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盆栽歴45年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 飾り


【木村正彦先生の真柏と寒桜】

彼岸を超えて 各地からソメイヨシノの開花が伝えられる中、盆栽も季節の移ろいを日々現す頃となりました。
月末から月初にかけて 久しぶりの海外。
今回は約100点の名木の植え替えを現地で行う為、熟練のスタッフから見習いまで、総勢9名で 渡航します。
10日間も羽生をこの季節に空けるのは、芽出しの季節、心苦しく辛いのですが、
日本から渡った真柏などの名樹達を手入れをせずにそのままにしておくわけもいかず、お手間賃も有難いほど考えて下さる愛好家。
せめて 出かける前の“今”を応接室に設えて行こうと思いました。
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帰国する頃には 桜は満開を過ぎ、名残の葉桜、盆栽も この寒桜を早春飾りの最期に、
ここからは枝垂れ桜の儚い美しさが、庭内・室内を満たしてくれます。
先日 名匠木村正彦先生の所から来た、真柏の大型古木に満開の寒桜。
朧の月の掛け軸と共に、寒桜の“刹那”の美・真柏の連綿と続く荘厳な命の営み、盆栽の持つ美と精神の両面を飾ってみました。
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・・・やっぱりこの季節はこの羽生、日本にいたいです!


3月2日~3日僅か2日間、京都名刹 大徳寺の中の芳春院で開催された『第11回玄虹会展』。
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特に別室床飾りで披露された寺内幸夫氏の展示は、盆栽趣味の文化的な真髄を物語るものでした。
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主木の黒松は、名人会田一松翁が最後まで愛した名樹として名高いもの。
「盆栽とは肥培するものではなく、枯淡の風趣を枝ひとつの中にも醸し出されたものが肝要」
という名言を残した翁。
若き栽匠として注目される神奈川県秦野市 宝樹園 椎野健太郎氏の所で 絶妙な管理をされたこの樹を、
席主は松を使った飾りの季節としては難しいとされる三月初旬に見事な設えをされた。
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掛け軸は 田中日華 筆「雪月花」通常の掛け軸と違い、表装部分も画家がすべて書き込んだもの。
画中の外から降る雪、この雪に混ざって僅かに散る桜の花びら。
朧の半月と共に幽玄な世界を表現しています。
特に注目するのは、月や雪そして花びらは、画中の下では消えていることです。
目に見える月も雪も花びらも、悟りの境地に言う「一切は空なり」の空。
つまり 世の現世に見えるものは、一刻の儚い夢、そこに齢を重ねてなお厳とした姿を見せる松。
生きる盆栽の姿と空蝉の画中世界が共鳴しあい、松際立つ気韻を見事に描き出されている盆栽飾りの真骨頂を捉えた名席と言えます。
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加えて脇床に置かれた馬蹄石の雅石。
石中に立つ姿が明王や菩薩にも見立てられるこの石は、本床に広がる幽玄の世界を、更に深い響きへと導く仏性観と言えます。

盆栽は 庭や棚で その姿を観賞するだけのものではありません。
本席が描き出す精神性は、盆栽を主軸にして 自然や哲学的な美意識を、
学識の裏付けを加えて どこまでも広がる人間美へと昇華させています。
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世界に盆栽文化が広がる中、技術や価値観ばかりが 評価される中、先人達が 百年以上の時をかけて完成させてきた 真の盆栽世界を 再認識させてくれる 鑑と言うべき一席です。

【大徳寺 芳春院で開催!】


盆栽水石の古来より受け継がれて来た 座敷飾りの文化を 次代に伝承し、

その奥にある美と美学を見つめる集団として結成された 玄虹会。

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京都 臨済宗 名刹「大徳寺」内 塔頭(たっちゅう)芳春院(創建400年・加賀前田百万石 初代 前田利家夫人 “おまつの方”建立)

を舞台に、11年めの展覧が開催されました。

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枯山水の方丈(本堂)近衛家寄進の大書院・石州流の総家元でもあるご住職が守る茶室「迷雲亭」と「落葉亭」

このすべてをお借りしての大展覧は、会員の意向により 多くの参観を求めるのではなく、

朋友が集い 歓談の中に 盆栽水石趣味の深奥を見つめる 至高の世界。

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発足時より 出入り方として、会員の方々の補助に努めて来た私にとっても、今では 盆栽人としての“ライフワーク”のようになっています。

“盆栽・水石の美とは何か”を 問い続ける自分ですが、この展覧の中に その答えの僅かが あるように思います。

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年に一度、この会のお手伝いをする事で、自分が何をして何を求めて行くべきなのか?

迷いがちな 人生の道標となってくれているように思います。


【名筆 森 寛斎と瀬田川古石に五葉松】

立春も過ぎて 明けやらぬ春待ちの冬空。凍みる空気の中、床飾りをしてみました。
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昨秋 栃木県のご老体から譲り受けた五葉松。
三幹仕立ての持込古いこの樹は、木村正彦先生門下・森山義彦さんの手で、空間優美な典雅な松へと生まれ変わりました!
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“梅を使わない2月初旬の飾り”・・季節感を捉えた王道の飾りが すぐに浮かぶ季節こそ、それとは違う飾りをするのに 知恵熱が出そうです。
(手持ちの少なさと言う家庭の事情もありますが・笑)
久々に書斎の奥にしまっておいた森 寛斎の『朧月』の大幅を掛けてみました。
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仄暗い 雪模様の曇天の空、画中 天井部に大月。
幕末から明治にかけて京都画壇に君臨した名筆はやっぱり良いです!
「明治の応挙」と謳われた寛斎の作品の中でも、独特の構図を取る作品に、
これもずっとしまっておいた(実は大きくて重くて ずっと蔵の奥にありました!)2尺を超える瀬田川古石を、
“明けやらぬ朧なる春待ち”の想いを込めて取り合わせてみました。
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月の朧が冬すぎての春を・瀬田川石の稜線穏やかな山容が、泰然とした中に何処かしら長閑さを。
松は変わらぬ翠を湛えながらも、僅かに“水揚げ”の色を濃くし始めている姿。
微妙な季節の移ろいをどうやって捉えて飾りをしつらえるか、これも盆栽水石の楽しみのひとつです。
是非 羽生雨竹亭の床飾りをご覧にいらして下さい。

【「後の月」の 風情】

10日21日、今年の十六夜の月となりました。用向きがあって 
羽生市内の恩ある古老愛好家 根岸先生の所へ伺う時、
丁度名残りのススキの穂が上手く上がっていたので、数日の間 楽しんで頂こうと持参しました。
奥様共々大変喜んで下さったのですが、「座敷の方にこれと一緒に飾りましょうね!」と、
奥様が 月見団子と台飾りを運んで来ました。
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23代続く 名家、日本の歳時記の中で、ともすれば慌しい日々 
忘れがちな“大切な自然との対話”の刻を こうして何気なくされている・・・
頭の下がる思いでした。
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床の間には、蘇東坡の驢馬に乗った見事な木彫、名器 植松陶翠に設えられた舟形石の逸品!
石の銘は「浪浦」と言うそうです。
障子越しに影絵のように座敷に移るススキの姿、日常を豊かに楽しむことの素晴らしさを改めて教えて頂きました!

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