雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2020年02月

【徳川慶喜家旧蔵石を首座に大展覧!】

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「水石文化を美術館で」この願いを胸に、現在の展覧会を企画したのが8年前。
上野寛永寺「黒髪山」永青文庫「重ね山」西本願寺「末の松山」など、日本水石文化の中で、燦然と輝く名石を迎えて回を重ねてきた本展。
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お陰様で 172席の出展。
国内はもとより海外からの出品も30席以上!(これが日本の愛好家も叶わない?程の良石!)
昨年までは、ポスターに迎える名石を、美術館や名刹などの蔵石としていましたが、
今回からは、民間に秘蔵されている歴史的名石としました。
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根尾菊花石・銘「皇山・おうざん」
“ 最後の将軍” 徳川慶喜家が伝承したもので、最近まで個人宅に秘蔵されていたものです。
令和初の日本の水石展、東京オリンピックの年に、咲き誇る菊の花々の石。
事務局長として、非力浅学の私が、理事諸兄を中心に多くの皆さんの応援でよくここまで来たなあ!と感慨深いものがあります。
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盆栽に比べれば、まだまだ周知が足りない水石の文化、もう少し頑張りたいと思います!

【木村先生も出展!】

私達 羽生雨竹亭のある街で、この地域の盆栽協会支部展が開催されました。
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地域の盆栽愛好家の皆さんが、ご自信の手で丹精を込めた作品達、
先日の国風展とは違った「盆栽を愛する」人達の息付きに心温まる展覧でした。
市民プラザの一角を借りて、会員のみんなで手作りの設営。
愛好家の方々を導きながら共に頑張っているのは、私達の大先輩の鈴木さん。
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お年はなんと93歳!
ホントに頭が下がります。
展示には季節を楽しむキブシや椿、何気なくオシャレな樹達。
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会員の皆さんとお茶を頂いている時間は、盆栽人のひとりとして「ここに足元がある」という事を本当に感じる時間でした。
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雨竹亭も当日は月2回の盆栽教室。季節的に植え替えなど、生徒さんも忙しそうです。
いつのまにか、雨竹亭も皆さんの注目を頂く店となりましたが、
業界の仕事、会社の運営、お得意様のお手伝い、日々 駆けるように過ぎてゆきますが、
盆栽園がしなければいけない「地域の盆栽愛好家の皆さんへのご奉仕」をもう一度振り返る機会になりました。

【名盆栽 紅冬至梅の飾り】

国風展の慌しさの合間に、羽生の床の間を飾る古木。
戦前より盆栽界に受け継がれてきた名樹「紅冬至梅」 昨年天界に逝った盆栽大家・小泉 薫 翁 が、生前大切にしていたもの。
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小泉先生との二十歳の頃からの半世紀近いお付き合いの中で、私の別のお得意様の所有となり
「私が庭におくレベルではないので、森前さんのそばにおいてあげて下さい」と言う現蔵者のお気持ちで、
今年も羽生の庭で楚々とした花姿を見せてくれています。
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松に代表される盆栽、なぜでしょう?梅はその松にも負けない厳とする雰囲気と早春の兆しを現す象徴になっています。
名樹と合わせた「冬朧の月」の掛軸。
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雪空に霞む月は、明けやらぬ春を待っています。
脇には楓の寄植え。
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まだ寒樹の相を見せる木立の数々は、吹く風に肌を刺す冷気が残っています。
人はいつかは『白玉楼の棲人』となります。
還暦を超えると“あの方も逝ってしまった”とため息をつくことが多くなります。
それでも 盆栽は生き続けます。
不思議にその人の面影を残して。
そして徐々に 次の持主の貌へと姿を変えてゆきます。
私のもとにあって、この古樹はいつかは 私のような姿になるのでしょうか?
次なる姿が、故人たちに恥ずかしくないよう、身を律して修練の毎日を送らなければと、非力浅学を恥じるばかりです。
自分より齢を重ねた老樹を見ると、「お前は何でそんなに頑張って生きているのだろう?」と いつのまにか、心が樹に問いかけています。
きっと死ぬまで 問い続けるのでしょうね。

今回充実の内容!!

前期展に続いて、国風展の後期展も無事に終わりました。
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今回の展覧は、近年の中でもでも充実したレベルだったと思います。
さすがに50数点の秀作が、残念ながら落選して出品できなかっただけのものでした。
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ただ私の個人的な感慨ですが、還暦を過ぎて日本盆栽界の頂点にある国風盆栽展を振り返って思うことがいくつかありました。
ひとつが 羽生の庭にも時々いらっしゃる八十路を目前の老愛好家が、今年国風展に残念ながら落選された事です。
勿論 審査の方々の 席数による当落はやむを得ない事だと思います。
ただ、この方も私のお客様と言うわけではないのですが、昨年まで9回連続で入選され、今年出展されれば10回連続による協会表彰を迎える方でした。
「え!彼の方が落選したの?」と耳を疑いましたが、
樹の内容の如何は別にして、愛好家として温厚で心優しい方の残念な結果には、心が痛みました。
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不肖 私も盆栽協会の代議員のひとりとして、以前の総会でも
「長年 盆栽界に尽くされた人品素晴らしい愛好家の方々には、当落という制度とは別に、枠を設けて 扱い業者を含めての“事前審査”みたいな形で、長年の功労を含めた席を限定して用意出来ないか」
と問うた事があります。
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私は盆栽というものは、本来 人が良い悪いというものを審査して判断するものではなく、愛好家としての品格、
出入り方のその方への名誉や審美をお手伝いする責任を何よりも大切にすべきと思っております。
盆栽協会の筆頭として、理事長職を奉職される青蔭先生などは、愛好家としても、
古刹を預かる僧籍に身を置かれる方としても、奢らぬ心優しい品格あるその姿を尊敬するばかりです。役員の方々のご苦労も、代議員になり本当に良くわかります。
私はどちらかといえば、人情に弱い方なので、公的な場における判断の難しさには向かないと思います。
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展示されているすべての盆栽は、どれも立派で ここの選に漏れた作品も おそらく僅かな点差だったのでしょう。
何か愛好家の皆さんが、みんな喜んでくれる形があればいいものですね!

いつも思います。私達 プロは、日本盆栽界の専業者としての「あるべき姿勢」をいつも自分の中で糺していないといけないと。

【後期展へ!】

令和初の国風盆栽展も 前期展が終わり13日から後期展となります。
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今回は 宮内庁より名樹「君が代」と 尾張焼の名器が出陳され、花を添えています。
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私見ではありますが、今回の展示は この数年の中で一番レベルの高いものになったと思います。
それぞれの樹の完成度・樹格・古色・久しぶりに “さすがは国風展 ”といった感です。
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大型名木の部門でも最高賞の「国風賞」は、比肩する樹が多くあり、中品部門・小品部門に至っては、私から見れば どれもが国風賞でした。
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後期展では、羽生雨竹亭の盆栽教室に通う 小学校6年生の清水ちえりちゃんが、史上最年少で国風展に入選しました!
受験で大変な中、一生懸命手入れをして見事に夢を叶えましたので、皆さんも是非ご覧になってください!

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