雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴44年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 雨竹亭


【盆栽と共に 人生を刻む 宝物】

3月20日・盆栽だけが取り柄の人生が、60年の節目を迎えた。
日々慌しい生活の中、スタッフ達より 思いもかけぬ贈り物を貰った。
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『グランドセイコー』元来 着る物や身に付ける物には、余り気にしないというより、ほぼ無頓着な方だが、
若き頃より 盆栽関係で愛好家の方々の所に出入りして、多くの品格ある旦那さん達が、車はトヨタのクラウンに乗り、
時計はセイコーの上等なものをされている方が多かった。
「森前、見かけで着飾るような男になるな、良き物を目立たず身に付ける事が肝要」
と、よく聞かされた。
当時は若く、そう言ってくれた古老の心まで汲み取れなかった。
そして銀座の店を開いて、“唯我独尊”の様な、よく言えば遮二無二、悪く見れば好き勝手にわがままし放題の日々も過ごした。
そしてそれが 如何に意味の無い浅はかな姿だったかは、派手な銀座の仕事に躓き、
奈落の底へ落ちた時、初めて気がついた。“人は静かな本物こそが素晴らしいのだと”。
そして盆栽も、展示会で賞を取るような名木だけではなく、ひっそりと生き続けている細き老木にも深い美が沈潜していることが、
無一文となった時、何気ないと思っていた樹々から感じた。
そこから12年。
自分には盆栽・水石・だけが、人の世で生きる意味のあるもの、と気付き 
多くの人達に支えられ、助けられ、導かれて この歳になった。
私の様な者が、よくこの歳まで 同じ道を歩いてきたものだと、つくづく思う。
羽生の地に 根を下ろして 十数人のスタッフと共に、あくせくとした生活には変わりがないが、
若きあの頃、歳を取ったら 日本人としての品格を持った自分でありたいと願う姿のひとつとして、
『車はクラウン(今は レクサス?)時計はセイコー』、車は数年前、お客様より拝領したセルシオ
(結局5万キロで乗り始めて、20万キロで下取りに出した)から、社用車としてレクサスとなった。
そして 誕生日に このグランドセイコーが 左腕に届いた。
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クラスとしては同じグランドセイコーの中でも安価な方だが、私には丁度いい。
何よりも、薄給のスタッフ達が、浄財を出しあって この手に届けてくれたもの。
普段は盆栽の手入れでズタズタになるので、アルバという3000円の2~3年は壊れない物をしている。
この贈り物は、大切な刻、大切な人、大切な場所、そんな時にしていようと思う。
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勿論、これを贈ってくれたスタッフの結婚式には、必ずグランドセイコーで出席したい。
「時を刻む」 時計はそれが当たり前の事だが、盆栽人として 数百年の命宿る樹々と生きる身、
樹と共にここからの自分がどうあるべきか?大切な大切な この贈り物と歩いて行きたいと思う。
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ありがとう、みんな。
ありがとう、盆栽人生。

【朧月に枝垂れ桜の盆栽飾り!】

平成最後の桜、雨竹亭 盆栽飾りの“定番”とも言える 枝垂れ桜も満開の時となりました。
麗らかな春を告げる「清明」の節気。
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名筆 森公挙 の 朧月にかかる 一重咲きの枝垂れ桜は、美しくも儚さを秘めた、
日本人の心情を表した「もののあわれ」の美を感じさせてくれます。
中国広州登り窯で 誂えた 均釉の鉢・脇床の深山の雪解け水を見せる渓流石。
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潤湿な日本の季節が席中に満ち溢れています。
日本人は 何故儚く、いずれ消えゆく姿に 深い美を感じるのでしょうか? 
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永遠でないひとときの移ろい。
自然と言う何ものにも代え難い 自分を取り巻くものと、刻と言う至高の価値。
私は盆栽や水石に、日本人が心の原風景に持つ 美意識が潜在していると思っています。
いつかは、その命題とも言える
 “盆栽とは何か?水石とは何か?己とは何か?”を、拙文に残す機会を得たいと願っています。
勿論 未熟な還暦、ここからの“先”に見えるものを日々有りのままに受け入れながら、
まだまだ この旅路を続けなければ かけないとわかっていますが!
(この ブログも、実は羽生から出かける前に“咲いたらこう飾って”と、指示して撮影してもらった写真を見ながら書いています!こんな事じゃ、当分 ダメですね!)


【木村正彦先生の真柏と寒桜】

彼岸を超えて 各地からソメイヨシノの開花が伝えられる中、盆栽も季節の移ろいを日々現す頃となりました。
月末から月初にかけて 久しぶりの海外。
今回は約100点の名木の植え替えを現地で行う為、熟練のスタッフから見習いまで、総勢9名で 渡航します。
10日間も羽生をこの季節に空けるのは、芽出しの季節、心苦しく辛いのですが、
日本から渡った真柏などの名樹達を手入れをせずにそのままにしておくわけもいかず、お手間賃も有難いほど考えて下さる愛好家。
せめて 出かける前の“今”を応接室に設えて行こうと思いました。
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帰国する頃には 桜は満開を過ぎ、名残の葉桜、盆栽も この寒桜を早春飾りの最期に、
ここからは枝垂れ桜の儚い美しさが、庭内・室内を満たしてくれます。
先日 名匠木村正彦先生の所から来た、真柏の大型古木に満開の寒桜。
朧の月の掛け軸と共に、寒桜の“刹那”の美・真柏の連綿と続く荘厳な命の営み、盆栽の持つ美と精神の両面を飾ってみました。
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・・・やっぱりこの季節はこの羽生、日本にいたいです!

【雨竹亭盆栽教室入門!】

雨竹亭の盆栽教室の平均年齢を大幅に若返らせる生徒が入門しました!
清水ちえりちゃん、なんと11歳。
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(本人、お父様に許可を取って写真とお名前を掲載させていただきました!)
群馬県高崎市・お爺様・お父様も盆栽愛好家で、お爺様は今年の国風展にも出品されている大家!
ご家族で行った国風展でも、盆栽協会に最年少入会されたとの事。
夢は 自分で考えて盆栽を手入れして“国風展に飾ること” !!!
盆栽で言えば、将来の名木になるかもしれない大切な素材。
それでも 私は盆栽を通して命の大切さや、人に対する優しさを 感じてもらえる事を1番に伝えたいです。
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羽生雨竹亭の庭が出来た時には、生まれていなかった子が、こうして盆栽をジッと見ている,,,
盆栽人として 何をすべきか、教えてもらっているようです。
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【「鉢作り」の歓談!】

先日 古老の訪問を受けました。
雨竹亭の庭に ご老体がいらして、“何処かで見た方”と思い 声をかけたら、日本鉢名工「中野行山」先生本人でした!
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ご本人とお話しするのは初めてで、本物の鉢作りに対する問答で
“こんなに制作に詳しい盆栽家にお会いしたのは初めてで、今日は会えなくてもと伺って良かった”
と言われて、少し照れてしまいました!
八十路を目前に 政策に対する考え方は、壮年期のまま。
「最近は 注文の額面長方などに飽きてしまいました。次の時代に受け入れられるもっとデザインを考えた作品を目指したくて、森前さんの意見を聞きたかったのです」

!!!

同じように 盆栽の創作に情熱を輝かせる木村正彦先生と通じる
「到達した名人のみが感じる境地」があるのだなあ、と 還暦を迎える私など、まだまだ修行が足りないと痛感しました。
“見てほしい”と言われた2枚の新作鉢の内、一作を無理を言って譲って頂きました。
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「全盛期で年収1000万・普通は500万に届くかどうかが、鉢作りの職人の価値ですよ」
の言葉にもビックリ!
中国の奥地に行って「失われた盆器の歴史と技術」を追求する私。
振り返って、日本鉢の陶地・常滑に次代の盆器を共に描ける人物がいないものか?
もう一度色々と考えようと思う行山先生との時間でした!

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