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盆栽歴45年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 展示会


【幻の祖母五葉松!初公開‼️樹齢250年!】

国風展併催の上野グリーンクラブ『立春盆栽大市』も、後半「国風後期展」に合わせて、
小店2カ所のブースの“プレミアムブース“を、飾り替えしました。

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前期展で飾った「木村正彦先生、初公開巨大真柏」も、予想に反して(失礼しました)ご成約になり、
もうステージの役目は充分に果たしたのですが、売約品を自慢そうに飾っておく事は、昔から大嫌いなので、
中日に下げて、これも初公開の五葉松を中心に飾りました。


250年の歴史が克明に残っている「幻の祖母五葉松」。

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本当は3月に開園する「大徳寺内・芳春院盆栽庭園」の柿落としに飾ろうと思っていましたが、ひと足早く、帝都での披露とさせて頂きました。
正直、今回の国風展は、コロナの影響で、殆ど売れないと思っていましたので、
こうして高額の盆栽達が、いらっしゃるお客様達のお心を掴んで下さったこと、本当に嬉しいです。


また、映像に写っているイワシデの大型盆栽は、私が20代より関わった斯界の誰もが知る名品。

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旧蔵者のご好意で、30年ぶりに私の棚に帰って来て一年。
鉢を入れ替えて、これも大徳寺で披露しようと思っていましたが、友人の盆栽園主人が国風展にご一緒にお連れされた愛好家の方が、
“今回の大市の中では、この樹が一番だね”と仰って下さって、お求め下さいました!
なんと30代の方❗️
しかも「どうぞ大徳寺の開園に飾って下さい。引渡しはその後で良いですから」と。
ありがたいことです。

社会も盆栽界もコロナで苦しい刻の中、それでも盆栽が心を癒してくれると思って下さる方々。
毎日“今日が一期一会“と思って、出会いを大切にしたいものです。


【展示作品の重厚さは、前期を上回る⁉︎】

桜が咲くような暖かい日が続く中、第95回国風盆栽展も、後期展(13~17日)が始まりました。
前期展にも増して、展示作品の内容は高く、私見ですが後期展の方が全体としての内容が厚かったように思います。(中品・小品は前後期共に互角⁉︎)



特に国風展の中で総合的に優れた樹に与えられる「国風賞」は、やはり圧巻の存在感でした。


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しかし、私は世界の盆栽展の象徴的存在のなっている国風展は、選考の上入選した名品の数々を鑑賞する場であって、
どれが1番良いか?と言うような考えは不要だと思っています。
勿論、審査と言うものは、人が行うものなので、各自の思考によって優劣は多少違うのは当然です。
但し、多様化する盆栽美が世界に広がる中、上位の選考対象となった作品は、どれも素晴らしく、
“これが最高のもの“と、一般の観客が判断してしまう材料になりやすい事に、危惧も覚えます。

古典的な“刻と鋏“で仕立てられた古盆、名匠の技が生み出した絶品、風趣風韻を心に感じる味わい深い樹、
盆栽の美に対して捉える幅は広く、もっと深い意味で言えば、その人ごとの人生観が反映する部分もあると思うのです。

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ただ単に、超が付く名品に感嘆の声を挙げるのではなく、それぞれひとつひとつの盆栽が持つ「表情」のようなものを、
楽しみ、学び、ここまでに辿り着いた、盆栽達の“生きた姿“を味わう事こそが、国風展の真のあり方ではないでしょうか。

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でも、コロナ災禍の中、こうして100年の歴史を持つ展覧会が、
日本はもとより世界の盆栽を愛する愛好家の方々と、それを支える専業者の協力で、途切れる事なく、開催された事に感謝したいです。


【神話の銘を持つ神居古潭石「高千穂」特別展示❗️】

東京都美術館において、水石界の象徴的展覧会となっている「日本の水石展」が、コロナ下の開催が危ぶまれた中、無事に開幕しました。

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東京都への来訪を積極的にお勧めする時とは言えない中でも、昨年を上回る総席数177石の出品をいただいた事は、
事務局長を預かる身として、本当にありがたい事でした。


全国各地に愛蔵されてきた名石の数々が、一堂に展覧される国内最大規模の水石展。
今回は特別出品としてポスターにした石は、戦前より名石として名高く、帝国議会への展覧、
そして“天覧“(陛下がご覧になった事)の栄を受けた石、神居古潭、銘「高千穂」が選ばれました。

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天孫降臨の神話の舞台としての地、高千穂の名を持つこの石は、水石家の誰もが知るものですが、近年は公開の機会を得る事がありませんでした。
コロナ下の都心、気高い名を持つ石を首座に据えて、無事に開催が行われる事を願っての
出陳です。


他にも、廣瀬自在庵氏の協力で、郷男爵、旧三菱財閥岩崎家、等々の旧蔵歴を持つ、日本の代表的な名石12点を一挙展示する企画展示も注目の的です。

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外出を控えて、自宅での時間が多い中、自然界の造形である「石」の持つ美が、

多くの人々の心を癒やしてくれることを願っての展覧会になりますよう、祈りたいです。


開催が危ぶまれた第95回国風盆栽展ですが、感染予防を徹底した対策の中で、無事に開幕しました。

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15歳の時からずっと見続けて来た国風展ですが、搬入日でもないのに、これだけ人影の少ない会場は見た事がありません。

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それでも却って、ゆっくりとゆったりと鑑賞できる利点もあって、100年近い歴史を止める事なく出来た事を喜びたいと思います。


入選展示された各種盆栽、栄えある国風賞受賞樹、どれも手入れが行き届いた素晴らしいものでした。

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大型真柏や小品盆栽の国風賞が、中国の愛好家の方などが、受賞されているのを拝見すると、国風展も時代で変化してゆく事を感じます。


都内が普段の喧騒を忘れたかのような静けさの中、盆栽を眺める事が、
こんな時何よりも心の健康となる事を、もっと広く伝えたいなあ、とつくづく思いました。

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1月25日、上野グリーンクラブで、第95回国風盆栽展の選考審査会が行われました。
各地・各盆栽業(日本盆栽協同組合員)の取扱いによる300点を超える申込作品。
愛好家の方々が、出入り方のプロと手を取り合って、作出に励まれた樹達は、どれも甲乙付け難い逸品ばかりです。
それでも、コロナの影響で、東京都美術館に飾れる席数は、削られて、審査会では、厳選など点数性によって落選してしまう盆栽もあります。

私が修行中の頃は、数百点が落選する事が当たり前の様な国風展でした。
当時数百万円の樹が落選する、出入り方が愛好家本人に“残念な結果でした“と伝える時の辛さは、私も経験があり、
“二度とこんな思いはお客さんにさせない“と心に誓って励んだものです。
特に落選の報を伝えた時“そうか、ご苦労だったね“と、何も言わずに受け入れて下さった方々の事は、今も鮮明に覚えています。
その“想い“が、その後の私の糧となったのです。

今回も名匠木村正彦先生と共同で、審査会に挑みました。


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2ヶ月間にわたる手入れ・仕上げ・準備の末に、今回は無事に29点のすべてが入選となりました。
ありがたいです。
そして、その中に木村正彦が手掛けた“未公開真柏名樹”が、栄えある「国風賞・国風展全体の中で、特に優れた作品に与えられる賞」に選ばれました。

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間もなく81歳になる先生の老成した術によって世に送り出した真柏。
一年程前から先生の棚場で拝見するたびに“久しぶりに見た秘蔵未公開の樹だ“と、見入っていました。
そしてこの樹の出品者が、海外の方と聞いて驚きました。
“ハッタリ“の効いた樹などが、海外でもてはやされるのはわかります。
しかし、この樹は私達半世紀近くこの世界に身を置く者が見ても、真柏盆栽として、真柏芸術として、第一級の名品なのです。
簡単に言えば、“目利き“と言われるような旦那衆でなければ、所有していない樹です。
先生に伺うと、
“とても目筋の良い方で、たとえ国風展に受かるような樹でも、余程の内容を感じなければ買わない人なんだよ“
と言われ、“そんなレベルの人が海外に生まれてきたんだなあ“と感慨深いものがありました。

ここで、考えるのは、プロとして多くの盆栽を扱わせていただく中で、
国風展級といわれる多くの愛好家の方々でも、1000万円を優に超える盆栽を求める方が少なくなって、高額名盆栽の多くが、海外流出している事です。
(輸送の合法・非合法も問題です)

『トヨタのレクサスのグレードの高い車種を買う程度の金額、それで「日本の伝統的文化遺産」が買える。』


この比較価値観で海外の富裕層の方々が、日本の名盆栽に注目するのです。
考えてみれば、今回の木村先生の真柏も山採りされてどれ程の年月が経っているのか、わからないほどです。
そしてその山採りも今は素材の枯渇と規制で、新たな原木素材を見つけるのは不可能です。

私はよくスタッフに言います。
私達が日常取り扱っている10~30万円の盆栽の半分以上が、“過去の盆栽を愛した人達が、守り伝えてくれたからこそ、今ここに生きている”ものなんだと。

新作のモダンアートと称される抽象絵画が、名盆栽の数倍の価格で取引される令和。
私達日本のプロ盆栽家は、次の時代の在り方、次の時代への遺産の伝承、の方法を真剣に考えなければいけない時に来ているように思います。

自由市場の流通は、資本主義の原点です。
しかし、失えば二度と取り戻せない遺産達、このジレンマをどうすべきか?
少し考えさせられる時になりました。

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