雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴45年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 飾り


八月、暦の上では立秋ですが、それは名ばかり!
ここから暑さも本番です。
今年は長梅雨で、地面の温度が昨年ほどにまだ上がっていません。
30〜33度、日本の中でも最高気温の高い羽生では、猛暑となれば、35~38度!
盆栽も夏バテしないように、各所に寒冷紗や日除けの設備を施して備えています。

床の間の飾りも、何処かに暑気を払い、涼を呼ぶものを心がける今です。

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揖斐川石の深山渓谷の一部を切り取ったかのような石が入ったので、飛沫をあげる滝下の景を現す水盤飾りを準備して、それに合わせた掛け物を設えました。

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「滝に鶺鴒」武部白鳳の作。
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峻烈な滝を横切る一羽の鶺鴒。
まるで眼下の揖斐川の岩溜りそばの渓流に棲む獲物を狙うようです。
大型の水盤石、掛け物をやや控えめの大きさにすることで、席全体の間調子を保つようにしました。
脇には五葉松の文人調。

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主石と喧嘩しないように、こちらも弱めの取り合せ。
景趣に合わせて、半懸崖の険しさのある盆栽でも良かったのですが、水石と力がぶつからない事を大切にしてこの樹にしました。
“場に合わせて飾る”・飾りの基本ですが、何度設えても、100点など程遠く、いつも反省を覚える為に繰り返しているようです(笑)

コロナで動きづらい日々。
せめて席飾りの中で、自然の素晴らしさを満喫して頂ければと願っています。
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【コロナなんか疫病退散!】

東京を中心に、終息の見えない新型コロナウィルスの災禍。
鬱陶しい梅雨と豪雨による各地の痛々しい災害。
みんなの心が塞ぐような事ばかりの中、日本の文化と言える「祇園祭り」が58年ぶりの中止になった事は、
この祭りが平安時代の869年、疫病退散を祈願して全国の当時の国数66に因んで、
66基の神輿を祇園社(今の八坂神社)から市中に出した「祇園御霊会」に始まりを記している事からも、是非敢行して欲しかったです。

毎年、この季節には雨竹亭も、1年間育て作った「姫孟宗竹」を飾った「祇園御霊会」を席中に設えます。
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姫孟宗竹は、飾る前に席中の流れを見極め(床が左流れ)無駄なものを思い切って切り取ります。
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掛物は幕末から明治に活躍した、日比野一圭の筆による「長刀鉾」の図。
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祇園祭りの前祭(17日)は23基、後祭(24日)は11基の山鉾が繰り出しますが、その中でも「長刀鉾」は、天に向かって“邪を祓う”とされます。
私も今年は24日の後祭の日まで、この長刀鉾を飾って1日も早いコロナの終息を祈ろうと思います。

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追伸
前回のブログと今回の席飾りの脇飾りに使った、故根岸先生の「塔」ですが、
非力浅学な私は「五重塔」としましたが、拙文をご覧頂く読者様から、
「これは薬師寺の三重塔のスタイル」とご教授を頂きました。
盆栽水石以外の事、知っているようで無知な事多く、こうして私のブログを見て下さる方々から、いろんな事を教えて頂く事、
61歳ですが、まだまだ勉強しないといけない事ばかり!
ありがとうございました😊
皆さんも是非いつでもメッセージ下さい!


私が羽生の地にこの雨竹亭を構える時、土地の選定から慣れない現地での始動に親身になって下さった根岸庄一郎先生。
83歳で今春天寿を全うされました。
15歳で栃木で修行を始めた頃からのお付き合い。数えれば46年の刻を共にさせて頂きました。
盆栽を藤樹園、浜野元介翁の薫陶を亨け、片山一雨先生の“飾り”を高弟として究められた根岸先生は、
盆栽水石の探究愛好会『玄虹会』の発足メンバー。
数多くの席飾りを共に修練し、時には先生のご立派な邸宅の座敷を拝借して、
仲間の皆さんと蹇々諤々の歓談を繰り広げもしました。
12日は先生の83歳の誕生日。
玄虹会の皆さんで私の庭の観音堂に集って、
大徳寺塔頭の芳春院ご住職を京都からお招きして、趣味の仲間での供養をする予定です。
応接室に根岸先生の肩身の水石・水盤・掛物・点景・を設えました。
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瀬田川の梨地石・水府散人旧蔵の白交趾楕円水盤
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小早川秋聲筆「名月図」
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脇には根岸先生自作!の五重の塔。
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飾りの中に人生観まで見つめた先生の精神を少しでも次代に伝えてゆきたいと思います。   合掌

【珍しい「山蔓あじさい」と水石の景趣】

空気が少しずつ潤湿となり、霧雨が降る季節となりました。
滋賀県に住する聖職者、関目六左衛門先生よりのお預かりしている稀少盆栽「山蔓あじさい」を応接室の床に飾り、深みある季節の飾りをしてみました。
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「岩がらみ」に代表される同系の盆栽は、初夏を代表する目に嬉しい盆栽ですが、
原生種である山蔓あじさいは、盆栽として保存されているものが、とても少なく、この樹も雑木盆栽の名手と称えられた故勝俣翁が自身の名で展覧した作品です。
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分け入るような深山の大樹に巻き付きながら生きるこの樹は、懸崖の姿が良く似合います。
今回は、絵ではなく、書と取り合わせてみました。
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明治の能書家として内閣大書記官・元老院議官・貴族院勅撰議員をされた天保生まれの巌谷一六翁の書です。

欲采紫芝去 蹋雲深入林
偶尓逢僲叟 並筇聴水音

※紫芝を采らんと欲して去くに
 雲を蹋(ふ)み深く林に入る
 偶尔(たまたま)仙叟に逢えば
 筇(つえ)を並べて水音を聴く

『紫芝(仙薬の霊芝)を探そうと、雲煙の中を林の奥に入る。偶然にも仙人と逢ったので、ふたり並んで杖をついて水音を聞いている』

脇の琵琶床には、この盆栽と書に記された景趣を扶ける意味で、貴船の渓谷石を取り合わせてみました。
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樹・書・石・が、三位一体となって共鳴する空気感。
“軽きものは深く見つめて飾る”先人達が残した美への求道の精神を伝えてゆきたいものです。


いつの間にか、新緑に目も慣れた今、雨竹亭の応接室も季節の雰囲気が変わってきます。
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日本人は歳時記に謳われているように、春夏秋冬の四季から、12ヶ月の暦、そして二十四節気の移ろい、
果てには日々の日射しや気を敏感に捉えた七十二候(およそ5日ごとに変化してゆく自然観)など、まさに自然と共に自然の中に生活を営んでいます。
私達盆栽家も、日々の手入れや商売に追われながらも、日本人として盆栽人として、
お越しくださる(今はコロナで殆ど誰も来ませんが!)皆様に盆栽・水石・山野草・の美しさ、素晴らしさをお見せする役目を忘れずに努めたいと思っています。

菖蒲の花が咲き始めました。
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端午の節句に剣に見立てた菖蒲を飾り「菖蒲湯」に浸かる。
江戸の昔から続く風俗文化です。
この菖蒲は鉢で4~5年持ち込んだもので、締まった姿に仕上がりました。
この持ち込んだ姿は今年が見頃。
ここまで根が締まってきたら、植替えが必要です。
また数年の培養で、勿論毎年楽しませてくれますが、本当に美しさを見せてくれるのは、その中で植替え前の最後の1回です。
山野草はどちらかと言えば、盆栽と比べて低く見られがちですが、
奥の深いもので、人の手が過度に加えられない事が、審美の心を駆り立ててくれます。
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掛軸は、戦前の名筆・田中以知庵の「飛燕図」つがいで飛び交う姿は、この季節に巣作りに励む燕そのものの風景です。
脇床には安部川石の清冽な滝石。
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水を打った古銅水盤に瑞々しい涼景を見せる石は、立夏を迎えた“先取りの飾り”の好機と言えます。
床飾りの側面棚には、ヤマコウバシの寄せ植え。
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新緑が映える高原の林間が優しく映し出されています。このヤマコウバシは、先日惜しまれながら天国に逝った勝俣先生の作品です。
野山にあるヤマコウバシを寄植え盆栽の代表的な美へと導いた盆栽界の恩人です。
鉢に入れると数十年を経ても太らない、切返しでの造りを嫌うヤマコウバシは、雑木盆栽の“優しい美”をとても良く表現してくれます。
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足下の菖蒲・仰ぐ山々の中にある滝・その向こうの山中の高原の林間。
ひとつひとつが奏でる美が、共鳴して日本の四季の「今」を室に醸し出しています。

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