雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴47年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 日常


【見捨てない命と象形(かたち)の継承】


羽生雨竹亭には、第一・第二・第三・各培養場を合わせると、数千本の盆栽があります。

お客様よりお預かりしているもの、美しく明日にでも飾れる手入れを施してあるもの、

まだまだ未完で数年をかけて作り上げてゆくもの、そして様々な原因で本来の姿を失って、

傷み枝枯れしたり衰弱によって樹勢の衰えが見られるもの。

そのすべてがここにあります。


先日、雨竹亭がこの地に根をおろして間もない頃からご縁を頂く愛好家夫人より森前さんの声が聞きたいとの連絡を頂きました。

懐かしい方、ご家族でこの庭でひとときを過ごされる様子が蘇ります。

久方の夫人よりの電話の内容を聞いて、申し訳なく恥じ入る想いでした。


愛蔵して日々楽しまれている真柏の古木。


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私のお誘いで、日本盆栽大観展に出品された樹です。

この連絡の少し前に、京都から羽生に戻ると、この真柏が庭にありました。


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枝枯れをして、針金が食い込み、樹の劣化がハッキリと見られました。


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お客様が痛めてしまったのだろう、時間をかけて作り直さないとと、

銀座や羽生でよくある樹の回復管理、と言う認識でした。


夫人の電話は以下の通りでした。

“ 森前さんとはホントにご無沙汰しています。頂いた真柏は、我が家の大切な樹として素人なりにも日々管理に努めて、楽しんでいました。

しかし、この数年、少しずつ状態があまり良くなく、羽生に連絡して相談していました。

そんな中、私が大病を患い、主人にも面倒をかけながら、樹を見守ってきました。

それでも中々、大観展に飾った頃の素晴らしい姿に戻ることはなく、

このままでは樹の為にもいけないと、幾度か羽生に連絡して預かってほしいと連絡しました。

出来れば森前さんに直接お願いと相談をしたかったのですが、担当の方との連絡で、今に至りました。

主人と相談して、これでは盆栽の為にも、趣味で楽しむべきもので、

心を痛めたり、苦労をしたり、盆栽を処分してもらって、この趣味をやめようか、と思っています


エスキューブ・雨竹亭は、全国の愛好家の方々に盆栽とサービスを提供する会社。

夫人のお話を途中でごめんなさいと言いたいのをこらえて、聴いていました。

“○○さん、お詫びの言葉もありませんが、せめて一年、この樹の為にも、私に時間を下さい。

一年後、大切になされた樹をご覧いただいてから、方針を決めて下さい

これが私がお答え出来る精一杯でした。

元々、良識深い人柄のご夫妻、私の言葉を受け取って下さり、ここから一年の時を、

この樹が、愛好家が、受けてきた刻を想いながら、樹勢の回復、樹相の改作に努めたいと思います。


担当者に非のすべてがあるとは思いません。

愛好家の方々、担当者の日々のあるべき姿、

そのすべてに心くばりが至らなかった、私の責任です。


若い頃、お客様に誘われて、ヘリコプターで、東京の夜の空を眺めた時、

なんて綺麗!まるで宝石が散りばめられているようだと思った時、操縦桿を握るお客様から

「森ちゃん、この綺麗な光ひとつひとつに、多くの人達のその人にしかないドラマと苦労があるんだよ。

綺麗な見方だけではなく、その中にある真実を感じることが大切だよ」

と教わりました。

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この真柏も、百年以上の刻を深い山岳の中で必死に息抜き、人の目に留まり、自然界から盆栽への道を数十年前に歩み始めたものでしょう。

多くの盆栽家、愛好家の慈愛を受けて、盆栽としての姿を展覧会に勇姿を見せるまでになったのです。

今、この樹は、人為と言う恥ずかしい災害で、苦難の刻を迎えています。

人が与えてしまった災害ならば、人の手によって、回復させてみる!

羽生の庭にある数えきれない樹達。

日本盆栽界を代表する名樹達から、ささやかな名も無き、見捨てられがちな草木まで、それらはすべて「命」なのです。

忘れてはいけない盆栽人としての大切な心を、夫人が問いかけて下さった気がします。

人生、失敗だらけの私、この真柏は私そのものです。

もしそうならば、私のように多くの人達に助けられて、今を生きるそのままを、この樹にも授けてあげたいと思います。

しばらく、私と一緒にこの羽生で暮らします。

来年の秋、どのようなになってくれるか?頑張ります!


盆栽を業として生きる皆さん、これは私の教訓です。

私たちプロは、日々多くの盆栽を世に送り出します。

そこには忘れえぬ名木もあれば、数えきれぬほどに扱ってきた数多の樹々もあります。

しかし、その樹を家族として迎えた愛好家の方々にとっては、どれもがかけがえのない唯一の名樹なのです。

盆栽ひとつで、人の輪が広がる・・この事を是非心に刻んでいきたいものです。

【“オヤジさん“  江波戸照夫氏】

関東の庭木の一大拠点 千葉県匝瑳市。
ここで庭木の他、盆栽の市場を月に複数回、
全国からの盆栽業者との交流で多くの仲間が集う“マルキョウ交換会“を主宰する江波戸のオヤジさん。

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あふれるほどの盆栽!
海外からの注文にも精算の立替や取置き管理を“いいよ!任せておけ!“と、気っ風良く引き受ける昔気質の人。

交換会以外で伺う機会も少ない中、久しぶりに元気な顔を拝見に伺いました。
22歳の時、奥様(私たちの呼び名は“お母さん“)と75,000円(奥様が5万円・江波戸さんが25,000円💦)で始めたマルキョウ植木は、
今では全国で知らないプロはいません。

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伺った日も、友人の目利き盆栽家の田中さんとどこまでが敷地なのか?
わからないほどの中にある盆栽達と仕事をされていました。

“オレは物も良く見えないし、勘と度胸と仲間に支えられて今日までやってきただけ。ありがたいよ“と、相変わらずの気持ち良いくらいの人柄。
陰で支えられる奥様共々、いつまでも私たちの道標として元気でいてほしいと心から思いました。

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ビックリするくらいの盆栽の量!
そして江波戸さんに逢いに皆さんも一度は是非訪れてみて下さい。


雨竹亭がYahooのネットオークションをはじめて、もう10年になります。
初めは中国鉢が2万円からスタートしたものが、海外のお客さん同士で競い合って、100万円になった事などに一喜一憂していました。
しばらくして、何故かギャンブルみたいな感覚の中に大切な盆栽や鉢や水石を載せていることに、
自分でやっていながら違和感を覚えて、一度休止しました。
“これが本当の盆栽業がやる事なのか?“そんな疑問に自分が悩んだのです。

スタッフも若返った6年前、新たな考えで再スタートしたのが、今も皆さんに楽しんで頂いているYahoo雨竹亭オークションです。

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“スタート価格以外、一切こちらは操作しない。一度のビットが入ったらそれで落札で良い“
この考えを貫いています。

例えば、2万円で業界市場で仕入れた盆栽、これを腕の良い盆栽技術者に整姿をお願いして、美しい樹相をスタジオで撮影。

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これを私が解説したものをレコーダーで録音してスタッフが商品の解説に起こす。
これを最後に校正してアップへ。

手入れ・撮影・解説・アップ・この行程を全部入れて2万円の樹のスタート価格は3万円💧
この内7~8,000円が手入れ代で支払うもので、2~3,000円での作業に数人がかかります。

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雨竹亭のオークションは、2万円に対して、例えば、21,000円のビットでも、他の方のオーダーがなければ、落札となります。
Yahooさんへの手数料を引くと赤字です。
・・でもそれでいいと思っています。

殆どの商品を“プロのオークションに出しても、そのスタート価格なら売れる“、これが雨竹亭の考えです。

本来の盆栽園の在り方は、良き物を誠意をもってご紹介したり、
来園されるお客様に“感動“して頂けるものを飾っておくのが仕事だと思っています。

お客様同士が、“競り合う“と言う事が、愛好家の方々をより良い趣味家へと道案内する私達にとって正しい事なのか?
今も答えは出ていません。

勿論、オークションを楽しみながら、“良いものを安く手に入れたい“とされる、純粋な気持ちの方々の為にこのサービスがある“と信じています。
中国バイヤーさん達の、“ザラ買い“が続く業界市場。
皆さんにご提供したい素材の入手にも頭を痛めるこの頃です。

それでも雨竹亭は、“この値段で落ちて儲かるの?“と言う設定を続けます。
お客様は、顔も見えない私達を信頼してくれているのだと、それこそを大切にしたいと願っています。
毎週25点(夏季は盆栽13点・鉢、水石、卓など12点)が火曜日22時にスタートします。

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毎週火曜日22時に1週間のビットの末、落札が決まります(競い合いの時は、システムが自動で延長時間を設けます)
是非皆さんも一度ご覧になってみて下さい。


雨竹亭ヤフーオークションストア

https://auctions.yahoo.co.jp/seller/bonsai_s_cube




展示会の出品樹のご相談で、木村正彦先生のご自宅を訪れました。
月に2~3回、お伺いしていますが、80歳を過ぎてなお、庭内はいつも新たな作品や手入れの樹々でいっぱいです。

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お弟子さんも常時3人、伺った日は、黒松の芽切り作業に追われる日でした。
以前より大切になさっている作品達、初めて拝見する盆栽達、
そして先生の代表作として名高い名樹、真柏「登龍の舞」重厚な作品群の中で、先生はいつも変わらぬ姿勢で盆栽と向き合っていらっしゃいました。

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“これ以外、することないから“・・名匠はいつも同じ答えです。
どれ程の盆栽が、この庭から旅立ったでしょうか。
まさに醜いアヒルの子が、美しい白鳥となって、多くの盆栽人達を魅了しているでしょう。

天才と謳われる整姿術はもちろんの事こと、日々続けられる日常的な季節を的確に捉えた管理作業。
先生の日常は、盆栽の1年に合わせた刻となっています。

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功なり名を遂げてなお、日々を変わらずに暮らされる先生。
人は八十路を越えて、そのように皆できるでしょうか?

老成と言う言葉があります。
歳を重ねて完成されてゆく人格と技量、まさに先生は盆栽人のあるべき姿を物語っています。
しかし、その中でも、“更なるものを“と言う探究心と冒険心。
言い方を換えれば、“童心“のような純粋な盆栽への向き合い方が、木村正彦と言う二度と現れない盆栽家を創り上げているように思います。

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届かぬ目標ではありますが、こうして親しくさせて頂く事で、形を変えて私のような出来の悪い盆栽家でも、夢に向かって歩む原動力にさせて頂いています。
“飽くなき挑戦“の背中を追い求めて。


日本盆栽業界の市場中心的オークション『水曜会』
私が修行時代の43年前には既に業界の“相場“つまり、市場価格の動勢を左右する位置にありました。

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時代も大きく変わり、今の役員の方々の殆ども、いつの間にか、私よりも年下の皆さんになりました。
大会と呼ばれる年に数回の水曜会は、参加者も多く、ものによっては、愛好家の素晴らしい作品が高値を呼びます。

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今回のような通常会も、上下動の激しい流通市場を反映した参考になるものです。
午前中のみの参加でしたが、“欲しいな“と思う黒松なども手に入り、400万程の仕入れとなりました。
ここから持ち帰った樹々を少しずつ手入れと手直しをしたいです。
(中々、時間がなくて、手入れが出来ないのが悩みです💧)

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でも、我が業界の仲間たちは正直です(笑)
売れ筋の種類には声が重なり、作り込むのに数年かかりそうな樹は、しーんとしています(大笑)💦

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