雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2022年11月


京都市内岡崎公園の“みやこメッセ“で、盆栽界の二大展覧のひとつ、日本盆栽大観展が開催されました。
コロナ禍で、海外の方々が来られなかった昨年、一昨年とは違って、今年は多くの海外勢が初日から来場されました。
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内閣総理大臣賞は、大川功氏の真柏巨樹❗️
未公開の圧巻の存在は、他を圧倒するものでした。
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歴史ある“国風盆栽展“とはひと味違って、業界団体の主催するこの展覧は、盆栽水石の様々なジャンルを幅広く楽しめるものです。
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特に展示の飾り方のレベルを競う“大観展賞“などは、名樹を単独で鑑賞するのみではなく、
そこに表現された“自然観“や、世界観を伝えるもので、盆栽水石の愛好家の美意識を高めるものとして、私なども素晴らしいものだと思います。
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行き届いた手入れの樹々、掛物と合わせた調和の美、大観展はいいですね❗️


20年ほど前、長野県須坂市の井浦勝樹園さんに伺った時、見た事もない大型真柏の未完があり、
何度かの訪問の末、“森前君ならいいよ“と言われて譲っていただいた事が昨日のように思い出されます。

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そこから15年、下手なりにコツコツと作り、名樹としての樹相として発表しました。
私は商人、盆栽作家などと名乗る立場はありません。
長くこの樹と歩んで思いました。
“この樹にはもっと別の顔が必ずある“・・
そんな時、木村正彦先生から修行を終えて、羽生の近くに居を構えた若き作家、森山義彦君との交流が始まっていました。

それでも高額な樹、お世話になっている愛好家の舩山さんにお願いして、

“旧蔵者から譲って頂いた値のままでいいから持ってほしい。
但し、森山君に作家としての作品になるよう、自由に改作させてほしい。
完成して作風展に挑んで、すべてが終わるまで作風展の規定の為、舩山さんはどこにも飾れません。
それでもお願いします“

・・無理なお願いを受け入れて下さった舩山さんには感謝しかありません。

無事に栄えある作風展内閣総理大臣賞を森山君が射止めたのが昨秋。

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間もなく開催される第42回日本盆栽大観展の特別出品が済めば、ようやく交わした約束通り、舩山さんの所でこの樹も静かな刻の中に入れます。
天国にいる井浦のお父さんにも報告できます。
私は主人公よりも、脇役や軍師が似合っているみたいです💦笑


25日より京都市みやこメッセで開催される『第42回日本盆栽大観展』の会場内で、
日本盆栽協同組合主催による、日本ウクライナ友好チャリティーオークションが開催されます。

ウクライナの首都キーウと京都市は姉妹都市。
大観展の主催者のひとりでもある京都市を通して、収益金のすべてを、
戦禍で苦労されるウクライナの人々の僅かでも役立ててもらおうと、企画されました。

私も企画者のひとりとして、木村正彦先生・小林國雄先生など、
盆栽界を代表される交流ある皆さんに声をかけて参加出品を集めてみました。

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27日、日曜日の午後2時、進行役を務めて挑みます。
もし、京都大観展にお越しの皆様が居ましたら、是非参加して下さい。

盆栽界が寄与できるものは僅かです。
でも、“貧者の一灯“と言う言葉もあります。

ひとつの種から、ひとつの苗木のような樹から、すべての盆栽達は名樹への道を歩みます。

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私達の灯す光は小さいですが、それが集まればやがて大きな太陽にもなります。
日々水をかけなければ、死んでしまう盆栽達。
日本人はそれを弛まぬ心で守り続けてきました。
盆栽は平和な日々の中にあってこそ人々の心を癒してくれます。

平和の象徴、“BONSAI” で、世界がひとつになれますように!


11月14日未明、昨日までの日々好天が嘘のような吹き荒れる風!
まるで台風が来たほどの強風に慌てました。
出来るだけの盆栽の保護と避難に努めましたが、お客様のお預かりしている大切な盆栽を第一に守ることが優先され、
気が付けば樹齢150年の真柏古樹が根元から折れてしまいました。


元々、水吸い一本と細い舎利幹で生き抜いてきた真柏。

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業界大先輩の故大久保準一翁から譲り受けた“形見“のような存在です。
根元が安定していなかったので、支えで持たせていたもの、水吸いが半分から裂けて、半死半生の状態💧

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盆栽が命を失う時は、その殆どが“人災“に近いものです。
この樹も、もっと早く室内に込んであげれば、こんな辛い想いをさせずにすんだと、反省と後悔と申し訳なさで、気持ちが塞ぎます💧


それでも、樹が“生きたい!“と言う気持ちを持ってくれることを祈って、出来るだけの処置をすぐにしました。

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裂けた水吸いをもう一度着けて釘で固定して、鉄筋の支柱でガッチリと支えて、
裂けた部分全体を嵩上げの感じでネット巻き、用土保護をしました。

風にあてず、静かに見守る日が始まります。
“生きてほしい“唯々それだけです。

極寒となれば、温室に入れて、根の活動を促してあげたいです。
せめてこれが成長期ならば、命の可能性が今より倍になったのに💧

いつまで経っても、日々反省ばかりの人生です。

【未経験・扶養家族・30代💦 それでも“いつかは名木のように!“】

羽生雨竹亭には、この2年の間に、“30代のパパ“と言う環境で、盆栽業と言う世界に入ってきた“若者?“が3人います。
ひとりは十数年間、立派に会社勤めをして家族を守ってきた者、
ひとりは幾つかの職を渡りながらも、家族の為に働いてきた者、
もうひとりは結婚間もなく10年間の電気関係と言うまったく違う世界から転職した者。

それぞれの人生、家族、何度も“盆栽業はそんなに簡単なものではない、よく考えて“と翻意を促しましたが、
結局彼らと彼らの家族の生活を共に支え合う事になりました。

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私のように、中学を出て盆栽の修行に入った者には、“就職“と言う概念でこの世界に入る事には、面接と言う会社としての対応をしても結局はわかりません。
“本当に盆栽が好きなのか?“  ここへ質問が行き着いてしまうのです。
“何故、好きなら今まで趣味でもいいからやらなかったの?“ 
最近は、社会全体に盆栽の文化や趣味性が理解頂いてきた事には本当にありがたいと思っています。
反面、ウチのように“銀座に店がある“ なんて言う事に魅力や想いを偏らせる方も多く、
“おしゃれ“  “今風のジャパンモダン“  と、自分のスキルの
一時には面白いと言う考えで、面接を求める人が多くいます。
“入りたいなら、まずはアルバイトで週に一度でもしばらく来たら“  最近はこれが定番の私の面接のコメントです。
大概は、1~2回来て“やっぱりご遠慮させて下さい“です😓

毎日、水かけ・草むしり・消毒・台車を使っての盆栽移動(1人では持てないものが殆ど!30~50キロ)
手入れ小屋で、チョキチョキと盆栽をいじっているなんて、そんな甘いものではないんです😓
それでも雨竹亭の皆んなは、盆栽が好きで、会社の仲間が好きで、頑張っている“ワンチーム“なのです。

そんな“中途採用、未経験💦“の3人に、“夢を持って“欲しくて「夜間授業」をしました!

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選んだのは、彼らと同じ!
ポットに植えられている真柏の苗木、約8年生。

名もなき素材、これをひとつずつの盆栽に仕立てるには、10~15年が最低かかります。
しかし、幹を真っ直ぐに仕立て、寄せ植え造りをする事で、
“ひとつでは見られない樹が、作り方で、大きな景色を見せてくれる“  そんな事を伝えたかってのです。

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僅か数百円の素材が集まることで、盆栽としての価値への可能性の道を歩み始める!
“自分達に置き換えてくれたら“  そんな想いを重ねる夜間授業でした。

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