雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 水石


大宮盆栽美術館で開催した『山水涼景・水石の世界』は、
私が事務局長を務める一般社団法人・日本水石協会との協同主催による企画でした。
東京オリンピックも佳境を迎える中、水石協会長である、島村宜伸先生と小林國雄理事長と、同館に伺いました。

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※記念写真撮影時のみマスクを外して撮影しております※

平成天皇陛下(現・上皇陛下)のご学友でもあった島村先生は、農林水産大臣、文部大臣を歴任された日本に尽くされた方。
87歳になる今もご健勝の日々、初めて訪れた盆栽美術館での水石展を観覧され、
庭内の吉田茂元首相、岸信介元首相、の盆栽達をご覧になって楽しまれました。
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先生の出品された水石の席、今回の展示を任された身として、喜んで頂いた事にホッとしました。

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五輪の花咲く菊花石、昇る日輪の掛軸、左に仏教の三重塔、右に神道雅楽の蘭陵王。
山水景情や侘び寂びに代表される水石飾りですが、“ハレ“と言う舞台としての飾りが、盆栽と同じく水石にも顕される事を伝える席にしました。


大宮から45分、お忙しい先生に初めて羽生雨竹亭へご案内しました。


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日頃より親しくさせて頂いている、河田晃明・羽生市長も共に出迎えて下さり、短くも思い出深い時を過ごしました。
羽生のスタッフ達にもひとりずつ丁寧に笑顔の挨拶をしてくださる島村先生。
昼食も、僅かに残されたものを、箸を使って丁寧にひと隅に寄せて箸を置かれる見事さ。
人の上に立つ方のあるべき姿を学んだように思います。



7月16日~8月11日、私達〈一般社団法人・日本水石協会〉が、毎年協力している『山水涼景~水石の世界』が、大宮盆栽美術館で開催されています。


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この内、後期展(7月30日~8月11日)の展示内容を預かり、例年のように“ギャラリートーク“つまり、展示内容の解説を行いました。
但し、今回はコロナ感染予防の為に、観覧の方々を前にした解説ではなく、
私のような年代には難しくて分からないのですが、ズームと言う、皆さんのお顔が見えないパソコンの前での解説となりました。

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少しでも水石の美と深さを伝えられればと思い、一般の方でもわかりやすい解説に努めました。
小さな石に求める日本の自然の景色、禅僧や茶人が求めた沈潜した観照の美、そんなものを上手く伝えられたか?
まだまだ未熟内省身を恥じています。

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美術館のYouTubeで、その時の内容が見られるようです。
是非皆さんもご覧になって下さい。





大徳寺「孤篷庵」小堀遠州の“綺麗寂び“の世界!すべてが重要文化財の中に、松平不昧公の盆石‼️】

芳春院盆栽庭園を預かって100日余り。
ここと同じく、寺内の各塔頭は、それぞれ室町期からの歴史を連綿と繋ぐ“日本文化の玉手箱“のようなもの。
庭を預かった程度で、他の塔頭へノコノコと行くような事は、
宗務総長としてのお立場を預かる芳春院の和尚様に対して失礼があってはならず、
1年2年と経つうちに、ご縁を頂ければ幸いと思っていた矢先、
萩の著名陶芸家である“三輪休雪“先生との縁で、小堀遠州公が創建した非公開名刹「弧篷庵」にお邪魔させて頂く機会を得ました。


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約束していた時間に山門を潜り、庫裡の玄関で声をかけると、奥より数えて19代となるご住職、小堀亮敬師が出迎えて下さいました。

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水石の世界に身を投じて四十数年、数々の伝承名石に登場する小堀遠州公。
その総本家と言える弧篷庵に、ご住職と約束して伺う事になるなんて、思ってもみませんでした。

もとより非公開の寺院、しかも建築を含めて室内すべてが重要文化財!
それをご住職の案内で、ひと部屋ひと部屋と、襖を開けながら奥へ奥へと案内頂きました。
襖に描かれた水墨画は狩野探幽が、この寺の為に描いたものがそのまま!
雪見障子のような造りの向こうに、日本の茶庭園の本なら必ず載っている「忘筌」!

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そして、この“小さくも大きい“茶庭を眺める書院こそ遠州公直筆の扁額「忘筌」が掛けられた部屋!
仄暗い室の中には、外からの間接的な光が、天井にそして壁に、、これが遠州公が趣向を凝らした“綺麗寂び“の空間‼️

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次なる室に案内されてびっくり!
付書院風の棚に飾れた漆盆に載せられた古石!

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「ここを再興してくれた、不昧公の石です。森前さんが来るので飾っておきました」!!

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遠州公の茶の湯の精神を受け継いだ、松平不昧公。
茶人として名高い歴史上の人物の遺した水石界未公開の盆石!
ここは、水石文化の歴史の玉手箱です!

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私ひとりの為に、時間をとって下さり、奥様よりお薄茶まで頂き、
私にとってこの日は、芳春院盆栽庭園を預かる責務の中で生まれた、新たな1ページの日でした。
長いのご無礼がないように、お暇をしました。
ここに息づく日本の美と精神に共鳴下さる、愛好家の方々を、いつかはご案内させて頂ける事を願って。


【神話の銘を持つ神居古潭石「高千穂」特別展示❗️】

東京都美術館において、水石界の象徴的展覧会となっている「日本の水石展」が、コロナ下の開催が危ぶまれた中、無事に開幕しました。

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東京都への来訪を積極的にお勧めする時とは言えない中でも、昨年を上回る総席数177石の出品をいただいた事は、
事務局長を預かる身として、本当にありがたい事でした。


全国各地に愛蔵されてきた名石の数々が、一堂に展覧される国内最大規模の水石展。
今回は特別出品としてポスターにした石は、戦前より名石として名高く、帝国議会への展覧、
そして“天覧“(陛下がご覧になった事)の栄を受けた石、神居古潭、銘「高千穂」が選ばれました。

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天孫降臨の神話の舞台としての地、高千穂の名を持つこの石は、水石家の誰もが知るものですが、近年は公開の機会を得る事がありませんでした。
コロナ下の都心、気高い名を持つ石を首座に据えて、無事に開催が行われる事を願っての
出陳です。


他にも、廣瀬自在庵氏の協力で、郷男爵、旧三菱財閥岩崎家、等々の旧蔵歴を持つ、日本の代表的な名石12点を一挙展示する企画展示も注目の的です。

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外出を控えて、自宅での時間が多い中、自然界の造形である「石」の持つ美が、

多くの人々の心を癒やしてくれることを願っての展覧会になりますよう、祈りたいです。


関東地方・上州群馬を代表する盆栽愛好家、廣瀬幸夫先生(号・自在庵)の所へ、水石飾りの設え替えに伺いました。
門を入って驚くのは、その木造建築の邸宅!

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現代にこれだけの檜と欅材で、この大きさの邸宅を作るのに、どれ程の年月がかかるものか?
“材木集めに5年・建築に5年かな“と聞いてビックリ!

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そして、名庭と言える広大な庭の一部に作られている盆栽棚。
五葉松を中心に、国内最高レベルの名品の数々!
近年は、水石の美への探究心が強く、精力的に名石を蒐集されています。
盆栽・水石・僅かな時間で究極の逸品へ辿り着く「目筋」は、
50代の頃には完成したと言われる「日本刀剣」の大コレクションで培われたそうです。

“名品を見極める心は、何でも同じだよ。とにかく、最上の作品をよく見る事、その“出会い“を得る事が出来る日常に心がける事だよ”
と、廣瀬翁の弁。
一代で築き上げた事業とコレクション、いずれは個人の道楽としてではなく、
次代に受け継ぐ日本の文化遺産として公に尽くされたい、と願っておられるそうです。

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それにしても、あまりのスケール、温厚な盆栽水石をこよなく愛される古老と知らなければ、
どこぞの“組長“や“総長“の本宅?に見えて門から怖くて入れませんよ!!

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