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盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2021年05月

【1億円の五葉松、表土替え❗️】

時価1億円と言われる五葉松「天帝の松」

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10年間植替えをせず、肥料などで表土が目詰まりしていました。
超大型の松柏盆栽は、盆中の体積も大きく、根が鉢内に張り切るまでには至っていません。
このような時は、表土を大幅に削り取り、微塵で詰まった部分を、入れ替えます。

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特に根張りの近くは、水が通りにくく、
樹の芯へ水が入るようにするには、根張りの廻りを良く掘り下げて、新しい用土を入れる事です。
この時、土中の根を食べてしまう虫の駆除・予防の為に、
ランダイア粒剤を削り終わった表面に撒いておきます。
大型の松柏古木は、あまり植替えを好みません。
このように表土の入れ替えによって、水の浸透を良くすることが、培養的にも良いです。

名匠木村正彦先生の代表作である真柏「登龍の舞」は、
先生が作品として発表した30数年前から、1度も植替えをせず、この「表土入れ替え」のみで管理されているそうです。

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皆さんも1度試してみて下さい。


【半死の状態から、真の姿へ!】

今から30年前、明光商会創業者である盆栽愛好家、髙木禮二氏によって、
日本初の盆栽財団「高木伝統園芸文化振興財団」通称、“高木盆栽財団“が設立されました。
これを記念して、都内日本橋三越において、未曾有の盆栽・諸道具の大展覧が開催され、
選び抜かれた財団所有の盆栽が、三越内に特設された床の間造りの展示場に飾られました。

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五葉松「稲取」
この樹は、財団の会長職であった、瀬島龍三翁と高木氏で計画していた、伊豆稲取の地に、盆栽美術館を開設する記念に命名されたものです。
高木氏没後、稲取は市井に放出され、最終的には日立製作所の重役である愛好家の所有となりました。
その後、稲取は“葉降り病“にかかり、枯死寸前となり、樹の命を守るため、南蛮の名器を抜き、木箱での培養が始まりました。


5年後、樹勢を回復した稲取、満を持して、整姿、植替え、を先日行いました。
久方ぶりの針金整姿は、名匠木村正彦先生の愛弟子、森山義彦氏。

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“鳳が羽ばたくような”姿への改作、伝承名木の将来を決める大切な仕事、
師匠木村先生も、森山氏の仕事を、自身の仕事のように、傍で見つめていました。

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ゆったりとした袋式鉢に植えられた稲取、ここから第二の稲取の刻が始まります!


【陽春の瑞々しい盆栽達と水石・全庭が美術館❗️】

開園以来、ずっと続けていた『盆栽観賞会』。
盆栽家として、年に2回は季節の盆栽の美しさや、水石の持つ“内省の美“を伝える企画は、大切な使命と思ってきました。
コロナ感染予防の為、昨年は断腸の思いで、春秋共に中止しました。

今年も収まらないウィルス災禍。
それでも、澄んだ空気の羽生、動き辛い社会の中で、少しでも盆栽を眺める事で、心の健康を得て貰えればと、1年ぶりに観賞会を開催しました。

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応接室の青葉のもみじ、“目に青葉、山ほととぎす、初鰹“、溜まり石を添えての、季節の美しさを演出しました。

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展示場も葉色美しい盆栽達と水石群、前庭も千点を超える盆栽達から選んだ樹達を杭棒に飾り、
雨竹亭全体が、盆栽美術館のようになるよう、飾り込みました。

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訪れて下さる皆様の健康と幸せを盆栽達と願いたいです。

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