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盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 展示会

【玄虹会展に込められた、日本文化の美意識】

第10回展となる「玄虹会展」・ 盆栽水石文化に深い造詣を持たれる趣味者達が集い、
日頃の愛好の成果を、同朋と“感嘆相照らす”心で、
更にもうひとつ奥深い“向こう”に見える美と人間性を高める同好会の展覧として、毎年1回 開催されています。
通常は、この会の趣意を理解下さる京都名刹「大徳寺」塔頭『芳春院』のご住職のご好意で、同院で春秋どちらかで行われています。
今回は、秋展が続いた数年から春展へ移行する間の年として、
京都国際文化振興財団『慶雲庵』理事長・田中慶治様が所有する 名亭での披露となりました。
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「わらびの里・霞中庵」戦前の資産家が、京都の山里に“隠れ家”的な数寄屋建築を残されて、
戦後長く料亭として使用されていたものを、正業の関係で田中氏が引き受けたものです。
下足番を備える外門に掲げられている「霞中庵」の扁額は、横山大観の筆・しかも篆刻は北大路魯山人! 
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門をくぐり、庭内を進むと、深山渓谷を想わせる素晴らしい庭。
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山間に溶け込むように作り込まれた樹々・石組・苔・そして 平安の頃から歌われた「音羽川」が庭内を流れて、
その斜面を清冽な音を立てて流れる滝姿の妙。
渓谷の傾斜地に築かれた数寄屋建築は、各部屋ひとつとして、同じ趣向は無く、一室一室がまるで工芸品のよう。
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半世紀を超えてこの「隠棲の栖」を保存された歴代の所有者に頭が下がります。
展示の中身をご紹介する前に、この霞中庵が私に教えてくれた“飾り”に潜む美の源流が、
日本の美意識の根幹と言える「影あればこその光の美しさ」を伝えたいと思います。
最近の盆栽水石の展示会・展覧会は、会場形式が主流です。
時代の流れで、これも仕方がありません。
誰もが参観しやすく、搬出入が便利なのは当然の利です。
しかし、日本の盆栽界が創出した美は、盆栽だけの世界で生まれたものではなく、
古くは室町期に発生した「東山文化」の中で、御伽衆・連歌衆の手によって誕生した室礼による書院飾りにその起源を見ることが出来ます。
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ひとつの空間、直射の無い“間接光”の部屋に現出される、人と空間と対峙する実像。
そこに「幽玄」という、言葉には表しづらい「韻」を 感得するに至ったのです。
今回の「霞中庵」における盆栽水石飾りも、その本流と言える在り方を、見事に表現したと言えます。
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照明では響きを示さない仄暗い室の中に浮かび上がる玄なるもの、ただ自然の造形物や園芸創作があるのではなく、人のその時の心の在りようが、そこに感じる小宇宙なのです。
今回は総論を写真と共にお伝えして、次は幾つかの席について申し上げます。


菖蒲咲く明治の杜、日本各地より精選された名石が、一堂に集う「日本水石名品展」も、
58回の展覧となりました。

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特別出品の『豊公由来唐石』『甲斐武田家由来盆石』などを筆頭に、

精神性深い雅石・涼を呼ぶ水盤石など、神宮社務所講堂と本殿東廻廊に六十余石の圧巻の展覧です。

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先週の「奉納盆栽展」に引き続きのこの催事は、訪れる海外からの大勢の方々を魅了しています。

(明治神宮は都内屈指の観光地としてNO1の名所です)
盆栽作家として、海外にも知られる 春花園 小林國雄 理事長をはじめ、

鈴木伸二氏、蔓青園 加藤崇寿氏、そして国風賞受賞愛好家の方々も、水石家として 名を連ねています。

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10日までの大展覧、名品を無料で観賞できる絶好の機会です!

ご覧下さい!


【“山懐の隠れ家”で 開催された 盆栽水石飾りの深奥!】

春、または秋に 京都 禅林「大徳寺・芳春院」で開催されてきた、数寄ごころ豊かな盆栽水石愛好家の集い「玄虹会」。
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今回は所を替えて、同じ京都でも 山科の山々に囲まれた“隠れ里”の風を色濃く残す地に、
戦前より保存管理されている名亭『わらびの里・霞中庵』を舞台に、名刹での設えとは またひと味違う 部屋飾りを試みました。
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初夏の風薫る季節、打ち水のされた名庭と、各室で現出された詩情溢れる静謐幽玄の世界。
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圧倒的な名木だけが、求められるのではなく、一木一草に 潤湿な“緑陰”の感受を楽しむ季節を、
どの様に 設えるかを研修する目的もあっての展覧でした。
何回かに分けて、心に残る席飾りをご紹介させて頂きます。
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帝都の杜、明治神宮の楼内東廻廊で、毎年恒例の「奉納盆栽展」が、1日より始まりました!
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一の鳥居・二の鳥居・楼前鳥居 を更に本殿に進んだ 内陣と言える 場所に盆栽を奉納陳列して18年目の展覧です。
四十代前半、この展覧を企画開催した理事時代のあの頃が懐かしく思い出されます。
今回も 神宮の盆栽「五葉松」を中心に水石協会が選出した全国からの18点の名樹達が、参詣に訪れた多くの方々を迎えています。
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近年は、東京NO.1の観光スポットとなったこの明治神宮。
朝から海外からの圧倒的な観光客の皆さんが、展示された盆栽に感嘆の声をあげて、カメラを皆々掲げていました。
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この奉納盆栽展は、5日まで開催され、引き続き『第58回 日本水石名品展』が行われます。
その際、盆栽の若干数が延長展示されます。
まもなく創建100年を迎える明治神宮。100年前、全国からの“献木”でこの杜が創られたことを、どれだけの方が知っているでしょうか?
ある意味では、この杜を築いた人達の自然に対する畏敬の念が、日本人の心底にある盆栽に対する精神とも言えます。
そんな気持ちを持って展覧を楽しんでください。

【上野公園で開幕!】

サツキ展として 一番古く権威ある展覧が、上野公園噴水広場で開催されました。
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若き頃、サツキ界の頂上を駆け回っていた頃以来、本当に久方振りに上野の会場へ伺いました。
当時は公園の下にある不忍池畔で行われていましたが、今は社団法人となったサツキ協会は、様々な難関をクリアーして、
上野公園の誰も使用の許可が取れない噴水広場で見事な作品を披露しています。
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銘木の部・名花の部・共に 絢爛な花姿は息を飲む程でしたが、
それ以上に美しい花々を咲き誇させる培養の素晴らしさには頭が下がります。
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盆栽とサツキは別々の世界と捉われがちですが、多くの盆栽家・水石家が、
サツキを趣味とした所から 始めたと言います。サツキは私達の趣味の登竜門なのです。
初めて見る新花の美しさは60歳を間近にした今、「またサツキをやってみようか?」と心動かされる想いを持ちました。
素直に「綺麗だなあ」と思う自分がそこに居ました!

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