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盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 盆栽


昨年、秘匿の内に四国鬼無から羽生に移送した五葉松の巨木素材群。
奈良時代からの旧家「神高総本家」と、鬼無盆栽界の恩人、小西翁から受け継いだ五葉松約150点。

今春、トレーラーを連ねて移送して、数ヶ月をかけて鉢入れした中の、“これは将来の宝“と見定めた樹の大改作を始動しました。

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小手先の枝掛けでの“見た目だけの手入れ“をせず、10年後の名樹への想いを込めて、
1日1点の計画で樹の限界ギリギリのジャッキ曲げなどを駆使しての仕事です。

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私も含めて、“明日売れるもの“に走りがちな現在の盆栽界。
だからこそ、次の時代に残すものを造り、そのプロセスを若いスタッフ達に経験させようと思いました。

しかし、大型の“つわもの達“。
簡単には言う事を聞いてくれません。

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友人の改作の名人、寺川穂積氏の協力を得て、第1作が仕上がりました。
四国五葉松らしい、堂々とした力強さの表現を活かした樹相、勿論ひとつずつ、樹の持っている特性と表情は違います。 
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“こうしたい“と言う自分の我を出し過ぎずに、“樹に教わる“つもりで、この冬は少しずつ仕上げていこうと思います。
とにかく大きいので、幹や枝がみしみしと骨が折れる程の曲げ込みをした樹達は、
厳寒の季節を屋外にはおけず、寒風や低温を避ける必要があります。

また、“ハウスを作らなければ“・・スタッフ達の苦労が目に浮かびます。
でも、数年後、この樹達が見せる勇姿をみんなで見たいものです。


【内閣総理大臣賞に五葉松「百万石」❗️】

コロナ禍で昨年は40年の歴史の中で、初めて中止になった同展。
やっぱり晩秋の古都を彩る盆栽展として、私も二十代から携わってきた催事、
こうして独特の雰囲気を肌で感じれば、早く日常の社会に戻って欲しいものだなあ、と思います。


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設計、企画、を任された、田中財団の国風賞・内閣総理大臣賞・受賞樹のみで構成した特別展示も、
構想を立てた通りに完成し、財団所有の五葉松「百万石」も狙い通り、内閣総理大臣賞を受賞出来ました。

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また、お得意様達の展示もそれぞれ全席受賞となり、ホッとしています。

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明日よりの売店は、会社のスタッフにある程度任せて、京都市長の案内役、大徳寺の庭園案内、
そして趣味家の最高峰の団体「玄虹会」の年に1回の展覧『玄虹会展』の開催運営進行に注力したいと思います。

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でも、いまだ収まらないコロナ禍の中での開催、出品や売店出店もどうなるか?不安視する声もありましたが、開けてみれば、従来通りの状態。有難いものです。



以前より極秘裏に進められていた盆栽業界のシークレットニュース!
著名盆栽愛好家、廣瀬幸夫氏の愛樹(共に国風賞受賞樹)が、京都盆栽財団「慶雲庵」に、譲渡されました。


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2点とも、日本盆栽界を代表する名木、そこには盆栽をこよなく愛する大家同士ならではの“未来の盆栽界“に対する真摯な心がありました。

“自然の芸術作品である盆栽、愛情深き所蔵者と、熟練の腕を持つ盆栽師、
この両面が揃わなければ、時の流れの中で、価値なきものになってしまう“。

盆栽の真髄を体現してきた廣瀬氏の真実の言葉。


“自分の棚場での愛玩は、その盆栽達の歴史の中での一時の出来事、
名樹は志を同じくした人たちによって、その歴史を含めて受け継がれるもの”

古希を過ぎた大家の多くが、同じ思いを持たれています。
海外を含めた、名盆栽の所有意欲は、今までの盆栽界の在り方すら変える勢いが目立つ今です。
廣瀬氏と交友深い「慶雲庵」オーナーの田中慶治氏、“日本の歴史ある盆栽の保護伝承“を目的に創設した財団法人。
共に盆栽を人生後半生の道標とされた大家。

“命あるもの、持つに相応しい方があれば、金や評価は、プロに任せておけばよい”と廣瀬氏。


“未来永劫まで多くの人達に楽しんで頂くことが何より“と田中慶治氏の弁。

盆栽界の流通を正業のひとつとしている私などにとっては、口を挟むことすら失礼にあたる程の、「紳士と紳士の足跡」に、盆栽に生きる者のひとりとして、頭が下がる出来事でした。


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高く売ることより、持つべき人を得た廣瀬氏の安堵、受け継いだ名樹を後世に伝える責務に奮い立つ想いを持たれる田中氏。
お二人共にお付き合いをさせて頂く身として、胸に刻む感慨を得ました。
大観展でこの樹達と一緒にお会いできる事をお待ちしています!

【特別支援学校での盆栽教室】

昨年から始めた、雨竹亭のある羽生市内の特別支援学校「羽生ふじ高等学園」での盆栽教室。
15才の生徒達は、ここで一生懸命、社会に対応できるように、
農業、園芸、その他様々な技能実習を行なって、3年間を過ごします。

“盆栽の教室をしてくれないか?“と言う依頼に私は快く引き受けました。
今も、小学校2か所で盆栽に対しての授業をボランティアで何年もしていますが、高校生の年代の子達への授業は、ここが初めてです。

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一般の高校に行かず、中学校卒業の経歴にしかならない子達、私も義務教育しか受けられずに社会に出た身。
盆栽を通して、少しでも役に立つならと年に数回の“盆栽の先生“をしています。

真柏の素材を皆んなにプレゼントして、苗木からの植替え、幹への針金掛けをしての基本作り、そして枝作り。

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毎回進むにつれ、ここに生きる生徒達の“心の純粋さ“に、私こそが沢山教わる事があります。
盆栽も同じで、初めは素材として一級とは言えなかった樹が、歳月によって、見違える盆栽になる!
人も同じです!かく言う私こそが、盆栽に出会っていなければ、ろくな人間にならなかったでしょう。

ここで私がこの子達に伝えられる事がどれほどあるか?分かりません。
しかし、自分で手入れをして、年々水や肥料や消毒を続けていった樹が、いつの間にか、ちゃんとボンサイになってゆく。

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この“時間と姿の体験“をさせてあげてる事が、彼等の何処かの記憶に残ってくれればと願っています。
現場実習で、この日も何人かが、工場やスーパーに出かけていました。
出来れば、ここに居る“心のまっすぐでキレイな子達“から、羽生の盆栽培養場で働ける子が作れたら・・そんな事を夢見てます!

【圧巻の財団展示❗️】

コロナ禍で昨年中止となった晩秋の京都の大イベント「日本盆栽大観展」第41回展が、
11月19日~22日まで、歴史的文化遺産群の中心地、京都平安神宮前「みやこメッセ」で開催されます。
毎年、友人の盆栽作家である、鈴木伸二さんが実行委員長を務める事、
そして私が旧高木盆栽美術館を継承された、京都国際文化振興財団「慶雲庵」の美術館準備委員会室長を預かる関係で、
企画担当者として、同展の構成をする事になりました。

財団も間もなく美術館建設予定地の発表(場所は現在極秘です!)となる前の大展覧!
今回は、盆栽以外にも膨大な盆器・水石などを所蔵している財団ですが、“ここからの財団の姿“をスッキリと皆さんにご覧頂こうと、
所蔵する名盆栽から精選して、過去、国風賞や内閣総理大臣賞を受賞した作品のみで構成すると言う、前代未聞の形をとります。

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温暖化や盆栽の文化的歴史的価値の再評価が求められる現代、その保存伝承の為に財団が繰り広げている“真の姿“を圧倒的な所蔵盆栽群で披露します。

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海外の愛好家の皆さんの来場が難しい中だからこそ、映像などが、世界に拡散する事で、
“やっぱり日本の名樹は素晴らしい“と思って頂けたら嬉しいです。

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毎年の事ですが、11月は、雨竹亭の観照会・大観展・そして私が懇意にさせて頂く著名愛好家の団体
「玄虹会」の展覧が、京都禅林『大徳寺』で開催、準備、手入れ、展示構成・!!!
目がまわります❗️
それでも、盆栽や水石を皆さんにお伝えするこの仕事、ありがたいと思っています。
間もなく開催!楽しみにしていて下さい!

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