雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴42年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 展示会


【静謐の極み 玉堂・伊豫石・五葉松】

大徳寺塔頭「芳春院」の別室 書院に設えられた席は、
本床に水石飾り、対面の毛氈飾りが、一体となった"室ひとつを舞台"とした深い"考案"がなされた展示です。

本床は、川合玉堂筆「三更」月に落雁、題の三更は深夜"子の刻"つまり11時〜2時の名。
暗闇で見えぬ夜空の月明りに雁の姿、
画中には描かれていても目では見えぬもの、眼下には人影も無い瀬の岩場。
遠くには杣人の庵らしき粗屋。
まさに"侘しさ"漂う景色が浮かんでいます。
利休に代表される茶人の精神を表した藤原定家が残した名句
「見渡せば花ももみじもなかりけり、裏の苫屋の秋の夕暮れ」
そこに存在する景色が「寂びがれた景色」それを観て人が喚起される「侘び心」
この相対こそが俗に言う「わびさび」の真実です。
ひとつの言葉として使われる現代ですが、両者は具象と心象の相対なのです。
本席はこのもっとも日本的な美意識を水石飾りによって見事に表現された好例と言えます。

対面する五葉松は細身の根連り。 
あくまで細く百年を超える樹齢を経ても盆中で肥培させず、老幹の揺れ立つ姿の林立が、
かの長谷川等伯の名画「松林図」を彷彿とさせる程の精神美を纏っています。
盆栽は人の手によってその姿が形作られてゆきますが、
長い刻をかけることで"人の介在と存在を消し去る瞬間の美"が現出されることがあります。
この樹はまさに今、香り立つその美をみせています。
傍に置かれた木彫の「笠と杖」作者田中一光師の銘は"旅の終わり"。

神韻漂う松林は辿り着いた"悟りへの道"、長い求道の旅の末、旅人が旅装と解いた安住の地。
盆栽と添景が共鳴して描き出す更なる"奥の世界観"。
本室は世界に誇る日本の盆栽水石趣味の深奥を感じる見事なものです。
脱帽!


【第8回「玄虹会展」 盆栽・水石飾りの頂点】

明治・大正・昭和前期に花開いた"座敷飾り"における盆栽水石の美の追求を今に伝える「玄虹会展」が
今年も臨済宗大徳寺派本山の塔頭「芳春院」で開催されました。
戦国武将 前田利家の妻 "おまつの方"が建立したこの名刹は今年創建400年を迎えました。
本堂から始まり、近衛家寄進の大書院、院全体も非公開寺院ですが、
とりわけ奥に位置する茶室「迷雲亭」「落葉亭」は茶人すらが拝見を憧れる文化財。
海外よりの盆栽熱が高まる中、日本の真の盆栽水石文化を物語る最高の世界を3回に分けてご紹介します。
今回は大書院の格調高い飾りです。
鎌倉期の阿弥陀如来の来迎図に貴重盆栽の長寿梅。
神韻纏う古筆の仏教的気高さと二度三度と一年に咲く長寿梅を "めでたさ"の気品で取り合わせた見事な調和。
脇床は「北の御所」と謳われた京都大覚寺伝来の天龍川石 銘「泰山悠遠」
霞棚は法隆寺伝来の百萬塔。
人々の住み暮らす万象の自然界である雄大な山々は本床の精神性を扶けています。
棚上の百萬塔は静謐な古作の中に秘められた「もの言わぬ古雅の美」と如来像を共鳴させています。

主飾りの趣意、そして道具立の吟味の深さ、本展の盆栽美・水石美への求道の深さを痛感させられた一席です。


【関西開催の最大盆栽展 名品と飾りの競演】

二十代前半の頃より三十年以上参加している大観展も、
今は飾りの審査「大観賞」や水石協会事務局長として「水石協会賞」などに関わるものが私の仕事となっています。
それでも出品作品の頂点を競う「内閣総理大臣賞」や「文部,農林大臣賞」は注目されます。
今回は総理大臣賞と文部大臣賞が甲乙付けがたい拮抗した作品となりました。
結局真柏が総理大臣賞、五葉松が文部科学大臣賞となりました。
私のお気に入りの展示席の数点もご紹介します。

 
【400年の古刹で来月盆栽水石の至高の展覧】

臨済禅 大徳寺内にある 塔頭 芳春院は、戦国大名 前田利家の妻"おまつ"が建立した四百年の古刹です。

「日本の盆栽水石文化の正統を学び伝える」数寄者の集い「玄虹会」の年1回の展覧が行われています。
今年も京都の秋を彩る「日本盆栽大観展」と同じ11月19日から2日間
芳春院全室に"身が引き締まる"程の盆栽水石飾りがされます。 
私共エスキューブ雨竹亭も、初回より勉強を兼ねてお手伝いをしていますが、
盆栽水石の文化が世界規模に広がる中、歴史ある古刹の建築美の中で繰り広げられる"深奥の美"は、
日本が最も捉えるべき文化だと思っています。 

今回は会場の下見とご住職へのご挨拶に伺いましたが、いつ見ても素晴らしく、
禅寺として普段一切の拝観をさせない名刹(大徳寺塔頭の殆どが拝観禁止です)は、
しんと静けさの中にあり、心が洗われるようでした。 

ご住職の希望で"期間中盆栽水石を見たい方のみが良い"との考えで、
招待券持参の方のみが入れます。
ご希望の方は、雨竹亭までお申込み下さい。
券をお送りします。

 
【秋の盆栽展のさきがけ! 木村正彦先生の作品に感動! 】

東京の秋の盆栽展の第一弾として、上野グリーンクラブで開催された「東京展」「瑞祥展」に伺いました。

久しぶりに拝見する瑞祥展は、ひとつの樹種で行われる盆栽展という
他には例を見ない樹形の多様性の楽しみがありました。

同時に開催された東京支部主催の「東京展」は
さすが帝都の長い盆栽趣味の歴史を思わせる幅広い展示で、
"愛好家と出入り方専業者"のあり方に感心させられるものがありました。 
びっくりしたのは名匠木村正彦先生が、東京展にご自分の作品を自身の出品として参加されていたことです。
最近は私共との交流や国風展などの扱い手入れがほとんどで、
公の場に作品出品をされることが少ない先生です。
齢を重ねての作品作りに取り組む姿勢に頭が下がります。 

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