雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴45年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 飾り

【名盆栽 紅冬至梅の飾り】

国風展の慌しさの合間に、羽生の床の間を飾る古木。
戦前より盆栽界に受け継がれてきた名樹「紅冬至梅」 昨年天界に逝った盆栽大家・小泉 薫 翁 が、生前大切にしていたもの。
IMG_5674
小泉先生との二十歳の頃からの半世紀近いお付き合いの中で、私の別のお得意様の所有となり
「私が庭におくレベルではないので、森前さんのそばにおいてあげて下さい」と言う現蔵者のお気持ちで、
今年も羽生の庭で楚々とした花姿を見せてくれています。
IMG_5675
IMG_5676
松に代表される盆栽、なぜでしょう?梅はその松にも負けない厳とする雰囲気と早春の兆しを現す象徴になっています。
名樹と合わせた「冬朧の月」の掛軸。
IMG_5678
雪空に霞む月は、明けやらぬ春を待っています。
脇には楓の寄植え。
IMG_5677
まだ寒樹の相を見せる木立の数々は、吹く風に肌を刺す冷気が残っています。
人はいつかは『白玉楼の棲人』となります。
還暦を超えると“あの方も逝ってしまった”とため息をつくことが多くなります。
それでも 盆栽は生き続けます。
不思議にその人の面影を残して。
そして徐々に 次の持主の貌へと姿を変えてゆきます。
私のもとにあって、この古樹はいつかは 私のような姿になるのでしょうか?
次なる姿が、故人たちに恥ずかしくないよう、身を律して修練の毎日を送らなければと、非力浅学を恥じるばかりです。
自分より齢を重ねた老樹を見ると、「お前は何でそんなに頑張って生きているのだろう?」と いつのまにか、心が樹に問いかけています。
きっと死ぬまで 問い続けるのでしょうね。

【木村政彦先生の作品を飾って!】

明けましておめでとうございます㊗️
IMG_5011

ご改元初めての新春、神気纏う初春の盆栽はやっぱりいいですね!
羽生の応接室にも新年の飾りをしました。
IMG_4998
IMG_4999
埼玉県の大家が長く愛蔵していた五葉松の根連りを木村先生に暮れのうちにお願いして針金整姿をして頂きました! 
IMG_5007
令和の新年、松を皇居の別名「大内山」になぞらえて、“日出処の國”の象徴としての昇る旭、脇には暁光に輝く大八洲(おおやしま)の山々。
当たり前の設定ですが、「松に日の出、仰ぐ山々」これこそが、日ノ本の徴だと思っています!
オリンピック・水石協会60周年・明治神宮100年祭・そして秋には大徳寺盆栽庭園。
私にとって、穏やかな1年、つまり盆栽と静かに向き合う年はいつになったら来るのやら!!
今年も 宜しくお願い申し上げます🤲
IMG_5008

【今年もあとわずか!】
年賀状用の盆栽飾りの撮影、毎年の恒例ですが、お客様に年の始めのご挨拶となるものです。
新春は何故か盆栽と触れ合う刻として、一番似合う季節のように思います。
IMG_4688
やっぱり松を選びました。
松は遠い昔「枩」と書いたそうです。
IMG_4689
「おおいなる木」樹木の中の王として、どんな時も旺盛な緑を湛えて、大空に向かって扇を広げるように葉を開く・・。
皆さんは門松の由来をご存知ですか?
家の入口に松を立てて
「我が家は このように松が緑を湛えた豊かな家です。どうかふり降りて下さい」
この願いが門松となったそうです。
黒松の名樹・海原に昇る日輪・脇には金色の小槌。
IMG_4690
IMG_4691
来る年がすべての方々にとって幸せな豊かな年になりますように・・
盆栽しか出来ない私の願いです。

【古老大家の人生の縮図】

料理人としても盆栽愛好家としても名高い矢内信幸さん。
“ワシはただのメシ屋のオヤジ”と 言い切る矢内さん。
料亭の庭を改築して盆栽庭園に改装されました。
IMG_4564
日頃から 各部屋に時折の盆栽を「自然体」で飾られ、訪れる皆さんに何も言わずにもてなされている。
IMG_4561
IMG_4562
日々これを繰り返す事、どんなに大変かは、それを是として精進する私達盆栽家が一番わかっています。
IMG_4563
喜寿をまもなく迎えられる中での改装、ご自分の中の盆栽趣味への渇望が、矢内さんを突き動かすのでしょう。
この庭を表現すれば、いつまでも完成しない、まるで「天平の空の下」のような雰囲気に包まれているようです。
IMG_4565
樹の表情に化粧をすることなく、その樹でしか見せてくれない姿を、時間と鋏で創り上げる翁の盆栽観。
個性豊かな翁の美意識には、まだまだ私は追いつきません。

【百日紅】
先日 40年来のお付き合いをさせて頂く 古老盆栽愛好家のお宅にお邪魔しました。
20代の銀座三越の盆栽店を任されていた頃に出会い、相手様も当時40代になったばかり。
盆栽水石の商売はもとより、様々なお客様と出会って、
いろんな事を吸収したり、学んだりしたあの若かりし頃を良く知る数少ない方です。
お勤めを引かれる頃は、大企業の重役になられていましたが、趣味の世界、
そんな日本を背負う程の仕事の大役を担う方など、私にはおくびも見せずに、一愛好家として接して下さいました。
一線を引かれて、神奈川県の里山のような鄙びた農屋を買い取り、盆栽三昧の日々を過ごされる為に、修復をされ、
失われつつある日本の盆栽飾りの文化を中心に、哲学的な晴耕雨読の毎日を過ごされていらっしゃいます。
本来、奥様と老成の終の棲家とされたのですが、漸くその地に移る頃、奥様が病魔で他界。
免許証も持たない古老が、どうやってひとりで暮らされるのだろう?と、お預かりしていた盆栽の移動も当時は、ためらった程です。
“なに、ひとりでやれるようにやるよ”と、達観された言葉を頂くのみの古老。
あれから10余年、晩夏の暑気残る川沿いの小高い邸で、古老は穏やかなお顔で、私を迎えて下さいました。
IMG_3458
玄関には涼をとる溜まり石、名器 古渡青磁の水盤を、さりげなく使われ、三輪晁勢の「翡翠」の掛物。
IMG_3452
添えには 古老ご友人が作られ贈られた白鷺草。 
IMG_3453
IMG_3454
IMG_3455
けして “ひけらかす”わけでもなく、当たり前の飾りの中に、茶の湯ににも似た「客をもてなす」心遣いがにじみ出ていて、
相変わらずの「飾りの名手」だなあと、設えに頭を下げました。
ひとしきりの世間話の後、“森前君が来るので、懐かしい樹を気張らずに設えてみたよ”。
客間(本座敷)に入ると、細身の紅色の百日紅が 楚々と花を咲かせていました。
IMG_3456
IMG_3460
取り合わせの掛物は、林 文塘 の筆による「驟雨に蝉」
IMG_3461
名残の夏を静かにそして健気に生き、
命の謳歌をその花に託す百日紅、俄かの雨にひと夏の命の蝉が飛びゆく様。
脇床には 安倍川のくず屋石。
IMG_3457
“見えぬ人影、過ぎゆく季節、万象の中で繰り返される命”。
“この樹を覚えているかい?”古老の呼びかけに、“そうか!あの時の樹”と思いました。
最近は 社員に普段の出入りを半分任せている方。
銀座の店を苦労の末開店した時、まずはと思い、お世話させて頂いた百日紅でした。
“あの頃が懐かしいね”・・・この言葉の中に込められている古老の様々な想い、
私はどれだけのことができたのだろう、と有難くも不甲斐なさも感じる時でした。
人も時も止まりません。
60の年に京都大徳寺という場に盆栽庭園を挑む私。
ここからなにが私にできるものか?私自身もわかりません。
それでも古老が仰るように、“その日その日を懸命に生きることだよ。”
この言葉をそのまま自分の今におこうと思うひと時でした。
老成にはひとそれぞれの姿があると思います。盆栽も一本ずつ違います。
私も私らしい「明日」を生きようと思います。

IMG_3459

↑このページのトップヘ