の代表的な盆栽のひとつですが、未公開のまま半世紀以上、福島の地に眠り続けていたこの樹に出会い、
蔵者と鉢を設計製作・植付けから始まり「世界盆栽大会inさいたま」の特別ブースに出陳、この鉢に植えてから既に10年の歳月が過ぎていました。

根詰まりをしないように、表土部分の“ほぐし“を数度行い、樹の劣化を防いできました。

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4人がかりでの鉢抜き!
根の状態も良く、無事に元の場所に戻せました。

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“名樹、大家に寄り添う“のとおり、舩山氏の庭で穏やかな日々を送るこの樹。
盆栽はひと所に愛培の地を得ると、抜群の健康状態を保ちます。
ここからまた10年、無理せず樹に向き合っていきたいと思っています。


国風展も終わり、出品されたお客様へのお届け物で、宅急便並みの忙しさ💦
福島の“舩山コレクション“舩山さんの所へもお届けに伺いました。
例年よりも“春“の兆しが早く感じる福島。
ズラリと並ぶ名樹達も、少しずつ春の準備を始めているのが、葉色からも窺えます。

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一昨年の作風展内閣総理大臣賞受賞の真柏、私が20年手がけた双幹の真柏、そして細身ながらも、際立つ真柏の美を見せる一樹。

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それぞれに“顔“があり、さながら、真の位・行の位・草の位を、表現した樹が立ち並んでいるようでした。
国風展の小店売店でお声をかけて頂いた黒松太幹模様木も、今日からこの庭の“家族“として迎えられました。

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今年で80歳になられる舩山会長。
今年の国風展では、“松柏名樹の舩山“と言う皆さんの見方を変える、雑木盆栽を出品されました。
この数年、大好きな松や真柏以外の、葉物・花物の樹をご紹介しています。

お年を重ねるごとに、四季の移ろいを楽しむ樹にも目がいかれるようになられました。
さて!来年は松で行くか?雑木で行くか!
ここからまた植替えを含めての一年のお手入れのお手伝いが始まります‼︎

樹々と共に、いつまでもお健やかでありますように❗️
(心配ないかもしれません!このお年で虫歯ひとつもない方!)

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