雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴44年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 雨竹亭

【真柏の文人盆栽】

記録的な暑さの続くこの夏。
お客様をお迎えする羽生雨竹亭の応接飾りも、蓮の花や水石など、冷房のかかった応接室に入って、ホッとするものが多い季節です。
時には そんな中でも、盆栽の本質的な中身を持っているものを楽しみたくなります。
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先日、羽生で開催されたプロ専用オークション『天地会』に静岡の高木あずま園氏が出品して小店が落札した真柏を飾ってみました。
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細身の中型ながら、その舎利幹の味わいある旋律と間調子の効いた造りが、とても気に入っています。
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握りこぶし程の、くずや石を取り合わせることで、樹の大きさが増したように思います。
小僧時代より、
「文人樹とは、細ければ良いのではない。その中に枯淡の風趣や、生き抜いてきた厳しさが見え隠れしていないものは、偽文人樹でダメだ。」
と諭されました。
還暦を間近にする中で、その意味は実感として強く感じます。
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扁額「自在天・自ずから天にあり」禅問答のようなこの言葉が妙に似合うのも、
樹が何かを語りかけているような印象があるからでしょうか?

【千年続く 都の文化を床飾りに取り入れて】

連日の猛暑に とにかく盆栽達を強い陽射しと高温から守るのに必死の毎日ですが、
そんな中でも この羽生の庭へ訪れて下さる方々をお迎えする「夏飾り」には心掛けたいものです。
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昨年 七鉢程 作り始めた “蓮の花”の中で、やっとひと鉢だけ、飾ってみたいものが 出来ました。
自然の恵みと言うべき 花姿は、本当に 仏様がそこにいらっしゃるような、美しさと浄蓮さを感じさせてくれます。
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「山鉾巡行」の掛物が、“疫病退散”の祈願の神事として、京都八坂神社で始まってから千年以上の時が過ぎています。
ご存知ですか?
三十三基の先頭に立つ「長刀鉾」の山鉾は、邪気を祓いながら進みますが、決して御所と八坂神社の方に、刃先を向ける動線を取りません。
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脇床に 東山を連想させる貴船石の山形石。
蓮華の無垢なる美・祓いの願いを込めた神事の掛物・そしてその古都を映し出す水石。
飾りは 季節・歳時記・景趣・等々、込められた席中への想いが 遊び心を駆り立てます。

本格座敷飾りの準備『玄虹会』

サツキの花咲く今ですが、すぐ足元に「初夏」の兆しが感じられます。
庭の「岩がらみ」の盆栽が見どころとなったので、床飾りをしてみました。
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清冽な瀑布を僅かな筆さばきで描いたのは、大家 菊池契月。
瀧を描くのではなく、それ以外の部分を描くことで、瀧を表現する腕は、流石に名筆!
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飛沫をあげる深山の崖には、蝶が飛び交うような花姿(正確には花ではありませんが)をみせる岩がらみ。
瀧を水墨で合わせる事で、岩がらみの葉の美しさが際立ちます。

もうひとつ、まもなく京都山科の里深くに構える数奇屋名亭・わらびの里『霞中庵』で開催される
「第10回 玄虹会展」の 出陳席の席割りと飾り構成に 知恵熱を出している中で、
本格文人盆栽飾りの “古武士的”な 席が出来たので、ご紹介します。
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赤松名樹「観月」。
 大宮盆栽美術館蔵の「帰去来」と共に、盆栽界に現存する赤松文人樹の雄として名高いものです。
大家小泉薫先生の旧蔵でしたが、
縁あって数年前に西宮に住する現蔵者の愛樹となりました。
取合せた掛物は、文人趣味的古画を愛する蔵者の大切なコレクション・池 大雅 の名筆。
「水流心不競 雲在意俱遅」その意は、
“ 川の水の流れのままに 心をまかせ 雲と同じに
気持ちをのんびりとさせる"
中国唐代の詩人 杜甫が遺した『江亭』の一文です。
脇飾りは、天龍川の古石「南山」まさに南画の中から出て来たような姿のこの石は、
煎茶の本山と言える黄檗山萬福寺の由来を秘めた 本邦初公開の賓石です。
文人盆栽と言えば、細身で飄々としたイメージですが、真の文人盆栽とは 
“ 静けさの中に心で捉える凛とした厳しさと古厳と言うべき 老感を持った格調高き盆栽 ”です。
力強い大型名木の数々を有した 小泉薫先生 唯一の文人盆栽だったと言えます。
今回の「玄虹会展」は、季節を考慮した このような “目利き唸る席 ”が数多く出陳されます。
僅か二日間の展覧ですが、日本盆栽界の未来の姿は、こんな樹達と展示会に あると思います

【五葉松終了から黒松へ!】

毎年行われる200~300点の春の植替えは、モミジやカエデなど雑木盆栽を2~3月に終えると、五葉松に移ります。
ゴールデンウィークまでこれを続けて、ひと段落の間もなく、真柏・杜松・黒松・赤松となります。
普通盆栽園では 自園の盆栽50から多くても100点、お客様への“出仕事”で50点くらいなのですが、
私どもは 年間で500~800点の盆栽が動き、昨年手入れをして植替えをした樹は、50点程しか残りません。
新しく“羽生の家族”となった樹は、どうしても手入れや植替えが必要なものが多く、
他の仕事をこなしながらも、みんなで夜半まで頑張る日が続きます。
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先日最後となる五葉松の植替えを終了して、いよいよ黒松類に入りました!
杜松の文人樹の作出をして、立ち姿を安定させる為に、“根締め”をしました。
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しっかりとさせる為に「四方竹留め」というプロ仕様の施術で行いました。
四国で以前から予約していた黒松の「秘蔵の逸材」を運び、植替えに入ります。
この樹達もいずれは名木として盆栽界に残る樹にしたいと思います。
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昨年より日本に勉強に来ている中国西安の若者達も、いつのまにか 植替えの助手を出来るようになりました!
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この子達も「名木」にして生まれ故郷で立派な盆栽家になってくれることを願うばかりです!

【現存する樹齢250年の祖樹!】

昨春 『世界盆栽大会inさいたま』で公開して3点1億円の展示でマスコミを賑わした、
絶滅したと言われていた五葉松「祖母五葉(地元では矮鶏五葉松)」。
鋏造りで百年を超える枝持込は、“ 環境の変化に耐えられるか?”との声もありましたが、
羽生に残した祖樹クラス2点は、1年半を過ぎる中、とても元気にしています。
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芽吹の季節を迎えても、僅か5㎜程しか芽も伸びず、“やはり四国産の宮島五葉松とはまったく違う品種”である事がよく分かります。
九州で苦難の愛育によってこの祖樹群を守り続けた田中家にも顔向けが出来ます!
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