雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 展示会


日本水石協会との共催の形で、毎年大宮盆栽美術館で開催される本展。
今年も私共がお手伝いとなり、床の間飾りを含めて、美術館に“夏飾り“を設えました。
真・行・草・の3種の床構え、美術館らしいモダンな展示ブース、
それぞれの場面が持つ
イメージを大切に、お世話になっている愛好家の方々にご協力頂きました。


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“真の床“は、静岳石の雄大な台座石。
「白雲抱幽石」の禅語は“黄檗禅三筆“のひとり木庵。
格式の高い様式の床、脇書院・付書院など、石の持つ世界観と共鳴出来る道具合わせが重要です。

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行の床には、渓谷の景色を現す力強い伊予石。
明治の明治の日本画大家・山元春挙の大胆な構図の瀑布(滝)。
墨部分のみで清冽な水飛沫を見事に表した名画に滝下の渓流を想わせる石姿。
水石夏飾りの真骨頂の席。


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煎茶文化に端を発した、盆石の文房飾りを再現した珍しい席。
棚も名工鈴木節斎、水石三点は、“天・地・人“の趣意を持っています。



企画展「山水涼景~水石の世界」】
さいたま市大宮盆栽美術館HP
https://www.bonsai-art-museum.jp/ja/exhibition/exhibition-8110/

【究極の盆栽水石の“夏飾り“の深奥!】

京都「大徳寺・芳春院」を舞台に十数年続く、
盆栽水石の探究趣味団体「玄虹会」の御用掛けとして、お手伝いする中、初めての向暑の展示を創りました。

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大観展の11月下旬,2月から3月の早春期など、季節を替えての展示による研修をしてきましたが、
“一服の清涼“が欲しい季節の展示は、会員の皆さんも含めて、初挑戦のものでした。

愛好家である会員の方々も、国風展や大観展など、普段の趣味家としての展示もなさる中、
この季節での展示、特に道具立てを思案した席創りには、苦労されました。

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おひとりずつ、愛好家としての“個性“もあり、またそれが朋友と共に展覧を楽しむ材料にもなっています。

日本の盆栽業者は、ともすれば、自分の出入りする上級の愛好家を“囲い込む“ように、周りから遠ざける感があります。
私は逆に愛好家同士が、和気藹々として、趣味の世界に親睦の華を咲かせてくれる事を願っています。

盆栽が得意の方、水石が好きな方、名品の数々を所蔵される方、
名もなき草や石を見事に取り合わされる方、そのみなさんが、禅と茶の湯の象徴と言える、大徳寺で、個性豊かな席を創り合う。
それが、私がこの会を興す時願った世界です。

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“相席“と言う、同じ部屋に飾り合う中に生まれる響き合う世界、
ひとりで一室を受け持って、盆栽にしても水石にしても、複数を飾り、それでも季節・世界・力・などが、重複しないように、
ひとつの“趣意“を創出する醍醐味。
いつの間にか“熟練の大家“になられた皆さんの席には、もう私の介添えなど要らぬ深さが滲み出ていました。

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高位の茶人ですら、使用を許可される事の殆どない大徳寺、総長であったご住職の下で、
趣味家として大切な“品位と飾らぬ心“を身につけられた皆さん。

完成などない、盆栽や水石の美意識の探究。
ここからも更に“もう一歩“その向こうに見えるものを、探る道案内役を務めていきたいと思う展覧でした。


コロナ禍で、「日本水石名品展」の主会場としてご協力頂く、明治神宮。

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3年の開催が中止される中、日本水石協会では、名誉会長である同神宮のご配慮で、
内陣回廊での「奉納盆栽展」は、この期間も休まず続けて、
今年も神宮の菖蒲の花咲く季節、名樹の数々と協会選抜の名石群を陳列して、
参拝される内外の方々に、日本文化の象徴としての盆栽・水石をご覧頂いています。

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神宮所蔵の五葉松を中心に、京都国際文化振興財団『慶雲庵』より杜松名樹「東濃の杜」、
九霞園旧蔵・伊予滝石「蒼龍」など、少しずつ人が増える都心の聖地を訪れる方々が、感嘆の声をあげておられます。
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6月7日まで展示される本展。
邪気を祓う帝都の杜で、清浄な空気の中に佇む古樹達に会いに来てください。
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【新しい時代の展覧会❗️】

東京立川市にある“昭和記念公園“、国立の盆栽園がある事で知られていますが、
今回2年ぶりの開催となった『春風盆栽展』に友人の鈴木伸二さんからのお誘いで訪れました。

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現代的な解放感ある建築の中に広がる各種展示、著名名樹から子供達への盆栽のアピール、
そして鈴木伸二さんが企画した「九頭龍の舞」と銘打った、真柏9点が競演した象徴的な展示。

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一般の方々に盆栽の素晴らしさを伝えようとする主催者の熱意が、見事に表現されたとても印象深い展覧でした。
盆栽展と言えば、どちらかと言えば、マニアックな上級者向けの、名品の競い合いが通例ですが、
この展覧は、初めて家族連れで盆栽と触れ合う人達に焦点を当てた“これからの盆栽界が見つめるべき方向性“をピタリと当てたものだと思います。

伸二さんと話しましたが、若い人達、幼い子供達の手をひいたお母さん達、“すごいね!“ や
 “面白いね!“  など、素直な視点での“盆栽との出会い“は、将来に対しての一筋の光にも似た喜びを感じます。
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“森前さんも来年是非参画して下さい“と伸二さんに言われ、また、忙しい日常にムラムラと“楽しい事したい“  という病気が起きそうな1日でした(笑)


【各地で再開されるありがたさ❗️】

手入れなどで交流の深い、福島県吾妻地方。
東日本の五葉松の大半を占める“吾妻五葉“が自生するふるさと。

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土地の愛好家の方々が、年に一度、ご自身の愛樹を陳列するこの盆栽展も、コロナの影響で丸2年、開催できずにいました。
久しぶりの展覧に、それぞれがこの2年間、丹精を込めた盆栽が展示されていました。

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中央の規模の大きい、レベル的に全国を代表する催事も素晴らしいものですが、
各地方で、その地ならではの樹種がそこの方々によって飾られる・・本当はこれが“盆栽を作って飾ってみよう“とする原点のような気がしました。

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来訪した時、丁度、福島市長もいらして、“来年はもっと大きい会場でやりましょう!“と声をかけていらした事が嬉しく思いました。

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※撮影時のみマスクを外していただきました

趣味のマニアックな集いではなく、公共の会場で一般の多くの人達に、盆栽の素晴らしさを見て頂く、大切な事を教えてくれた時間でした。


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