雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴44年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 雨竹亭


今年は何年ぶりかの 梅雨らしい6月になりました。
ここ数年は 真夏のような暑さと陽射しで、盆栽の日除けに苦労しましたが、
梅雨の季節には梅雨ならではの情緒があります。
雨竹亭の床間飾りも、潤湿な空気を捉えた設えをしてみました。
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葉の翠を深くするイタヤもみじ。
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掛物には急に降り出した雨の中、家路に急ぐ村人の姿。
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遠くには山里の渓谷に流れる清冽な滝。
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盆栽・掛物・水石・三体がそれぞれに共鳴した 自然界の“あるがまま”を描き出しています。
特に掛物は江戸期の狩野派の名も無き筆ですが、色を見せずに墨のみで描かれていることが、
もみじの葉色・石の肌味を 浮き立たせてくれています。
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『驟雨』俄かに降り出した夕立の様な雨・日本の言葉は、僅かな季節の移ろいの中に登場する景色を上手に捉えた表現が感じられます。
私達盆栽家の飾りも 一瞬の景色を切り取ったような“遊び心”を大切に楽しみたいですね!

 【国風展出品の皐月「大盃」】

梅雨に入る頃、皐月盆栽は百花繚乱の艶やかさを競います。
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普段は松柏類や雑木盆栽・そして水石飾りを設える 雨竹亭の応接室の床間も、
眼を見張る色彩美をみせる皐月名木の飾りとなります。
この樹は、昨年の国風盆栽展に飾られた「大盃」の名樹です。
樹相全体が花々で覆い尽くされて、樹姿そのものすら一切見えないくらいの花姿になっています。
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季節を彩る 独特の美がありますが、花はいっときのもの。
皐月盆栽も、雑木盆栽のそれと同じく樹筋で眺めたいものです。
季節ならではの観賞、真の美を楽しむ観賞。
どちらが良いなど、決めるものではなく、観る人達が 求めるその時の美しさこそが、盆栽趣味の面白さとも言えます。
私も若い頃は、爪先立って “花よりも樹味を楽しむ寒樹こそが最高”などと 思ったものですが、
命の謳歌と言える花期の美しさは、息を呑むものがあり、六十の歳の今は、厳しさの良さは勿論として、
生命の息吹を感じる季節の美も とても有り難いものと捉えています。
そんな事を考えると、人が求める「究極の美」なんて、移ろい易い「人の心」が映し出す幻のようなものなのか?と思うくらいになりました。
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国風展に飾った時の姿と、今の花姿、皆さんはどちらに心惹かれるでしょうか?

【小学生への盆栽講演】
羽生に根をおろして13年、銀座の店を 落第点の私が開いて20年。
“子供達に盆栽を通して多くの事を伝えてほしい”と頼まれて、市内の小学校ふたつで盆栽教室と講演会を始めて長く経ちました。
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今回は体育館での6年生への盆栽講演。
思春期の中の子供達に伝える難しさをいつも感じながら、
言葉ひとつひとつに想いを込めて自分が歩いてきた45年の盆栽人生を振り返りながら 語りかけるようにしています。
盆栽は 自然のものでありながら、鉢に入って人と生きる時から、人に命を託して生きるもの。
人の愛情が薄れた時、何も言わずにそっと100年の命を閉じるもの・・。
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ひとりっ子が多くなる社会で、盆栽を通してひとつでも大切な“何か”を伝えられないものか?
いつも子供達の純真な姿と対する時、“この子達に嘘は語れない”と思います。
形や作り方なんて どうでもいい、「命を守る」たったそれだけで、
そしてそれ以上に大切なものはないんだという事を伝えたい。
その盆栽と同じに人もひとりではけして生きてはゆけない、いつも何処かで誰かに助けられている・・
その中で生きている自分、美しいこの国に生まれた事を感謝してほしい、
“美しい日本の宝物”である子供達を前にすると、伝えたいことが溢れてきます。
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未熟で半端な私がたったひとつできる「盆栽」。
その力をかりてこんな活動が続けられたら、私の生き方も 少しは役に立つのかなと思います。
でも、もしかすると、私がこのキラキラ光るこの子達に大切なものを忘れないように教えられているのかも知れません。

【埋れていた古木の植替え!】

昨年の暮れ、九州の山里に数十年の歳月、誰に見られるわけでもなく、古老の手により守られて生き続けた五葉松群が羽生に来ました。
懸命に培養をされていたのでしょうが、盆栽の専門的技術を持った人たちの手を入れるわけでもなく、
荒れた状態での入手だったので、今年の春も芽伸び・つまり根がしっかりと水を上げ始まるのを待って、大掛かりな植替えに挑みました。
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左右180㎝!高さ120㎝という巨大な松は、1t近い重さの石をくり抜いた“鉢”に入った状態で、
根を抜くだけでも人力では難しく、フォークリフト爪を使っての吊り上げ植込みでした。
山砂で植えられていたこの樹は、それでも100年を越す樹齢、鉢合わせをして見付角度を定めて、雨竹亭の庭に運んで見ました。
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昨日まで、第3培養場の"邪魔物''扱いされていた樹が、まるで鳳凰が羽を広げて羽搏く姿となり、前庭の主のような存在感をしめすようになっていました。
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盆栽は、完成した名木だけではなく、このように名も知れぬ地方愛好家の庭の片隅に 静かに生き続けたものから誕生します!
気合いを入れて、十数本 続けざまに植替えをしましたが、やっぱり大きいものばかりでした。
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それでも、無名の老樹を 問いかけるように荒仕事をしている時は、楽しいものです!


「春の観賞会」に合わせて、亭内の盆栽以外の部分も 飾り直しをしてみました。
我ながら“よくもこんなにあるものだ”と、“買い物好き”の自分を笑ってしまいます。
収蔵庫の名鉢・水石・水盤・卓。
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水石専用の展示室。
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中国広東・宜興・で誂えた鉢類。
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手頃なものから名品まで、千点以上の品々。
最近も 国風賞を受賞された古老愛好家のご親族より、蔵品の一括買取を依頼され、盆栽百点弱、盆器 約200点を引き受けました。
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まとめ買いは、もとより嫌いではありませんが、1年も経つと いつのまにかなくなっているものです。
それだけ業者の方々や愛好家の皆さんに御贔屓頂いている証ですね!
それでも盆栽も水石も鉢も、すべての面で 良品の入手が難しくなってきています。
日本の盆栽水石界が、残してきた遺産を 大切に伝え残したいものです!

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