雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 日常


東京都美術館『第10回・日本の水石展』に協賛目的で、毎年開催される水石オークションが、上野グリーン倶楽部で開かれました。

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連日の西日本大雪の影響で、通常の参加者より少ない中、毎月各地で行われる盆栽業界オークションとは異なり、
やはり水石展協賛ということで、水石・水盤・卓類の出品が多いのも、このオークションの特色です。

私も、この企画を指揮して10年となります。
日本水石協会の春花園、小林理事長の今春の勇退、会をここから運営する責務を運営役の1人として痛感しています。

中国勢の参加に支えられる昨今の国内オークション。
今回は中国の春節(旧正月)の連休なども重なり、ほぼ日本業界と水石趣味家での会となりました。  
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100万円を超える水石や名水盤、数百点の水石群!
盆栽以外の品々の選任競り人として、瞬間で発句(競りの初値)を見定めるのは、軽い緊張感とエネルギーを使います。

出品数も過去1億円をマークしたこの会としては、少なめ💧
国風展を直前に控えた1月下旬は、各業者も “売るよりも良品の仕入れ“に重点を置く季節です。

関係者全員の努力で、5,000万の総取引高を堅持しましたが、全体としては、やや低調だったことが、各落札値からも感じられます。

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1~2年前なら、中国勢が競い合い1500~2000万だった、真柏名樹が1000万弱で不落札など、
最近は相場の低調が続いています。
何よりも悩むのは、水石や水盤、諸道具の目利き判断が出来るプロが激減している事です。
海外勢への商売に目の色を変えて突き進んだこの5~10年、プロ達も、彼らに売れないものに対する勉強が疎かになった事によります。
“森前さんが競り人をやらなければ、水石や水盤は成立しない“ こんな言葉は嬉しくもありません。
数万円の汎用の品々と、目利き先人達が百年を超えて守り続けて来た名品が、あまり変わらずに見られる現状。
若い頃、目にする機会を逃すまいと必死に名品を拝見して、“何が違い何が良いのか“を学んだ日々。

六十路の半ばを間近に、ここから何をすべきか?を考える時にもなりました。
それでも、水石の素晴らしさは変わりません。
ここからしなければならない盆栽人水石人としての責務を思う日でした。


第10回日本の水石展の日程等詳細はこちら↓

雨竹亭ホームページ


11月下旬、日本盆栽大観展(京都・みやこめっせ)特設売店の一角に、観客が目を皿のように見つめる盆栽達が並びました。

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巷で言う“工芸盆栽“とはひと味もふた味も違う、洗練された樹々達。
アート盆栽『華舞樹』の作家、谷村由華子先生の見事な小品や中品盆栽達です。

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銀座雨竹庵で出会って五年以上の刻、由華子先生の作品は超絶と言えるリアル感!
私たちプロでも、“華舞樹“だとわかっている上でも驚かされるひと鉢ひと鉢。

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ましてや初めて見る方々は、“ホンモノ?いや違う?“と、しばし魅入ってしまう程のものです。
梅もどき・真柏・まゆみ・長寿梅・けやき・等々、どんな素材でどうやって造られたのか?
不思議に思うくらいの谷村ワールドです。

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植物検疫などの問題で、持ち帰りの出来ない海外の盆栽ファンに喜ばれた初めの頃、
今ではひとつのアートとして高い評価を得て、手作り一点作を順番待ちする程の高い人気を誇っています。
“枯れない盆栽“  それでも心はいつも枯れることなく、潤いの豊かさを持っていたいですね❗️


業界中央の役員でもあり、羽生天地会にも参加して下さる、熊本の佐々木雅松園さんが、
九州の業界団体「青樹会」の会長になられて初めての大会オークション。
車で15~
17時間の遠路💦
初めて九州の盆栽オークションに参加しました。

佐々木さんの人付き合いの広さから、予想を大幅に超える参加者と出品物!

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“これが1日で終わるのか!“と言うプロ達の見解💦
8時に始まった会は、全員の協力体制で無事に夕方には“手締め“となりました。
結果は出来高なんと9,000万❗️
中央でも1年で目立つ会でなければ記録されない数字!

(私はいい気になって、1000万以上買い付けてしまいました😓)
勿論九州での会となれば、二度とないと言われる大会となりました。

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久しぶりに会う懐かしい方々、日頃から業を切磋琢磨する中央の面々。
半年に一度の大会だそうで、さて次は来られるものか?頑張りたいです!


熊本へ出向く諸用を得て、久しぶりに九州八女地方、みやま市の田中古老の所へお邪魔しました。
初めてここを訪れた時、“こんな種の五葉松が九州の地にあるなんて!“と、興奮と驚きを持ったことが、昨日のように思い出されます。

盆梅の作出で生計を立てられている“梅花園“主人、田中古老。

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代々守り継いで来られた“絶滅危惧種“祖母五葉松の正統な血を守り抜いてきた方。
梅の鉢々に囲まれた中にある、信じられない葉性の細やかで美しい五葉松の巨群。

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無理を言って割愛を受けたあの頃と何も変わらない景色、古老だけが少し歳を取られたかなと思いました。
それでも二人で松についての会話をすれば、時が経つのを忘れるくらいの古老の矢継ぎ早の質問の嵐!
幾つになっても盆栽の作出にかける熱意はそのままの姿に頭が下がる想いでした。

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老成してゆく祖母五葉松達。
古老も同じように齢を重ねていらっしゃいますが、夫人によれば、今夏も体調を崩されて夫人が水掛けに苦労されたとの事💦

いつかはこの稀少種の“次なる担い手“にバトンタッチの時が来るのでしょうが、
古老は日々この樹達と過ごす事こそが、老の長寿の秘訣かと思います。

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美しい山々に囲まれた地。
古老も祖母五葉松達もいつまでも健やかに。


水石協会の理事長と事務局長と言う二人三脚で、10年の年月を歩んで来た、
盆栽界の先輩、春花園小林國雄先生の「春花園盆栽美術館」開館20周年を記念した祝賀会が、同所で開かれました。

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木村正彦先生・今井盆栽協同組合理事長・島村水石協会々長・をはじめ、
業界長老や実力者、また春花園を囲むお歴々の方々多数の参席で、盛大な会となりました。


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盆栽界の中では、どちらかといえば“異端児“に扱われる私と小林先生。
お互いに盆栽と水石以外は、褒められた人生ではないものの、
この道に邁進した事と多くの方々に助けて頂いた事で、今がある所はよく似ています。

“モリちゃんは春花園さんの何処がいいの?“と聞かれる事がありますが、とても簡単です。
こんなに正直で真っ直ぐで、良きも悪きも、自分の思った通りに走り続けている人はあまり居ません。
例えれば、“太陽の人“なのです。
いろんな見方をされても、振り返ればいつもお日様の下を唯々走り続けているのです。
時にはお腹が空いて、通り端のお地蔵さんに供えてある団子を取って食べながら(笑)走っている事もありますが💦

盆栽作家である小林先生が、水石協会の理事長となった時、多くの人達が“大丈夫?“と声を投げかけましたが、
歩んだ道を思えば、水石界の悲願であった、“美術の殿堂で水石展を!“を、東京都美術館で!
「世界盆栽大会inさいたま」では、二度と集まらないレベルの水石協会の威信をかけた『日本の水石百選』を成功させました。

“モリちゃんが居てくれたから“と、いつも謙虚に言ってくれますが、
還暦を過ぎた今想うことは、人には与えられた“分“と言うものがあるように思います。 
理事長は神輿の上に載る人!
私はそんな人を支えて共に坂の上の景色を見る人。

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来年には10年の在任を終えて理事長を勇退される小林先生。
様々な意味で、74歳を終え、来たる75歳より、“次なる夢“を追い始めるでしょう。
私はまた走り続ける“盆栽界の木下藤吉郎“の脇で、共に人生を愉しみたいと思っています。

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