雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 飾り


外出を控えてご自宅にいる時間の多い中、退屈しのぎに、“売れ残りのかわいそうな石や盆栽で、遊んでみました。
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石は水石として1点では見づらいもの。
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真柏は細いまだ6〜7年生の若木。
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これに砂と何でもいいから水盤の代わりになるもの(観葉植物のトレイなどもいいかも!)
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有名な庭師の方が言いました。
「石には必ずどこか見所があるもの。そこを見せて見づらい所はたとえ半分でも庭に沈めるんだよ」
この言葉と同じに、小さな石の中にも、厳しさや雄大さ、そして「どこかの風景で見たことがあるような」所があるものです。
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これを自分の感性で思いのまま組み合わせてみると、意外な景色が生まれるのです。
手前に「近景」を作って、奥に「遠くの風景」を合わせてみる。
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もし、お手元に何か風景を扶けてくれる今回の船みたく、フィギュアのようなものがあれば、
それを風景の中に上手に組むことで、より実景のような世界があなたの手によってできます。
石の置き方、盆栽の種類などで、僅かな持ち物でも、千変万化!
ご自分のリビングや机の上に、あなたの心が描いた「貴方だけの心の風景」が毎日その姿を変えて現れます!
ウィルス災禍の辛いニュースがテレビを覆う毎日。
せめて盆栽と石が、部屋の中で癒しと楽しみになる事を願っています。
盆栽屋の手慰みでした!



まだ4月の半ばだと言うのに、羽生の庭の藤の盆栽は花房が開いて降り始めました。
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藤は蔓性で、持込みの古い単幹のものが少なく、この樹のように枝先まで切返しの無いものは貴重です。
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年に一回の花物盆栽の咲き誇る時、一度はちゃんと床飾りをしてあげたいですね。
今回は、藤の花に合わせて「雲雀・ひばり」の細身の掛軸を使いました。
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通称「揚げ雲雀」と言われるこの図柄は、本当は4月末から5月中旬に使うものです。
田畑に早苗や若葉が茂る頃、天高くに囀る(さえずる)鳥です。
まるでヘリコプターのホバリングのように、1か所に留まって鳴いています。
陽春の代名詞の雲雀と、花房を降す藤。
これだけでも、充分な見応えのある飾りですが、
脇に添景、まさに名の通り、景色を添える様々なものを取り合わせることで、
更に盆栽を中心にした世界観・季節感・そして風趣が描き出されます。
今回は、木彫の農屋を象った置物にしました。
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金工として名高い本間琢斎の作品です。
藤などの花物盆栽に合わせる添景は、そこに現出する景趣は勿論大切ですが、できれば花に金属のものは避けたいものです。
添景の“格”や強さは、金工物・陶製・木彫・の順になります。
どれが良いと言うのではなく、主飾りになるものによって、脇飾りの質(マテリアル)は違ってきます。
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花咲き、ふり降りる藤、仰げば天高くに雲雀の囀り。
穏やかな陽春の日和の中にひっそりと長閑に庵ひと棟。
飾りとは、ありのままの自然の風景を、心の中のファインダーを通して、余計なものを消し去ってしつらえるものです。
是非、皆さんも、ご自分の盆栽や水石で楽しんで下さい。
一点の観賞から、設えの組み合わせで、日本人ならではの総合的な美が毎日楽しめます!


【脇飾りで様々な景色を!】

コロナウィルスの影響で、自宅に籠りがちな今年の花見。
盆栽飾りでいろいろなロケーションを楽しめます!
主木の枝垂れ桜は、珍しい“一重咲”の枝垂れ性の富士桜。
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咲き始めは白っぽい花色ですが、徐々に紅色を帯びてきます。
そのコントラストも美しく、気品ある花型と色、何よりも「儚い美」の結晶と言えます。
初めは京都清水焼の人形と。
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十二単の姫が桜の樹の下にいる姿は、絵になります。
人形の名は「紫の上」つまり紫式部を表しています。
『源氏物語』の絵巻の中のようです。

次は木彫の農家風との合わせ。
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山里のくず屋の脇に咲く枝垂れ桜の風情。
温かい陽射しを感じます。

3番目は「旅の老爺」本当は芭蕉の像ですが、旅僧に見たてています。
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鎌倉時代の有名な僧・西行が詠んだ名句、
「願わくば 花の下にて春死なん そのきさらぎの望月のころ」
は、桜を題にした日本人の死生観を歌った言葉として今も共感の多いものです。

ひとつの枝垂れ桜の盆栽、これだけを愛でて楽しむのも良いですが、
このように添えの道具とそこに見える日本の情緒で、目の前の景色は、果てしなく広がります。
これも盆栽趣味の醍醐味ではないでしょうか。

【名盆栽 紅冬至梅の飾り】

国風展の慌しさの合間に、羽生の床の間を飾る古木。
戦前より盆栽界に受け継がれてきた名樹「紅冬至梅」 昨年天界に逝った盆栽大家・小泉 薫 翁 が、生前大切にしていたもの。
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小泉先生との二十歳の頃からの半世紀近いお付き合いの中で、私の別のお得意様の所有となり
「私が庭におくレベルではないので、森前さんのそばにおいてあげて下さい」と言う現蔵者のお気持ちで、
今年も羽生の庭で楚々とした花姿を見せてくれています。
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松に代表される盆栽、なぜでしょう?梅はその松にも負けない厳とする雰囲気と早春の兆しを現す象徴になっています。
名樹と合わせた「冬朧の月」の掛軸。
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雪空に霞む月は、明けやらぬ春を待っています。
脇には楓の寄植え。
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まだ寒樹の相を見せる木立の数々は、吹く風に肌を刺す冷気が残っています。
人はいつかは『白玉楼の棲人』となります。
還暦を超えると“あの方も逝ってしまった”とため息をつくことが多くなります。
それでも 盆栽は生き続けます。
不思議にその人の面影を残して。
そして徐々に 次の持主の貌へと姿を変えてゆきます。
私のもとにあって、この古樹はいつかは 私のような姿になるのでしょうか?
次なる姿が、故人たちに恥ずかしくないよう、身を律して修練の毎日を送らなければと、非力浅学を恥じるばかりです。
自分より齢を重ねた老樹を見ると、「お前は何でそんなに頑張って生きているのだろう?」と いつのまにか、心が樹に問いかけています。
きっと死ぬまで 問い続けるのでしょうね。

【木村政彦先生の作品を飾って!】

明けましておめでとうございます㊗️
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ご改元初めての新春、神気纏う初春の盆栽はやっぱりいいですね!
羽生の応接室にも新年の飾りをしました。
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埼玉県の大家が長く愛蔵していた五葉松の根連りを木村先生に暮れのうちにお願いして針金整姿をして頂きました! 
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令和の新年、松を皇居の別名「大内山」になぞらえて、“日出処の國”の象徴としての昇る旭、脇には暁光に輝く大八洲(おおやしま)の山々。
当たり前の設定ですが、「松に日の出、仰ぐ山々」これこそが、日ノ本の徴だと思っています!
オリンピック・水石協会60周年・明治神宮100年祭・そして秋には大徳寺盆栽庭園。
私にとって、穏やかな1年、つまり盆栽と静かに向き合う年はいつになったら来るのやら!!
今年も 宜しくお願い申し上げます🤲
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