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盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 盆栽


“大型五葉松の山採り逸材が、熊本にある“との情報で、数年ぶりに九州の地に赴きました。
世界大会でその存在が明かされた“幻の五葉松“・『祖母五葉松』の作者、
(正確には江戸期より代々受け継がれた樹達を守り伝えた一族の現ご当主)田中古老の庭園に久しぶりに訪れました。


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祖母五葉松を拝見に伺ったあの頃も、世俗から離れた孤高の雰囲気を感じていましたが、今回お会いした時は、まさに“仙人“!
それでも、田中本家に残してある祖母五葉松群は、相変わらず見事な翠を湛えていました。

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“守り続ける“と言う年月を、人生そのものを捧げて費やした古老。
人も樹も、“生きる“という事を教えてくれるものだなあ“とあらためて教えてもらう時間になりました。


【久々の1億円超え❗️約1000点の落札‼️】

雨竹亭も加入している、日本の盆栽界の中心的流通市場・盆栽協同組合“水曜会“の秋季大会が、
上野グリーン倶楽部で14日開催されました!
前日の搬入は全国から出品される盆栽で、倶楽部が埋め尽くされる有り様!

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朝8時からのセリ人の掛け声で始まったオークションは、目利きセリ人達の、一瞬の品定めで、発句が行われて、
同じ値が3度掛けられると落札されると言う、一般の愛好家では、着いていけない様相。


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慣れている私達は自分がこれと思うものがセリ台に載ると、合い声をかけて落札できるか?
荷主・セリ人・との丁々発止が行われます。
誰もが欲しいものは似ていますが、私を含めて“強者“と呼ばれる上位20者が、秀品の多くを落札します。
暗くなるまでかかった大会、総出来高、1億円の大台に乗ったのは久しぶりです。
それでも、“どうしても欲しい“と思う程の名品は僅か。
またそれらは大手が競い合う状態がいつもです(笑)
雨竹亭の落札は550万ほど。
ウェブサイトでの商品、銀座店に飾りやすいものなど、市場で手に入れる物には限りがあります。

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全国に散らばる仲間が集う場、老も若きも同業者同士、各地の様子を語り合ったり、
コロナが少しずつ収束する中での、盆栽展などの話が尽きません。
いよいよ、秋本番!盆栽の本格的シーズンが始まります!


【王者の真柏!大改作の末!師匠木村正彦先生も絶賛‼️】

2年の雌伏の時を経て、長く雨竹亭の非公開培養場で生育されてきた真柏大樹が、
日頃エスキューブの手入れの協力をしてくれる森山義彦君の手によって、今年の日本盆栽作風展審査会で、映えある大賞を受章しました。


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32歳と言う最年少での大賞、九州の地から、名匠木村先生の下で修行の日々を送り、
二代目と言う身でありながら、中央で己の技を極めたいと、私の所のそばに盆栽園を構えた彼。
技術者として真摯に盆栽と取り組む彼には、木村正彦先生の真の弟子として、技術者の道を歩んでほしいと、今回の改作の橋渡し役を務めました。




長く未公開名樹と噂されてきたこの真柏。
私の大旦那さんである舩山先生に、“若者の未来をご一緒に作ってほしい“と懇願し、
大金をはたいて、ご自分の名では数年は展示もできない事を理解して頂き、森山君の夢が叶ったのです。

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若き盆栽家が、誰もが夢に描く“作風展の内閣“。
立ちはだかる“大金がかかる素材の探索と入手“、作者だけでは叶わない事が殆どです。
“森前さんは、自分が20年も手がけた樹が、表裏逆転の末、自分でない者が脚光を浴びるのは良いのか?“
と、私を気遣ってくれる仲間もいました。

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60を超えている私。
願うことは、その盆栽が私が手掛けるよりも更に価値ある姿に導ける者に託す事、
そして、未来のある若者の背中を押す事になれる事、誰よりも森山君の大賞受章を喜んでいるのは私なのです。
勿論、私の言葉を信じて、夢の改作を見守って下さった舩山会長の懐の深さには感謝に堪えません。
いずれ、『近代盆栽』に改作の経緯が発表されます。
是非、皆さんも木村先生の愛弟子、森山君の晴姿を名樹と共にご覧になって下さい。


10月7日、羽生雨竹亭において、業界人専売オークション、第145回「天地会」が開催されました。
台風の影響で1週間の延期通知をしたのも初めてです。
この1週間の間に、新潟県で大切に培養されて来た未公開の真柏逸材を入手する機会を得て、
久々の“ホンモノ“に、商売ではあっても、胸躍るものがあり、
2日間の夜間手入れと植替えで、私が思う“真柏の盆栽はこうでありたい“と思う作品になりました。

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天地会の延期は各方面の仲間達の“台風“に対する配慮で決めた事なので、後悔もしていませんが、
中々逸品がオークションに出品されることがない昨今、“売れなくてもいい“と言う気持ちを持ちながら、出品に踏み切りました!


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結果、中国バイヤーを警戒していましたが、木村正彦先生、小林國雄先生と言う巨頭のオークションバトル!と言う思いもよらない形になりました!
勿論、私が入手した価格よりも数段高いビットが続き、最終的に木村先生が落札された事は、有り難い限り、、なのですが、
不思議に嬉しくもなく、何となく寂しい想いを抱いたのは、この樹が本当に名樹として庭に置いておきたい!気持ちが強かったのかもしれません。
こうして、どれくらいの逸樹をこの庭から送り出したでしょうか?

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考えても仕方がない事、と分かっているのですが、歳でしょうか?不思議なものです。
盆栽で食べながら、良い盆栽は売りたくない!
わがままですよね!
それでも、また明日出会う樹達との一生懸命、生きていきます!

【受け継がれる技術の継承】

日頃から雨竹亭の盆栽整姿術に協力をして頂いている、森山義彦さん。
木村正彦先生の直弟子として、将来を嘱望されている盆栽作家。
作風展頂点への挑戦をされる中、私と相談して、雨竹亭のスタッフである近藤瑞希君を
週に二日間の研修見習いを始めて頂くことになりました。

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森山さんと仕事を組み始めて4年。
温厚な人柄と、さすが木村先生が唯一埼玉県での独立を認めただけの腕!
そろそろ彼にも“本物の手入れ仕事“に打ち込める体制作りに入って欲しいと願って、
私のスタッフをそばに置いて、少しでも“生活費“の為の仕事が減らせるようにと願いました。


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勿論、雨竹亭としても、日常的な針金整姿のスタッフが、育ってくれれば、“1人がもう1人に“と、技術の継承ができます。
木村先生に憧れて盆栽作家を目指した森山君、そして彼が指導する若者が、技術を継承してゆく・・
年寄りの仲間入りが近い私から見れば、羨ましくもあり、微笑ましくもあり!

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まずは、近日行われる「日本盆栽作風展・審査会」で、森山君がどこまで階段を駆け上がるか!楽しみにしています!

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