雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴45年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 雨竹亭


小僧の時代から数えれば、45年のお付き合いをさせて頂いた老大家。病に斃れて83歳の天寿を全うされました。

遺された夥しい水石・道具・そして掛軸。

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ご本人よりの遺言「すべては森前君に任せて、斯界を受け継ぐ愛好家の皆さんに残るように」。
これを奥様から強く要望され、8月は仕事の合間に少しずつ、ひとつひとつの中身を精査してみました。

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“片山一雨先生のものだ”、“水府散人先生からの石だ“、展覧会に出品した水石・卓・掛軸。
どうしたら多くの方々に広められるか?
3分の1を故人の親しかった方々に、残りの半分を故人が連載までされた月刊誌『近代盆栽』さんの通販に、そして残りの半分を、水石協会が主催する年2回の協賛オークションへ。

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協会のオークションは、その手数料のすべてが、協会文化活動に寄付されます。
過去にも1億円となる成果を挙げた、業界屈指の現金オークションです。
日頃はオークションに出品されることを嫌う愛好家の方々も、“協会の発展の一助となるなら“と、蔵内からの出品をして下さいます。
今年の秋のオークションは、9月13日。
前日の午後は、誰もが見学できる下見会です。
本当は業界の中枢機構である、上野グリーンクラブは、予約はしていたのですが、コロナ災禍を予防する見地から、協会事務局長を預かる私の羽生で開くことになりました。
名品から趣味家が愛した様々なものまで、勿論盆栽や鉢類も多数出品されます。
是非、お遊びにいらして下さい。


終戦記念日の15日、羽生の温度計は40度を超えていました!

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テレビの天気予報は熊谷・羽生地方は、38〜9度となっていますが、体感温度は40〜45度だと思います。
私が修行に入った頃、45年前は、暑い日で30〜32度だったと思います。


何万年もかけて種として存在している盆栽達も、たった数十年でこれだけの変化があると、生理的についてゆけないものがあります。
庭も数年前より、各種の日除けを設備していますが、松に日除けをするなど、考えてもいませんでした。

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朝もあまり早く水かけをすると、日中に乾きが強すぎて、8時頃に朝の水を与えるようにしています。
夕方の水は、渇きのあるものを中心に、全体には樹と周りの庭の温度を下げる目的で「葉水」と言うシャワーのような水かけをします。


8月も25日を過ぎると、朝夕の風が少しだけ変わっています。
そこまでの辛抱!盆栽達も必死に我慢しています。“ガンバッテ!“
不思議なもので、35度を超えると樹も水をあまり吸いません。
30~32度だと渇きも良く、樹も“夏バテするんだなあ“とつくづく思いました。


季節は巡ります。
ついこの間までの長梅雨。

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“早く梅雨明けしないかあ、青空しばらく見ていないなあ“と呟いていたのに、
今は“ひと雨欲しいなあ“・・もしかすると、人の心が一番わがままなのかもしれませんね!


八月、暦の上では立秋ですが、それは名ばかり!
ここから暑さも本番です。
今年は長梅雨で、地面の温度が昨年ほどにまだ上がっていません。
30〜33度、日本の中でも最高気温の高い羽生では、猛暑となれば、35~38度!
盆栽も夏バテしないように、各所に寒冷紗や日除けの設備を施して備えています。

床の間の飾りも、何処かに暑気を払い、涼を呼ぶものを心がける今です。

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揖斐川石の深山渓谷の一部を切り取ったかのような石が入ったので、飛沫をあげる滝下の景を現す水盤飾りを準備して、それに合わせた掛け物を設えました。

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「滝に鶺鴒」武部白鳳の作。
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峻烈な滝を横切る一羽の鶺鴒。
まるで眼下の揖斐川の岩溜りそばの渓流に棲む獲物を狙うようです。
大型の水盤石、掛け物をやや控えめの大きさにすることで、席全体の間調子を保つようにしました。
脇には五葉松の文人調。

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主石と喧嘩しないように、こちらも弱めの取り合せ。
景趣に合わせて、半懸崖の険しさのある盆栽でも良かったのですが、水石と力がぶつからない事を大切にしてこの樹にしました。
“場に合わせて飾る”・飾りの基本ですが、何度設えても、100点など程遠く、いつも反省を覚える為に繰り返しているようです(笑)

コロナで動きづらい日々。
せめて席飾りの中で、自然の素晴らしさを満喫して頂ければと願っています。
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【コロナなんか疫病退散!】

東京を中心に、終息の見えない新型コロナウィルスの災禍。
鬱陶しい梅雨と豪雨による各地の痛々しい災害。
みんなの心が塞ぐような事ばかりの中、日本の文化と言える「祇園祭り」が58年ぶりの中止になった事は、
この祭りが平安時代の869年、疫病退散を祈願して全国の当時の国数66に因んで、
66基の神輿を祇園社(今の八坂神社)から市中に出した「祇園御霊会」に始まりを記している事からも、是非敢行して欲しかったです。

毎年、この季節には雨竹亭も、1年間育て作った「姫孟宗竹」を飾った「祇園御霊会」を席中に設えます。
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姫孟宗竹は、飾る前に席中の流れを見極め(床が左流れ)無駄なものを思い切って切り取ります。
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掛物は幕末から明治に活躍した、日比野一圭の筆による「長刀鉾」の図。
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祇園祭りの前祭(17日)は23基、後祭(24日)は11基の山鉾が繰り出しますが、その中でも「長刀鉾」は、天に向かって“邪を祓う”とされます。
私も今年は24日の後祭の日まで、この長刀鉾を飾って1日も早いコロナの終息を祈ろうと思います。

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追伸
前回のブログと今回の席飾りの脇飾りに使った、故根岸先生の「塔」ですが、
非力浅学な私は「五重塔」としましたが、拙文をご覧頂く読者様から、
「これは薬師寺の三重塔のスタイル」とご教授を頂きました。
盆栽水石以外の事、知っているようで無知な事多く、こうして私のブログを見て下さる方々から、いろんな事を教えて頂く事、
61歳ですが、まだまだ勉強しないといけない事ばかり!
ありがとうございました😊
皆さんも是非いつでもメッセージ下さい!


私が羽生の地にこの雨竹亭を構える時、土地の選定から慣れない現地での始動に親身になって下さった根岸庄一郎先生。
83歳で今春天寿を全うされました。
15歳で栃木で修行を始めた頃からのお付き合い。数えれば46年の刻を共にさせて頂きました。
盆栽を藤樹園、浜野元介翁の薫陶を亨け、片山一雨先生の“飾り”を高弟として究められた根岸先生は、
盆栽水石の探究愛好会『玄虹会』の発足メンバー。
数多くの席飾りを共に修練し、時には先生のご立派な邸宅の座敷を拝借して、
仲間の皆さんと蹇々諤々の歓談を繰り広げもしました。
12日は先生の83歳の誕生日。
玄虹会の皆さんで私の庭の観音堂に集って、
大徳寺塔頭の芳春院ご住職を京都からお招きして、趣味の仲間での供養をする予定です。
応接室に根岸先生の肩身の水石・水盤・掛物・点景・を設えました。
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瀬田川の梨地石・水府散人旧蔵の白交趾楕円水盤
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小早川秋聲筆「名月図」
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脇には根岸先生自作!の五重の塔。
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飾りの中に人生観まで見つめた先生の精神を少しでも次代に伝えてゆきたいと思います。   合掌

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