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盆栽歴47年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 飾り


記録的猛暑の続いた今夏、それでも9月になると、朝夕の空気は何処となく涼んできたように思います。
今年の「中秋」名月は
9月10日
この季節になると、“月“ の掛物を使いたくなります! 
先日、名匠・木村正彦先生の創作的作品「八房桧寄植え」を譲って頂きました。

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名月にはいつも“ススキ“を取り合わせますが、今回はこの盆栽を使いました。
掛物は江戸期の名筆、土佐派の大家、土佐光孚の三幅対のひと幅。

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蔵にしまっておいた、木彫家・田中一光先生に十数年前お願いして作って頂いた“ウサギ“のつがいを脇飾りに使う事を決めていたので、
“木彫のウサギ“に、単幹の名木などは合わず、「深林」を感じるこの寄植えを主飾りにすることにしました。

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“里山の森林の上に浮かぶ煌々とした名月、足下には野うさぎの雌雄”  時にはススキ以外の中秋も面白いものです。

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因みに、木村先生のこの作品は、普通の桧素材だと、このように細やかな枝姿にならないそうで、
八房系のこの素材を手に入れる事が、とても難しいそうです。


八月、長く続いた京都“祇園祭り“も終わり、各地の祭事も過ぎてゆきます。
七日には暦の上では“立秋“を迎えましたが、酷暑はまだまだ続き、
併せてコロナ感染はいまだに猛威をふるっています。
世の中が感染社会の苦悩に苛まれている今、盆栽飾りに“願い“を込めてみました。

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真柏の美しい半懸崖。
流麗な樹姿は真柏盆栽の真骨頂とも言えます。

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真柏で季節感を表す事は難しいものです。
しかし、掛け物や添景に季節感や風物を織り込むことで、床間に、別世界を表現できます。

画面全体を覆う滝姿の掛物。

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戦前の筆家、寺田盧秋が残した賓作です。
脇床に法塔を飾る事で、世界遺産“那智の滝“が胸中に浮かびます。

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清冽な深山から湧き出でる水飛沫が、すべてを洗い流すほどの瀑布となって席中に水音を響かせるようです。
ご神体とされる“那智の滝“。
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世情の憂いのすべてを洗い流して、“穢れ“を落としてもらい、来る秋には清涼、清浄な、日々を迎えたいものです。


京都は7月1日から1ヶ月に及んで「厄や疫病を祓う」願いを込めた『祇園祭り』が行われます。
コロナ禍で2年間開催が見送られましたが、今年は洛中を埋める“山車“も出番に備えて木組みが行われています。


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“山鉾巡行“と言う山車が市中を練り進む一大イベントの中でも、
この掛物に描かれている「長刀鉾」は、“邪気を切り祓い進む“ 象徴的な山鉾です。
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1300年続く神事、長刀鉾に取り合わせて、真柏の珍しい根連りの細幹。
脇には木彫の双龍が宝剣を守る姿。

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古都を守る龍、京都に都を作った桓武天皇は、
この地を見下ろす地に宝剣を突き刺し“ここを新たな都とする“と言われた伝説が残っています。

厄災の多かった半年、ここからの半年が佳き刻となる事を願った飾りです。
盆栽の床飾りには、自然や季節を謳歌するものから、このように伝説や故事に即した飾りもあります。


“夏越しの祓い“も過ぎて、今年も後半、空梅雨の猛暑には参ります💦
暑気強い空気の中、せめて床飾りには“涼しさ“が欲しいものです。

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名木の松柏類の美もひと休み! 
何気ない山野草や細き季節の鉢物が、掛軸や点景道具と合わせると、観ているだけで、何処かに“風“を感じさせてくれるように思います。

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普段は盆栽の棚場の端っこで、粗末な扱いを受け易い草木たち。
彼らが年に一度、ひのき舞台に上がる時です❗️

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暑さで参りそうな今、人が造ったものではない、自然をありのままに映し出すこの子達。
皆さんも、“たかが草、たかが竹“と思わず、彼らが見事に主人公になる季節を楽しんで下さい❗️
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【究極の盆栽水石の“夏飾り“の深奥!】

京都「大徳寺・芳春院」を舞台に十数年続く、
盆栽水石の探究趣味団体「玄虹会」の御用掛けとして、お手伝いする中、初めての向暑の展示を創りました。

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大観展の11月下旬,2月から3月の早春期など、季節を替えての展示による研修をしてきましたが、
“一服の清涼“が欲しい季節の展示は、会員の皆さんも含めて、初挑戦のものでした。

愛好家である会員の方々も、国風展や大観展など、普段の趣味家としての展示もなさる中、
この季節での展示、特に道具立てを思案した席創りには、苦労されました。

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おひとりずつ、愛好家としての“個性“もあり、またそれが朋友と共に展覧を楽しむ材料にもなっています。

日本の盆栽業者は、ともすれば、自分の出入りする上級の愛好家を“囲い込む“ように、周りから遠ざける感があります。
私は逆に愛好家同士が、和気藹々として、趣味の世界に親睦の華を咲かせてくれる事を願っています。

盆栽が得意の方、水石が好きな方、名品の数々を所蔵される方、
名もなき草や石を見事に取り合わされる方、そのみなさんが、禅と茶の湯の象徴と言える、大徳寺で、個性豊かな席を創り合う。
それが、私がこの会を興す時願った世界です。

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“相席“と言う、同じ部屋に飾り合う中に生まれる響き合う世界、
ひとりで一室を受け持って、盆栽にしても水石にしても、複数を飾り、それでも季節・世界・力・などが、重複しないように、
ひとつの“趣意“を創出する醍醐味。
いつの間にか“熟練の大家“になられた皆さんの席には、もう私の介添えなど要らぬ深さが滲み出ていました。

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高位の茶人ですら、使用を許可される事の殆どない大徳寺、総長であったご住職の下で、
趣味家として大切な“品位と飾らぬ心“を身につけられた皆さん。

完成などない、盆栽や水石の美意識の探究。
ここからも更に“もう一歩“その向こうに見えるものを、探る道案内役を務めていきたいと思う展覧でした。

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