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盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 盆栽

未来の宝の手入れ開始!

盆栽を通して世界平和を願った先人、名匠加藤三郎翁の名園・蔓青園より譲り受けた未完の大樹。
羽生の庭に来て1年、ようやく手入れを始めることになりました。
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木村正彦先生の直弟子・森山義彦氏、
助手を務めるのは、私の願いで木村先生の所で今も交代で住み込んで技術指導を頂いている中国西安出身の郝(ハオ)君と趙(ツァオ)君。
樹齢300年を超える超大型太幹の黒松。
切返しも無く、見事な幹模様を持つこの樹は、数年の手入れで、大型黒松を代表する名樹になります。
大切な第一歩、今回の仕事がこの樹の将来を決めると言っても過言ではありません。
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早春より肥料と水を極めて多く与えて力をつけての作業。
各枝の基本的な配置、樹冠の抑えこみ、今出来る作業を超えることなく、次の手入れを構想しながらの第一歩。
若き盆栽作家達に未来を樹と共に委ねました。
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ここから芽切り・芽掻き・肥培。
年々の手入れで徐々に姿を変えてゆく、皆さんもこの樹をご一緒に見守ってください。

【今が最適期!】

松柏類と言っても、五葉松・赤松・黒松・は、それぞれにその性質や手入れの方法・管理が異なります。
特に黒松は、芽切りによって新芽を再芽させて葉を短く仕上げる事が大切で、
その手入れ作業は、樹の大きさによって違いますが、およそ大型は6月中旬・中型は6月下旬・小品は7月初旬です。
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しかし、すべての黒松に行なえる事ではなく、美しく短い葉にするには、3月初めから肥料を与えて、水も多めにして、
樹の生育がしっかりしていないと、2番芽が綺麗に揃わなくなります。
樹に力があるからこそ、芽を切っても新しい芽が吹いてきます。
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また、芽切りの後は、発芽を促す為にも「葉水・水かけの度に樹の葉部分に1日2〜3回シャワーのように水をかけて湿度を保つ」事がとても大切です。
芽切りの時は、昨年の葉が多い部分を3〜5枚に減らす作業も必要です。
盆栽、特に完成度の高い樹こそ、このような美しい姿を保つ為の地道な手入れが欠かせません。
芽切りの後、2〜3週間で、切った元に新しい芽がたくさん吹いてきます。
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今度はその芽をピンセットで2~3芽残して取る作業が必要です。
手間のかかる作業ですが、黒松を楽しむ中で、最も重要な手入れである事を覚えて下さい。



【日本と言う国の安寧を願って本殿回廊に名品を展覧!】

コロナウィルスの影響で、本当は6日から歴史的な大展覧(神域参道に120mの仮展覧場・100点)が来年に順延となった明治神宮。
水石協会として、役員でのご奉仕の気持ちで、愛好家の皆様のご協力を頂いて、
奉納盆栽水石展を6日〜10日、本殿東廻廊で開催となりました。
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26点の精選した名木・名石、自然の美しさに守られた日本、その自然界が創り出してくれた盆栽と水石。
神前に飾り、ご参拝の方々が嬉しそうにご覧なる光景は、苦労を吹き飛ばしてくれます。
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お忙しい中をこんな時だからと、初日の神前参拝にご参加頂いた島村会長(元・農林、文部大臣)には、飾らぬ平易なお人柄と共に感謝の限りです。
海外から訪れる方が殆どいない神宮の静謐な空気、これも私には良き日本の姿に映りました。
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業としての盆栽水石の日々、その中にこのようなご奉仕の場と刻を頂くことの、有り難さを感じる展覧でした。

【68歳の盆栽培養場開設!】

15歳で盆栽修行に入った時から、38歳で独立するまで、在園していた竹楓園の「大政・小政」と呼ばれた兄弟子と私。
人には言えない苦労も人生の半分以上をお互いに支え合った特別の存在。
破天荒な人生の私と対照的に地道で穏やかな人柄は、現在・北関東盆栽協同組合理事長・社団法人日本水石協会副理事長と言う要職からも窺えます。
私に遅れて50歳で独立した兄弟子は、仲間の棚を借りたり、元の主家の庭の一部を借りたりして今まで正業にたったひとりで励んできました。
“手を入れる程でもないものは半値でも処分して、年なんだから好きな樹を作れば“とずっと言い続けていました。
栃木の自宅に程近い所、2人で40年以上前に養成樹の培養場として日々水かけに明け暮れた地、
ここに自身の所有する盆栽のすべてを集めた「最初で最後の培養場」を作られました。
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若き頃、スプリンクラーでの水かけを任されて、30分で良いものを、うたた寝が過ぎて、2時間掛けっぱなしにして、
近隣の道路に水が溢れた苦い思い出の地に、40年ぶりに訪れました。
お互い五葉松に魅せられて今も所有樹の圧倒的な割合が五葉松。
兄弟子の600坪の棚も五葉松に埋め尽くされていました。
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人柄そのものと言える五葉松の姿。
兄弟子の終の住処として、まさに格好の場所!
それにしても、よくこんなに集めたもの!(人のことは言えませんが!)
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私達盆栽人は、自分の周りに盆栽がある事が、何よりも嬉しいもの。
兄弟子もこの盆栽達と良き年を重ねてくれる事を願う、嬉しい日になりました。
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【羽生市長来園!】

休日を利用して、雨竹亭のある羽生市の河田晃明市長が来園されました。
藍染の街として歴史ある羽生に、日本文化のひとつである「盆栽」のランドマークが来た事を、開園当初より歓迎してくれた市長。
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教育者の道から市政の道、ご自身も農家の生まれで、教職からこの街を預かる立場になった苦労人。
コロナ対策の激務の中、ひと時の憩いの場として楽しんで頂ければとお迎えしましたが、お話の中身は相変わらず街の発展。
今回もふるさと納税の返礼品に盆栽をとのお話。
この町で生産される産物として、「家庭の中に憩いを与えてくれる盆栽」と言う観点からご相談を受けました。
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盆栽人としてありがたい事で、これからの社会にマニア的なレベルではなく、
「誰もが楽しめる家庭的な盆栽」という意味で、エスキューブが目標とする「社会性ある貢献」にぴったりのお話。
行政を預かる方が、このような日本の伝統的文化を大切に思ってくれる事は嬉しいです。
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美しい花姿の季節を迎えた皐月「鈴の誉」を床の間に飾り、楽しい刻を過ごしました。
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