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盆栽歴42年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 展示会


【井浦さん  お父さんの形見で受賞!】

グリーンクラブの第42回作風展は、長野県須坂市の勝樹園 井浦貴史氏が、
昨年逝去された「真柏山採りの父」と謳われたご尊父の遺品で見事 大賞を受賞されました!

私も十数年来の友人で 亡き先代にも大変よくして頂きました。
以前、満を持して挑んだ真柏名樹で"無冠の三位"となった時、「自分の実力不足です」と
謙虚な姿勢を貫いた彼の栄誉を本当に心からおめでとうと言ってあげたいです。

三十代の技量高き盆栽家が、衆目の評価を得て活躍される事は、
還暦の足音が近づく私達の年代から見ても、とても嬉しい事です。
先日、共に中国の旅をした木村正彦先生も賛助出品で、
得意の真柏石付きを展示されていました。
76歳にして精力的な創作活動には頭が下がります。
もうひとつ、大徳寺「玄虹会」でいつも素晴らしい自作の盆栽を披露される矢内先生の出入り方である、
大溝さんが初出品、文人部門で初受賞!

お二人とも大徳寺での仲間であり、五葉松文人も内容素晴らしく、
後輩の栄誉に心温まる日となりました!


【1億円の盆栽「天帝の松」を中心に構成デザインスタート!】

来年開催の"盆栽のオリンピック"「第8回世界盆栽大会」における
埼玉アリーナ「日本の盆栽水石至宝展」はおそらく近年における最高レベルの盆栽水石展となります!
この展覧会で"特別ブース"が4席用意され、一席21,5m×5mと言う、巨大展示ブースとなります。
名木での展示で、15~20点は飾れるスペースです。
4席の内2席は日本水石協会、京都国際文化振興財団、
つまり水石の大ブース(これも水石協会の役員の皆さんと設計・展示構成をしなければなりません!)と
(財)高木盆栽美術館を継承された田中慶治先生の大コレクションという、公的なものとなります。
残り2席が日本を代表する愛好家として実行委員会の指名で決定しました。
そのおひとりが福島県の舩山秋英先生です。
「森前君にすべて任せる」の一言。
私が生きている間には次の日本開催は無いと予想できる今回、
"訪れる世界の方々にメイドインジャパンの盆栽をどの様にご披露しよう?"
とここから思案の知恵熱の毎日が始まります。
舩山先生の出品予定の1部をご覧下さい。
また、この進行具合はお届けしたいと思います。


【高砂庵 岩崎大蔵先生遺愛の松  本堂に展示!】

大徳寺芳春院は戦国大名前田利家の妻「おまつの方」が400年前に建立した名刹。
今回の玄虹会では、ここに高砂庵 岩崎大蔵先生遺愛の五葉松が出陳されました。

堂々たる威容を誇るこの樹は岩崎先生が所蔵数百の四国五葉松の中でも特に愛されていたものです。
現在は日本アルプスの麓、水清き安曇野の里で玄虹会会員 等々力義明先生が大切に愛蔵されています。
本堂西の間に朋友達の水石・盆栽を前室にして襖奥に設えられました。
樹齢250年、圧巻の太幹、ごまかしのない幹芸と葉性など、
まさに質実剛健な禅寺に鎮座する戦国大名の生き様の化身のようです。

座敷飾りというと、洒落た空間有美な盆栽に掛軸・添景を連想されるでしょうが、
盆栽1点を卓の吟味、そして飾られる「場の空気」を読みとってただひとつに集約して飾ることも、
"ここに始まりここに至る"究極とも言えます。
席主は前述の風情ある季節飾りにおいては甲信越を代表される名手です。
今夏、僅かに体調を崩されようやく本復となる間際での出陳熟考、
同朋の方々に大徳寺まで本人が行けずとも"我が身の替わり"にこの大樹を準備されました。
迫力ある大型名木を出陳する意気込みを「私は元気だから」と友人達への心のメッセージにされたのでしょう。
展覧会などで授賞を競う楽しみ他に、この様な"友へ伝える心"によって飾られる座敷飾りも
日本の盆栽愛好家の素晴らしい一面ではないでしょうか。

【水石三種  水盤石・紋様石・姿石】

先月京都で開催された「第36回日本盆栽大観展」での水石部門受賞三石は
近年においてとてもレベル高いものでした。
水盤石は八瀬の巣立真黒、青銅地紋の中深長方という
"ウブ石を深めに受けとめながら水盤の厚さを感じさせない"絶妙な取り合わせです。
動きあるジャクレの中に想像させる深山奥深くにある岩清水の源流風景。
乗り出す右方の滝口とも取れる石相の巧みさ。
水打ちによって感得できる「景色と石と水気」が一体となって現出される
水盤石の真骨頂が見事に表現された一石です。
紋様石は下方に渋味ある紅色の石質が晩秋の古都の山景色を想わせ、
東山に天高く浮かぶ高月が清涼なる空気を石中に喚起させています。
姿石は安部川のくず屋石。
日本昔話や山里の農屋を彷彿とさせるこの石は
屋根・軒・底面・すべてが天然ウブ成りであることに驚かされます。
どっしりと重みを感じさせる屋根・僅かに見える軒中の姿。
戦前盆石趣味に名を残された高島子爵の旧蔵石です。
日本水石協会の事務局長を務める私としても、水石の発祥地京都でこの様に
内容深き水石が飾られる事をとても嬉しく思っております


【静謐の極み 玉堂・伊豫石・五葉松】

大徳寺塔頭「芳春院」の別室 書院に設えられた席は、
本床に水石飾り、対面の毛氈飾りが、一体となった"室ひとつを舞台"とした深い"考案"がなされた展示です。

本床は、川合玉堂筆「三更」月に落雁、題の三更は深夜"子の刻"つまり11時〜2時の名。
暗闇で見えぬ夜空の月明りに雁の姿、
画中には描かれていても目では見えぬもの、眼下には人影も無い瀬の岩場。
遠くには杣人の庵らしき粗屋。
まさに"侘しさ"漂う景色が浮かんでいます。
利休に代表される茶人の精神を表した藤原定家が残した名句
「見渡せば花ももみじもなかりけり、裏の苫屋の秋の夕暮れ」
そこに存在する景色が「寂びがれた景色」それを観て人が喚起される「侘び心」
この相対こそが俗に言う「わびさび」の真実です。
ひとつの言葉として使われる現代ですが、両者は具象と心象の相対なのです。
本席はこのもっとも日本的な美意識を水石飾りによって見事に表現された好例と言えます。

対面する五葉松は細身の根連り。 
あくまで細く百年を超える樹齢を経ても盆中で肥培させず、老幹の揺れ立つ姿の林立が、
かの長谷川等伯の名画「松林図」を彷彿とさせる程の精神美を纏っています。
盆栽は人の手によってその姿が形作られてゆきますが、
長い刻をかけることで"人の介在と存在を消し去る瞬間の美"が現出されることがあります。
この樹はまさに今、香り立つその美をみせています。
傍に置かれた木彫の「笠と杖」作者田中一光師の銘は"旅の終わり"。

神韻漂う松林は辿り着いた"悟りへの道"、長い求道の旅の末、旅人が旅装と解いた安住の地。
盆栽と添景が共鳴して描き出す更なる"奥の世界観"。
本室は世界に誇る日本の盆栽水石趣味の深奥を感じる見事なものです。
脱帽!

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