雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴45年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 飾り


盆栽展での“賞レース“的な世界とは違う、盆栽水石の座敷陳列と言う、古来よりの“しつらえ“形式で、
趣味を通して、更に深い美意識を希求する事を目的とした愛好会として、多くの趣味家が知る、玄虹会。
その年に1回の展示も、13回を数える展覧となりました。

コロナ禍の中でも、昨年は3月の春季展、今年は晩秋の飾りを行いました。


会場は、第1回よりご理解を頂く、京都臨済宗名刹「大徳寺」の最大塔頭『芳春院』。

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本堂・書院・そして文化財と言える茶室「迷雲亭」と「落葉亭」。
格調高い名樹をはじめ、玄虹会ならではの味わい深い文人調の盆栽、圧倒的な水石群。

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特に床の間5席は、単に掛物を合わせるにとどまらず、席が表現する内面的な“席趣“まで掘り下げた意味を潜ませています。

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海外の盆栽水石のレベルが格段に高くなってきた今、私達日本人が求めた、盆栽や水石の単体の持つ素晴らしさだけではなく、
“空間全体を捉えた総合的な世界観“を、飾りに創り上げることが、これからの盆栽水石趣味の大切なものではないでしょうか?

その意味でも、この玄虹会は、未来への提言にもなる「失われつつある日本の文化」を示しているように思います。



以前より極秘裏に進められていた盆栽業界のシークレットニュース!
著名盆栽愛好家、廣瀬幸夫氏の愛樹(共に国風賞受賞樹)が、京都盆栽財団「慶雲庵」に、譲渡されました。


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2点とも、日本盆栽界を代表する名木、そこには盆栽をこよなく愛する大家同士ならではの“未来の盆栽界“に対する真摯な心がありました。

“自然の芸術作品である盆栽、愛情深き所蔵者と、熟練の腕を持つ盆栽師、
この両面が揃わなければ、時の流れの中で、価値なきものになってしまう“。

盆栽の真髄を体現してきた廣瀬氏の真実の言葉。


“自分の棚場での愛玩は、その盆栽達の歴史の中での一時の出来事、
名樹は志を同じくした人たちによって、その歴史を含めて受け継がれるもの”

古希を過ぎた大家の多くが、同じ思いを持たれています。
海外を含めた、名盆栽の所有意欲は、今までの盆栽界の在り方すら変える勢いが目立つ今です。
廣瀬氏と交友深い「慶雲庵」オーナーの田中慶治氏、“日本の歴史ある盆栽の保護伝承“を目的に創設した財団法人。
共に盆栽を人生後半生の道標とされた大家。

“命あるもの、持つに相応しい方があれば、金や評価は、プロに任せておけばよい”と廣瀬氏。


“未来永劫まで多くの人達に楽しんで頂くことが何より“と田中慶治氏の弁。

盆栽界の流通を正業のひとつとしている私などにとっては、口を挟むことすら失礼にあたる程の、「紳士と紳士の足跡」に、盆栽に生きる者のひとりとして、頭が下がる出来事でした。


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高く売ることより、持つべき人を得た廣瀬氏の安堵、受け継いだ名樹を後世に伝える責務に奮い立つ想いを持たれる田中氏。
お二人共にお付き合いをさせて頂く身として、胸に刻む感慨を得ました。
大観展でこの樹達と一緒にお会いできる事をお待ちしています!


朝夕の冷え込みで、雨竹亭の盆栽達も少しずつ紅葉の色を増してきました。
応接展示室に、“黄葉“のイワシデを飾って、“秋“を室内に運んでみました。

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京都盆栽園老舗、大溝さんが作られた寄せ株立ちの古盆です。
葉性の良いイワシデを若木の頃に選んで作られたのでしょう。
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枝々の細やかな仕上がりも、自然に出来てゆく性です。

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取合わせの掛軸は、塩川文嶺の「散り紅葉」 時雨に打たれて散りゆく紅葉の葉が、過ぎゆく秋の風情をよく表しています。
脇には、峻厳な岳景を見せる揖斐川龍眼石。
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もうそこには季節を感じるものはなく、荒涼とした厳しい景色が現出されています。

里山の雑木林の黄葉、遠く仰ぐ山々には、吹き荒ぶ風、刻々と変化してゆく日本の四季、
誰もが唸る程の盆栽ではなくても、季節を楽しむことは出来ます。
私がいつもひとつだけ大切にしているのは、鉢の中での培養の古いもの、“持込み“と言われる古感です。
樹は年輪を重ねたものは、じっと見ていると、自然界の風雨に長い間晒されてこそ現れる“貌“を見せてくれます。
室内にこんな景色の表現を、出来れば月に2回はしてみたいものです。


【夜長の季節、禅語と盆栽水石飾り!】

澄んだ夜空の月が美しく感じる秋。
盆栽庭園の展示場飾りも、季節の良さで心に染みる楽しみの頃となりました。
連席を芳春院ご住職の揮毫による禅語との取合わせで組み立ててみました。
国風展級の樹でもなく、水石展級の石でもないものが、
“設え“と言う日本文化が培って来た“席の構成が織りなす美の気韻“で、観者に響くものを感じさせてくれます。
三席の禅語の意味と共にご覧下さい。



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「月落露光冷 獨坐松根下」
月落ちて露光冷ややかなり 私はひとり松の根元に居る

五葉松の樹齢約百年の木立。
自然の三幹の生い立つ無理ない姿。
脇には佐治川のくずや石。

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禅林の夜、老松は月明かりの下で夜露の微かな光を見せている。
そんな景色を松と石が描き出しています。
くずや石は、“羅屋“と呼ばれる座禅をする粗末な庵を想わせます。
静けさ極まる禅寺の宵闇の景色が浮かび上がります。



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「鳥啼山更幽」 
鳥啼きて山更に幽なり

文房卓から変化した二段卓に、真柏の幹模様ある文人風の樹、下段に老僧を想わせる八海山石。
脇には楓の数本からなる林間の風景。


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精神性深い真柏、見立て心で感じとる姿石、そして簡略化された中に自然の景を見せる楓。
自然界にある“当たり前の景色“が如何に深いものかを語っています。
“鳥が啼き、山々はその静かな荘厳さを更に深く示している“
まさに、自然の偉大さを伝えてくれています。



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「時雨洗紅葉」 
時雨紅葉を洗う

見上げるようなケヤキの大木立。
樹下には山草の有り様を想わせる風知草。
間もなく訪れる晩秋の紅葉の景色は、この前後の意味を形に表しています。
時雨は人生の苦難を意味して、その時代や経験を超えてこそ、本当の人生の素晴らしさがある
(美しい紅葉)盆栽も酷暑を耐えて私達に目に鮮やかな紅葉を見せてくれるのです。
私達も、苦労を歓迎して日々を前向きに生きたいですね!

【スッキリとした秋飾り!】


盆栽に興味を抱かれる方々、元々の愛好家のお得意様方。
羽生雨竹亭は、盆栽水石を楽しまれるすべての皆様への窓口を自負しています。
庭園の開設から16年。
応接展示室や展示場の屋根・壁も各所に傷みが生じ、8月下旬から9月中旬にかけて、大幅な改修工事をしました。
それに合わせて、工事期間利用が出来なかった庭園の整備と掃除をして、展示される盆栽達も一新しました。

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・・・自分で言うのも何ですが、❗️キレイ❗️になりました。
何が変わった訳でもなく、スッキリと開園当時の雰囲気に戻っただけなのに、とても清々しい気持ちになります。
多少の杭方の打ち直しや、植栽の撤去などをしましたが、全体の掃除を何よりも心がけて、
訪れる方々が、ゆっくりと、のんびりと、盆栽のある空間を楽しんで頂ければと仕上げました。


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庭内の老大樹や季節の盆栽達。
散策する楽しみとは別に、応接室には敢えて“何気ない季節の飾り“を縞ススキで設てみました。

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庭園に並ぶ名樹を前に、“これでもか“と、室内にまで高価な盆栽を飾るよりも、
お客様とゆっくり語らう前には、まるで“日本の野山の秋“がここにあり、その中でひとときを供させて頂いている。
この感覚を大切にしました。
ひとりで朝夕に庭に佇んでいると、言葉にならない“至福の時“を感じます。
何処からか、虫の音が聞こえて来る・・さあ、雨竹亭の秋の始まりです。


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