雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴45年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 展示会


展覧会と言えば、盆栽の素晴らしさ・水石の神韻・をそれぞれに楽しむものが普通となっていますが、
日本の盆栽水石界は、明治の夜明けから戦後まで「座敷飾り」を主体とした“連席”による構成がほとんどでした。
ひとつの名品がみせる風趣や格調、これが続いて設える事で奏でる“もうひとつの深さ“を観者が“読み取り”
そこに現出した自然観・精神美・を、合わせて楽しみ語り合う事を至上としました。
この考え方を現代に踏襲して次代に日本の盆栽水石趣味の真骨頂を伝え残そうと努めているのが、数寄者の同行会「玄虹会」です。
3月の初旬に開催された第12回展、名刹・京都臨済宗大徳寺派総本山の最大塔頭『芳春院』での展示で印象深かった席をご紹介します。
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本堂に飾られた水石と真柏。
寂味の見事な真柏は、盆栽家としてプロを志す者ならば誰もが一度は現物を観たいと願う名樹「かりゆし」
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糸魚川真柏の座敷飾りに合う逸樹として昭和から平成まで「本物の真柏盆栽の極み」と謳われたものです。
現在、真柏盆栽を展示に飾る場合、針金整姿を施し、舎利を磨き化粧塗りをして、水吸いもきれいにする。
そんな事を嫌うようにこの樹は人と自然と“刻”が紡いだ姿を何よりも自然に大切にされているのです。
本来、真柏美は、人智の届かない厳しい自然観が内包されている事を第一としていますが、
近年は造形的な“綺麗さ”が重視され、本来そこに現する神韻や“畏れ”にも似た『美しさ』が忘れられがちです。
「綺麗と美しい」は、微妙に違うのです。
この真柏「かりゆし」を右に中の手は、打水を施した渓谷美をみせる八瀬巣立真黒の雅石。
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名高い旧岩崎財閥(三菱グループ)の総帥・岩崎小弥太の旧蔵石です。
合わせられた水盤は、中国清代に作られた白交趾『珠佩』の名器。
そして左には佐治川の堂々たる泰山を思わせる山形石。
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これは日立製作所創業者、久原房之助翁が愛したもの。
それぞれに日本の宝と言える文物ですが、これを威を張るわけでもなく、飾りの中に溶け込むように設える・・
この“使い切る”事こそが、趣味家としての醍醐味と言えるのです。
真柏が示す自然観と命、連綿と続く景色としての渓谷、遙か向うに仰ぐ山姿。
時代が変わろうと人の在り方に変化があろうと、何も変わらない自然の有り様。
3点の美が共鳴し合って響く連席の韻。
盆栽水石の深い楽しみの参考にして頂ければと思います。

【盆栽水石・究極の世界観】

盆栽水石の趣味世界を、“道”としての美意識のレベルで見つめる同好会「玄虹会」
京都禅林名刹「芳春院」を舞台に今年も静謐な展示がなされました。
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コロナウィルスの惨禍で、開催も危ぶまれましたが、たとえ無参観でも季節の飾りに込めた美を研鑽しようと言う会員の皆さんの想いのお手伝いとなりました。
文化財級の歴史的堂宇と茶室をご提供下さるご住職には感謝しかありませんでした。
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繰り広げられた各席の“設え”は、文豪谷崎潤一郎が著した『陰翳礼讃』に込められた日本人の美に対する精神的な意味と言うものを、無学な私にも感得できるものでした。
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ひとつひとつの盆栽水石の素晴らしさ・「連席」と言うひとりの方が複数のもので一席を設える世界・自然観の表現の裏側に込められた禅の教えにも似た“人が見つめる生き方”の想い。
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会期を片手に堂宇を巡る皆さんには、敢えて解説などをせず、観者の捉える見方を大切にしてほしいと言う会の思いがありました。
毎回、繰り広げられる世界観の中に、いつも新しい発見を感じます。
形骸化する盆栽展・水石展。
業界人として反省多き現代ですが、こんな展覧がずっと続いてくれる事を心から願いながら、至高の場に佇みました。
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【徳川慶喜家旧蔵石を首座に大展覧!】

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「水石文化を美術館で」この願いを胸に、現在の展覧会を企画したのが8年前。
上野寛永寺「黒髪山」永青文庫「重ね山」西本願寺「末の松山」など、日本水石文化の中で、燦然と輝く名石を迎えて回を重ねてきた本展。
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お陰様で 172席の出展。
国内はもとより海外からの出品も30席以上!(これが日本の愛好家も叶わない?程の良石!)
昨年までは、ポスターに迎える名石を、美術館や名刹などの蔵石としていましたが、
今回からは、民間に秘蔵されている歴史的名石としました。
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根尾菊花石・銘「皇山・おうざん」
“ 最後の将軍” 徳川慶喜家が伝承したもので、最近まで個人宅に秘蔵されていたものです。
令和初の日本の水石展、東京オリンピックの年に、咲き誇る菊の花々の石。
事務局長として、非力浅学の私が、理事諸兄を中心に多くの皆さんの応援でよくここまで来たなあ!と感慨深いものがあります。
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盆栽に比べれば、まだまだ周知が足りない水石の文化、もう少し頑張りたいと思います!

【木村先生も出展!】

私達 羽生雨竹亭のある街で、この地域の盆栽協会支部展が開催されました。
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地域の盆栽愛好家の皆さんが、ご自信の手で丹精を込めた作品達、
先日の国風展とは違った「盆栽を愛する」人達の息付きに心温まる展覧でした。
市民プラザの一角を借りて、会員のみんなで手作りの設営。
愛好家の方々を導きながら共に頑張っているのは、私達の大先輩の鈴木さん。
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お年はなんと93歳!
ホントに頭が下がります。
展示には季節を楽しむキブシや椿、何気なくオシャレな樹達。
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会員の皆さんとお茶を頂いている時間は、盆栽人のひとりとして「ここに足元がある」という事を本当に感じる時間でした。
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雨竹亭も当日は月2回の盆栽教室。季節的に植え替えなど、生徒さんも忙しそうです。
いつのまにか、雨竹亭も皆さんの注目を頂く店となりましたが、
業界の仕事、会社の運営、お得意様のお手伝い、日々 駆けるように過ぎてゆきますが、
盆栽園がしなければいけない「地域の盆栽愛好家の皆さんへのご奉仕」をもう一度振り返る機会になりました。

今回充実の内容!!

前期展に続いて、国風展の後期展も無事に終わりました。
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今回の展覧は、近年の中でもでも充実したレベルだったと思います。
さすがに50数点の秀作が、残念ながら落選して出品できなかっただけのものでした。
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ただ私の個人的な感慨ですが、還暦を過ぎて日本盆栽界の頂点にある国風盆栽展を振り返って思うことがいくつかありました。
ひとつが 羽生の庭にも時々いらっしゃる八十路を目前の老愛好家が、今年国風展に残念ながら落選された事です。
勿論 審査の方々の 席数による当落はやむを得ない事だと思います。
ただ、この方も私のお客様と言うわけではないのですが、昨年まで9回連続で入選され、今年出展されれば10回連続による協会表彰を迎える方でした。
「え!彼の方が落選したの?」と耳を疑いましたが、
樹の内容の如何は別にして、愛好家として温厚で心優しい方の残念な結果には、心が痛みました。
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不肖 私も盆栽協会の代議員のひとりとして、以前の総会でも
「長年 盆栽界に尽くされた人品素晴らしい愛好家の方々には、当落という制度とは別に、枠を設けて 扱い業者を含めての“事前審査”みたいな形で、長年の功労を含めた席を限定して用意出来ないか」
と問うた事があります。
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私は盆栽というものは、本来 人が良い悪いというものを審査して判断するものではなく、愛好家としての品格、
出入り方のその方への名誉や審美をお手伝いする責任を何よりも大切にすべきと思っております。
盆栽協会の筆頭として、理事長職を奉職される青蔭先生などは、愛好家としても、
古刹を預かる僧籍に身を置かれる方としても、奢らぬ心優しい品格あるその姿を尊敬するばかりです。役員の方々のご苦労も、代議員になり本当に良くわかります。
私はどちらかといえば、人情に弱い方なので、公的な場における判断の難しさには向かないと思います。
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展示されているすべての盆栽は、どれも立派で ここの選に漏れた作品も おそらく僅かな点差だったのでしょう。
何か愛好家の皆さんが、みんな喜んでくれる形があればいいものですね!

いつも思います。私達 プロは、日本盆栽界の専業者としての「あるべき姿勢」をいつも自分の中で糺していないといけないと。

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