雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2022年05月


5月下旬から6月の初め、盆栽界にひときわの華やかさが始まります。
さつき盆栽達が一斉に見事な花姿を見せてくれます。
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さつきは趣味の底辺が広く、“さつきの趣味から始まった“とする盆栽愛好家も多く、
専門のマニアもいれば、丈夫で作りやすく、盆栽の登竜門としての大切な樹種でもあります。

花物として花期の単品飾りが主流ですが、時には床飾りも楽しみたいものです。

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長年羽生で培養してきた「光琳」の花が咲き始めたので、今の季節に合わせた飾りをしてみました。

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美しい真紅の剣咲きと言われる花姿、大樹の相を見せるこの樹に、潤湿な空気感がある今、おぼろな月の天空に翔ぶ一羽の郭公。

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“一閃を翔ぶ“と呼ばれる郭公はホトトギスとして、古来より季節を謳う鳥で和歌や詩文にもよく詠まれています。
ホトトギスの掛物を選ぶ時は、鳥自体が、画中で大きくなりすぎない事が大切です。
鳥の姿が大きければ大きいほど、席全体の景色は“近景“となり、
場合によっては、配する盆栽との大きさによる合わせが上手く行かなくなります。

さつきに花が咲く頃、見上げれば空に線を引くように一羽の郭公が飛んでゆく。
山里によく見かけた自然の有り様も、今では貴重な景色の記憶になりつつあります。

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脇に少し早めの“岩がらみ“を飾る事で、“葉の緑“を伝えたい季節を補ってくれます。
盆栽・水石・山野草・それぞれの季節の美しさ、移ろい、何よりも大切にしたいですね!

【盆栽・水石の “飾り方“  について】

最近は若い方々にも盆栽や水石が広まってきた感があって嬉しいことです。

初心者的な栽培方法から、樹造りのマスターへ、そして展覧会などに見られる名品へ鑑賞と憧れ。
誰もが辿る趣味の道ですが、近年、盆栽も水石も、単にその本体だけでの評価や楽しみに特化してしまっている感があります。

本来、この趣味は最終的にその盆栽水石を自身の感じる“世界観“や“自然観“、そして突き詰めれば、“人生観“ 的な飾りへと昇華して欲しいものです。

例えば、文人樹と言われる、細身の飄々とした松は、それ自体だけで観れば、
真柏などの迫力ある舎利幹などの自然芸術性に圧倒されがちなもの、
でも、その樹を掛軸と合わせたり、水石や山野草と組み合わせる事で、その樹の周辺の景色や、その樹に求める世界観が、広がっていきます。

水石にしても、静かな一塊の石に、その周りの景趣を想わせる道具と取り合わせる事で、
まるで石に自然界の命が宿されたような景色が浮かび上がります。

日本人は、日常の身の回りに四季折々の自然を取り入れた生活を楽しんできました。
それを盆栽や水石で表現できたら、どんなにこの趣味が奥深くなるでしょうか。

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京都大徳寺の「芳春院盆栽庭園」でも、庭内の大型名木の鑑賞とは別に、
展示場には、誰もが持ちやすい楽しみやすい中型の盆栽や水石を使った総合的な飾りを日々披露しています。

皆さんも、ご自分の盆栽や水石を、“ひとりぼっち“の世界から、遥かに広がる世界にしてみませんか!


風吹く飄々とした松。
足元には爽風になびく風知草。
これで季節が表せます。
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風雪に耐えて生きた真柏の姿、左に遠くに見える山姿の鞍馬石。
掛物は「鳥鳴きて山更に幽なり」鳥が鳴き山々は大自然の大きさを謳っていると言う、
自然界の“あるがまま“を伝えているものです。
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吹き荒ぶ自然の中に生きる松の姿、
眼下には渓谷の清流や滝に見える貴船石を“水気“を感じるように水盤に仕立てています。
掛物は江戸期の名筆、狩野探幽の「波濤」水気を意識した飾りです。
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先日、大徳寺龍泉庵から1匹の老猫が行方不明になりました💧

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名前は“空“  空ではありません。
禅寺で育ったので、“色即是空“から、“クウ“  の名になりました。
元々、芳春院和尚様のご親族が、九州から京都へ移られる時、一緒に来た猫です。

年は8才の雄猫、1年前まで京都七条の臨済宗大徳寺派の寺に居ましたが、
“家族“と共に去年から本山の塔頭“龍泉庵“に暮らしていました。

5月22日、普段は庵の中で暮らしていたクウちゃん。

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悪い偶然が重なって、普段は開けない龍泉庵の玄関、それでもそれだけなら庵内の庭に下りるだけなのに、
時悪く、盆栽庭園の入替作業で、玄関のすぐ近くの裏口の門が開いていました。

広い大徳寺の中、何処かに潜んでいてくれたらと、家族が探しましたが、いまだ帰って来ません。
慣れない土地、日頃には無い景色、今は唯々、無事に戻ってくれる事を願うばかりです。

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小さな命ですが、可愛がっている家族にとっては、かけがえのない命。
私たちも、物言わぬ盆栽達と共にいます。
声なきからこそ、寄り添ってあげたい気持ちは一緒です。
クウちゃん、優しい皆んなが待っている寺に帰って来て❗️


先日、ドローンによる羽生の空撮をしてもらいました。

20年の歳月が作り上げた、雨竹亭を空から見るのは、私たちも初めてです。


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当初はこの応接庭園すら無かった雨竹亭。

3年の時をかけて後に、お客様をお迎えするこの庭園が出来ました。今も羽生のとなっています。


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中央道路のやや右下が正門と庭園部分。

右には盆器や水石の収蔵庫、その上は培養庭園です。

その右の白い建物群は、関東最大となったオークション「天地会」の会場です。

道路左側は、5棟のハウス、そして約1500点の大型盆栽を管理する、非公開の培養場です。

その上に見えるのは、

雨竹亭が日本盆栽界に提供する、中国の最上質の泥物鉢・釉薬鉢の置き場です。


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更に高い所から俯瞰すれば、隣接する関東を縦断する「東北自動車道」

雨竹亭は高速の出入口の隣に位置する好適地、全体面積で、15,000㎡になります。

いつの間にか、こんなに大きくなりました。 多くの盆栽達と日々格闘💦の毎日がここで行われています。ぜひ遊びにいらして下さい。

【五月雨の“緑陰“に包まれた芳春院盆栽庭園】


5月14日は、芳春院開山忌(玉室宗珀和尚)です。
半月ぶりに手入れで赴いた芳春院盆栽庭園は、新緑から美しい深い翠へと空気を変えていました。

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五月雨と呼ばれる、シトシトと降る霧雨が、緑の美しさを引き立たせています。
徒長芽の抑え切り、松柏類の新芽止め、病虫害の予防視認、施肥の状態。
そして何よりも、
庭園の雑草(ホントは雑草と言う名の草はないのですが💦)の手摘みによる除草❗️

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それでも静かな空気に包まれたこの庭園で盆栽といると、世情の憂いのすべてが消えていきます。
“ここにずっと盆栽の事だけ考えていられたらどんなにいいだろう“
などと、歳を重ねても相変わらず、修行の足りない私です(笑)


雲の間から見える庭園からの比叡山
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木村正彦先生が、庭園の為に作られた創作盆栽群(右)
加藤三郎先生遺愛の石群(左)
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隣接する龍泉庵の書院庭園
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盆栽庭園を作る時、150年間荒れ果てた地から出た仏様
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