雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴45年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2020年06月

【今が最適期!】

松柏類と言っても、五葉松・赤松・黒松・は、それぞれにその性質や手入れの方法・管理が異なります。
特に黒松は、芽切りによって新芽を再芽させて葉を短く仕上げる事が大切で、
その手入れ作業は、樹の大きさによって違いますが、およそ大型は6月中旬・中型は6月下旬・小品は7月初旬です。
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しかし、すべての黒松に行なえる事ではなく、美しく短い葉にするには、3月初めから肥料を与えて、水も多めにして、
樹の生育がしっかりしていないと、2番芽が綺麗に揃わなくなります。
樹に力があるからこそ、芽を切っても新しい芽が吹いてきます。
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また、芽切りの後は、発芽を促す為にも「葉水・水かけの度に樹の葉部分に1日2〜3回シャワーのように水をかけて湿度を保つ」事がとても大切です。
芽切りの時は、昨年の葉が多い部分を3〜5枚に減らす作業も必要です。
盆栽、特に完成度の高い樹こそ、このような美しい姿を保つ為の地道な手入れが欠かせません。
芽切りの後、2〜3週間で、切った元に新しい芽がたくさん吹いてきます。
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今度はその芽をピンセットで2~3芽残して取る作業が必要です。
手間のかかる作業ですが、黒松を楽しむ中で、最も重要な手入れである事を覚えて下さい。



【日本と言う国の安寧を願って本殿回廊に名品を展覧!】

コロナウィルスの影響で、本当は6日から歴史的な大展覧(神域参道に120mの仮展覧場・100点)が来年に順延となった明治神宮。
水石協会として、役員でのご奉仕の気持ちで、愛好家の皆様のご協力を頂いて、
奉納盆栽水石展を6日〜10日、本殿東廻廊で開催となりました。
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26点の精選した名木・名石、自然の美しさに守られた日本、その自然界が創り出してくれた盆栽と水石。
神前に飾り、ご参拝の方々が嬉しそうにご覧なる光景は、苦労を吹き飛ばしてくれます。
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お忙しい中をこんな時だからと、初日の神前参拝にご参加頂いた島村会長(元・農林、文部大臣)には、飾らぬ平易なお人柄と共に感謝の限りです。
海外から訪れる方が殆どいない神宮の静謐な空気、これも私には良き日本の姿に映りました。
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業としての盆栽水石の日々、その中にこのようなご奉仕の場と刻を頂くことの、有り難さを感じる展覧でした。

【68歳の盆栽培養場開設!】

15歳で盆栽修行に入った時から、38歳で独立するまで、在園していた竹楓園の「大政・小政」と呼ばれた兄弟子と私。
人には言えない苦労も人生の半分以上をお互いに支え合った特別の存在。
破天荒な人生の私と対照的に地道で穏やかな人柄は、現在・北関東盆栽協同組合理事長・社団法人日本水石協会副理事長と言う要職からも窺えます。
私に遅れて50歳で独立した兄弟子は、仲間の棚を借りたり、元の主家の庭の一部を借りたりして今まで正業にたったひとりで励んできました。
“手を入れる程でもないものは半値でも処分して、年なんだから好きな樹を作れば“とずっと言い続けていました。
栃木の自宅に程近い所、2人で40年以上前に養成樹の培養場として日々水かけに明け暮れた地、
ここに自身の所有する盆栽のすべてを集めた「最初で最後の培養場」を作られました。
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若き頃、スプリンクラーでの水かけを任されて、30分で良いものを、うたた寝が過ぎて、2時間掛けっぱなしにして、
近隣の道路に水が溢れた苦い思い出の地に、40年ぶりに訪れました。
お互い五葉松に魅せられて今も所有樹の圧倒的な割合が五葉松。
兄弟子の600坪の棚も五葉松に埋め尽くされていました。
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人柄そのものと言える五葉松の姿。
兄弟子の終の住処として、まさに格好の場所!
それにしても、よくこんなに集めたもの!(人のことは言えませんが!)
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私達盆栽人は、自分の周りに盆栽がある事が、何よりも嬉しいもの。
兄弟子もこの盆栽達と良き年を重ねてくれる事を願う、嬉しい日になりました。
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【恩人との45年】

盆栽の修行を始めて間もない頃からお世話になっていた大家愛好家の旦那さんが、この春83歳でご逝去されました。
百ケ日を過ぎて、奥様より「整理ごとのすべては、森前君に任せるように」とのお言葉で、
ハイエース6台に及ぶ水石・水盤・卓・掛軸・添景・茶道具・を、羽生の新設倉庫の方に移動して、奥様にも同席して頂いて、整理を始めました。
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“信頼しているから任せる”このお言葉は、何よりも重く、
日本有数のコレクションをどの様にしてゆくべきか?頭を痛めています。
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千点を優に超える収蔵品。
ひとつの桐箱を開ければ、ひとつの故人との思い出。
“旦那さんはどうする事を望まれたのだろう?”と、考えながらの1日でした。
拙い目で仕分けしながら、
(目利き愛好家の方に受け継いで頂きたいもの)(業界の市場に送り出すもの)(美術界にお返しするもの)
等々、相応しい判断が自分の役目です。
二十歳から三越を舞台にどれ程のお客様のお相手をしてきたでしょう。
どれ程の人徳者の方々をお見送りしたでしょう。
私の様な失敗ばかりの大馬鹿者にどれ程のご芳情をかけて頂いたでしょう。
すべき事は、残された奥様やご家族の皆様の“声なきお心”に沿うように摂り進める事だと思います。
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数百点の掛軸も、明日からひとつずつ開いて仕分け、茶道具の方は京都の付き合い古い信頼のおける方に相談して(亡くなった旦那さんもお知り合いでした)
上中下の区分の上、整理したいと思います。
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形見分けはご遠慮して、盆栽の庭で旦那さんが使っていた鋏を頂き、庭の観音堂に納めました。
空の上から見てくれていると思います。
ありがとうございました。
これからも遠い所から見守って下さい。 
合掌

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