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盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2023年02月


国風展も終わり、出品されたお客様へのお届け物で、宅急便並みの忙しさ💦
福島の“舩山コレクション“舩山さんの所へもお届けに伺いました。
例年よりも“春“の兆しが早く感じる福島。
ズラリと並ぶ名樹達も、少しずつ春の準備を始めているのが、葉色からも窺えます。

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一昨年の作風展内閣総理大臣賞受賞の真柏、私が20年手がけた双幹の真柏、そして細身ながらも、際立つ真柏の美を見せる一樹。

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それぞれに“顔“があり、さながら、真の位・行の位・草の位を、表現した樹が立ち並んでいるようでした。
国風展の小店売店でお声をかけて頂いた黒松太幹模様木も、今日からこの庭の“家族“として迎えられました。

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今年で80歳になられる舩山会長。
今年の国風展では、“松柏名樹の舩山“と言う皆さんの見方を変える、雑木盆栽を出品されました。
この数年、大好きな松や真柏以外の、葉物・花物の樹をご紹介しています。

お年を重ねるごとに、四季の移ろいを楽しむ樹にも目がいかれるようになられました。
さて!来年は松で行くか?雑木で行くか!
ここからまた植替えを含めての一年のお手入れのお手伝いが始まります‼︎

樹々と共に、いつまでもお健やかでありますように❗️
(心配ないかもしれません!このお年で虫歯ひとつもない方!)


羽生雨竹亭の盆栽教室に通う、“盆栽博士ちゃん“こと、清水ちえりちゃん。
今年の国風展で見事再びの入選を果たしました。

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小学生だったちえりちゃんが、国風展史上、最年少で入選した事で、協会関係者はもとより、
マスコミも取り上げて、いつの間にか芦田愛菜さんとテレビの「博士ちゃん」に2度も盆栽博士ちゃんで出演するまでになりました。

本来の教室に通うちえりちゃんは、盆栽愛好家のお爺様の影響を受けた物静かな少女。

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お父様お母様の温かい愛情と応援を頂いて、豊かな少女期を過ごされている方です。
昨年、一所懸命手入れをして準備をした作品が、残念ながら国風展落選💧
今だから言えますが、“ギリギリかなあ“と思っていた作品。
勿論落選は辛いものですが、
ちえりちゃんにとっては、人生の佳き経験になってくれたかなと思っています。
高校受験も、見事難関付属高校(この付属は殆ど大学まで行ける優秀校!)に推薦入学を決めました❗️おめでとう‼️
盆栽趣味を持つ女性、才色兼備を絵に描いたような世界‼️
ここまで来る間のたくさんの苦い経験、国風展の落選💦 
それこそがちえりちゃんの“今“を作ってくれたのかなと思います。

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教室に来て今回の樹の手入れを黙々とする姿、高額な盆器や卓を提供してくれた、田中財団理事長や舩山さん。
孫を見るような眼でその成長を見守る多くの方々に、一所懸命御礼を伝える健気な姿は、お手伝いした私達にも清々しく映りました!

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“今度は3〜5年かけて、自分の手で培養した素材からの樹も挑戦しよう“と伝えて、今春には培養をする樹を探すことになりました!
盆栽と共に成長してほしい若い方、ある意味で私達老練の盆栽人達こそが、ちえりちゃんのステップに勉強させられているように思います!
我々、爺い達もちえりちゃんに負けずに頑張るぞ😤


15歳でこの道に入って48回目の国風展。
当時荘厳な大理石の建築だった東京都美術館も現代的な姿になって久しいです。
10年前より、国風展会場の2階展示室で『日本の水石展』を主催者の1人として運営する中、
前期展は上野グリーン倶楽部での“盆栽大市“の商売の合間を縫って、後期展は水石展の会場から駆け足で垣間見るような観覧(笑)。

そんな中でも年々の国風展は毎年“色“を少しずつ変えているように見えます。

今年の展覧を全体的に言えば、とても素晴らしかったと思います。
言葉を替えれば、“王道の姿“に戻ったように見えました。
昨今の国風展は、この展覧が世界的な注目を浴びる中、海外の方々でもわかりやすい“アカデミック“な盆栽が目立っていました。
大型で派手な作品は観る者を圧倒します。

しかし、なぜか?多少の違和感を感じていましたが、今回の展覧は、会場全体が引き締まった静謐感に満ちていました。
各盆栽達も古感が漂い、寸法も本来の日本の盆栽として長く伝統の中で育まれたサイズ感があり、観賞していても圧迫感を感じませんでした。

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主催の方々の労苦と努力に感謝と拍手を贈りたいです。
相変わらず、私が不得意な中品盆栽と、小品盆栽は、その丹精な培養と細やかな手入れの仕上げに頭が下がるばかりでした。

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また、後期展の国風賞の真柏には、深い感銘を覚えました。
出品された岩手県陸前高田市の菅原さんの自宅でこの樹を観たのはもう15年前です。

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まだ山採り真柏の原木状態でしたが、その頃より“この樹は将来日本の真柏盆栽の代表的な樹になる!“と確信した樹です。
弟子の加藤君と2度目に訪れた時、菅原さんの家から僅かな距離にあった、浜辺につながる見事な松林。
そこに加藤君と座ってその素晴らしさに息を呑んだものです。
それから1年後、大地震と津波によって、200年かけて創られた松林は、一瞬に消え去りました。
“あの巨大な松林が消えた!?“  すぐには信じられない出来事でしたが、現地で海産物の加工業を営む菅原さんの工場も津波に飲み込まれたと聞きました。

幸にして、ご自宅と盆栽達は、一段高い土地にあった為、難を免れたそうです。
それでも故郷全体が失われた中、平和で豊かな日常があるからこそ評価される盆栽の趣味、
色々な方々の“目“もある中での、丹精と培養の日々を送られたのだろうと、その苦労はひと言では語れないものでしょう。

ご高齢になった菅原さんに会場で久しぶりにお会いして、受賞へのお祝いをお伝えした時の、ご本人の東北人らしい朴訥な静かな笑顔が心に残りました。

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日本人は盆栽と同じく、自然と共生しながら時には厳しい試練を受けて、それでもそこから再生していきます。
私はこの真柏の国風賞受賞は、特別な想いで拝見しました。

素晴らしい樹、誇るべき日本の盆栽と人達、心から“ありがとうございます“と言いたいです。

【伊達政宗公の石!公開‼️】

日本水石協会が発足して、もう60年以上の刻が経ちました。
先輩達から“いつかは美術館で水石展を“と言う願いを、社団法人のなった十数年前、
多くの人達の努力で、帝都美の殿堂、東京都美術館で開催されるに至りました。
今回で10回目となる展覧、事務局長として走り続けた10年ですが、正直“よくここまで来たなあ“と思います。

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全国の愛好家の方々にお声をかけて、毎回150席の水石展覧を続ける事は、展示の質を含めて大変な事でした。
それでもありがたい事に、“水石文化を後世に伝えたい“と言う気持ちをご理解下さる多くの水石趣味家の皆様に支えられて10年の刻があっという間に経ちました。

“展示の許可は絶対に無理“と言われた、上野寛永寺の「黒髪山」を筆頭に、
西本願寺の信長由来の「末の松山」まで、日本の水石の歴史そのものと言える名石を美術館にお越しになる方々に披露する事が出来ました。

10回を記念する今回も、寛永寺の識書を有する、伊達政宗公の由来石を展示させて頂きました。

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また、ここまでの「日本の水石展」を彩った名石達から精選した代表的17石を、特別企画展示としてご披露させていただく事になりました。

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今回で総展示数1600点のなった水石展。
ひとつの大きな到達点ではありますが、ここからが本当の水石文化を“広く若い方々に伝える時“と、
新しい“誰もが楽しめる水石“となるよう、河川に転がる数多の石に目を向けて、
初心者の方々と日本人が誇る“見立ての美“の結晶と言える水石を伝えたいと思っています。

僅か5日間、2/18までの展覧ですが、お越しになる皆さんに少しでも水石趣味の面白さを会場でお伝えしたいと思います。
ぜひお時間あれば、一度に観ることなど、2度はない展覧をご覧にお越し下さい。

「日本の水石展」日程についてはこちらから↓
雨竹亭ホームページ

【日本の盆栽園大集合‼️】

2/18まで開催されている国風盆栽展の売店としての上野グリーン倶楽部「立春盆栽大市」が、
2/8のバイヤーオープン(国内外の盆栽業者の交流と商談)を皮切りに始まりました!

盆栽の商材が海外への流出が続く中、激減していると言う現状が本当なのか?と思う程、
グリーン倶楽部には、小品盆栽から大型名木まで、ひしめき合う程に並びました。
日本盆栽業界の奥深さを感じます。

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私共エスキューブ雨竹亭も、例年通り、館内・屋外の2ブースを設置して最大規模の売店を構成しました。
中国バイヤーのエネルギーは以前ほどではなく、今日のバイヤーは、どちらかといえば、国内業者間の取引の方が高額品を動かしています。

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大切なお客様の来館をお待ちするこの2週間。
小店も業界人として起こし下さる愛好家の方々に、出来るだけの応待に努めたいと思っています。

友人の出店、遠方の久しぶりの仲間の出店、中には“お!この樹は面白いな!“と思うものもあり、
売りに来ているのに、いつも買う方が多くなる悪い性格!がまた出てしまいます💦

でも盆栽が大好きだから、これは“不治の病“笑!直らないですね😓

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お得意様をご案内する事と同じくらい、初めてブースを見て下さる方に、
“どちらからですか?盆栽は長くお楽しみですか?“と、一番大切な、こう言う場で、
新しいご縁をいただく事の大切さをスタッフに伝えようと思います。

立春盆栽大市出店について詳しくはこちら↓
雨竹亭ホームページ

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