雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴44年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 雨竹亭

【時限付の徹夜の日々!】

毎年6月中旬から7月上旬は、黒松・赤松 の芽切り作業で ヘトヘトになります。
3月初めには肥料を早めにやり始めて(途中5月に肥料を乗せかえる)力強く伸ばした新芽を
全部切り落とす。
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これによってそこから新しく吹いた多くの若芽を最終的に8月に間引いて短い葉姿にまとめる。
これが『短葉法』という  黒松・赤松・を美しく保つ手入れ方法です。
一般の愛好家の方々は、春の芽を伸ばしたままで秋を迎えるので、葉の長いバサバサした姿にしてしまいます。
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芽を切り、その下の去年の葉を7割くらい間引きする。
・・大型の盆栽ならば、1点で1~2日かかります。
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雨竹亭にはそのような盆栽が、大小合わせて200~300点!
手入れ管理のスタッフは昼夜を問わずの日々が続きます。
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名匠 木村正彦先生の所も、今も雨竹亭スタッフが、応援手入れに行っています。
特に海外の名木愛好家の方々は、日本のこの細やかな手入れを知らない方が殆どです。
どれだけ細やかな手入れを年々続けたかが、作品の完璧さを作り出します!

今年の芽切りの様子を動画で撮ってみました。
(開くと音が流れます)

地味で それをやったからと言って、劇的に樹格が見違える訳でもなく、
どうしても手入れの手間賃がかかる為、おざなりにしがちな作業ですが、私も含めて日本の盆栽家にとって、芽切りはとても重要な作業。
みんなこの時期の外出を避ける程の事です。
健康で生育状態が良好でないと、却って痛めてしまう作業。
樹によっては、下半分をやって、上半分を10→12日後にやる。
そんな 「樹に合わせた芽切り方」まであるくらいです。
難しいと思う方は、遠慮なく 雨竹亭を訪ねて下さい。
でも中型以下でも7月10日が作業の限界期日です!

【梅雨の美しさ!】

ここ数年、梅雨らしい梅雨が無かったような気がします。
猛暑と強い陽射し、松柏類にまで始めて遮光ネットをかけました。
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今年は 雨のち曇り、そして僅かな晴れ間の後にまた雨。
気温も20~25度をうろついて、盆栽の葉色も 潤湿な空気の中、汚れを知らない美しい翠を湛えています。
盆栽協会・水石協会・総会・大宮盆栽美術館の展示解説・月刊近代盆栽に連載の「名石探訪」の選出と執筆・・
自分の庭でありながら、ゆっくりと散策する時間もありません。
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それでも束の間の刻を庭の盆栽と過ごすと、“有難い仕事”だとつくづく思います。
樹々は その時その時期を正直に生きています。私も盆栽を見習って、目の前の出来事に正直に向かって過ごそうと思います。
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彼らのようにまでいかなくても、ここからの残された年月を盆栽人として 自然のままに行こうと思います。
・・・でも 盆栽達はいいなあ!


今年は何年ぶりかの 梅雨らしい6月になりました。
ここ数年は 真夏のような暑さと陽射しで、盆栽の日除けに苦労しましたが、
梅雨の季節には梅雨ならではの情緒があります。
雨竹亭の床間飾りも、潤湿な空気を捉えた設えをしてみました。
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葉の翠を深くするイタヤもみじ。
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掛物には急に降り出した雨の中、家路に急ぐ村人の姿。
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遠くには山里の渓谷に流れる清冽な滝。
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盆栽・掛物・水石・三体がそれぞれに共鳴した 自然界の“あるがまま”を描き出しています。
特に掛物は江戸期の狩野派の名も無き筆ですが、色を見せずに墨のみで描かれていることが、
もみじの葉色・石の肌味を 浮き立たせてくれています。
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『驟雨』俄かに降り出した夕立の様な雨・日本の言葉は、僅かな季節の移ろいの中に登場する景色を上手に捉えた表現が感じられます。
私達盆栽家の飾りも 一瞬の景色を切り取ったような“遊び心”を大切に楽しみたいですね!

 【国風展出品の皐月「大盃」】

梅雨に入る頃、皐月盆栽は百花繚乱の艶やかさを競います。
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普段は松柏類や雑木盆栽・そして水石飾りを設える 雨竹亭の応接室の床間も、
眼を見張る色彩美をみせる皐月名木の飾りとなります。
この樹は、昨年の国風盆栽展に飾られた「大盃」の名樹です。
樹相全体が花々で覆い尽くされて、樹姿そのものすら一切見えないくらいの花姿になっています。
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季節を彩る 独特の美がありますが、花はいっときのもの。
皐月盆栽も、雑木盆栽のそれと同じく樹筋で眺めたいものです。
季節ならではの観賞、真の美を楽しむ観賞。
どちらが良いなど、決めるものではなく、観る人達が 求めるその時の美しさこそが、盆栽趣味の面白さとも言えます。
私も若い頃は、爪先立って “花よりも樹味を楽しむ寒樹こそが最高”などと 思ったものですが、
命の謳歌と言える花期の美しさは、息を呑むものがあり、六十の歳の今は、厳しさの良さは勿論として、
生命の息吹を感じる季節の美も とても有り難いものと捉えています。
そんな事を考えると、人が求める「究極の美」なんて、移ろい易い「人の心」が映し出す幻のようなものなのか?と思うくらいになりました。
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国風展に飾った時の姿と、今の花姿、皆さんはどちらに心惹かれるでしょうか?

【小学生への盆栽講演】
羽生に根をおろして13年、銀座の店を 落第点の私が開いて20年。
“子供達に盆栽を通して多くの事を伝えてほしい”と頼まれて、市内の小学校ふたつで盆栽教室と講演会を始めて長く経ちました。
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今回は体育館での6年生への盆栽講演。
思春期の中の子供達に伝える難しさをいつも感じながら、
言葉ひとつひとつに想いを込めて自分が歩いてきた45年の盆栽人生を振り返りながら 語りかけるようにしています。
盆栽は 自然のものでありながら、鉢に入って人と生きる時から、人に命を託して生きるもの。
人の愛情が薄れた時、何も言わずにそっと100年の命を閉じるもの・・。
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ひとりっ子が多くなる社会で、盆栽を通してひとつでも大切な“何か”を伝えられないものか?
いつも子供達の純真な姿と対する時、“この子達に嘘は語れない”と思います。
形や作り方なんて どうでもいい、「命を守る」たったそれだけで、
そしてそれ以上に大切なものはないんだという事を伝えたい。
その盆栽と同じに人もひとりではけして生きてはゆけない、いつも何処かで誰かに助けられている・・
その中で生きている自分、美しいこの国に生まれた事を感謝してほしい、
“美しい日本の宝物”である子供達を前にすると、伝えたいことが溢れてきます。
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未熟で半端な私がたったひとつできる「盆栽」。
その力をかりてこんな活動が続けられたら、私の生き方も 少しは役に立つのかなと思います。
でも、もしかすると、私がこのキラキラ光るこの子達に大切なものを忘れないように教えられているのかも知れません。

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