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盆栽歴47年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 展示会


コロナ下でも無事に閉幕した「第96回国風盆栽展」 
数々の名樹が一堂に揃う祭典は、その頂点の作品数点に“国風賞“の栄冠が与えられます。

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私達半世紀近く盆栽界にいる者達には、古来より名樹として名高い真柏が、
この国風賞を受賞された事は、選考審査に携わる方々の審美に対する良心を称えるべき事と喜んでいます。

さて、今回は数多くの真柏が海外の愛好家の方々より出品され、どれもが樹形素晴らしく、ダイナミックな存在感を会場に示していました。

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それらの樹を出品された方より「国風賞の真柏はどこが良いのか?よくわからない」と言う質問を受けました。
なるほど質問の通り、多くの皆さんが、国風賞の真柏に対して“この樹がここにある真柏群の中で一番?“と思われたでしょう。

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幹太く大型で、捻転する舎利芸の圧倒的な姿を持つ真柏が多数出品される中で、どちらかと言えば大人しいこの樹が何故栄えある大賞なのか?

私なりに想う意味をお伝えします。
造形という意味からすれば、今回の国風賞を凌駕する真柏は複数あったと思います。
別の言い方をすれば“もし、この樹達がここから年月を重ねれば“と想うものばかりでした。
日本の盆栽家達が最終的に求める盆栽の美と言う要素には、人が寄り添って過ごした年月、
鉢の中でどれ程の歳月を経た事で顕れる“表情“を重んじるものです。
盆栽は、人と自然が寄り添い、語らい、共に過ごしながら、「刻」と言う至高の導きが、真の美しさを創出してくれるものです。
その中には、表面的な“綺麗さ“を超えた、“人為では得られないもの“、
“自然が創り上げた“畏れ”にも似た、静かな厳しさが存在した樹“が、眼前に顕れた時、
ある意味の醜さを含めて初めて到達する“古雅“や“古感“、その総合的な美が、“美しい“と言う表現になるのです。

例えれば、若く演技も上手く顔立ちも綺麗な役者、その役者が歳を重ね苦難の人生を歩み演技に自然に“静かな重厚さ“を出すようになる。
皆さんはどちらが名優と思いますか?

学問優秀で眉目秀麗な若き禅僧。
人生を重ねて身を細めて、それでもすべてに達観して静かに佇む老僧。
どちらが名僧でしょうか?

盆栽は本来は、点数制で評価するものではありません。
しかし、展覧会では、大賞を選考するにあたり、その方式を行います。
日本の盆栽家達が、何よりも大切にするのは、この「刻を重ねた雅格」です。

日本盆栽作家の頂点、木村正彦先生に、この点を伺ったところ、
「私の作品は、幹を曲げ、根をたたみ、舎利を削り、まさにその樹が気の遠くなる歳月の中で受ける天災にも似た厳しい刻を一瞬で与えているのです。
その姿を評価してくださる事は、嬉しいですが、樹が最終的に名樹としての佇まいを醸し出すのは、
ここから日々の雨風を受け、四季を繰り返し、創出から四半世紀以上を経た後でしょう。
その時は、私が“創った“と言う人間の業にも似た、自然界には存在しないあってはならない“醜悪さ“が消えているでしょう」との弁。

盆栽は“輪廻“を繰り返すものだと思います。
創出から完成へ、そこから歳月という河に磨かれる玉のようなものです。
玉と盆栽の違いは、“生き続けている“事です。玉のように至高の完成を見られるのは一瞬です。
人が悟得の境地に近づけば、老齢となり生涯を全うする様に、盆栽が老成した姿をそのままに維持は出来ません。
また新たに創り直しをしなければなりません。
しかし、それは無からではありません。
一度老成して見事な姿を経たからこそ、次なる姿が深く誕生するのです。

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海外の皆さんが出品下さった真柏達は、“未来の名樹“として、ここからの老成を楽しみたい逸樹なのです。


6日に開催された第96回国風盆栽展も、13日より二部のスタートとなりました。

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一部に劣らぬレベルの高さ!
どちらが良いとなど言えませんが、私は個人的にはこのニ部の方が、グッと落ち着いた深みを全体の展示構成に感じます。

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松柏盆栽が席巻する時勢が続く中、季節の移ろいを感じる雑木盆栽や、
早春の自然を謳う“旬の盆栽“が減少してきているように感じます。

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中品盆栽・小品盆栽は、私の範疇を超える程の出来映えと内容!
感服するばかりです。


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コロナ禍オミクロンや、天候の不順など、来場者の減少が目立つ今回ですが、
100年の刻を続ける展覧会の中には、こんな時もあるものと、開催できたことを素直に喜んでいます。


山河に横たわっていた一塊の石を、人が“見立て心“で、美術芸術作品にも劣らぬ日本人の美意識の結晶とした“水石“。
これを美の殿堂と言える東京都美術館で開催すると言う悲願を実現して9年。
今年で9回目となる『日本の水石展』が始まりました。

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今回は、総席数150、特別出品の主座には、大徳寺塔頭「孤篷庵」所蔵の非公開盆石、小堀遠州、松平不昧公に由来を持つ石が公開されました。

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約250年前の不昧公による茶会に飾られた記録を有する歴史深い一石。

加えて京都に本拠をおく盆栽財団『慶雲庵』の紅幸太郎石など、賓石の数々が、披露れます。

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古来よりの陳列作法である座敷飾りの設備を作り、掛け軸を配した席飾りは、この展覧会ならではのものでもあります。

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国際的な人の往来が、国や文化の“特色“と言うものを薄めてゆく現代、
このような時代だからこそ、日本人の水石観が、大切なのではないでしょうか?

コロナ禍の開催、自然のような多くの参観は無理でしょうが、
美術館と言う広く安全な環境で、“日本“を堪能してみては如何でしょうか!


【第9 日本の水石展】

場所:東京都美術館 公募展示室2F-4

会期:2/142/18

時間:AM9:30PM5:30(入場PM5:00まで)

初日は式典のため10時開場

入場料:500

(団体10名様以上 400)
(
大学生・高校生;400円、中学生以下無料 


第96回国風盆栽展がコロナ禍の中、感染対策を尽くして開幕になりました。

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2部制の展示で、8日~11日13日~16日に分けて、3百数十点の選考を経た名品が、東京都美術館に飾られます。
1部の展示品の中で、特に優れた盆栽に与えられる「国風賞」は、
糸魚川真柏の老樹ともみじ樹品種「清玄」の大樹、そして見事な棚飾りの小品盆栽でした。

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甲乙付け難い逸品の数々、特に中品盆栽のレベルの向上が目に付きます。
そして、中国の愛好家の方々からの出品が一段と増え、真柏の名樹群は、過半数が中国の方々でした。
今回より審査基準もより精度を高めたものとなり、鉢の吟味などは、
日本盆栽界が本来より重視していた“古樹には古鉢を“の教えを継承したとても良いものだと思います。

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松柏盆栽に対して、雑木盆栽の入選が少ない事も残念で、少しずつでも、多種多様な盆栽が出品される事を願っています。


国風盆栽展の会期等、詳細はこちらから↓↓
https://www.bonsai-uchikutei.com/news/article/855.html


1月下旬に行われる、国風展の選考審査会。
毎年の事ですが、愛好家の方々からお預かりした盆栽達を、
最終的な手入れ、鉢合わせ、葉色を出す為の温度調整等々、木村先生のアトリエは、選考審査会を前に名樹で溢れています。

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鉢ひとつ、苔の仕上がりひとつで、選考点数に響く厳しい審査。
名匠は八十路を超えても、その名に奢る事なく、真摯に盆栽に向き合っています。

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“審査は人がする事、私はそこに送り出すまでが仕事“と、あくまで謙虚に。
それでも今年も雨竹亭の分も含めて45点の申込み!
日々、怠る事なく盆栽と過ごす先生。
誰も追いつけない姿をいつも感じます。

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