雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2022年11月


人の流れが戻ってきた銀座。
久しぶりに「銀座雨竹庵」で人と待合せしました。

海外の皆さんが、お土産に持って帰れる水石・道具・添景などを毎日お求めに数多く来店下さる日常にもどって来ました。
前身の“銀座森前“から数えて、もう24年になります。

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この街も私が徒手空拳で店を開いた頃からは、大分変わりました。
何処か“昔の銀座の面影“が消えてゆく気もして寂しい気持ちですが、それだけ日本と海外が近くなったのでしょう。
“和の文化を伝える銀座の商店“が減る中、四半世紀の歴史の“新参者“の私達。
それでも訪れる海の彼方からのお客さま達に、盆栽の素晴らしさを僅かでも記憶として持ち帰ってくれる事を願っています。

多くの海外の方が、“この盆栽を持ち帰りたいが“とお声を頂きます。

植物の検疫と言う大きな壁で、持ち帰れない事を伝えるしかない現状に、忸怩たる想いもあります。
小さな鉢に入っている盆栽が、果たして各国の自然を破壊するような病虫害の危険があるのでしょうか?
健康を維持する為に、日夜消毒をしているのに💧

“文化発信をこれからの日本の産業に“と、お上は謳い上げますが、
5,000~15,000円の盆栽に、数日又は数ヶ月かかる検疫面の諸条件は、理屈では通りますが、観光で訪れて下さる人達には無理です。

ハサミや持ち帰れる盆栽に関連する品々を、せめてもとお求めになる方々をお相手すればするほど、対応が出来ない歯痒さです💦

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それでも、七丁目の小さな店は、間もなく25年目を迎えます。
道ゆく人達の様子が変わっても、街並みが変わっても、銀座に一軒の盆栽専門店は、
今日も夕暮れの街灯りのショーウィンドウに盆栽を飾り、皆さんに“生の盆栽“をご覧頂いています。


紅葉のシーズン🍁
行楽のドライブや、家族での里帰りなど、久しぶりに郊外に皆んなで出かける機会の多くなったこの秋。
羽生雨竹亭も例年通りの“秋の観賞会“を開きました❗️

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近年はネット販売や海外の富裕層相手の商売に、盆栽業界は傾いています💧
食べる為には仕方がないけど、私は昭和の15歳からの“小僧あがり“、
自分で独立して盆栽園を持つことは、この道に入った時から今も変わらぬ“夢“です。
それは盆栽に囲まれた庭で、盆栽の大好きな愛好家の方々と、ゆっくり樹々を楽しんで頂きながら、
様々な会話の中で、知識や現物、手入れや改作、何よりも目の前で息づく“命の姿“に、
それぞれの“想い“を共有しながら、交流を深めるところから、本当の盆栽趣味家の成長とお手伝いが出来ると信じているからです。
自分が半世紀近く経験してきた物事を、会話の中で伝えながら、“何が大切なことか“を、共鳴して頂きたいからです。

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朝夕に冷えてきた空気で、葉の色も引き締まってきた松の類、一年の管理の“ご褒美“に色とりどりの紅葉を見せてくれる紅葉やけやきの雑木盆栽達。
女性の方達の目をいちばん楽しませてくれる、草物盆栽や実物盆栽。

訪れる皆さんに見ていただく為に、精一杯の手入れ“お化粧“をして、恥ずかしそうに庭に並ぶ樹々。
“買いに来て頂く“   そんな安直な世界ではなく、“盆栽はいいなあ“と感じて頂く・そんな秋の観賞会なんです。

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入口の庭園・中庭の盆栽棚・中品、小品の別棚、小さな鉢から数百年の歴史をまとった美術品と言える盆器や水石達。
趣味三昧の世界をご覧に来て下さい‼️


京都大徳寺・芳春院盆栽庭園のバックヤードで、出番を控えていた蔦の盆栽。

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京都でも北に位置する大徳寺は、秋冷や時雨など、盆栽の四季折々の美しさを愛でる環境に適しています。
このツタも半日陰で夏場を過ごしたせいで(勿論春からの肥料と管理に努めて)色絵具を流したような鮮やかな紅葉をしてくれました。

久しぶりに“我が家“の羽生の庭に戻って、席飾りをしてみました‼️

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山里の秋を思わせる蔦の紅葉、掛物はまだ微かに鳴声が聞こえる秋虫達。

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脇には月明かりに照らされた閑屋(名工・大島如雲)が白銅の光を放っています。

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あと僅かな時で葉を散らす蔦は、今年の“命の彩り“を見事に謳い上げ、寒々としてきた月の下に秋虫は最期の鳴声を響かせています。
移りゆく季節、変わらぬ年々の“あるがままの自然“   
一瞬の自然の美は、永遠の美へと繋がってゆきます。
ひとつひとつの葉色の鮮やかさが違う蔦の美、今年もありがとう❗️

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