雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴45年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 雨竹亭

芳春院ご住職 14年目の読経

羽生雨竹亭に「盆栽観音堂・雨竹堂」を開堂して14年になります。
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ここに生きる盆栽達は、自然界に生きる私達と同じ命を持つものですが、
盆栽園である因果で、枝を切り、根を捌き、時にはその命を落とす程の荒仕事をする事があります。
作品を作る為・食べる為・に、“樹の本当の声”を聴かずに 傷めてしまう事も無いとは言えません。
そんな私達や盆栽そのものを守って頂く為に、開園間もない頃、この観音堂は創られました。開眼をして頂いたのも、今回 久し振りにご来園頂いた、京都大徳寺 塔頭「芳春院」第23代住職の秋吉則州師です。
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開眼の年・7年目の年・今回。
3度目のご来園のご住職は、変わりゆく雨竹亭を感嘆の声で散策されました。
久し振りに響く 臨済宗大徳寺派の現宗務総長の読経。
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何処へゆくにも 法衣を纏い 平易な態度で私達にも優しくお声をかけられるご住職。
あらためて 観音堂の存在とここで住み暮らす私どもと盆栽達の、平穏を祈る日でした。

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【姫孟宗竹と水石】
夏越の大祓も過ぎて、今年も半分が過ぎました。
鬱陶しい梅雨の日々。
盆栽達も潤湿な空気の中、美しい葉色を楽しませてくれています。
愛好家の皆様をお迎えする応接室の床間は、そんな季節の風趣の中でも、涼と情緒を大切に設えてみました。
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姫孟宗竹の盆栽は、これから七夕の頃までの「風さやけき」夏飾りを代表するものです。
取合わせの掛物は、竹内栖鳳の「雨裏新蛍図」。
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霧雨降る渓流の清々しい水の流れのそば、新緑の葉裏に川面から誕生した蛍達は、
雨が上がり、儚い光を纏って飛ぶ時をじっと待っています。
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脇床に据えた揖斐川石は、画中の渓流を見事に切り取ったかのよう。
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席全体に香り立つ日本の「今」という季節。
盆栽も水石も、それぞれひとつずつの素晴らしさは勿論ですが、
こうして「樹・画・石」をひとつの物語の中に設える事は、盆栽水石趣味の醍醐味と言えます。
何かと何かを組合わせて共鳴させる・・
日本の“見立ての美”のあり方を皆さんも日常で楽しんでみて下さい。

【時限付の徹夜の日々!】

毎年6月中旬から7月上旬は、黒松・赤松 の芽切り作業で ヘトヘトになります。
3月初めには肥料を早めにやり始めて(途中5月に肥料を乗せかえる)力強く伸ばした新芽を
全部切り落とす。
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これによってそこから新しく吹いた多くの若芽を最終的に8月に間引いて短い葉姿にまとめる。
これが『短葉法』という  黒松・赤松・を美しく保つ手入れ方法です。
一般の愛好家の方々は、春の芽を伸ばしたままで秋を迎えるので、葉の長いバサバサした姿にしてしまいます。
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芽を切り、その下の去年の葉を7割くらい間引きする。
・・大型の盆栽ならば、1点で1~2日かかります。
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雨竹亭にはそのような盆栽が、大小合わせて200~300点!
手入れ管理のスタッフは昼夜を問わずの日々が続きます。
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名匠 木村正彦先生の所も、今も雨竹亭スタッフが、応援手入れに行っています。
特に海外の名木愛好家の方々は、日本のこの細やかな手入れを知らない方が殆どです。
どれだけ細やかな手入れを年々続けたかが、作品の完璧さを作り出します!

今年の芽切りの様子を動画で撮ってみました。
(開くと音が流れます)

地味で それをやったからと言って、劇的に樹格が見違える訳でもなく、
どうしても手入れの手間賃がかかる為、おざなりにしがちな作業ですが、私も含めて日本の盆栽家にとって、芽切りはとても重要な作業。
みんなこの時期の外出を避ける程の事です。
健康で生育状態が良好でないと、却って痛めてしまう作業。
樹によっては、下半分をやって、上半分を10→12日後にやる。
そんな 「樹に合わせた芽切り方」まであるくらいです。
難しいと思う方は、遠慮なく 雨竹亭を訪ねて下さい。
でも中型以下でも7月10日が作業の限界期日です!

【梅雨の美しさ!】

ここ数年、梅雨らしい梅雨が無かったような気がします。
猛暑と強い陽射し、松柏類にまで始めて遮光ネットをかけました。
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今年は 雨のち曇り、そして僅かな晴れ間の後にまた雨。
気温も20~25度をうろついて、盆栽の葉色も 潤湿な空気の中、汚れを知らない美しい翠を湛えています。
盆栽協会・水石協会・総会・大宮盆栽美術館の展示解説・月刊近代盆栽に連載の「名石探訪」の選出と執筆・・
自分の庭でありながら、ゆっくりと散策する時間もありません。
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それでも束の間の刻を庭の盆栽と過ごすと、“有難い仕事”だとつくづく思います。
樹々は その時その時期を正直に生きています。私も盆栽を見習って、目の前の出来事に正直に向かって過ごそうと思います。
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彼らのようにまでいかなくても、ここからの残された年月を盆栽人として 自然のままに行こうと思います。
・・・でも 盆栽達はいいなあ!


今年は何年ぶりかの 梅雨らしい6月になりました。
ここ数年は 真夏のような暑さと陽射しで、盆栽の日除けに苦労しましたが、
梅雨の季節には梅雨ならではの情緒があります。
雨竹亭の床間飾りも、潤湿な空気を捉えた設えをしてみました。
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葉の翠を深くするイタヤもみじ。
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掛物には急に降り出した雨の中、家路に急ぐ村人の姿。
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遠くには山里の渓谷に流れる清冽な滝。
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盆栽・掛物・水石・三体がそれぞれに共鳴した 自然界の“あるがまま”を描き出しています。
特に掛物は江戸期の狩野派の名も無き筆ですが、色を見せずに墨のみで描かれていることが、
もみじの葉色・石の肌味を 浮き立たせてくれています。
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『驟雨』俄かに降り出した夕立の様な雨・日本の言葉は、僅かな季節の移ろいの中に登場する景色を上手に捉えた表現が感じられます。
私達盆栽家の飾りも 一瞬の景色を切り取ったような“遊び心”を大切に楽しみたいですね!

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