雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴45年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 盆栽


羽生雨竹亭・秋の恒例企画『秋の観賞会』も終了し、庭内の整理や盆栽達の仕上げ仕事に追われる日々が続いています。
先日、細身ながら 山採りの枯淡の味わい見事な真柏を、長野県須坂市にある井浦勝樹園氏より譲り受けました。
IMG_4226
真柏の舎利仕上げでは、国内指折りの彼、さすがの舎利芸です。
私は 新しい樹が入るとしばらくの間、なるべく何気なく棚で見ているようにしています。
“この樹の直す所はないか?もっと良い捉え方はないか?自問自答の気持ちで、樹に向き合っています。
私達盆栽家は、ともすれば「これはこうしよう!」と即座に作り変える事がありますが、私はそんなに器用ではありません。
朝夕・日々・己の心が変化する中で、安直に答えを出さず、その樹が生きてきた年月を考えれば、他愛も無い僅かの刻を大切に見つめます。
中には10年以上育て作りながら、ある時 “あっこの樹はこの捉え方があったんだ”と、思いがまとまる時があります。
何度もその経験をした私は、自分の樹を観る心がしっかりとなった時にこそ、樹に向かい合うことにしています。
この真柏も、井浦氏が丹精を込めた樹で、何も悪い所は無いのです。
しかし、どうも枝が重い。
何故だろうと毎日眺めている間に、“そうか!枝を大切にしすぎているんだ!真柏の厳しさと幹芸が弱いんだ”と思いました。
IMG_4227
「差枝を切る」普通は 考えぬことですが、真柏に大切なのは、
「細身でありながらも、凝視すれば どれ程の厳しい刻を生き抜いてきたか」
が表現されていることだと思います。
ゴツ過ぎる鉢合せと共に、樹相の捉え直しを行いました。
IMG_4251
更に、盆栽は 棚で鑑賞することは、その素晴らしさの半分です。
庭で眺めるだけなら庭木と変わりません。季節や景色、遠く心の中に浮かぶ世界が、
部屋の中に持ち込めて、それが思うままの時に替えられるから素晴らしいのです。
IMG_4230
卓を合せ、「自在天」の書。
この書は 150年前、武家社会の身分封建制度から、万民平等の時代を作り上げた、明治維新の元勲 天信翁の書です。
翁は維新という革命を天皇と共に成しながら、一切の栄誉を拒み 新社会成立後は、文人として生涯を送った私が尊敬する人物です。
添えと言われる「点景」には、銅製の観音像を配しました。
IMG_4231
真柏は、人と共にある世界観の樹ではありません。
自然界を超越した神秘すら宿しています。
神仙の住む世界観に相応しい点景として、仏の姿を取り合わせました。
盆栽は、どの様な樹にも、その樹が持つ世界観があります。
草木ひとつに宿る生命、その命が描く「心の中の自然」これを表現することこそが、盆栽趣味の醍醐味だと思います。


※音声が流れます。音量にご注意ください。

【舩山コレクション秋の手入れ!】

現在の日本盆栽界で東北地方を代表する愛好家・舩山先生の所で、季節の盆栽手入れを行いました。
気候変動の厳しいここ数年、五葉松の原生地でもある福島も例外なく、管理に神経を使います。
舩山コレクションを代表する五葉松「天帝の松」も、今年伸びた芽をひと回り追い込み、健康な冬を迎えます。
IMG_4249
約250点の盆栽達も、各枝の調子を揃え、整姿針金、真柏などの葉透かし、
羽生から3名の熟練、宮城県の加藤充君、圧倒的な質と量の「舩山コレクション」は、手入れに慣れたメンバーでも終わりなき内容です!
IMG_4250
今回一緒に同行してくれた森山義彦君は、名匠木村正彦先生の門下。
木村先生との交流も深い舩山邸には、創作作品としての著名な真柏の立石付もあります。
「この樹は森山君がひとりで手入れをして」私の声に真摯にこの作品と向き合う森山君。
IMG_4248
「師が作った作品を弟子が手入れをして守り継ぐ」側で見ていても嬉しいものです。
羽生の近隣、加須に盆栽アトリエを自力で構え、“腕ひとつ”で日々盆栽と向き合う森山君。
盆栽作家の檜舞台「日本盆栽作風展」で、いつかは大賞を彼に獲らせてあげたい!
舩山コレクションからその樹が生まれてくれることを願っています!

【世界に広がる文化】
先日 京都盆栽美術館の設計打合せに、オリンピック会場のデザインの一部も行なっている
日本デザインとの 
京都盆栽財団 理事長面談に立ち会う為に、夕方の灯り美しい銀座の店で待ち合わせました。
IMG_4131
久し振りに 見る銀座の店姿。
小さな店に訪れて下さる多くの外国人観光客。
IMG_4132
銀座の盆栽ショップ、盆栽好きの海外の方の多くがいつのまにかネット情報の中で店の存在をご存知で、
先日は 天皇陛下の式典に来訪された ジョージアの大統領も直接店に盆栽を求めにいらして下さいました。
私が自分でこの店を切り盛りしていた20年前とは、在り方も 求められる内容も様変わりしましたが、
日本の盆栽をご紹介する店としての意味は、何も変わらずに日々が続いています。
IMG_4133
もっともっと、この銀座の片隅で 皆さんにお伝え出来る“何か”を見つけてゆきたいです。


羽生で2年、中国西安から盆栽技能の研修に来ているハオ君とツァオ君。
朝7:30から夜は作業が終わるまで、日夜 未来の自分の為に頑張っています。
IMG_3945
IMG_3946
大学を出ていない彼等が、母国で身を立てるには、盆栽技術者としての技を磨くこと。
日々の一生懸命の彼等の姿は、私は勿論のこと 私と同じ11年の住込み修行をした名匠木村正彦先生の心も動かしました!
「森前君、彼等なら私の技を教えるよ」
感謝感謝です。
12月に開催される「日本盆栽作風展」に新鋭作家部門で今年も挑戦しました!
IMG_3947
IMG_3948
昨年はツァオ君が受賞した奨励賞を今年はハオ君が見事受賞しました!
最終的な仕上げの針金整姿を木村先生に指導して頂いて、鉢・卓・などの合わせも羽生で指導しました。
プロとしてはまだ入口の所ですが、等身大の自分を見つめて来年の作風展には、
日本での最後の作風展に更なる上を目指して頑張って欲しいです!
IMG_3949
おめでとう🎉  可愛い息子達。

【名鉢名水石・一堂の大展覧!】

未曾有の台風災害で沈痛の日本、その最中ではありましたが、
日本盆栽協同組合50周年を記念した大展覧が上野グリーンクラブで開催されました!
IMG_3988
国風展へ出品される殆どの樹を扱い、盆栽作家の登竜門「日本盆栽作風展」への選考資格者でもある盆栽組合員達。
半世紀の想いを込めたからこそ、これだけの名品が一度に集められる事は、今後もないと思います。
IMG_3989
数々の歴史を彩った名樹達・日本水石界を代表する名石・現物を見る機会はプロでもあまりない名鉢群。
被災された多くの方々への事を思えば、“なんでこの時に”と日程を恨む程の“二度と出来ない展示でした。
IMG_3990
私も 蔵品の内閣総理大臣賞を受賞した真柏と古渡烏泥を飾らせて頂きました。
IMG_3991
祝賀会場には、今年の作風展の大賞受賞作「赤松・漆畑大雅氏作」が会場の華を添えていました。
親交深い尊敬する木村正彦先生の門人として、その技量は以前より高く評価されていた人物、遅咲きと言えるくらいです。
業界に身を置いて45年、展示された数多の名品を見れば、自分が扱ったものも多く、若き頃の記憶が蘇ります。
還暦の今、もう少し頑張ろうと思いました。

↑このページのトップヘ