雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴43年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 飾り


【床飾りと 座敷飾り  精神性の高さは同じ】

11月に京都で開催された盆栽文化の真髄「玄虹会展」(於・大徳寺 芳春院)は、
すでにこのブログで2回 報告させて頂きました。(今井氏舩山氏
今井氏は床の間飾り・舩山氏は一室飾り。
芳春院全山を使った展示は、ともすれば床の間や一室など、目立つ席が人の目を引いてしまいますが、
会員の皆さんが求めているのは、そんな優劣ではありません。
ひとつの台座石に心を込めて展示される会員、一樹に森羅万象を感得して出陳される方。
朋友が会して互いの席を相照らしながら、自身が描けぬ美を堪能する。
そこに生まれる探求こそが会が求めるものだそうです。
業界団体が組織する大展覧会は、近年「賞争い」の様な空気が、トップレベルの中に感じられます。
良識ある愛好家達は、趣味者であるが為に大きな声を上げるでも無く、静かにその姿を傍観されていますが、
私達プロはその現状と未来に対する危惧を強く持たなければいけないと痛感しています。
その意味でも、この「玄虹会展」は、趣味家のあるべき姿が何かを教えているように思えます。
盆栽水石の内容は当然のことながら、それ以上に
この趣味を愛する者とはどの様な「人」であるかが何よりも問われる事を。
趣味とは 金銭や価値の優劣で 事が左右されるものではないと思います。
飾られた作品によってその人物に対する敬意が生まれる様な空気を最上としたいものです。
玄虹会の各席はそれをよく教えてくれます。


【大徳寺での 室礼盆栽飾り】

五葉松 名樹「天帝の松」の所蔵者として 有名な 福島市在住 舩山秋英氏は、
盆栽水石の研究愛好会「玄虹会」の当初よりの発起メンバーでもあります。
先月の京都「日本盆栽大観展」で 最高賞を受賞された事は、
来月の月間『近代盆栽』でも大きく巻頭で取り上げられます。
大観展が開催された京都で時を同じくして前述の「第九回玄虹会展」が、
定例会場となっている大徳寺 芳春院で開催されました。
ここで舩山氏は、盆栽界の展示とは その趣向を変えた
日本文化の中に創出された「室礼」を基本とした古典の盆栽座敷飾りをされました。

氏の故郷である吾妻山系から山採りされた五葉松の屈曲懸崖、瀬田川の梨地石、
そして氏の代名詞と言える真柏の古樹。
三点のバランス構成は見事さはもちろんのこと、
この会は"その飾りの見えぬ向こうに込められた席主の想い"が 展示すべてに発揮されています。

本席は自然界に生き抜く五葉松、幹を折り曲げながらも生きる姿は艱難辛苦を超えて生を全うする人生そのもの。
この"自然界"を仰ぐ神仙棲み暮らす山々(瀬田川石)の遥かに人智を超えた『神の化身』と言える姿の真柏。
自然から神仙世界へと、連席が奏でる精神の深みを一室で見事に表現されました。
展覧会的な会場での盆栽鑑賞が、日常的となった今、
この様な 日本文化の様々な要素を内包した盆栽展覧は、
未来の日本盆栽界の最も大切な部分になってゆくと思います。


【花梨名樹と"福来雀"】

慌しい歳末、とかく盆栽を床飾りする余裕も心から忘れがちな日々があり、
己のだらし無さを痛感させられるものです。
特に12月は季節を捉えた飾りが難しいもので、
"一年を振り返っての新年を何処かに思わせる"隠れた情緒が大切な設えとなります。
今回は、入手してまる二年、手入れ・植替え(均釉袋式長方)を進めて、
ようやく観賞できるまでになった花梨を使っての「師走の床飾り」をしてみました。

古幹の䕺立ちの揺れ立つ姿が、唐画の世界から抜け出してきたようなこの樹は、
花梨の盆栽として極めて持込み古い名樹です。
この樹を主役に雨竹亭の応接室を設えてみました。

掛物は「雪中双雀」作者は、岡倉天心が創設した東京芸大の前身、
東京美術学校の初期日本画教授として横山大観らにも指導をした今尾景年。
雪降る中に寄り添う二羽の雀。
寒さを避ける為身を膨らませて空気を孕んで暖をとる姿は、
古来より「ふくら雀」の愛称で呼ばれています。
これを「ふくら→福来→福が来る」になぞらえて、佳き新年を間近にする縁起に使ってみました。
過ぎゆく今年、振り返ってどんな一年だったかを想いながら、冬姿の寒樹と雀。
静かな当たり前の飾りの中に潜ませる趣意。
盆栽人として、己の鍛錬を込めて 飾りは "その向こう側にある想い"を必ず念想したいと思います。

【150年の五葉松根連り】

朝夕の秋風が身心ともにありがたい季節になりました。
ニューヨーク・ワシントンの講演旅行に 出かける前に、
雨竹亭の応接床の間に、先日 木村正彦先生に整姿針金施術をお願いした、
樹齢150年を超える五葉松の根連りを飾ってみました。

叢雲を抱く澄み切った秋夜の空に煌々と明けき姿を見せる名月。

遠くを仰げば、峻険な山々が刻の流れを嘲笑うように、凛然と山容を見せています。

五葉松の各幹は、それぞれに揺れ立ちながら、ひとつの大きな景色を描き、
まさに"松風を聴く"と言う言葉を一席に現出出来たかと思います。

名僧の残された詩を思い出します
「月落ちて 露光冷やかなり 松根 羅屋を照らす」
本格的な盆栽飾りを楽しむ頃となりました!


【仲秋の山野草 床飾り】

朝夕に 虫の音と共に、涼やかな風を感じる頃となりました。
晩夏の名残をみせる昼間から、"秋風"を楽しむ 季節を迎える中、
山野草の床飾りを設えてみました。

先日、福島まで 出向いた折、久しぶりに名匠 阿部倉吉翁の所により、
お孫さんが営まれる「ぼんさいや・あべ」に伺い、今回の主草「目刈萱草」を譲って頂きました。

私は 山野草の秋飾りには、どうしても "寸詰まった" 感のあるものが苦手で、
この様な"吹く風に揺られる"風情のものが好きです。
ススキの穂が出た飾りもいいのですが、まだちょっと早く、目刈萱は有り難いものです。

掛軸は 今尾 景年 の「中天の月」名月を待ち望む今ならではの取り合わせです。
脇床(琵琶床)には 木彫の双鹿。
虫籠・うさぎ などの合わせも 面白く、注意するのは 主飾りが「草」なので、
鋳銅などの位取り高い材質を避ける事かと思います。
古盆の雅格が良いのは勿論ですが、時には
この様な「季節を切り取って肩の力を抜いて楽しむ」事も、忘れないでいたいものです。

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