雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴45年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 雨竹亭


記録的な脅威が心配な台風19号、私達盆栽家は すべての仕事を中止しても、樹を守る事に尽くします。
出来るだけの盆栽達を暴風雨から防ぐ為に、応接室・展示場・手入小屋・スタジオまで、取り込める所全部を使って樹の安全を第一にします。
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幾星霜をかけて先達の盆栽家達が守り伝えたもの、一度の天災でその継承を失うわけにはいきません!
それでも羽生の盆栽は2000点以上。
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全部をしまうわけにはいきません。
老幹の肌を大切にしたいもの・葉物・実物・文人樹・伝承名樹。
そして何よりも大切なのが、お客様からお預かりしている盆栽達。
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日本は島国なんだと海外から帰るといつも思いますが、災害は来て欲しくないですね。
台風一過の秋晴れを祈るばかりです。


※掲載している画像は昨日11日に撮影されたものです。


古くは昭和前期に盆栽として作られ、戦時中は地に植え、
戦後大切に培養された “黒松の王”と称された巨木が1年の交渉の末、羽生の庭に到着しました。
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数年前拝見した時は、まだ枝作りの初期で、今ほどの量感は感じられませんでした。
木箱に植えられたこの樹を庭に飾るのに、総重量1トンを超える台として、
栃木県大谷地区の名産「大谷石」の“特級質”を切り出し注文して、到着を待ちました!
昨年の台風で倒れたこの羽生雨竹亭の地に100年前よりあった梅の古木の跡地、
ここに据えよう!と 思って4寸の厚みの板も用意しました。
ユニックで吊り上げられて、前庭に据えられた黒松。
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“やっぱり大きい” ここからこの樹を本物の大型名木「黒松の王」にする為の日々が始まります!

【体感40度以上!】

長い梅雨が明けたかと思えば、昨年の熱波を思い出させる猛暑が襲ってきました!
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気象庁の予測を基に、7月下旬には棚場の遮光をしておいたので、
その下の気温は2~3度低くなります。それでも 人も樹もギリギリの温度。
朝の水掛けの他に、夕方の「葉水掛け」は欠かせません!
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樹と鉢の中、そして棚場全体の温度を下げる効果は、人間が昼間どんなに暑くても、夜涼しい中ならば ゆっくり休めることに似ています。
“葉水をかけながら、余分な水は与え過ぎない”この矛盾するようなふたつを樹の表情を見ながら1点ずつ調整するのがプロなのです。
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昔から盆栽屋は「8月は素麺食べて水掛けしてろ」と言われることがわかります!
でも 人間は甘えん坊ですね!
梅雨の間は「青空が見たい」夏が来れば「涼しい秋が待ち遠しい」・・いつも“今以上”を求めてしまいますね!
それが本当は一番美しい日本の四季であり季節の移ろいなのはわかっているんですが!笑

【20代からの思い出の「樹・人」】

先日 93歳のご長寿を全うされた名古屋の盆栽大家・鬼頭正男先生。
まだ20代の若き頃、皐月盆栽専門の愛好家だった先生の所にお手入れによく伺って
「本格的な盆栽趣味になさった方が」とお伝えしていました。
その先生が、国風賞を受賞される大家となり、盆栽協会の重鎮理事となられるなど、還暦を迎えた中、月日の長さを感じます。
愛蔵されていた イワシデ名樹が縁あって羽生雨竹亭に届きました!
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個人的な意見ですが、日本盆栽界においての「雑木盆栽」の三指に入る大名品だと思います。
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多くの名盆栽がある中でも、この樹は 樹自身の内容は勿論のこと、
過去 愛蔵された愛好家のすべてが、日本を代表する歴史的な方々で、「人品卑しからず」の紳士ばかりです。
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70年前の高橋貞助先生・40年前の岩船光雄先生・30年前の福島茂夫先生・20年前の大沼佑先生・そして鬼頭正男先生。
私とこの樹の“目に見えぬ縁”は、愛蔵された皆様すべてが、私を可愛がって下さった「忘れえぬ恩人達」ばかりだと言うことです。
20代の若僧を、慈しむように育てて下さった方々。
守り継がれた「日本の宝」を私はプロとして、盆栽家として、
この樹の次なる佳き主人と出会うまで、大切に大切に 守りたいと思います。

【 蓮華・沢庵・滝石】

梅雨の明ける頃、鬱陶しい気だるさを感じる季節、ようやく今年もハスの花があがりました。
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不思議ですね、蓮の華はなぜか“あがった”と言いたくなります。
毎年 10鉢程の蓮を水鉢で育てていますが、今年はこのひと鉢しか花を持ちませんでした。
その代わりに、今までで一番色濃い花となりました。
午後になると閉じ加減になってしまう蓮、朝早く 床飾りの設えを直してみました。
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蓮華という言葉がよく似合う花、葉茎の調子を鋏で合わせて、大切にしている沢庵和尚の
『水聲山色』の書。
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ありのままの自然の素晴らしさ、受け入れるべき生き方を示してくれるようです。
脇床には安倍川石の滝姿。
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蓮華の華は仏の世界、滝石はその瀑布の音を絶え間なく続く読経、そして すべての大自然を悟得の境地で伝える書。
美しくも儚い蓮華の姿が 静謐の中に響く日本の美と飾りに込められた心を際立たせてくれます。
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やっぱり毎年 季節にしか得られない美しさは良いものです。

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