雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 飾り


二月中旬、盆栽の梅も枝先にちらほらと花が咲き始めました!
枯れ寂びた幹や枝の先に、寒気の中、芽も出ぬ中に咲く花姿。

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春の魁として見る梅の花は、長い冬の終わりと間もなく訪れる春を伝えています。
私は若い頃から梅の生きる姿が好きです。

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凍てつく寒さを耐え、自然界がまだ春を感じさせない時に、清廉な五弁の花を開かさせる。
まるで苦難の人生を生きる姿を物語っているようです。
床の間に「うぐいす」の掛物を合わせて、盆梅の完成した席を創ってみました。

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大徳寺の庭も緋梅の花が咲き始めました!
日本は桜と梅に春の謳歌が代表されます。

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対照的な二種です。
梅は訪れる春を伝える“ひと枝に咲く一輪の花“

桜は陽光の中、満開の花を湛える樹が、風に誘われて“花吹雪“となって降り注ぐ景色。
どちらが良いなど言えません。
春はいいですね❗️
でも、ここからすべての盆栽の“植替え“が待っています‼️

今はしばらく、この花姿を楽しみたいです❗️


明けましておめでとうございます。
今年も一年宜しくお願いします。

新年の雨竹亭応接室を、盆梅の古木で飾りました。

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日ごけが幹にまでのった古幹。
根元部分の貴重な姿と梅らしい自然な枝配り。

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新春の魁の花として、盆梅はいいですね!(普段は毎年松を飾っています)
掛物は、約100年前に描かれた、日輪の名作。

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皇紀2600年を祝して残されたものだそうです。
脇飾りは、瀬田川の大型虎石。

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今年の干支に因んで、迫力ある虎目の石を据えて、コロナに負けない“凛と寒中にも咲く花“に見習いたいですね!

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羽生雨竹亭も、4日から皆さんをお迎えできる体制になります。

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10日まで新春の盆栽展を開いています。
気高い空気を纏った盆栽達に会いにいらして下さい。


歳末の寒風吹く季節、地域によっては盆栽の寒さ除けの設備などで忙しい日々の中です。
晩秋の彩りある盆栽飾りから、“冬枯れ“の景趣に移り変わる今、盆栽の床飾りに一番苦労する時です。新年の飾りは“栄え“と“ハレ“で決まります。
年末近い今は、新年を前にして、かと言って新春を感じさせるには早く、毎年頭を痛めます。

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先駆けの山椿の蕾がほころびはじめました。
厳しい寒さを迎える中でも、深紅の花が心に温かみを感じさせてくれます。

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取り合わせた掛軸は、横山大観の直弟子、筆谷等観の「寒山拾得」中国古代の伝説の禅僧ふたり。

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悟得の境地を隠して、戯れるように日々を過ごした歴史上の名僧。
経典や箒を置き忘れてうたた寝する姿は、“そんなにあくせくしないで、のんびりと“と、私達に生き方を諭しているようです。

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慌しい年末、そんな時だからこそ、この名僧達に見習って、ちょっとだけ、ひと休みするような気持ちでいたいですね!


盆栽展での“賞レース“的な世界とは違う、盆栽水石の座敷陳列と言う、古来よりの“しつらえ“形式で、
趣味を通して、更に深い美意識を希求する事を目的とした愛好会として、多くの趣味家が知る、玄虹会。
その年に1回の展示も、13回を数える展覧となりました。

コロナ禍の中でも、昨年は3月の春季展、今年は晩秋の飾りを行いました。


会場は、第1回よりご理解を頂く、京都臨済宗名刹「大徳寺」の最大塔頭『芳春院』。

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本堂・書院・そして文化財と言える茶室「迷雲亭」と「落葉亭」。
格調高い名樹をはじめ、玄虹会ならではの味わい深い文人調の盆栽、圧倒的な水石群。

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特に床の間5席は、単に掛物を合わせるにとどまらず、席が表現する内面的な“席趣“まで掘り下げた意味を潜ませています。

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海外の盆栽水石のレベルが格段に高くなってきた今、私達日本人が求めた、盆栽や水石の単体の持つ素晴らしさだけではなく、
“空間全体を捉えた総合的な世界観“を、飾りに創り上げることが、これからの盆栽水石趣味の大切なものではないでしょうか?

その意味でも、この玄虹会は、未来への提言にもなる「失われつつある日本の文化」を示しているように思います。



以前より極秘裏に進められていた盆栽業界のシークレットニュース!
著名盆栽愛好家、廣瀬幸夫氏の愛樹(共に国風賞受賞樹)が、京都盆栽財団「慶雲庵」に、譲渡されました。


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2点とも、日本盆栽界を代表する名木、そこには盆栽をこよなく愛する大家同士ならではの“未来の盆栽界“に対する真摯な心がありました。

“自然の芸術作品である盆栽、愛情深き所蔵者と、熟練の腕を持つ盆栽師、
この両面が揃わなければ、時の流れの中で、価値なきものになってしまう“。

盆栽の真髄を体現してきた廣瀬氏の真実の言葉。


“自分の棚場での愛玩は、その盆栽達の歴史の中での一時の出来事、
名樹は志を同じくした人たちによって、その歴史を含めて受け継がれるもの”

古希を過ぎた大家の多くが、同じ思いを持たれています。
海外を含めた、名盆栽の所有意欲は、今までの盆栽界の在り方すら変える勢いが目立つ今です。
廣瀬氏と交友深い「慶雲庵」オーナーの田中慶治氏、“日本の歴史ある盆栽の保護伝承“を目的に創設した財団法人。
共に盆栽を人生後半生の道標とされた大家。

“命あるもの、持つに相応しい方があれば、金や評価は、プロに任せておけばよい”と廣瀬氏。


“未来永劫まで多くの人達に楽しんで頂くことが何より“と田中慶治氏の弁。

盆栽界の流通を正業のひとつとしている私などにとっては、口を挟むことすら失礼にあたる程の、「紳士と紳士の足跡」に、盆栽に生きる者のひとりとして、頭が下がる出来事でした。


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高く売ることより、持つべき人を得た廣瀬氏の安堵、受け継いだ名樹を後世に伝える責務に奮い立つ想いを持たれる田中氏。
お二人共にお付き合いをさせて頂く身として、胸に刻む感慨を得ました。
大観展でこの樹達と一緒にお会いできる事をお待ちしています!

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