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盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 日常

五葉松・黒松の生産と育成では、国内随一の高松鬼無地方。
鬼無を代表される「小西松楽園」小西幸彦先生の所へ伺いました。
前回お伺いした時、今は殆ど手に入らない、“銀八”宮島五葉松を苗から育成され、中品盆栽に仕上げた夥しい鉢数を見て驚きました。

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「通年ならヨーロッパなどからの注文で、この時期は予約品で売る物も無い時なのに、今年はコロナの事で、来年の鉢上げ分をどうやって棚に置こうか悩んでいる」
これを聞いて、棚に広がる千点近いこれらの樹を全部譲って頂く事にして、今回それを引取りに来ました。

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ご家族総出で積込みを手伝って頂く中、“ちょっと来てくれ“と言われ、
小西先生と暫く歩くと、目を疑う程の大型太幹の五葉松が、整然と植え並んでいました!

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“親の代に植えて、私の時代でも半世紀を超えた作出をした樹達。森前君が良ければ譲ろう”と申されました。
鬼無各地を廻りましたが、こんなに手間をかけて見事に作出した太幹物は、初めて見ました。

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来春の抜き込み、移動、という事で譲って頂くことになり、思いがけない縁を頂きました。
老匠達が、刻を惜しまずに手がけた鬼無の銀八五葉松。
有り難くもあり、次の時代にはこのような樹達がこの街からも消えてゆく事に、複雑な思いも抱きました。
世の中の生活レベルが向上して、日が昇り、暮れるまで、樹と土にまみれて暮らされて来た先輩達が残された遺産。
これからは“5~8年位で出荷できる生産品へ“となっている現状。
盆栽がいかに人の刻を削って作り上げられてきたのか、私達は伝えていかなければいけないと痛感しました。
鬼無に来ると、何故か心が穏やかになります。
それはきっと、そこで盆栽達の育成に努められる皆さんが、自然と樹と共に、無理せず暮らされているからなのかもしれません。
羽生に運ぶこの子達を、大切に盆栽を愛される皆さんへ繋いでゆく事の重さを感じる1日でした。


造営が進んでいる「大徳寺盆栽庭園」。
大門の右方の延段脇を飾る枯山水庭園、盆栽の景石「揖斐川龍眼石・伊予石」を使っての作庭を考えました。
歴史ある名刹を預かる庭師の親方達、庭園の本体部分は私などが口を挟むものなどないくらいのレベル!
入口の左右の仕様を預かった私が考えたのは「盆栽師ならではの枯山水」。

先日諸用で名園「蔓青園」さんに伺った際、現当主(五代目!)の崇寿さんに、大徳寺の計画を伝えて、
所蔵されている三代目三郎先生の遺品である景石郡の割愛をお願いしたところ、
“売り物ではない、と普段言っていますが、歴史ある名刹に私利を捨てて盆栽庭園を作られる森前さんに協力します”
と、亡き日本盆栽界の恩人、加藤三郎先生の集められた石群を、しかも、仮組みをして使いたいものだけを分けて頂く事になったのです。

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冷雨降る日、庭の各所に散る遺愛石を出しては並べ、また戻し、半日ほどかけて十数点の古石を有り難く割愛頂きました。
果たして、後日この石達が、現場でどのような「貌」を見せてくれるか?まだ、私も半信半疑です。

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でも、蔓青園さんにかけて頂いた心、天国にいる三郎先生への想い、色々なものを込めて込めて「盆栽師の景石枯山水」に挑んでみようと思います。

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雨の中、びしょ濡れになって、何度も何度も組み直しをする私に嫌な顔ひとつ見せずに手伝ってくれた若衆の皆さん、ありがとうございました。


羽生雨竹亭も開園して15年の時が経っています。
開園当初からこの庭の盆栽を守り続けてくれたわんこ「ガル」と「太郎」。

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天国に行ってもう何年にもなります。
2人は雨竹亭のみんなといつまでも一緒に居られるように、庭内を見渡せる片隅に静かに眠っています。

先日、ようやく秋らしい日和が続くようになったこの庭に、いつの間にか“彼岸花“が土から茎を伸ばして咲き始めました。

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そこは、ガルと太郎が眠っている真上でした。
樹齢数百年の雨竹亭の守り神と言える黒松の大樹が置かれているそば。

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今でこそ“雨竹亭“・“エスキューブ”を多くの方々が知って下さっていますが、当時は開園間もなく、盆栽の配置や日々の生活に追われていた時。
彼ら二人が、私達をいつも隣で癒してくれていました。
コロナの年、辛いことや苦しいことが続いた半年。
「ああ、きっとガルとタロウが、“負けないで!見ているから!“と、咲かせてくれたんだ」と思いました。
良き秋になりますように。
良き冬になりますように。

【マルキョウ植木】

千葉・匝瑳市で、植木・盆栽の生産と販売をされるマルキョウ植木・江波戸さん。
私より7歳上の68歳、バイタリティーあふれる活躍にはいつも頭が下がります。

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大型の槇の植木から、最近は「次の時代のために」と、お孫さん達と、若木の生産までされています。
広大な培養場を埋め尽くす程の松柏の群、私もそうですが、これだけの圧倒される量、自分の気持ちが相当に強くなければ維持管理は出来ません。


月に数回のオークション会場としても、全国の業者に知られる江波戸さん。

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お年を重ねても“前へ前へ“と日々努力される姿は、すべてに見習うものがあります。
名木から苗木まで、プロのあるべき姿がここにありました。

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生産が減少する盆栽界、唯一の里、四国鬼無は私達にとっても大切な場所。
日頃からお世話になっている北谷養盛園さんへ伺いました。

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4代にわたる培養で出来た黒松・五葉松。培養の苦労から年々の手入など、普段は買付が主な予定ですが、
今回は会社のみんなを連れて、“作り手の方々のご苦労の現場“を直に見て、エスキューブがすべき意味を伝えたくて来ました。

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また、通販大手“妙興“の辻本さんの好意で、“これからの盆栽通信販売”がしなければならない意味とスキルについて、とても貴重な時間をご一緒しました。

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“4億円の盆栽通販市場を10倍に出来れば“と言う想いを描かれる辻本さんは、自身が苦労されて辿った世界を、私達に惜しみなく公開して下さいました。
“ひとりが頑張ってもダメです。みんなでこの世界に何が貢献できるか?私で協力する事が有れば”、
とここからの通信販売での盆栽の在り方の構築をしました。
会社の若いスタッフ達に託す“次の時代の仕事“。年をとりました!皆んなの成長を願うばかりです。

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