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盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 飾り


間もなく京都で開催される『第43回日本盆栽大観展』への出品の為、愛好家秘蔵のケヤキの大樹が、羽生に運ばれました❗️

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展示を前に卓を合わせる為に、応接展示室に持ち込みましたが、私も半世紀盆栽に携わって来ましたが、
これだけの丸幹太幹の大型ケヤキは、今までに扱った事がない樹です。

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美しい黄葉を見せる樹。
大観展では寒樹の葉落ちの姿での展示になります。

僅か1週間の黄葉の勇姿❗️
床飾りを構えてみました!

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時雨の中、寄り添い飛び交う雀の画、遠くには、“京都“を想う三重塔。
根元の幅45cm❗️を超える大樹❗️
それでも、単に“太い“と言うだけではなく、条件を整えた樹姿の名樹。
やっぱりごまかしのない大樹は良いですね‼️


夏飾りの盆栽・若い頃、感動して観た姫孟宗竹の寄植え石付。
大宮盆栽村の山田清香園の作品は、今も脳裏に焼き付いています。

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銀座雨竹庵で展開する“レンタル盆栽“の季節飾りにも、毎年この姫孟宗竹を飾っていますが、
ようやく鉢数が増えてきただけで、納得のいく盆栽になるにはまだまだ程遠い状態です。
伸び放題になっていたひと鉢を、久しぶりに鋏を入れてみました。

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何とか飾りに耐えられそうだったので、“夏飾り“をしてみました!
大好きな夏掛けの軸、竹内栖鳳の「雨裏螢図」 渓流に降る雨、葉蔭でその雨を凌ぐ螢たち。

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添えに駿河千本細工の竹製虫籠、その戸を開けておいて、“ほ・ほ・ほーたる来い“と、
季節を楽しんでみました。
明日はスタッフの皆んなに、伸び放題の姫孟宗竹の透かし切込を早朝からみせて、実習を兼ねた勉強会をしようと思っています。

時には“本画“の素晴らしさを愛でて❗️久隅守景と夏飾り‼️

京都大徳寺「芳春院盆栽庭園」も、黒松赤松の“芽切り“も進み、30日の「夏越の祓い」が近づく中、季節は“夏の飾り“に移りつつあります。

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庭内「通玄庵」の床の間も、夏蔦になり、主木の盆栽が“軽め“になる中、席中の“格“を創る為に、掛物に“本画“を使ってみました。

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盆栽界水石界の展示会では、季節を扶ける飾り道具として、掛物を使う機会がありますが、
少し辛辣な意見で言えば、掛物に対する考え方にまだ修練が足りないように思います。

席飾りとしての掛物使いは難しく、まずは月や翔ぶ鳥など、“盆栽や水石に使い易いもの“が主になります。
勿論それで良いと思いますが、果たしてその掛物自体を美術的に見ると、
金額的価値観ではなく、掛物を愛する方々からみて、佳きものであるか?
私からみても多少の疑問があります。

例えば、盆栽に対して“鉢映り“は大切な要素です。
この鉢を軽んじれば、本格の舞台では減点対象となるでしょう。
鉢・卓・水盤・これらに気を遣うように、掛物への“格“に対しての“配慮と目利き“を心がけたいものです。

折角の盆栽や水石、他の道具立ては素晴らしいのに、骨董屋さんで安易に手に入れた掛物を使う事で、
ある意味、その分野に明るい人達には、
“盆栽や水石は素晴らしいと思うが、使ってある掛物が、骨董屋の軒先に土産物程度に売っているもの、
これを平気で使えるという事は、盆栽も水石も大した事はないのだろう“
こんな言葉をかけられた事が忘れられません💧

今回、通玄庵には、江戸初期の画家として「狩野派四天王」と謳われ、
国宝・重要文化財にも指定される作品を遺した、久隅守景の水墨山水図を掛けてみました。

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名筆の伸びやかで無駄のない筆致と空間使い、紙の古感も良く、何より“表具“の仕立や古裂の質の良さが際立っています。
勿論それでいて主張し過ぎず、全体の席中の“余韻“を高雅静謐にしています。

私達の主たる物は勿論盆栽と水石です。
しかし、知識の研鑽は、最後に盆栽水石に立ち戻る“美への審美“になるように思います。

私は盆栽に対しても、水石に対してもまだまだ未熟です。
“盆栽の素晴らしさの究極は何か!水石の審美の極みは何なのか!“ 
いつも自分に問いかけています。勿論答えなど見つかりません。
しかし、日本文化に息づいた様々な美的遺産が、何かを気が付かせてくれる時があります。
日本画もそのひとつです。

日々、研鑽と修練を怠らず、もっともっと見つめていきたいと思っています。


今年で23年目となる明治神宮社殿回廊における「奉納盆栽展」
そしてコロナ禍、この数年開催が延期されていた水石協会の歴史ある展覧「日本水石名品展」が、
従来通り、社務所講堂で開催されました。

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今回は特別出品として西園寺公望由来の菊花石名品「羽衣」が、都美術館への展示に続いて、“帝都の杜“に出陳されました。

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神宮からは、名石「愛鷹」京都から頼山陽の「青山白水」まさに名石のオンパレードです!

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社殿回廊には、樹齢500年の真柏(高砂庵・故岩崎大蔵先生遺愛)や、今春国風展に出品された蝦夷松古木など20点!
海外からの参拝(観光?)の方々も、初めて見る“ホンモノ“の名木達に感嘆の声をあげて、展示の場は、人だかりで樹が見えないほどでした。

こうして、コロナ前の風景に戻る景色を見ていると、“平和な日常っていいものだなあ“とつくづく思います。
“神域“に飾られた樹々達、盆栽達も嬉しそうです❗️

【“平飾り“という、一番難しい世界】

盆栽・水石の、“座敷飾りの究極世界“と言われる「玄虹会展」。

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見事な床の間飾りに圧倒されがちですが、会員の方々は、
「この会は皆が平等、会長も幹部もありません。勿論毎回の展示も、その優劣など、初めからありません」
と仰います。

確かに数えてみれば、総席数20席の内、床の間飾りは僅か4席!

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青氈を敷いた “平飾り“  と言われる平易な飾りが殆どです。
しかし、会員の方々は「平飾りが出来るようになれば大したものだね!」の弁!?

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ご年配の会員如く、
「掛物や添えを配しての主題作りは楽しいですが、
盆栽や水石のみを飾って、
そこに大切な“想い“を込めて、観る方に“何かを感じる“世界を
設えるのは、意外に難しいものですよ」!!
さすがの奥深さ❗️

そう言われて見直せば、ひとつの盆栽・一塊の石に、ご自身の名札の誇りを込めての飾り!
“玄虹会員は、朋友への信を第一に“ と言う会是を筆頭にされる方々が極めようとする世界観、
もう一度、静かに見直したい展覧でした❗️


第15回玄虹会展の動画をこちらからご視聴いただけます☟

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