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盆栽歴47年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 日常


展示会の出品樹のご相談で、木村正彦先生のご自宅を訪れました。
月に2~3回、お伺いしていますが、80歳を過ぎてなお、庭内はいつも新たな作品や手入れの樹々でいっぱいです。

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お弟子さんも常時3人、伺った日は、黒松の芽切り作業に追われる日でした。
以前より大切になさっている作品達、初めて拝見する盆栽達、
そして先生の代表作として名高い名樹、真柏「登龍の舞」重厚な作品群の中で、先生はいつも変わらぬ姿勢で盆栽と向き合っていらっしゃいました。

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“これ以外、することないから“・・名匠はいつも同じ答えです。
どれ程の盆栽が、この庭から旅立ったでしょうか。
まさに醜いアヒルの子が、美しい白鳥となって、多くの盆栽人達を魅了しているでしょう。

天才と謳われる整姿術はもちろんの事こと、日々続けられる日常的な季節を的確に捉えた管理作業。
先生の日常は、盆栽の1年に合わせた刻となっています。

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功なり名を遂げてなお、日々を変わらずに暮らされる先生。
人は八十路を越えて、そのように皆できるでしょうか?

老成と言う言葉があります。
歳を重ねて完成されてゆく人格と技量、まさに先生は盆栽人のあるべき姿を物語っています。
しかし、その中でも、“更なるものを“と言う探究心と冒険心。
言い方を換えれば、“童心“のような純粋な盆栽への向き合い方が、木村正彦と言う二度と現れない盆栽家を創り上げているように思います。

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届かぬ目標ではありますが、こうして親しくさせて頂く事で、形を変えて私のような出来の悪い盆栽家でも、夢に向かって歩む原動力にさせて頂いています。
“飽くなき挑戦“の背中を追い求めて。


日本盆栽業界の市場中心的オークション『水曜会』
私が修行時代の43年前には既に業界の“相場“つまり、市場価格の動勢を左右する位置にありました。

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時代も大きく変わり、今の役員の方々の殆ども、いつの間にか、私よりも年下の皆さんになりました。
大会と呼ばれる年に数回の水曜会は、参加者も多く、ものによっては、愛好家の素晴らしい作品が高値を呼びます。

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今回のような通常会も、上下動の激しい流通市場を反映した参考になるものです。
午前中のみの参加でしたが、“欲しいな“と思う黒松なども手に入り、400万程の仕入れとなりました。
ここから持ち帰った樹々を少しずつ手入れと手直しをしたいです。
(中々、時間がなくて、手入れが出来ないのが悩みです💧)

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でも、我が業界の仲間たちは正直です(笑)
売れ筋の種類には声が重なり、作り込むのに数年かかりそうな樹は、しーんとしています(大笑)💦


先日、大徳寺龍泉庵から1匹の老猫が行方不明になりました💧

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名前は“空“  空ではありません。
禅寺で育ったので、“色即是空“から、“クウ“  の名になりました。
元々、芳春院和尚様のご親族が、九州から京都へ移られる時、一緒に来た猫です。

年は8才の雄猫、1年前まで京都七条の臨済宗大徳寺派の寺に居ましたが、
“家族“と共に去年から本山の塔頭“龍泉庵“に暮らしていました。

5月22日、普段は庵の中で暮らしていたクウちゃん。

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悪い偶然が重なって、普段は開けない龍泉庵の玄関、それでもそれだけなら庵内の庭に下りるだけなのに、
時悪く、盆栽庭園の入替作業で、玄関のすぐ近くの裏口の門が開いていました。

広い大徳寺の中、何処かに潜んでいてくれたらと、家族が探しましたが、いまだ帰って来ません。
慣れない土地、日頃には無い景色、今は唯々、無事に戻ってくれる事を願うばかりです。

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小さな命ですが、可愛がっている家族にとっては、かけがえのない命。
私たちも、物言わぬ盆栽達と共にいます。
声なきからこそ、寄り添ってあげたい気持ちは一緒です。
クウちゃん、優しい皆んなが待っている寺に帰って来て❗️


コロナ下で開催を控えていた、盆栽水石の趣味団体「玄虹会」の本格的な陳列に対する勉強会が、
修練の深さと完成度、そして高潔な人柄で、会員の指導的立場だった今は亡き、根岸庄一郎先生の邸宅で令夫人の協力で行われました。

盆栽と水石の座敷飾りをする為に造られた構え。
久しぶりの座敷内の飾り付けで、この空間が如何に素晴らしいものか、実感しました。


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玄関を入ってすぐの“寄付席“は、湖に浮かぶ帆舟。
足下には、水辺にあう砥草の芽出しの姿。

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客を迎える初手の飾りは、“重くなりすぎぬよう“を心がけ、それでも季節の移ろいを表現する事を肝要としています。


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書院席は唐楓の寄植。
写実的な景趣と葉色に対して、配された掛物は、盆栽の“実“と対比させる、水墨で描かれた“山雨“と題されたもの。
脇床には、里山にまさに今飛来している白鷺。

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この時期は、練達となれば、盆栽に“ほととぎす“の画をよく合わせられますが、
脇に白鷺を配したことで、鳥の“被り“が出るのを避けての配軸と添景です。

“峻険な山々には、時折雨が流れ降り、眼下の叢林は、新緑の季節。
遠くを見れば、人里に白鷺の風景。
樹・画・添・が三位一体となって、自然を素直に謳い上げた席です。



根岸邸にある茶室は、数寄屋建築として正統なもの。
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小間と呼ばれる小さき床の間は、“小宇宙“としての格の高さを内に秘め、精神的な内面を持った席が求められます。

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主石は滝石。
単に“滝“の景趣を思うのではなく、配された名筆、菱田春草の“天人“と共に、
石中に仏性にも似た観照心を希求したい事が、掛物との共鳴に感じられます。



三席は、主飾りがすべて異なり、一席の印象を被らせる事なく、
奥へ進むほどに、“何気ない自然の景趣“から、盆栽水石の飾りの深奥へと向かう精神性の高みへと構成されています。

一席を創意するだけでも大変ですが、ひとつの邸宅の全体を季節の主題を持ちながら、
更に“その向こう“を“見えぬように設える“・・趣味三昧の深奥を伝えてくれる研修会でした。

【蘇る真柏「昇天の龍」❗️】


日本盆栽界の“雑木盆栽の名人“と謳われる、大宮盆栽町「芙蓉園」に、
お預けしてある盆栽の管理料等をお支払いするのに、久しぶりに竹山先生にお会いしました。

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休園日の木曜日、門を開けて下さって中に入れば、手入れの行き届いた盆栽達が、塵ひとつない棚場に整然と並んでいました。
“いつも園の中の美しさは格別“と感心する姿です。

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冬の寒さを避ける為に、ハウスや軒下に取り込んである樹々、
釉薬鉢の古い物を使っている盆栽は、鉢に毛布を巻いて、根や鉢の“凍害“を守っていました。

ふと母屋の軒下を見れば、“日本盆栽界の宝“と謳われた、真柏名樹「昇天の龍」がありました。

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1970年、日本で開催された『万国博覧会』に造られた“盆栽庭園“は、
戦後の盆栽界の爆発的な発展のスタートで、その中でもこの“昇天の龍“は、シンボルとされた樹です。

以来50年以上、竹山先生と共に生きてきた樹。
一時は枝が広がり過ぎて、往時の姿からすれば、鷹揚となった樹、
数年をかけて先生が、切り戻し、針金整姿、植替えを施して、久しぶりに見れば、あの若き頃感動した姿に戻りつつありました。

刻をかけ、見守り続けた樹。
まさに名園芙蓉園を代表する真柏として、これからも盆栽界のシンボルであり続けてほしいものです。

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