雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴43年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 飾り

【玄虹会展に込められた、日本文化の美意識】

第10回展となる「玄虹会展」・ 盆栽水石文化に深い造詣を持たれる趣味者達が集い、
日頃の愛好の成果を、同朋と“感嘆相照らす”心で、
更にもうひとつ奥深い“向こう”に見える美と人間性を高める同好会の展覧として、毎年1回 開催されています。
通常は、この会の趣意を理解下さる京都名刹「大徳寺」塔頭『芳春院』のご住職のご好意で、同院で春秋どちらかで行われています。
今回は、秋展が続いた数年から春展へ移行する間の年として、
京都国際文化振興財団『慶雲庵』理事長・田中慶治様が所有する 名亭での披露となりました。
IMG_5940
「わらびの里・霞中庵」戦前の資産家が、京都の山里に“隠れ家”的な数寄屋建築を残されて、
戦後長く料亭として使用されていたものを、正業の関係で田中氏が引き受けたものです。
下足番を備える外門に掲げられている「霞中庵」の扁額は、横山大観の筆・しかも篆刻は北大路魯山人! 
IMG_6093
門をくぐり、庭内を進むと、深山渓谷を想わせる素晴らしい庭。
IMG_5941
IMG_6092
山間に溶け込むように作り込まれた樹々・石組・苔・そして 平安の頃から歌われた「音羽川」が庭内を流れて、
その斜面を清冽な音を立てて流れる滝姿の妙。
渓谷の傾斜地に築かれた数寄屋建築は、各部屋ひとつとして、同じ趣向は無く、一室一室がまるで工芸品のよう。
FullSizeRender
IMG_6097
FullSizeRender
半世紀を超えてこの「隠棲の栖」を保存された歴代の所有者に頭が下がります。
展示の中身をご紹介する前に、この霞中庵が私に教えてくれた“飾り”に潜む美の源流が、
日本の美意識の根幹と言える「影あればこその光の美しさ」を伝えたいと思います。
最近の盆栽水石の展示会・展覧会は、会場形式が主流です。
時代の流れで、これも仕方がありません。
誰もが参観しやすく、搬出入が便利なのは当然の利です。
しかし、日本の盆栽界が創出した美は、盆栽だけの世界で生まれたものではなく、
古くは室町期に発生した「東山文化」の中で、御伽衆・連歌衆の手によって誕生した室礼による書院飾りにその起源を見ることが出来ます。
FullSizeRender
ひとつの空間、直射の無い“間接光”の部屋に現出される、人と空間と対峙する実像。
そこに「幽玄」という、言葉には表しづらい「韻」を 感得するに至ったのです。
今回の「霞中庵」における盆栽水石飾りも、その本流と言える在り方を、見事に表現したと言えます。
FullSizeRender
照明では響きを示さない仄暗い室の中に浮かび上がる玄なるもの、ただ自然の造形物や園芸創作があるのではなく、人のその時の心の在りようが、そこに感じる小宇宙なのです。
今回は総論を写真と共にお伝えして、次は幾つかの席について申し上げます。

本格座敷飾りの準備『玄虹会』

サツキの花咲く今ですが、すぐ足元に「初夏」の兆しが感じられます。
庭の「岩がらみ」の盆栽が見どころとなったので、床飾りをしてみました。
IMG_5888
IMG_5889
清冽な瀑布を僅かな筆さばきで描いたのは、大家 菊池契月。
瀧を描くのではなく、それ以外の部分を描くことで、瀧を表現する腕は、流石に名筆!
IMG_5890
飛沫をあげる深山の崖には、蝶が飛び交うような花姿(正確には花ではありませんが)をみせる岩がらみ。
瀧を水墨で合わせる事で、岩がらみの葉の美しさが際立ちます。

もうひとつ、まもなく京都山科の里深くに構える数奇屋名亭・わらびの里『霞中庵』で開催される
「第10回 玄虹会展」の 出陳席の席割りと飾り構成に 知恵熱を出している中で、
本格文人盆栽飾りの “古武士的”な 席が出来たので、ご紹介します。
IMG_5891
赤松名樹「観月」。
 大宮盆栽美術館蔵の「帰去来」と共に、盆栽界に現存する赤松文人樹の雄として名高いものです。
大家小泉薫先生の旧蔵でしたが、
縁あって数年前に西宮に住する現蔵者の愛樹となりました。
取合せた掛物は、文人趣味的古画を愛する蔵者の大切なコレクション・池 大雅 の名筆。
「水流心不競 雲在意俱遅」その意は、
“ 川の水の流れのままに 心をまかせ 雲と同じに
気持ちをのんびりとさせる"
中国唐代の詩人 杜甫が遺した『江亭』の一文です。
脇飾りは、天龍川の古石「南山」まさに南画の中から出て来たような姿のこの石は、
煎茶の本山と言える黄檗山萬福寺の由来を秘めた 本邦初公開の賓石です。
文人盆栽と言えば、細身で飄々としたイメージですが、真の文人盆栽とは 
“ 静けさの中に心で捉える凛とした厳しさと古厳と言うべき 老感を持った格調高き盆栽 ”です。
力強い大型名木の数々を有した 小泉薫先生 唯一の文人盆栽だったと言えます。
今回の「玄虹会展」は、季節を考慮した このような “目利き唸る席 ”が数多く出陳されます。
僅か二日間の展覧ですが、日本盆栽界の未来の姿は、こんな樹達と展示会に あると思います

【席飾りの美しさ!】

今年は藤の盆栽が、花咲早く、普通は連休の頃まで楽しめるのに、すでに満開となりました!
IMG_5496
先日、海外講演へ出かける前に、雨竹亭の応接室に今年の藤の飾りをしたくて、取り合わせをしてみました。
FullSizeRender
「長尺藤・野田藤」などと呼ばれる薄紫色の降るような藤の花々。
FullSizeRender
この五月雨にも似た花姿こそが、日本人が藤に求める“記憶の中の美”ではないでしょうか。
FullSizeRender
朧月と山河の雪解け水を湛える湖水を思わせる「黒鞍馬石」の景趣見事な天然石。
季節を映し出す取り合わせ飾りは、
誰が見ても その時の自然の“在りよう”を無理なく表現した席が、心に優しく映るものですね。

【枝垂れ桜・床飾りの美】

細身ながら、一重性の可憐な美しい花を見せる枝垂れ桜(富士桜系)が、今年も羽生の庭で咲きました。
IMG_5354
陽春の徴として毎年床飾りを楽しませてくれるこの種、今年も朧月の掛け軸と、
春らしい 稜線美しいのどかな遠山石を“水温む”感を楽しめるように、水盤飾りでの脇飾りとしました。
IMG_5352
IMG_5353
IMG_5355
「樹・石・画」 が一体となり、席中に「季節と詩情」を生み出すのも、床飾りの醍醐味です。
2000点を超える庭の子供達(盆栽)も、暖かい陽射しを受けて、花や芽吹を見せるものも多くなりました。
“ あれも飾りたい、これも面白い” と あちこちと庭を歩き廻る朝が多くなりました。
これも良い運動ですね!


【夜明けを想う 松と長寿!】

明けましておめでとうございます。
今年は銀座に想いを込めて小さな盆栽店を開店させて今年で20年となります。
そして10年前、ゼロからの再スタートを多くの皆様に支えられて雨竹亭を開園しました。
羽生本店銀座店上野店夏季軽井沢店、
そして7年前に「奇跡の輸送」を実現した中国の資本提携店「西安雨竹亭ギャラリー」。
この10年間の歩みは、私が43年歩いて来た盆栽の人生の中でも、
様々な事を教えて頂いた大切な10年だったと思います。
今年は 数えで60歳の還暦となります。
スタッフも総勢23名、若い社員の盆栽業への道筋を示してやらないといけない歳になりました。
「盆栽とは?水石とは?」
と正業に励みながらも "生き方"みたいなものを追い求める私ですが、
会社や次代の若人の為に為すべきことを実践する年に出来たらと願っております。

年の初めに羽生応接展示は、直近で手入れ仕上げをして、
一昨日鉢合せをした 五葉松の根連り、海原に汪々と昇る日輪、脇には 寿ぎの長寿を願う長寿梅。

大政奉還によって近代日本の誕生をみてから150年、明治150年となる本年。
初心に戻って羽生本店は、新年元旦より「新春盆栽展」を 開き、皆様をお待ちしております。
「盆栽はお好きですか?」
この言葉を胸に銀座に立ったあの頃、これからも変わらず皆様をお迎えさせて頂きます。
今年も宜しくお願い申し上げます。

↑このページのトップヘ