雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴45年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 雨竹亭

【掛軸を使った黄木瓜バラの席飾り】

日本全土にコロナウィルスの災禍が人々の生活に苦渋の刻をかける今、こんな刻だからこそ、
ご自宅の盆栽達とせめて豊かな刻を過ごして頂きたいものです。
季節より少し早めに咲き始めた「黄木瓜バラ」の古樹、これだけでも充分楽しませてくれますが、
道具立てを取り合わせる事で、そこに広がる景色は大きく広がります。
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季節の花物盆栽は、可憐な花姿を愛でる“身近な世界観”となりがちですが、
盆栽の幹や枝に鉢持ち込みでしか現出しない“古趣”つまり厳しい刻を重ねた樹にしか見られない味わいがあるものは、もっと深い景趣世界を設えてみたいものです。
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今回は霞む山と一羽のほととぎすの掛軸を取り合わせてみました。
中型の盆栽に掛物を合わせる時、できれば樹が小さく見えないように、縦長の掛け軸よりも、横物の少し小ぶりな軸を使いたいものです。
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山里の麓に生きた木瓜バラの古樹。
老樹でありながら霧煙る季節には可憐な花姿が枝先に。
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遠くを仰げば芽吹に萌える山姿。
そこに一羽のほととぎすが一声鳴いて一閃。
自然の移ろい、静けさの中の盆栽の色彩、「樹画一体」の境趣です。
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添えの飾りに山裾に流れる川面の舟。
“静けさと“動”。
この時に船の材質も考慮したいものです。
主たる盆栽が花物ですので、唐金や古銅などの鋳金ものよりも、陶製や木製、つまり“堅くない存在感”に努めたいですね。
添景である舟も出来るだけ小さめ、大きくなると景色が“目の前”で強く余韻が無くなってしまいます。
床の間が無くても、添景や色紙掛けなどで、お部屋の中に盆栽が主人公の別世界が浮き上がります。
皆さんもお手持ちの盆栽でご自分の「心の中の自然」を楽しんで下さい。


外出を控えてご自宅にいる時間の多い中、退屈しのぎに、“売れ残りのかわいそうな石や盆栽で、遊んでみました。
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石は水石として1点では見づらいもの。
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真柏は細いまだ6〜7年生の若木。
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これに砂と何でもいいから水盤の代わりになるもの(観葉植物のトレイなどもいいかも!)
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有名な庭師の方が言いました。
「石には必ずどこか見所があるもの。そこを見せて見づらい所はたとえ半分でも庭に沈めるんだよ」
この言葉と同じに、小さな石の中にも、厳しさや雄大さ、そして「どこかの風景で見たことがあるような」所があるものです。
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これを自分の感性で思いのまま組み合わせてみると、意外な景色が生まれるのです。
手前に「近景」を作って、奥に「遠くの風景」を合わせてみる。
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もし、お手元に何か風景を扶けてくれる今回の船みたく、フィギュアのようなものがあれば、
それを風景の中に上手に組むことで、より実景のような世界があなたの手によってできます。
石の置き方、盆栽の種類などで、僅かな持ち物でも、千変万化!
ご自分のリビングや机の上に、あなたの心が描いた「貴方だけの心の風景」が毎日その姿を変えて現れます!
ウィルス災禍の辛いニュースがテレビを覆う毎日。
せめて盆栽と石が、部屋の中で癒しと楽しみになる事を願っています。
盆栽屋の手慰みでした!



まだ4月の半ばだと言うのに、羽生の庭の藤の盆栽は花房が開いて降り始めました。
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藤は蔓性で、持込みの古い単幹のものが少なく、この樹のように枝先まで切返しの無いものは貴重です。
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年に一回の花物盆栽の咲き誇る時、一度はちゃんと床飾りをしてあげたいですね。
今回は、藤の花に合わせて「雲雀・ひばり」の細身の掛軸を使いました。
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通称「揚げ雲雀」と言われるこの図柄は、本当は4月末から5月中旬に使うものです。
田畑に早苗や若葉が茂る頃、天高くに囀る(さえずる)鳥です。
まるでヘリコプターのホバリングのように、1か所に留まって鳴いています。
陽春の代名詞の雲雀と、花房を降す藤。
これだけでも、充分な見応えのある飾りですが、
脇に添景、まさに名の通り、景色を添える様々なものを取り合わせることで、
更に盆栽を中心にした世界観・季節感・そして風趣が描き出されます。
今回は、木彫の農屋を象った置物にしました。
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金工として名高い本間琢斎の作品です。
藤などの花物盆栽に合わせる添景は、そこに現出する景趣は勿論大切ですが、できれば花に金属のものは避けたいものです。
添景の“格”や強さは、金工物・陶製・木彫・の順になります。
どれが良いと言うのではなく、主飾りになるものによって、脇飾りの質(マテリアル)は違ってきます。
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花咲き、ふり降りる藤、仰げば天高くに雲雀の囀り。
穏やかな陽春の日和の中にひっそりと長閑に庵ひと棟。
飾りとは、ありのままの自然の風景を、心の中のファインダーを通して、余計なものを消し去ってしつらえるものです。
是非、皆さんも、ご自分の盆栽や水石で楽しんで下さい。
一点の観賞から、設えの組み合わせで、日本人ならではの総合的な美が毎日楽しめます!


ソメイヨシノの桜が満開になる季節、春爛漫のうららかな風情を楽しむのが普通の皆さんですが、
盆栽業を半世紀近くしていると、この季節の風や空気を感じると、“植替えだ!”と待ち受ける仕事の量に身震いする気持ちになります。
今年はコロナウィルスと言う、経験のした事もない中、最低限のお得意様への「出仕事」以外は、庭内にいる事が多く、
毎年“ああ、この樹も植替えしたかった!”と、自分の庭の樹の植替えが出来ない事が多かった事を取り返すつもりで、
連日手入れ小屋に入ってスタッフと悪戦苦闘しています。
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切込みや針金掛けなど、ある程度の季節の融通が効くものと違い、植替えは樹種によって期間が決まっています。
それに間に合うように、“あの樹は先に、この樹は鉢を替えて”と、果てしない“行”を続ける気持ちで挑んでいます。
使う用土にしても、樹種・若い樹・老木・弱っている樹・大型・中型・小品等々、少しずつ土の配合が皆違います。
とにかく一番頭を痛めるのが「鉢合わせ」です。これでも常時1000~2000点の鉢は用意しているのですが、
それでも中々ピッタリとこないものもあり、商売で手放してしまった鉢に後悔する事もしばしば。
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でも、ウィルス災禍で気が病む日常、広い庭内で一心に盆栽と向き合って手入れに集中していると、何故か気持ちがスッキリします。
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ある時、高名な禅の老師に言われた事を思い出します。
「悟りを開くなど、誰も出来るわけではないが、座禅をすると同じように自分のなすべき事を一心不乱に集中すると、それは禅で求める境地に似たものが得られるよ。
動かぬ座禅に対して、これを“動禅”つまり何も迷うもの無く物事をし続ける事、一般社会の方々のなされる当たり前の姿は、我々禅僧が辿り着く境地に近いのだよ」
私はこんな高邁な意識には程遠いのですが、盆栽手入れに打ち込んでいる時、ほんの少しこれに似た気持ちがあるのかなと感じます。
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皆さんもご自分の大好きな事にひたすら打ち込んでみることも、今の閉塞感から脱皮出来るかも!是非試してみて下さい!
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【脇飾りで様々な景色を!】

コロナウィルスの影響で、自宅に籠りがちな今年の花見。
盆栽飾りでいろいろなロケーションを楽しめます!
主木の枝垂れ桜は、珍しい“一重咲”の枝垂れ性の富士桜。
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咲き始めは白っぽい花色ですが、徐々に紅色を帯びてきます。
そのコントラストも美しく、気品ある花型と色、何よりも「儚い美」の結晶と言えます。
初めは京都清水焼の人形と。
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十二単の姫が桜の樹の下にいる姿は、絵になります。
人形の名は「紫の上」つまり紫式部を表しています。
『源氏物語』の絵巻の中のようです。

次は木彫の農家風との合わせ。
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山里のくず屋の脇に咲く枝垂れ桜の風情。
温かい陽射しを感じます。

3番目は「旅の老爺」本当は芭蕉の像ですが、旅僧に見たてています。
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鎌倉時代の有名な僧・西行が詠んだ名句、
「願わくば 花の下にて春死なん そのきさらぎの望月のころ」
は、桜を題にした日本人の死生観を歌った言葉として今も共感の多いものです。

ひとつの枝垂れ桜の盆栽、これだけを愛でて楽しむのも良いですが、
このように添えの道具とそこに見える日本の情緒で、目の前の景色は、果てしなく広がります。
これも盆栽趣味の醍醐味ではないでしょうか。

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