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盆栽歴42年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 盆栽


【盆栽文化の発展交流と海外流出の葛藤】

第4次エスキューブ中国盆栽輸送が進行しています。

陝西省西安地区の農業特区「楊凌」に中国政府の農業発展パビリオンに
「日本盆栽展示館」を解説して5年の月日が経ちました。
検疫・水質・陸送等々、胃が痛くなる様な出来事を繰り返し、今は中国盆栽界も私共のパビリオンをご存知です。

一定の検疫、展示・学術的的研究の期間を経て、外へ出せますが、
近年の日本国内盆栽界の中国偏向は、それに関わるエスキューブ自体も歯痒さを解決出来ずにいます。
国風賞クラスの名樹を希望する中国、残念ながら現在の国内盆栽界の市場では、
所蔵各園が求める代価に応えられる顧客は1:5位の割合で圧倒的に海外勢の吸引力に押されています。
対中国盆栽事業に一歩先じている私共は、せめて海を渡る"彼達"が、
健やかな環境と一過性の購買者ではなく、本当に盆栽を愛する人達に育てられることを祈るばかりです。
ひとつだけ、日本盆栽業界にお願いするのは、
中国愛好家へ高額名品を販売されるプロは、出来ればその樹がどんな所で管理されるのか、
手入や基本的な技術者がいるのか、気にとめてほしいものです。
"売れればいい"と言う思いは、盆栽家として一考して欲しいです。
今年も樹々の安全を祈る日々がまだ続きます。



【今は亡き加藤三郎先生の遺作を前にして】

業界の中では日々仕事を供にする蔓青園5代目 加藤崇寿氏。
先日この蔓青園に久しぶりに伺いました。
名樹の数々は相変わらずです! 
庭の一角に 蝦夷松の大型寄植え石附が大切に管理されています。
これは 日本の盆栽界の現代の姿を築いて下さった、蔓青園3代目故加藤三郎先生の遺作群です。
人が天寿を全うしても、その作品は受け継がれた人達の愛情で次の時代へ残されてゆきます。
あまり語ることはしませんでしたが、三郎先生は私にとって特別な存在なのです。
勿論、協会理事長職や名声を思えば不遜な事かもしれませんが、17年前の出来事は今も鮮明に覚えています。
銀座の店を開いて数年、事業資金などに行き詰まって店の存続を悩んでいた時がありました。
業界内での面倒臭い慣習や、業者同士のレベル低い脚の引っ張り合いなど、本当に嫌になっている時でした。
商用で三郎先生の所にお伺いした時、先生は当時の私の胸の内を察してか、
「森前君はあまり業界の事は考えなくていいんだよ。君は"銀座"に盆栽店を持ったんだよ。
この店を1日でも長く頑張る事が盆栽界にとってどれほどありがたいものか、それこそが君にしかできない事なんだよ」と。 
誰からも無理と言われた銀座の店、その店で頑張る勇気を先生は私に教えて下さったのです。
偶然ですが、銀座の店は開店日が5月15日、奇しくも三郎先生誕生日。
目の前の先生の作品を見て、私がやるべき事を改めて思う刻でした。


【運命の糸が導いた 羽生への100点の「王の樹」達】

19日から21日にかけて10トンのウィングトラック5台が、
順番に羽生に到着しました。
四国新居浜「高砂庵」の巨大松柏盆栽を積んだ一群です。
ちょうど2年前、高砂庵の盆栽コレクション全品を羽生に運び、世界の方々から注目を浴びましたが、
あの時、故岩崎大蔵先生が選び抜いた庭園内に直に植えられていた大型松柏は、
相続の扱い方の違いで交渉できませんでした。
日本一の宮島五葉・神木と言える聳え立つ杜松・夥しい数の築山に植えられていた樹々など、
幾度か応答を取り、行方を気にしていましたが、大阪方面の事業家の方が、
河野一郎先生の茶室「松濤庵」や 本体の「高砂庵」も既に解体して移築されているそうです。
"高砂庵を残したい"誰もが願う事ですが、私共盆栽業では庭内の盆栽や樹々をなんとか譲り受けるのが精一杯でした。
中国向けのこの春最後のコンテナ積込を間近に控えて、
羽生雨竹亭 第一・第ニ・第三培養場のすべてが盆栽で埋め尽くされている中の "神々のお出まし"。
やむを得ず、オークション会場の外棚と駐車場を使っての仮置きとなりました。
"ようこそ羽生へ"
確かに大きく、人間の手で持てる大きさではありませんが、
数百年の宿る命がまた、我が家の家族となった事は、苦労はあっても嬉しいものですね。
家族にもスタッフにも言われます。
"大きい盆栽が大好きなんでしょ"って。


【盆栽庭園40周年記念 高砂庵 岩崎盆栽 エスキューブ雨竹亭より 三点寄贈!!】

アメリカ建国200年を記念して日本より多くの盆栽が、ワシントン植物園に寄贈されて40年、
現地ではこれを記念して新しい盆栽館が建設中です。
以前、アメリカのこの関係の財団理事長が羽生に来日された時、
高砂庵 岩崎大蔵先生の遺愛樹3点を寄贈する旨を伝えておきました。
私が出した条件は、国立の植物園の中に運ぶのだから通常の"根洗い"をせずに、
そのまま運ぶ特別許可の上で進めてほしい だけでした。
1年以上の申請の結果、この度3点はそのままの状態で海を渡る事になりました!



加藤三郎先生達が苦労して広めた盆栽の世界友好は、
岩崎大蔵先生が受け継ぎ、間もなく開催される「第8回世界盆栽大会inさいたま」になります!
盆栽人として出来る限りの奉仕活動をしてみたいです。
盆栽達も頑張って!!


【九州 福岡みやま市 田中 梅花園さん】

黒松・五葉松の大型古木の買付に初めて九州 長崎・福岡を旅しました!
その中で事前の下調べをした訳でもない中、福岡南部みやま市の梅林で有名な所があると聞いて、立ち寄ってみました。
「梅花園」田中賢司さんと奥さんは、穏やかで優しく、
訪れる方々の為に自らが実生から作出した数々の種類の盆梅を座敷中に飾られていました!
代々松や梅の苗木を作り続けてこられた田中家、盆梅以外にも受け継がれてきたのは
関東では見ることも出来ない枝先まで丹精の限りを尽くした五葉松の名樹達。
どれだけの刻と愛情を費やせばこれ程の樹が出来るものかと、ため息以外がありませんでした。

しかも、この五葉松名樹群は通称"チャボ"と呼ばれ、関東系盆栽界には公開されていないものだそうです。
田中さん夫婦は、梅の実生苗木で生計を立てられ、受け継がれた古木群は流出させる事をためらい、
バブルの時も様々な誘惑を払いのけて持ち込まれました。
同じ盆栽に生きる者として、頭の下がる生き方です!
艶やかな盆梅の世界、積年の培養が作り上げた"真の松柏名樹群"。
羽生から千数百キロ離れた地で、また新しい発見をしました。

見送って下さるご夫婦は最後まで謙虚で温かく、樹と共に生きて来たお二人にたくさんの事を教わりました!
感激!感謝!

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