雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴45年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 雨竹亭


ソメイヨシノの桜が満開になる季節、春爛漫のうららかな風情を楽しむのが普通の皆さんですが、
盆栽業を半世紀近くしていると、この季節の風や空気を感じると、“植替えだ!”と待ち受ける仕事の量に身震いする気持ちになります。
今年はコロナウィルスと言う、経験のした事もない中、最低限のお得意様への「出仕事」以外は、庭内にいる事が多く、
毎年“ああ、この樹も植替えしたかった!”と、自分の庭の樹の植替えが出来ない事が多かった事を取り返すつもりで、
連日手入れ小屋に入ってスタッフと悪戦苦闘しています。
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切込みや針金掛けなど、ある程度の季節の融通が効くものと違い、植替えは樹種によって期間が決まっています。
それに間に合うように、“あの樹は先に、この樹は鉢を替えて”と、果てしない“行”を続ける気持ちで挑んでいます。
使う用土にしても、樹種・若い樹・老木・弱っている樹・大型・中型・小品等々、少しずつ土の配合が皆違います。
とにかく一番頭を痛めるのが「鉢合わせ」です。これでも常時1000~2000点の鉢は用意しているのですが、
それでも中々ピッタリとこないものもあり、商売で手放してしまった鉢に後悔する事もしばしば。
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でも、ウィルス災禍で気が病む日常、広い庭内で一心に盆栽と向き合って手入れに集中していると、何故か気持ちがスッキリします。
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ある時、高名な禅の老師に言われた事を思い出します。
「悟りを開くなど、誰も出来るわけではないが、座禅をすると同じように自分のなすべき事を一心不乱に集中すると、それは禅で求める境地に似たものが得られるよ。
動かぬ座禅に対して、これを“動禅”つまり何も迷うもの無く物事をし続ける事、一般社会の方々のなされる当たり前の姿は、我々禅僧が辿り着く境地に近いのだよ」
私はこんな高邁な意識には程遠いのですが、盆栽手入れに打ち込んでいる時、ほんの少しこれに似た気持ちがあるのかなと感じます。
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皆さんもご自分の大好きな事にひたすら打ち込んでみることも、今の閉塞感から脱皮出来るかも!是非試してみて下さい!
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【脇飾りで様々な景色を!】

コロナウィルスの影響で、自宅に籠りがちな今年の花見。
盆栽飾りでいろいろなロケーションを楽しめます!
主木の枝垂れ桜は、珍しい“一重咲”の枝垂れ性の富士桜。
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咲き始めは白っぽい花色ですが、徐々に紅色を帯びてきます。
そのコントラストも美しく、気品ある花型と色、何よりも「儚い美」の結晶と言えます。
初めは京都清水焼の人形と。
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十二単の姫が桜の樹の下にいる姿は、絵になります。
人形の名は「紫の上」つまり紫式部を表しています。
『源氏物語』の絵巻の中のようです。

次は木彫の農家風との合わせ。
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山里のくず屋の脇に咲く枝垂れ桜の風情。
温かい陽射しを感じます。

3番目は「旅の老爺」本当は芭蕉の像ですが、旅僧に見たてています。
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鎌倉時代の有名な僧・西行が詠んだ名句、
「願わくば 花の下にて春死なん そのきさらぎの望月のころ」
は、桜を題にした日本人の死生観を歌った言葉として今も共感の多いものです。

ひとつの枝垂れ桜の盆栽、これだけを愛でて楽しむのも良いですが、
このように添えの道具とそこに見える日本の情緒で、目の前の景色は、果てしなく広がります。
これも盆栽趣味の醍醐味ではないでしょうか。


コロナウィルスの影響で、お客様の来園も少ない中、盆栽家として何をすべきか?
やっぱり「樹を作る」事以外、私達に出来ることはありません!
昨年手に入れたとても珍しい「姫性ひのき」普通のひのきより葉が細かく、枝も密になります。
愛好家が盆栽と言うよりも、自分の庭先に大型園芸用のポットで何十年も培養した丹精なる“中途半端な樹”です。
半年間、培養場で時々“どういう風にしてあげることが、この樹のためだろう?”と思案する中で、
いつの間にかこの樹の本当の姿が浮かんできました!
・・頭を落として幹模様の流れを美しくする、それに合わせた枝の動きを鋏で切り替える。
大きな手入れをする時は、その樹の仕上がった姿が瞼に浮かんでからするように心がけています。

おおよその姿が出来ました!
流麗な幹の流れを持つ姿、その美しい幹の流れを扶ける枝の動き、これで鉢合わせに入ります!
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直径90㎝を超える大型鉢、毎年中国へ行って、自分で使いたい鉢を宜興から注文制作していることが役に立ちます!
ここからは、時間をかけて少しずつ「本物」への道を私達と一緒に歩いて行きます!
今まで醜いアヒルだった子が、白鳥、いや、鳳凰のようになっていく瞬間です!
それは一緒にこの樹を改作したこの若き盆栽家の面々と同じです!
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【雨竹亭・大徳寺盆栽庭園・体験研修の実施!】

羽生雨竹亭は今、春の雑木盆栽の植替えに日々明け暮れています。
単に植え替えるのではなく、その樹をどうすればより良い樹格になるかを、想定しながらの、
簡単に言えば、樹の将来を決める大切な作業でもあります。
盆栽歴46年目の春、昔ほどの馬力もなくなりましたが、若き研修スタッフ達に、手入れ技術と“大切な捉え方”を伝えながら、植替え・改作に励んでいます。
今年の秋には、日本有数の禅宗寺院・京都大徳寺内に、500年を超える歴史で初めての盆栽庭園を造営します。
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私のような盆栽と水石の世界以外、社会人としても落第点だらけの男、
幾度もご住職に分不相応なのでご辞退を申し上げたのですが、四半世紀のご交誼を頂く現在は大徳寺派大本山の宗務総長を務められる芳春院ご住職のお言葉、
羽生の事や、水石協会、盆栽流通業界に対して、やらなければならない事も多いのですが、
与えられた残りの人生の大部分をこの盆栽庭園が営々と続く仕組みを残すことが、私の役割と心に決めて取りかかっています。

さて、そんな私を取り巻く今ですが、若い盆栽界の将来を担う方が不足しています。
せっかく名刹に庭園を作っても、受け継ぐ者がいなければ、意味がありません。
いろいろ考えた末に、広く門戸を開いて多くの方々に挑戦してもらえれば良いと考えました。
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これより数ヶ月、「盆栽や水石を道として生きてみたい」という思いで、私に応答を頂いた方を、
一度お会いして、1~3週間の実施研修をして頂いてみようと思っています。
皆さんは盆栽・水石と言うと、何かとてもマニアックで難しい印象でしょうが、私も15歳でタオルと歯ブラシしか持たずに師匠に入門した者です。
大切なのは「自分はどのように生きればいいのか?」
そんな事を自問自答している人の方が、身体全体と心でいつのまにか、“何かを探す”事が出来るものです。
羽生には、研修用の個室もあります。
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8時〜18時、庭の掃除から始まって、園内の盆栽水石に関わるすべての仕事を体験してもらいます。
研修中は6日間を1クールとして朝夕の食事代を含めて5万円を支給します(昼食は社員弁当を無料支給)
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3クールを達成出来た人の中から、大徳寺への私のアシスタントを探したいと思っています。
勿論、羽生雨竹亭のスタッフになる道もあります!
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「テッペン」を望めるチャンスが誰にでもある盆栽界です!
問合せ・面談は随時OKです。 
未来の「私」と出会える事を楽しみにしています。 IMG_5898

お問い合わせはこちらから

羽生雨竹亭 
TELL:048-565-4114
Mail: info@bonsai-s-cube.com

※お問い合わせの際は「研修採用のブログを見て」とお伝えください


【名盆栽 紅冬至梅の飾り】

国風展の慌しさの合間に、羽生の床の間を飾る古木。
戦前より盆栽界に受け継がれてきた名樹「紅冬至梅」 昨年天界に逝った盆栽大家・小泉 薫 翁 が、生前大切にしていたもの。
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小泉先生との二十歳の頃からの半世紀近いお付き合いの中で、私の別のお得意様の所有となり
「私が庭におくレベルではないので、森前さんのそばにおいてあげて下さい」と言う現蔵者のお気持ちで、
今年も羽生の庭で楚々とした花姿を見せてくれています。
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松に代表される盆栽、なぜでしょう?梅はその松にも負けない厳とする雰囲気と早春の兆しを現す象徴になっています。
名樹と合わせた「冬朧の月」の掛軸。
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雪空に霞む月は、明けやらぬ春を待っています。
脇には楓の寄植え。
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まだ寒樹の相を見せる木立の数々は、吹く風に肌を刺す冷気が残っています。
人はいつかは『白玉楼の棲人』となります。
還暦を超えると“あの方も逝ってしまった”とため息をつくことが多くなります。
それでも 盆栽は生き続けます。
不思議にその人の面影を残して。
そして徐々に 次の持主の貌へと姿を変えてゆきます。
私のもとにあって、この古樹はいつかは 私のような姿になるのでしょうか?
次なる姿が、故人たちに恥ずかしくないよう、身を律して修練の毎日を送らなければと、非力浅学を恥じるばかりです。
自分より齢を重ねた老樹を見ると、「お前は何でそんなに頑張って生きているのだろう?」と いつのまにか、心が樹に問いかけています。
きっと死ぬまで 問い続けるのでしょうね。

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