雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴43年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 雨竹亭


【木村正彦師ら、盆栽作家100名参加】

月例となっている羽生雨竹亭の盆栽オークション「天地会」の年の納めの会が先日開催されました。
準備した出品用の棚に置き切らない程の盆栽達!
それでも競り人である私と盆栽組合の主競り人大久保さんで、朝から気合を入れた競り声で"飛ばし"ました。
夕闇迫る頃、終了の手拍子、総出来高7676万は 
盆栽界の中心地上野グリーンクラブでの「水曜会」を大きく上回るものでした。
決して名木が出るわけでもなく、手頃な盆栽が数多く
しかし不落札が少なく約8割が成立するという、近年の成立率としては群を抜くものでした。

木村正彦師・蔓青園 を筆頭に東日本盆栽界の主要メンバーが揃って参加して下さったのも大きかったです。
とりわけ、中国からの参加者(プロ盆栽園主・バイヤー)の 熱気凄く、
私も買いたい盆栽の半数が入手出来ませんでした。
これからも中国勢の来訪買い付けは、冬の間続くでしょう。
日本盆栽界としても「売りたい業者・国外行きは困る?」というジレンマの中で、
市場の動向を見守る事になります。
近い将来、国風展上級クラスの盆栽の海外流出に対する規制が必要になる時が来るでしょう。
但し、民間の「自主規制」というものは、"食べなければならない"プロと
良識的コンプライアンスを唱えるプロの見解の相違を埋める事は出来ません。
名盆栽が、もっと「国の宝」としての真の評価(安すぎるのです)を得て、
行政が保護するまでには、まだまだ時間が掛かります。


【花梨名樹と"福来雀"】

慌しい歳末、とかく盆栽を床飾りする余裕も心から忘れがちな日々があり、
己のだらし無さを痛感させられるものです。
特に12月は季節を捉えた飾りが難しいもので、
"一年を振り返っての新年を何処かに思わせる"隠れた情緒が大切な設えとなります。
今回は、入手してまる二年、手入れ・植替え(均釉袋式長方)を進めて、
ようやく観賞できるまでになった花梨を使っての「師走の床飾り」をしてみました。

古幹の䕺立ちの揺れ立つ姿が、唐画の世界から抜け出してきたようなこの樹は、
花梨の盆栽として極めて持込み古い名樹です。
この樹を主役に雨竹亭の応接室を設えてみました。

掛物は「雪中双雀」作者は、岡倉天心が創設した東京芸大の前身、
東京美術学校の初期日本画教授として横山大観らにも指導をした今尾景年。
雪降る中に寄り添う二羽の雀。
寒さを避ける為身を膨らませて空気を孕んで暖をとる姿は、
古来より「ふくら雀」の愛称で呼ばれています。
これを「ふくら→福来→福が来る」になぞらえて、佳き新年を間近にする縁起に使ってみました。
過ぎゆく今年、振り返ってどんな一年だったかを想いながら、冬姿の寒樹と雀。
静かな当たり前の飾りの中に潜ませる趣意。
盆栽人として、己の鍛錬を込めて 飾りは "その向こう側にある想い"を必ず念想したいと思います。


【木村正彦先生と共同取得!】

北海道 帯広地方から 蝦夷松・一位・真柏 など、
百数十点の盆栽群が羽生に届きました。
1ヶ月前、木村正彦先生からお話を頂き、
一緒に買い付け交渉をする事になったものです。
おひとりの愛好家が、
半世紀近い歳月をかけて育んだ「山採り」素材がすべての一群。
10 t ウィングトラック3台には、明日にでも国風展に出品出来る完成度の高いものから、
時間をかけてでも、将来の盆栽界に伝承させたい素材まで、幅広いコレクションでした。
特に 2mを超える 原生そのままの姿を維持する蝦夷松は、
他に類例を見ることのない感動を得るものでした。
既に盆中で、50年の刻を過ごした老樹は、どんな舞台に飾る事が相応しいか、
夢を唆る作品です。
北の大地で深山から人の世界に降ろされた「自然界の命」、
懸命に守り伝えた旧蔵家の心を、多くの盆栽家に橋渡しをするのが、
私どもの役目のひとつです。


【観音堂で 安らかに 畏友ガルのもとへ】

私がこの雨竹亭を作った時から雨風も一緒に過ごしてきた名犬タロウが 
天国へ旅立ちました。
何も無かったこの土地に子犬で来て、生涯十三年間をこの庭で暮らしました。
2年前に同じく初代名誉会長だった名犬ガルが旅立ち、
大病を患いながらも、人間の様な仕草を見せたタロウ。
番犬としても立派に務めを果たし、この一年は2匹の後輩ゴールデン見守っていました。
獣医先生の所から帰って来て、大好きだったピンクの衣装ケースに入った姿は、
今にも目を覚ましそうで涙が出ます。
ガルと同じように観音堂に眠っているよう!
生涯の友だったガルの眠るとなりに眠らせてあげました。
ありがとう、タロウ。
ガルと天国で好きなだけ走って遊んで下さい。

【150年の五葉松根連り】

朝夕の秋風が身心ともにありがたい季節になりました。
ニューヨーク・ワシントンの講演旅行に 出かける前に、
雨竹亭の応接床の間に、先日 木村正彦先生に整姿針金施術をお願いした、
樹齢150年を超える五葉松の根連りを飾ってみました。

叢雲を抱く澄み切った秋夜の空に煌々と明けき姿を見せる名月。

遠くを仰げば、峻険な山々が刻の流れを嘲笑うように、凛然と山容を見せています。

五葉松の各幹は、それぞれに揺れ立ちながら、ひとつの大きな景色を描き、
まさに"松風を聴く"と言う言葉を一席に現出出来たかと思います。

名僧の残された詩を思い出します
「月落ちて 露光冷やかなり 松根 羅屋を照らす」
本格的な盆栽飾りを楽しむ頃となりました!

↑このページのトップヘ