雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴44年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 展示会


【エスキューブ雨竹亭 最大ブース】

日本盆栽界 最高峰の展覧「国風盆栽展」が開幕しました。(2月16日まで)
これに併せて 日本盆栽業界の大手が勢揃いする『立春盆栽大市』が、
上野グリーンクラブ(小僧時代から関わる私には東京盆栽倶楽部と言ってくれた方が馴染みいいのですが)でスタートしました。
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小店も毎年この本館の2階に大市最大ブースを開設させて頂いています。
海外からの盆栽熱の波で、市場の動向(価格帯)が微妙に変化する中、
本来の愛好家の皆様にお楽しみいただけるイベントブースになるよう心がけてみました。
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欲張りなもので、名樹も飾りたい、名鉢、名石、風雅な盆栽、等々、
お見せしたいものが限りなく、いつも“とりとめの無い”雑多な品飾りになってしまいます(笑)
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クラブの目の前の 銀座店の支店「池之端店」も、クラブの行き帰りにお楽しみいただければと、
エスキューブ最年長の古美術界出身の山下さん(古渡り!)が、お越しをお待ちしています。何はともあれ、盆栽界の祭典、観るも買うも 楽しんで下さい。

【売店用盆栽 手入の嵐‼︎】

国風盆栽展に併催される上野グリーンクラブでの大盆栽市
小社も例年通りに2階定場に、最大ブースを設けさせて頂きます。
12月・1月の 流通売買が 予想以上に多く、同展売店用に準備していた盆栽の半数が、ご成約! 
さあ、品物が足りない!と言っても、急ぎ仕入れをすれば高く付くし、
雰囲気の良いものは先に売れてしまっている! 思案の末、よし!
皆んなで未完の盆栽の手入れと、植え替え鉢合わせをすることにしました。

総点数1000~2000点の鉢を保有しているのですが、いざ鉢合わせをしようと思うと、中々ピタリときません。
毎年のことですが 鉢合わせは 本当に頭を痛めます。
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それでも 盆栽と向き合うこの時間は、不思議に 意外と一番楽しい時間かもしれません。
多くの皆さんの前に飾られる時、「ほんのすこしでも、“おめかし”をしてあげたい」
この気持ちが、樹といつのまにか対話をしているのでしょう。
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勿論 その中には、次代の盆栽作家の頂点へ行くこと間違いなしの、鈴木伸二先生の作品もありました。
私が30年ほど前に彼に紹介したものです。
縁あってつい最近 羽生に来ましたが、どこが悪いわけでも無いのですが、“気に入らない”・“納得にまで至らない” と言った感じでした。
“何がいけないんだろう?” しばらく自問自答している間に、何となく答えが見えてきて、新たなる改作 へと踏み切りました!
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盆栽は自分の心の中にある世界を求めて、一心不乱にに対峙して創作している時が、一番ですね!


【床飾りと 座敷飾り  精神性の高さは同じ】

11月に京都で開催された盆栽文化の真髄「玄虹会展」(於・大徳寺 芳春院)は、
すでにこのブログで2回 報告させて頂きました。(今井氏舩山氏
今井氏は床の間飾り・舩山氏は一室飾り。
芳春院全山を使った展示は、ともすれば床の間や一室など、目立つ席が人の目を引いてしまいますが、
会員の皆さんが求めているのは、そんな優劣ではありません。
ひとつの台座石に心を込めて展示される会員、一樹に森羅万象を感得して出陳される方。
朋友が会して互いの席を相照らしながら、自身が描けぬ美を堪能する。
そこに生まれる探求こそが会が求めるものだそうです。
業界団体が組織する大展覧会は、近年「賞争い」の様な空気が、トップレベルの中に感じられます。
良識ある愛好家達は、趣味者であるが為に大きな声を上げるでも無く、静かにその姿を傍観されていますが、
私達プロはその現状と未来に対する危惧を強く持たなければいけないと痛感しています。
その意味でも、この「玄虹会展」は、趣味家のあるべき姿が何かを教えているように思えます。
盆栽水石の内容は当然のことながら、それ以上に
この趣味を愛する者とはどの様な「人」であるかが何よりも問われる事を。
趣味とは 金銭や価値の優劣で 事が左右されるものではないと思います。
飾られた作品によってその人物に対する敬意が生まれる様な空気を最上としたいものです。
玄虹会の各席はそれをよく教えてくれます。


【大徳寺での 室礼盆栽飾り】

五葉松 名樹「天帝の松」の所蔵者として 有名な 福島市在住 舩山秋英氏は、
盆栽水石の研究愛好会「玄虹会」の当初よりの発起メンバーでもあります。
先月の京都「日本盆栽大観展」で 最高賞を受賞された事は、
来月の月間『近代盆栽』でも大きく巻頭で取り上げられます。
大観展が開催された京都で時を同じくして前述の「第九回玄虹会展」が、
定例会場となっている大徳寺 芳春院で開催されました。
ここで舩山氏は、盆栽界の展示とは その趣向を変えた
日本文化の中に創出された「室礼」を基本とした古典の盆栽座敷飾りをされました。

氏の故郷である吾妻山系から山採りされた五葉松の屈曲懸崖、瀬田川の梨地石、
そして氏の代名詞と言える真柏の古樹。
三点のバランス構成は見事さはもちろんのこと、
この会は"その飾りの見えぬ向こうに込められた席主の想い"が 展示すべてに発揮されています。

本席は自然界に生き抜く五葉松、幹を折り曲げながらも生きる姿は艱難辛苦を超えて生を全うする人生そのもの。
この"自然界"を仰ぐ神仙棲み暮らす山々(瀬田川石)の遥かに人智を超えた『神の化身』と言える姿の真柏。
自然から神仙世界へと、連席が奏でる精神の深みを一室で見事に表現されました。
展覧会的な会場での盆栽鑑賞が、日常的となった今、
この様な 日本文化の様々な要素を内包した盆栽展覧は、
未来の日本盆栽界の最も大切な部分になってゆくと思います。


【京都大徳寺『玄虹会展』】

展覧会的な盆栽水石文化が 主流を占める昨今ですが、
海外とりわけ中国盆栽界の圧倒的な台頭は、盆栽や水石(鑑賞石)をその本体のみで楽しむ意味で、
本家とされる日本を凌ぐのは質量ともに時間の問題となっています。
その中で日本の盆栽水石は、世界に対して"何を発信すべきなのか" は、
この展覧に込められていると思います。
日本は古来より盆栽や水石を屋外で楽しむのではなく、室内に飾り、
そこに醸し出される空気感そのものを趣向の第一として来ました。
「侘び寂び」「幽玄」「もののあわれ」など、500年前に日本文化が生み出した美意識の根幹が、
盆栽水石にも感じられるのが、この展覧のような舞台です。
9年前のこの会の発足以来 御用掛けとしてお手伝いをさせて頂いてきた私。
今回の席の中で特に印象に深いものを数回に分けてご紹介します。

「ひとつの石が生み出した 景趣の広がり」

この席が飾られた大徳寺芳春院の大書院は、加賀百万石前田家による寄進で、
戦前はのちの宰相となった五摂家筆頭 近衛文麿公が京都帝国大学に学んだ時の寄宿所でもありました
(近衛家も芳春院の檀家様です)
本書院脇の"次の間"的なこの空間は、飾り上手の腕が試される素晴らしい室です。
今回は玄虹会最年少の会員 今井和貴氏が受け持ちました。
主飾りは瀬田川の梨地石。
盆山の美を示すこの石に「月に雁」の静かな茶掛。
そして脇床には、山柿の飄逸とした姿。
さながら「木守」と言うべき 侘びた風情を見せる実姿。

石には色も季節もありません。
しかし、それを飾る"道具立て"によって、自然の深い景趣が創出されます。
「威張らず、誇張せず、静けさという大切な衣装を纏った席」
これが日本人が探し求めた 審美の世界です。
名木名石のみが 美を伝えるわけではありません。
一木一草一石が、美意識高い人の設えによって、真の美を生み出すのです。

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