雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴45年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 展示会


コロナ災禍の収束が見えない東京。
私共の銀座店「雨竹庵」も、お客様・スタッフの罹患を防ぐことを考え、4月1日よりの休業が今も続いています。
その中で再開した銀座最大のコンセプトビル「GINZA SIX」で、盆栽の展示のお誘いがあり、
7月1日より、ギャラリー会場で大小数々の盆栽をご覧頂いております。
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外出自粛など、人々の日常の生活がままならない中、“盆栽で何か役に立てる事はないものか?”と、思案していた時のお誘いでした。
『夏を感じ、星を想う』きっと有名なコピーライターの方が考えてくださったのでしょう。
日本人は季節を五感で感じ取り、日々の生活の中で自然に接して生きてきました。
都会は本物の自然に触れる機会が少ない所、何気ない“生きる命”を見過ごしてしまう、まさに“東京砂漠”と言う言葉が昔流行りましたが、
今のウィルス災禍は、人が移ろう季節の素晴らしさを忘れ失うようなものを感じます。
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夏を感じ星を想う・・いいですね! 
そんな情緒って、生きてゆく中でとても大切だと思います。
それが、盆栽で皆さんに提供できたら・・。
名もなき小さな命から、数百年を小さな鉢の中で生き続ける命まで、
無機質な都会の中で、ひとりひとり、感じ方は違っても、盆栽から“何か”を想ってくれれば・・とても嬉しいです!
(9日まで展示・小店の銀座店長、島田君が常駐しています。是非見て下さい)


【日本と言う国の安寧を願って本殿回廊に名品を展覧!】

コロナウィルスの影響で、本当は6日から歴史的な大展覧(神域参道に120mの仮展覧場・100点)が来年に順延となった明治神宮。
水石協会として、役員でのご奉仕の気持ちで、愛好家の皆様のご協力を頂いて、
奉納盆栽水石展を6日〜10日、本殿東廻廊で開催となりました。
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26点の精選した名木・名石、自然の美しさに守られた日本、その自然界が創り出してくれた盆栽と水石。
神前に飾り、ご参拝の方々が嬉しそうにご覧なる光景は、苦労を吹き飛ばしてくれます。
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お忙しい中をこんな時だからと、初日の神前参拝にご参加頂いた島村会長(元・農林、文部大臣)には、飾らぬ平易なお人柄と共に感謝の限りです。
海外から訪れる方が殆どいない神宮の静謐な空気、これも私には良き日本の姿に映りました。
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業としての盆栽水石の日々、その中にこのようなご奉仕の場と刻を頂くことの、有り難さを感じる展覧でした。


展覧会と言えば、盆栽の素晴らしさ・水石の神韻・をそれぞれに楽しむものが普通となっていますが、
日本の盆栽水石界は、明治の夜明けから戦後まで「座敷飾り」を主体とした“連席”による構成がほとんどでした。
ひとつの名品がみせる風趣や格調、これが続いて設える事で奏でる“もうひとつの深さ“を観者が“読み取り”
そこに現出した自然観・精神美・を、合わせて楽しみ語り合う事を至上としました。
この考え方を現代に踏襲して次代に日本の盆栽水石趣味の真骨頂を伝え残そうと努めているのが、数寄者の同行会「玄虹会」です。
3月の初旬に開催された第12回展、名刹・京都臨済宗大徳寺派総本山の最大塔頭『芳春院』での展示で印象深かった席をご紹介します。
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本堂に飾られた水石と真柏。
寂味の見事な真柏は、盆栽家としてプロを志す者ならば誰もが一度は現物を観たいと願う名樹「かりゆし」
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糸魚川真柏の座敷飾りに合う逸樹として昭和から平成まで「本物の真柏盆栽の極み」と謳われたものです。
現在、真柏盆栽を展示に飾る場合、針金整姿を施し、舎利を磨き化粧塗りをして、水吸いもきれいにする。
そんな事を嫌うようにこの樹は人と自然と“刻”が紡いだ姿を何よりも自然に大切にされているのです。
本来、真柏美は、人智の届かない厳しい自然観が内包されている事を第一としていますが、
近年は造形的な“綺麗さ”が重視され、本来そこに現する神韻や“畏れ”にも似た『美しさ』が忘れられがちです。
「綺麗と美しい」は、微妙に違うのです。
この真柏「かりゆし」を右に中の手は、打水を施した渓谷美をみせる八瀬巣立真黒の雅石。
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名高い旧岩崎財閥(三菱グループ)の総帥・岩崎小弥太の旧蔵石です。
合わせられた水盤は、中国清代に作られた白交趾『珠佩』の名器。
そして左には佐治川の堂々たる泰山を思わせる山形石。
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これは日立製作所創業者、久原房之助翁が愛したもの。
それぞれに日本の宝と言える文物ですが、これを威を張るわけでもなく、飾りの中に溶け込むように設える・・
この“使い切る”事こそが、趣味家としての醍醐味と言えるのです。
真柏が示す自然観と命、連綿と続く景色としての渓谷、遙か向うに仰ぐ山姿。
時代が変わろうと人の在り方に変化があろうと、何も変わらない自然の有り様。
3点の美が共鳴し合って響く連席の韻。
盆栽水石の深い楽しみの参考にして頂ければと思います。

【盆栽水石・究極の世界観】

盆栽水石の趣味世界を、“道”としての美意識のレベルで見つめる同好会「玄虹会」
京都禅林名刹「芳春院」を舞台に今年も静謐な展示がなされました。
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コロナウィルスの惨禍で、開催も危ぶまれましたが、たとえ無参観でも季節の飾りに込めた美を研鑽しようと言う会員の皆さんの想いのお手伝いとなりました。
文化財級の歴史的堂宇と茶室をご提供下さるご住職には感謝しかありませんでした。
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繰り広げられた各席の“設え”は、文豪谷崎潤一郎が著した『陰翳礼讃』に込められた日本人の美に対する精神的な意味と言うものを、無学な私にも感得できるものでした。
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ひとつひとつの盆栽水石の素晴らしさ・「連席」と言うひとりの方が複数のもので一席を設える世界・自然観の表現の裏側に込められた禅の教えにも似た“人が見つめる生き方”の想い。
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会期を片手に堂宇を巡る皆さんには、敢えて解説などをせず、観者の捉える見方を大切にしてほしいと言う会の思いがありました。
毎回、繰り広げられる世界観の中に、いつも新しい発見を感じます。
形骸化する盆栽展・水石展。
業界人として反省多き現代ですが、こんな展覧がずっと続いてくれる事を心から願いながら、至高の場に佇みました。
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【徳川慶喜家旧蔵石を首座に大展覧!】

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「水石文化を美術館で」この願いを胸に、現在の展覧会を企画したのが8年前。
上野寛永寺「黒髪山」永青文庫「重ね山」西本願寺「末の松山」など、日本水石文化の中で、燦然と輝く名石を迎えて回を重ねてきた本展。
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お陰様で 172席の出展。
国内はもとより海外からの出品も30席以上!(これが日本の愛好家も叶わない?程の良石!)
昨年までは、ポスターに迎える名石を、美術館や名刹などの蔵石としていましたが、
今回からは、民間に秘蔵されている歴史的名石としました。
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根尾菊花石・銘「皇山・おうざん」
“ 最後の将軍” 徳川慶喜家が伝承したもので、最近まで個人宅に秘蔵されていたものです。
令和初の日本の水石展、東京オリンピックの年に、咲き誇る菊の花々の石。
事務局長として、非力浅学の私が、理事諸兄を中心に多くの皆さんの応援でよくここまで来たなあ!と感慨深いものがあります。
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盆栽に比べれば、まだまだ周知が足りない水石の文化、もう少し頑張りたいと思います!

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