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盆栽歴45年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 飾り


旧年中は、羽生・銀座・その他、私共の活動すべてにご支援ご愛顧を頂き、誠にありがとうございました。
ウィルス災禍でまだまだ厳しい社会情勢が続きますが、盆栽と水石の豊かさを皆さまにお伝えして、
少しでも心豊かに暮らせますよう、お手伝いをさせていただきます。
今年もどうぞ宜しくお願いします。


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新春の盆栽飾りを応接室に床飾りをしました。

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五葉松に日の出、脇飾りには、長寿梅とふきのとう。


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其々、年をあらためる神気を願って飾りました。
特にふきのとうは、私が23年前、独立した時から毎年お世話になる方々へ、
芽数の足りる限りに鉢植えして年の納めにお届けしているものです。

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20年前は、埼玉県の桑畑の農家の方から譲って頂けたのですが、

温暖化と桑農家が減ってしまい、段々北へ採取地が移動して、今では山形や宮城県から山採りしてもらっています。

“来る年も宝の芽がたくさん出ますように!富貴の塔となりますように!芽出たい年になりますように“の願いを込めて作っています。
羽生の培養場もなく、栃木の小さな家の小さな庭先で、
銀座を閉めて帰ってから、寒風の露天で悴む手を暖めながら作ったあの頃を忘れないように。

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皆様にとって、少しでも幸多き佳き年となりますように。


【夢にみた据付と飾り付けは、伊勢の神宮が紡いで下さった!】

伊予産名石『五十鈴川』・3代続く大家「如学庵」の蔵石として名高く、
私もこの道に入って様々な図録で、その湧き流れる渓流の姿は、若かりし頃の私の目にも強く残りました。
名園吉村香風園氏の大旦那として、昭和前期より活躍された家門。
蔵石のすべてが日本水石界を代表するものばかり。
初代が蒐集した刀剣は、『三条宗近・別名“三日月宗近”』を筆頭に、
国宝・重文・多く、その殆どを国立博物館に寄贈された事は、水石界ではあまり知られていません。(因みにその額約20億円!)

先日京都大徳寺の展覧を終えて、
数年来の念願だった『神宮』(伊勢神宮は通称で、ここだけは“神宮“と呼び、日本神社界の頂点の社)へ参拝しました。
その帰路、“名石五十鈴川が放出される“の報を頂き、師走の世知辛い世間の喧騒の中、
香風園氏の協力で、若き頃より夢にみた“五十鈴川“を扱わせて頂く機会を得ました。


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今回、三尺銅水盤への“据付け“と、新年の床飾りを設えました。


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清流の水音が聴こえるような景色、広々とした水盤の中に、五十鈴川は描いた通りの素晴らしい世界を見せてくれました。


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取り合せに、橋本雅邦の「富嶽図」


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控えめの掛物の寸法が、名石を映えさせてくれると思いました。
添えに青銅の三重塔。
お世話になった大家小泉薫先生の形見の品です。
コロナに振り回された一年、五十鈴川の神気漂う世界観が、病魔退散、邪気を祓ってくれますように。


冬至を迎え、ゆく歳を振り返る中、盆栽の床の間飾りに1番苦労する季節です。
色鮮やかな“秋景色“の記憶、その後に訪れる暮の静寂。
新年を前に“色“を抑えた“冬姿“を、席中に表現してみました。

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主木は五葉松の古樹。
盆栽界の歴史にその樹相を残す名樹。


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サバ状の幹は徐々に懸垂しながらも、雲間の景のように、枝々を配らせています。


配する掛軸は、大家横山大観の師匠筋でもあった、明治画壇の名筆、今尾景年の「寒中月」

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深々と降り始めた雪が、冬空の半月に映されて、寂たる世界を醸し出しています。


脇には、古谷石の古石。


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﨟たけた石肌は、百年を優に超える愛玩が創り出した古感。

凍てつく程の冷気の中、葉色を変えながらも、常盤の翠を湛える松。
あくまでも静かに降りゆく雪と中天の月。
五葉松の樹相と溶け合う“厳なる姿“を持つ古谷石。
余分な景色を省いた、“水墨世界“を、席中に醸し出した「師走の盆栽飾り」です。
“何処かに季節、されど過ぎぬよう”・・飾りの難しさとは、尽きぬものです。



暦の上では、もう立冬。
暮らしのまわりにも“過ぎゆく秋”が感じられます。
夏の終わり頃に手に入れた柿の盆栽が、ようやく飾れる時になりました。

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スタッフ達は、“間もなく実も終わりますが“、とずっと言っていましたが、
私は柿の盆栽に求めるのは、たわわの実なりが過ぎて、僅かに残った葉の実の風情こそが、柿に描きたい世界だと思っています。

飾る当日、残された葉の半分を取る、この時、“自然に落ちてゆく葉姿“を心に浮かべて、
人間がいかにも“わざとらしく少なくした“感じが出ないように心がけました。

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鉢も今まで白い丸鉢に入っていたものを、“侘びた風情“が一層となるように、丹波焼の古鉢に、根を痛めないようにそっと植え替えました。

取り合わせた掛物は、田中訥言の「時雨の散り紅葉」。

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霜月の山風に葉を散らしてゆくもみじ。淡彩で描かれているので、柿の実の色を殺さず、溶けあってくれました。

添えには、木彫の茅屋。


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山里の晩秋の景色が、席中に表現出来たかなと思います。

この柿の見頃は、僅かに5~7日程です。
でも、季節の移ろいとは、そんな具合が丁度良いです。
その1週間の為に、1年の培養を続ける。
こんな贅沢こそが、盆栽趣味の醍醐味だと思っています。
さり気無い柿の盆栽。
国風展などに出品される老名樹とは違いますが、心に沁みる点では、些かも負けていません。
そこに込められたそれまでの時間、想い、
盆栽飾りは、これでいいと言うものがなく、奥が深く、私もまだまだ樹に教えてもらう事ばかりです。


台風の接近に一喜一憂する盆栽園、秋晴れの日になると、心がホッとします。
“名匠“木村正彦先生にお願いしていた五葉松の根連りが仕上がって帰ってきました。
2年前、うらぶれた姿で市場に売られていた木、培養の安定を確認するまで我慢して、先生に持ち込みました。

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100年を超える樹齢を見せる樹、揺れ立つ幹姿は、どんな盆栽作家でも創出することは出来ない味です。
「松風を聴く」・・そんな景色を創ってみました。

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掛軸は明治の名筆・山元春挙「来雁図」。

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渡り鳥の雁は、中秋から晩秋にかけて日本に飛んで来ます。
遠見に飛ぶ雁の群れのみで画中を構成しているのは、大家ならではの腕!
余計な書き込みがないだけ、主木をよく扶けてくれます。

脇には古谷石の重畳とした連峰の姿。

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大陸から島々を超えて来た雁の有り様を、席全体で表現しています。
やっぱり、持込みの古い松はいいですね!

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