雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴44年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 盆栽

【温暖化で予定急ぎ!】

「三寒四温」と言う言葉は既に死語。
染井吉野の開花宣言も全国で早まっています。
盆栽も雑木盆栽を中心に 芽の動きが早くなって、鉢映りや根の老化による植え替えが必要なものを、
早めに施術しなければならず、先日 スタッフ8名を集合させて2日間で60点の植え替えをしました。
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特に鉢映りは、ここからの3~4年のその樹の姿を決める大切なもの!
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羽生の庭内に2000点以上ある鉢でも、ピッタリと言える鉢合せをするには苦労があります。
用土も老成した樹・成長を必要とする樹・実成りを促進する樹、
それぞれの樹に合わせた配合と混入させる肥料分が違います。 
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大切な僅か5~8度の角度の差による樹の正面の捉え方も、その盆栽の表情を大きく変えるものです。
エスキューブ雨竹亭は、年間に800~1000点の盆栽が動きます。
ありがたいことですが、その為に前年に新たに雨竹亭の“家族”となった盆栽達は、
根の処理・鉢映り・樹の表情への創出・など、様々な処置が必要となります。
まさに春は戦争です!
そんな中でも、お世話になる愛好家の皆様のお手入れ(出仕事)も欠かせません。
羽生に在園出来る時間のすべてを“次の季節を無事に美しく過ごす”為の手入れの時間にします。還暦となった中、2日続けると腕が上がらなくなります(笑)。
その分、若きスタッフ達が、まるで盆栽が徐々に仕上がってゆく様に ある程度 仕事を任せられるようになってゆく姿が 嬉しいものです!


【展示用の古鉢群の圧倒的な充実と日々変わらぬ手入れ作品】

貴重盆栽登録審査会の打合せで、木村先生の庭に伺いました。
国風展が終わり、貸し出しされていた展示用の古鉢群が、丁度並んでいました。
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古渡大型鉢から3点飾り用の中型鉢まで、「これだけあれば、多くの作品の利用に充分」と言える保管量です。
日頃から先生は
「私にとって古鉢は、売り買いするものではなく、盆栽を映えさせる衣装のようなもの。必要なものを少しずつ集めた結果」
と仰っています。
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愛好家の仮植えから戻されて元の鉢に植えられた盆栽は、
樹勢を留意して先生のハウスで、3~5週間状態の安定が確認されるまで管理されます。
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そんな中でも先生は、新たな作品作りに邁進されています。
老成されてなお、制作意欲は衰えるどころか 益々意気軒昂!
すべての点で 盆栽人として見習うことばかりの大先輩です。

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3月2日~3日僅か2日間、京都名刹 大徳寺の中の芳春院で開催された『第11回玄虹会展』。
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特に別室床飾りで披露された寺内幸夫氏の展示は、盆栽趣味の文化的な真髄を物語るものでした。
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主木の黒松は、名人会田一松翁が最後まで愛した名樹として名高いもの。
「盆栽とは肥培するものではなく、枯淡の風趣を枝ひとつの中にも醸し出されたものが肝要」
という名言を残した翁。
若き栽匠として注目される神奈川県秦野市 宝樹園 椎野健太郎氏の所で 絶妙な管理をされたこの樹を、
席主は松を使った飾りの季節としては難しいとされる三月初旬に見事な設えをされた。
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掛け軸は 田中日華 筆「雪月花」通常の掛け軸と違い、表装部分も画家がすべて書き込んだもの。
画中の外から降る雪、この雪に混ざって僅かに散る桜の花びら。
朧の半月と共に幽玄な世界を表現しています。
特に注目するのは、月や雪そして花びらは、画中の下では消えていることです。
目に見える月も雪も花びらも、悟りの境地に言う「一切は空なり」の空。
つまり 世の現世に見えるものは、一刻の儚い夢、そこに齢を重ねてなお厳とした姿を見せる松。
生きる盆栽の姿と空蝉の画中世界が共鳴しあい、松際立つ気韻を見事に描き出されている盆栽飾りの真骨頂を捉えた名席と言えます。
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加えて脇床に置かれた馬蹄石の雅石。
石中に立つ姿が明王や菩薩にも見立てられるこの石は、本床に広がる幽玄の世界を、更に深い響きへと導く仏性観と言えます。

盆栽は 庭や棚で その姿を観賞するだけのものではありません。
本席が描き出す精神性は、盆栽を主軸にして 自然や哲学的な美意識を、
学識の裏付けを加えて どこまでも広がる人間美へと昇華させています。
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世界に盆栽文化が広がる中、技術や価値観ばかりが 評価される中、先人達が 百年以上の時をかけて完成させてきた 真の盆栽世界を 再認識させてくれる 鑑と言うべき一席です。

【圧巻の名木達!】

第93回国風盆栽展。
15歳でこの世界に入って、次の年 49回国風展を始めてみてから、長い時が経ちました。
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会場で水かけ当番をやったあの頃、商売が忙しくてグリーンクラブから美術館へ動けず、結局国風展自身を見られなかった頃。
友人の多くが協会・組合の役員となった今、前期後期共に観覧させて頂きました。
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愛好家の皆さんが、大切に培養手入れした作品、出入り方のプロと入選を心待ちにした気持ち。
名樹の裏側にある人間模様が感じられてしまうのも、プロとして長くやって来た者の性かな?と自分で笑ってしまいます。
それでも、日本盆栽界 最高峰の展覧!
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飾られた木々達は、唯々 有難いばかりの気持ち湧く、日本の宝達でした!
木村正彦先生のご協力で、私のお客様達も9名飾られました。
“もっとこうすればよかった、もっと時間をかけるべきだった”など、
プロならではのお客様より任された身の反省ばかりを感じるものもたくさんありましたが、
国風展が、私達プロにとっては、“次への目標”にもなっています。
来年こそはこうしよう!と思うもの多い機会です。
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【吾妻五葉松「山の神」大改作!】

昨年の国風展売店で、鈴木伸二さんから入手した吾妻五葉松。
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昭和30年代、吾妻スカイライン建設に際して、道路予定地に自生する五葉松の採取が特別に許可されました。
この樹もその時に 下界に降ろされたものです。
根元部分に山採りならではの厳しい舎利芸を持ちながらも、全体として表面的に上手にまとめられている姿。
“ この樹は ちゃんと作るべき!” と思って、まず1年間 培養状態を高める事に専念しました。
厳寒の今、ここが手入れ時!  
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満を持して 大掛かりな枝抜きと基本的な樹形作りに挑みました。
吾妻五葉松の特性と言える “枝が直線的に走る” 嫌味を取り払って、
親幹も差枝も 左へ綺麗に流れる「枝元の作り」を 鉄棒とジャッキを使って進めました。
返しの枝も「鶴鍋」にならないように、元から折れるギリギリの畳み込みをしました。
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友人の寺川さん・スタッフの小川君・の協力を得て、なんとか、1回目の「今」出来る姿を浮かび出させたかと思います。
ここから2~3年の肥培管理で葉組みを増やし、重量感ある「山の神」が 目覚めます!
次の時代に伝承する樹の技。
この樹が盆栽界の晴れ舞台で 王者の佇まいを見せる頃には、私も老成した隠居になっているでしょう。
それでも、こんな仕事がなによりも好きです。
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