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盆栽歴47年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 盆栽


間もなく“盆栽界の祭典“と言える国風盆栽展の季節になります。
修行時代から数えて50年近い盆栽歴、国風展はいつもその年の業界の頂上とされる展覧です。

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十代の頃、国風展の会場管理(水掛け等)で、緊張しながら
真柏名樹「昇天の龍」の隣に半日じっと監視員として立っていた頃が懐かしく思い出されます。

当時の国風展は盆栽界の隆盛期もあって、100点以上の作品が、選考で落選となる事多く、
修行先でもお客様の国風当落で一喜一憂した事が昨日のようです。

現在は盆栽協会の会員数も半減して、出品応募も昔の半分!
それでも選考審査で出品枠を超える席数部分は落選の憂き目にあいます。
愛好家の皆さんは、どれもが丹精と愛情を込めた盆栽達。
誰もがどれもが、入選して飾ってあげたいのは、業とする私達の変わらぬ想いです。

先日も、海外の出品選考申込みをされた愛好家から“私の樹は賞がつくか?“と言われ、

“国風展は日本盆栽界の祭典、入選することが望みで、賞というものはありません。
しかし、
その中で特に優れたものだけ、国風賞と言う栄誉が与えられるのです“
と答えました。

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最近は国風展も多くの出品を受け入れる為に、前期後期の二部制になり、それに伴い、
国風賞も複数(実際には前後期で5~6点)受賞するようになりました。
愛好家の皆さんが、国風賞受賞となれば、お喜びになる事は当然です。
扱い業者としても鼻の高い気持ちはあります。
ただ、最近は年をとったせいか、昔の事を思い出します。
盆栽倶楽部(現在の上野グリーン倶楽部)で売店の設営準備をしている中、美術館での国風賞の結果が急ぎ知らされた時です。
“今年は該当樹無し!“  この記憶は今も忘れません。

どれもが立派で素晴らしい盆栽達、その中で頂点と言える樹を選ぶ事は難しいと思います。

今は亡き大宮盆栽村の草創期の尽力者、九霞園初代、村田久造先生の老成された時の言葉が思い出されます。
「森前君、私のように年をとると、どんな樹を観てもみんな素晴らしく見えてしまうのだよ。盆栽にはひとつひとつの“貌・かお“があるからね」
近年、国風賞をとることに目標を持たれる方と業者が多くなったと思います。
勿論、作品が高い評価を得る事は嬉しいものですが、自然の造形である盆栽には多種多様な“貌“が確かにあると思います。
選考とは人が成すもの、何処かで優劣を決めなければならない事はわかるのですが、それに血道を上げる様となるのは見づらいものです。

昔、栃木県の古老盆栽大家と謳われた、石川義雄先生という方がいらっしゃいました。
いつの国風展だったか思い出せませんが、野梅のとても古い名樹を出品されました。
古渡烏泥の名鉢に普段より納められて、“これが本物の盆栽だ!“と、私も唸ったものです。
国風賞にはなりませんでしたが、売店にお越しになられた時、私の店の前をお通りになった時、
“先生、素晴らしい梅を拝見しました。ありがとうございました“と申し上げると、

“嬉しいね!ありがとう。君のその言葉で5年くらい長生き出来そうな気がするよ“と、仰って行かれました。
多くの盆栽の名木を愛蔵されるだけでなく、そのお人柄、立居振る舞い、流石な紳士と憧れる方でした。

商売を考えれば、国風賞はお客様が喜ぶ有り難いもの。
しかし、賞というものが、まるで盆栽の優劣、愛好家のレベル評価になる事だけにはなってほしくありません。

ひとつの盆栽を見つめる心、盆栽を楽しまれる方、そのものが清廉な紳士淑女と評価される世界、
業者としても及第点とは言えない私が言える事でもないのですが、
こうして50年近く、盆栽界のお陰で生きてきている私が最近想う独り言です。

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それでも、今も国風展売店に飾る樹を鉢合わせをしたり、枝姿を直したり、楽しさと“買ってくるかな“の想い両方の相変わらずの私です💦



立春盆栽大市・国風盆栽展・日本の水石展開催、及び出店のお知らせはこちらから↓
雨竹亭ホームページ


一月も小寒から大寒へと、寒さが一層となる中、盆栽界最大のイベント『国風盆栽展』の準備が様々に進みます。
展覧の選考審査申込は既に1/6で締切り! 
出品希望の愛好家の皆さんは、1/23の審査結果を待つばかりです💦

私達、専業者も国風展に併催される上野グリーンクラブ『立春盆栽大市』出店の為の準備に入りました。
雨竹亭は同所館内・館外・2カ所にブースを設けて、昨年同様の最大ブース出店となります。

多くの訪れる皆さんに、見ていただけるように、盆栽達も最後の仕上げ“お化粧“の時期になりました。

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寒気が強まる中、真柏・松類など、葉色に瑞々しい翠を甦らせる為の、ビニールハウスや展示場を保温場とした管理が始まりました。

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真柏など、僅か10日間程度で、美しい翠を湛えるまでになりますが、
五葉松・黒松などは、葉色を戻したいが為に保温し過ぎると、芽が動いてしまい、国風展後の管理に苦労してしまいます💦

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手入れをして姿を整えて、それでも鉢合わせまで一気にやろうとすると、根を冷やしてしまう、
など植物の生理も充分に考えて仕事を進めねばなりません😓

2/9から(実際には2/8から)盆栽達の晴れ舞台が始まります❗️

【愛好家とプロのあるべき姿】

年の瀬、お世話になっている東北のお客様の所へ、新年を迎える前の盆栽と庭の整頓手入れに伺いました。

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盆栽が雪帽子を被る日の中、
凍えるような外気の下、私の下で長く盆栽研鑽に励んだ、宮城県多賀城市で園を構える加藤充氏の協力を得て、
樹々の状態、すぐにやるべき手入れ、冬季に手入れして樹格向上を図るもの、
様々な想いと何よりもこうして私達の正業を支えて下さる愛好家の方々への感謝を込めての暮の行脚が続きます。

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加藤充氏は、東北人らしく(💦❗️)朴訥でけして商売に長けている訳ではありませんが、
1年ずつ、コツコツと愛好家を周り、手入れのお手伝いを重ね、いつの間にか“彼らしい盆栽業“の姿を作ってきたようです。
雪降る中、かじかむ手で盆栽に向き合う姿、目先の商売にどうしても傾きやすいプロの多い世間、
後輩ながら、彼の真摯な日々の一端を観て、盆栽人のあるべき姿を思う日になりました。
頑張れ、無口な東北の盆栽人❗️


11月下旬、日本盆栽大観展(京都・みやこめっせ)特設売店の一角に、観客が目を皿のように見つめる盆栽達が並びました。

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巷で言う“工芸盆栽“とはひと味もふた味も違う、洗練された樹々達。
アート盆栽『華舞樹』の作家、谷村由華子先生の見事な小品や中品盆栽達です。

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銀座雨竹庵で出会って五年以上の刻、由華子先生の作品は超絶と言えるリアル感!
私たちプロでも、“華舞樹“だとわかっている上でも驚かされるひと鉢ひと鉢。

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ましてや初めて見る方々は、“ホンモノ?いや違う?“と、しばし魅入ってしまう程のものです。
梅もどき・真柏・まゆみ・長寿梅・けやき・等々、どんな素材でどうやって造られたのか?
不思議に思うくらいの谷村ワールドです。

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植物検疫などの問題で、持ち帰りの出来ない海外の盆栽ファンに喜ばれた初めの頃、
今ではひとつのアートとして高い評価を得て、手作り一点作を順番待ちする程の高い人気を誇っています。
“枯れない盆栽“  それでも心はいつも枯れることなく、潤いの豊かさを持っていたいですね❗️


京都大徳寺盆栽庭園も大観展も過ぎ、“北山時雨“が、庭内の紅葉を散らしています。
山も樹々も一年の色付きを輝かせた秋。
冬の訪れを前に、“名残り“の飾りを芳春院盆栽庭園内の「通玄庵」床の間にしつらえてみました。

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細身の柿、鉢持込み古いこの樹は、文人好みと言える姿を持っています。
半月の間、葉の色付きや実の充実を、刻々と深まる秋を感じながら、いざ飾る寸前に、
無駄枝を捌き、実数を減らし、描こうとした“風情“に合わせた樹姿にしました。
柿は枝先で実の重さで枝を垂らす、こんな樹味を大切にしました。
僅かな実、僅かに残った葉。
日本人が心底に持つ“もののあわれ“を表現しました。

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掛物も、時雨の中散りゆくもみじの葉、百年を超える画幅の紙本の枯れた味が、一層の静けさを出してくれました。

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脇に添えたくず屋形の石。赤玉石とは言え、寂びた石味が、まるで散り紅葉で覆われた屋根姿を現出したようです。

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一年かけて培養した柿、この一瞬の世界観を創り出す為の一年でした。

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