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盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 盆栽


大観展の打合せを兼ねて、長野県の鈴木伸二さんの所へ赴きました。

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入口から盆栽の棚場、応接室、回遊する何気ない所まで行き届いた盆栽ワールド!
とにかく綺麗です!
塵ひとつ落ちていない!
盆栽をどれだけ美しく見てもらえるか?そんな彼の考えが庭内に満ちています。

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名木からささやかな草物まで、どれを見ても“いいなあ“と思えます。
恥ずかしがり屋で、応対の苦手な彼、普段から一般の来園者が入らないように、入口はしまっているそうです。


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これだけ静謐に綺麗にしておくには、仕方がないですね!
5,000坪(16,500m2・25亩)を有する我が家、どんなに頑張ってもこんなに綺麗には出来ません!
それでも、そこを目指して頑張ります!

【木村正彦先生の妙技で名樹へのスタート❗️】

羽生雨竹亭から卒業して、東北の津波・震災を乗り越えて、仙台に程近い多賀城で盆栽業を頑張っている加藤充君。
東北人らしく、朴訥でどちらかと言えば商売は苦手な彼。
折々、ちゃんと業が成り立っているのか心配していましたが、
昨年無事に結婚して、最近は地域の愛好家の方々に可愛がられて、“出仕事“での手入れに忙しそうで安心しています。

彼から“山採りの真柏を沢山持っているお客さんがいる“と聞いたのは数年前。
どのようなランクのものか?分からずにいましたが、先々月、名勝「松島」に近いご本人の庭に加藤君とお邪魔して驚きました‼️
すべてがご自分で生涯をかけて山採りされた真柏の“筋物“素材!約200点!
「仕事も引退したので、ここからはこの真柏達を皆さんに見せて楽しみたい」
普通に聞けば、微笑ましいことですが、そこにあるプロが見ても“是非譲って欲しい“とつい、口から出てしまう、
手入れをすれば名樹になることが約束されているような樹が所狭しとあり、
“この状態で公開したら、日本や中国のハイエナのようなバイヤー達の格好の餌食になってしまう“と思い、その思いを2時間かけて説得しました。
“このままで公開したら、ご本人が望んでいるような、真柏を愛し、山採りを語り、素材から仕上げてゆく過程を共に楽しむような方が訪れるのは、ごく僅か。
殆どが、出来上がっていないままで、買い付けて行くことのみを狙う人達で、嫌になってしまいます“

「私には売らなくていいから、木村先生に頼んで何本か手入れをして仕上げてもらって、
それを近代盆栽の誌上で取り上げてもらいましょう。それからの公開にしましょう」

私の考えを理解下さって、日をあらためて木村先生に相談して“森前君が言うなら、行ってみましょう“と、81歳の名匠のお供をして、再び松島に訪れました。

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“ホンモノの木村先生だ“、ご家族の第一声には、苦笑いしてしまいました。
先生と数本の真柏を選んで、先日近代盆栽の編集部と共に、「幻の真柏群」の手入れが始まりました。

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勿論、私も商売ですから、こんな未公開の樹は、喉から手が出るほど欲しいですが、
半世紀をかけて山採りをして、誰に教わるでもなく、コツコツと自力で根付け、枝接ぎ、培養を重ねてきた愛好家を拝見して
「加藤君や地元の方々に残してゆくことも、私の仕事」と思い、東北の地に名樹として残るお手伝いに徹する事にしました。

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木村先生の所で、いよいよ始まった“眠り続けた逸材達”が、いずれ『月刊近代盆栽』の誌上でその全貌が公開されるでしょう。

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商売の方が、良質な盆栽を欲しいのは分かります。
でも、見守ってください。
これだけの真柏群をバラバラにしてはいけないです。
いずれは、ご本人が納得する時の末、次なる方々に移る事は当然です。
でも、それは加藤君達のような“これからの日本の盆栽界“を担う人達に委ねたいのです。
近代盆栽での公開を楽しみにしていて下さい。




連日の35度超え❗️が続く羽生と木村先生の伊奈町。
30分の移動距離の間ですが、両方とも、盆栽を守る暑さとの戦いの毎日です。
秋に予定されている海外企業との盆栽を飾ったイベントの下打合せに、先生の所に伺いました。


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当日も37度!
それでも日々手入れに勤しむ先生は、いつものように首にタオル、素足に草履履きで「暑いねー!」とお変わりないお姿。
80才を超えてなお健勝な毎日を盆栽と過ごされる先生には脱帽です!

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温暖化のせいか?5〜6年前から、松柏類の盆栽にも日除けが必要となった埼玉県。
小僧時代には無かった管理の仕方。
先生と“昔は違ったよね“と、猛暑の中、必死に秋の訪れを待つ盆栽達を見守る気持ちでした。


藤沢市辻堂 湘南海岸から内陸に数分の地。
椎野宝樹園での6年に及ぶ修行を終えて、ご祖父より受け継いだ盆栽園を、新たに新装された高橋桂さん。
四十年前、二十代前半の私は、若き頃の大恩人、秋本廣一翁に導かれて訪れて以来の訪問でした。


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元々の盆栽園はそのままに、小径向かい側に造られた園。
漆喰の白壁が映えるまさに“湘南の盆栽園“と呼ぶに相応しい美しさです!

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江戸期より続く名家、土地の素封家として、地域の信頼厚い高橋家。
次の当主として、ご祖父が築いた名園の後継者として、
一般の盆栽園とは異なる重責を胸に抱きながらも、“王道の古典盆栽“の良さを深く理解される桂さん。


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私が昔伺った時は、まだ生まれていなかったとのこと!
海外への販売が主流の中央盆栽界。
その中でも、是非揺らぐことなく、日本の愛好家、神奈川県の次世代愛好家と共に歩んでくれる事を願っています。

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それにしてもセンスいいですね!
勿論、穏やかで品格ある人柄も!
鎌倉・茅ヶ崎・湘南へ出向かれた時は、是非盆栽と高橋さんに会いに行って下さい!


【東京オリンピックの開幕初日、羽生は猛暑の中でも盆栽の作業!】

4月に四国から来た、宮島五葉松(四国での呼び名は銀八、海外では大阪松)の、
木箱植え以外の“根巻“状態のままの分を、ここからの保水と樹の健康を考えて、植木用の大型ポットに入れる作業。

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大量の赤玉土を手配して、根巻のままポット植えする事で、樹はとても楽になります。
手で持てるサイズではなく、フォークリフトを使っての流れ作業!

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新人達も、入社して暑い中、毎日この作業をしていると“盆栽屋さんって毎日こんなキツいのかな?“と誤解されそうです(笑)


秋になれば、ひとつずつ、樹筋を見ながら鋏を入れて・・・
ここからこの樹達が立派な大型盆栽になるには、3~5年の時間がかかります。
人と同じですね!

根巻のままでも、夏は越せますが、こうして根が土中に覆われると、多分樹もホッとしているでしょう。
彼岸も過ぎれば葉の色がぐんと良くなってきます。
それでも、数百のポット!

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これからの“水遣り“だけでも、5000坪の我が庭は、朝夕3~4名、合計4時間がかかります。 
人間も少し涼んでホッとしたいです❗️

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