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盆栽歴45年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 盆栽



明日から長留守の京都行き。
展覧会の事や、大徳寺に対する礼儀など、無学な私には神経衰弱になりそうな毎日です💦

こんな時は、本来の自分に戻って、樹作りの時間を作る事が1番です。
木村先生門下・森山義彦君、私の所の卒業生(もう一人前の盆栽業者ですが)白石友也君、
そして3年の修行を終えて間もなく故郷中国へ帰るハオ君とツァオ君。
4人の力を借りて、四国から運んだ大阪松(宮島五葉松)の幹曲げ、枝曲げを伴う改作を行いました。

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素材の激減する中、若いみんなには、こんなそのままでは誰も見てくれない樹が、“本筋“に変貌してゆく姿を体現してもらいたかったのです。


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名匠木村正彦先生よりの鉄棒やジャッキを使った、樹の限界との挑戦のような仕事!


すぐには人前に飾れるものでは無いけれど、数年の刻をかければ、鉄棒も外れて、“これがあの時の樹?“と言うようになってくれると思います。

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やっぱり、樹と一緒に過ごしている時間は、何よりも楽しいですね♪



来春2月の国風盆栽展、1月初旬には審査申込み締切、下旬には選考審査。
ここから本格的な樹の準備に入ります。

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エスキューブは、通年木村正彦先生と共同で進めていますが、申込み予定の樹は、11月中にハウスに取り込んで、手入れや状態の万全に努めます。
先日も先生の所に伺って、今年の進行の打合せ をしました。
真柏・黒松・五葉松・その他、多種多様な盆栽がこれから先生のアトリエハウスに集まります。


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多い時は50点を超える最上級の盆栽達が、所狭しとハウス内に置かれます。
既に先行して搬入してあるもの、これからお客様の所からお預かりしてくるもの、
審査での評価が楽勝のもの、手入れを入念にして、1点でも審査点を上げたいもの、
鉢映りを直さないといけないもの、一人ひとりのお客様の気持ちになって、考えなければならず、思案に苦労します。


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それでも、国内最高の展覧にご自身の盆栽が飾られた時の、愛好家の方々の嬉しそうなお顔を思えば、
精一杯のお手伝いに努めないとと、気を引き締めての準備が始まります。




大徳寺での「慶雲庵特別展」の準備の為、しばらく業界のオークションに出席出来ないスケジュールとなる為、
久しぶりに千葉匝瑳市の「マルキョウ交換会」に参加しました。
手頃な1~5万程の盆栽から、100~200万の将来の国風展へ向かう樹まで1000点を超える出品!


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特に感じたのが、ビットを入れると必ず対抗ビットが入るのが、海外からのオーダーに応える代行業者と声。
会全体の約半数が海を渡る事になりました。
特にサツキの動向が最近目立って注目を浴びています。
海外への検疫等の関係で、“運び易く管理が容易“と言うことが人気に火がついたと思われます。


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それでも全体に言えるのは、10~20年作り上げた樹が、手間賃も出ない額で落札されること。
お客様に供給する立場からはありがたいものですが、今まで作り手が育ててくれたからこうして市場に出てきますが、
海外に輸出された分はもう日本には戻りません。
次の時代、日本の盆栽素材の枯渇は目に見えています。

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人件費の高騰で、日本での苗木からの作出者が激減する中、私達プロは、次代の業界の在り方を根本から考えなくてはいけない岐路に来ているようです。

先達が人生と生活のすべてを費やして残してくれた盆栽達。
もう一度あの若き修行時代に日々苗木の八房五葉松の接木をした頃を思い出し、ここから何をしなければいけないか?
振り返る日になりました。



新宿都庁前、副都心のシンボル京王プラザホテルのロビー階に、
『日本の伝統文化・癒しの盆栽展』が、企画協力NHK文化センター・展示協力日本宝樹会で開催され、参観して来ました。


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普段より業界で共に活動する蔓青園、加藤崇寿さんが案内してくれました。
国風賞受賞の名樹など、都心の現代空間の中に、“古典でありながらモダンな美”として、象徴的に展示されていた事が嬉しかったです。

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これだけの名品でも、コロナ禍の中けして多くの方々が観てくれる訳でもない、
それでも盆栽の素晴らしさの中に“人の心を癒してくれる“事を見事に伝えてくれています。

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私も含めて、少しでも盆栽の素晴らしさを伝えたいとする活動は、それぞれの姿は違っても、
この展覧のように「傍観者」ではなく「実践者」として苦労をされても頑張る方々に敬意とエールを送りたいです。

五葉松・黒松の生産と育成では、国内随一の高松鬼無地方。
鬼無を代表される「小西松楽園」小西幸彦先生の所へ伺いました。
前回お伺いした時、今は殆ど手に入らない、“銀八”宮島五葉松を苗から育成され、中品盆栽に仕上げた夥しい鉢数を見て驚きました。

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「通年ならヨーロッパなどからの注文で、この時期は予約品で売る物も無い時なのに、今年はコロナの事で、来年の鉢上げ分をどうやって棚に置こうか悩んでいる」
これを聞いて、棚に広がる千点近いこれらの樹を全部譲って頂く事にして、今回それを引取りに来ました。

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ご家族総出で積込みを手伝って頂く中、“ちょっと来てくれ“と言われ、
小西先生と暫く歩くと、目を疑う程の大型太幹の五葉松が、整然と植え並んでいました!

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“親の代に植えて、私の時代でも半世紀を超えた作出をした樹達。森前君が良ければ譲ろう”と申されました。
鬼無各地を廻りましたが、こんなに手間をかけて見事に作出した太幹物は、初めて見ました。

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来春の抜き込み、移動、という事で譲って頂くことになり、思いがけない縁を頂きました。
老匠達が、刻を惜しまずに手がけた鬼無の銀八五葉松。
有り難くもあり、次の時代にはこのような樹達がこの街からも消えてゆく事に、複雑な思いも抱きました。
世の中の生活レベルが向上して、日が昇り、暮れるまで、樹と土にまみれて暮らされて来た先輩達が残された遺産。
これからは“5~8年位で出荷できる生産品へ“となっている現状。
盆栽がいかに人の刻を削って作り上げられてきたのか、私達は伝えていかなければいけないと痛感しました。
鬼無に来ると、何故か心が穏やかになります。
それはきっと、そこで盆栽達の育成に努められる皆さんが、自然と樹と共に、無理せず暮らされているからなのかもしれません。
羽生に運ぶこの子達を、大切に盆栽を愛される皆さんへ繋いでゆく事の重さを感じる1日でした。

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