雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2022年07月


大型の山採り素材の入手が不可能に近い激減の中、山採りならず、
“庭採り“で、福島県の旧家にあった真柏の“丸幹“素材を、大型ポットや木箱に入れて1年。

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生育状態も安定している事を受けて、舎利芸を作り上げるための第一弾の“皮剥き“を行いました。
5~7月、真柏が幹中に水をよく吸い上げている時期が大切です。

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幹の動きに合わせて、自然な水の“吸い上げ道“に逆らわず、“ここなら大丈夫“と言う所を見据えて、刃を入れていきます。
何度かに分けての舎利作りが必要で、今回はこの樹の将来を決める大切な刃入れ❗️

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これでおおよその将来の姿の基本が決まります!
枝々の方は、いずれ枝接ぎで、糸魚川真柏へ衣替えします。
まだまだここから始まる「名木への道」‼️
盆栽人は、先達が遺した樹を扱うだけではなく、このように“未来へ繋ぐ新しい名樹盆栽“の創作挑戦もしなければ!
でも、こういう仕事は楽しいです‼️

【祇園祭りの頃、猛暑を避けて遮光設備❗️】

“戻り梅雨“で暑さと潤湿な日が行ったり来たりする7月。
それでも間もなく日中は外に立っていることすらキツい日々が来ます。
今年の暑さは異常で、羽生の培養場も、
昨年まで何ともなかった大阪松の大型太幹までもが、葉が灼けてしまった部分が出たほどです。


大徳寺の庭園も、昨年同様に樹に合わせての木製遮光ネットの設置をしました。
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僅かな遮光で樹々の状態は歴然と違います。
人間で言えば、帽子をちゃんと被っているかいないか?と言う感じです。

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それでもここ京都の北区、送り火の山々の麓、
朝晩の温度やしっとりとした空気が関東平野とはずいぶん違います。
山育ちの五葉松類も、葉色が羽生よりも良いです。

庭を守り、樹を守り、まだ2年。
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ここからどれだけの刻を“守人“として全う出来るか?
樹に庭に寺に教わりながらいきたいものです。


日本水石協会との共催の形で、毎年大宮盆栽美術館で開催される本展。
今年も私共がお手伝いとなり、床の間飾りを含めて、美術館に“夏飾り“を設えました。
真・行・草・の3種の床構え、美術館らしいモダンな展示ブース、
それぞれの場面が持つ
イメージを大切に、お世話になっている愛好家の方々にご協力頂きました。


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“真の床“は、静岳石の雄大な台座石。
「白雲抱幽石」の禅語は“黄檗禅三筆“のひとり木庵。
格式の高い様式の床、脇書院・付書院など、石の持つ世界観と共鳴出来る道具合わせが重要です。

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行の床には、渓谷の景色を現す力強い伊予石。
明治の明治の日本画大家・山元春挙の大胆な構図の瀑布(滝)。
墨部分のみで清冽な水飛沫を見事に表した名画に滝下の渓流を想わせる石姿。
水石夏飾りの真骨頂の席。


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煎茶文化に端を発した、盆石の文房飾りを再現した珍しい席。
棚も名工鈴木節斎、水石三点は、“天・地・人“の趣意を持っています。



企画展「山水涼景~水石の世界」】
さいたま市大宮盆栽美術館HP
https://www.bonsai-art-museum.jp/ja/exhibition/exhibition-8110/


京都は7月1日から1ヶ月に及んで「厄や疫病を祓う」願いを込めた『祇園祭り』が行われます。
コロナ禍で2年間開催が見送られましたが、今年は洛中を埋める“山車“も出番に備えて木組みが行われています。


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“山鉾巡行“と言う山車が市中を練り進む一大イベントの中でも、
この掛物に描かれている「長刀鉾」は、“邪気を切り祓い進む“ 象徴的な山鉾です。
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1300年続く神事、長刀鉾に取り合わせて、真柏の珍しい根連りの細幹。
脇には木彫の双龍が宝剣を守る姿。

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古都を守る龍、京都に都を作った桓武天皇は、
この地を見下ろす地に宝剣を突き刺し“ここを新たな都とする“と言われた伝説が残っています。

厄災の多かった半年、ここからの半年が佳き刻となる事を願った飾りです。
盆栽の床飾りには、自然や季節を謳歌するものから、このように伝説や故事に即した飾りもあります。


“夏越しの祓い“も過ぎて、今年も後半、空梅雨の猛暑には参ります💦
暑気強い空気の中、せめて床飾りには“涼しさ“が欲しいものです。

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名木の松柏類の美もひと休み! 
何気ない山野草や細き季節の鉢物が、掛軸や点景道具と合わせると、観ているだけで、何処かに“風“を感じさせてくれるように思います。

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普段は盆栽の棚場の端っこで、粗末な扱いを受け易い草木たち。
彼らが年に一度、ひのき舞台に上がる時です❗️

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暑さで参りそうな今、人が造ったものではない、自然をありのままに映し出すこの子達。
皆さんも、“たかが草、たかが竹“と思わず、彼らが見事に主人公になる季節を楽しんで下さい❗️
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