雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2018年05月

【上野公園で開幕!】

サツキ展として 一番古く権威ある展覧が、上野公園噴水広場で開催されました。
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若き頃、サツキ界の頂上を駆け回っていた頃以来、本当に久方振りに上野の会場へ伺いました。
当時は公園の下にある不忍池畔で行われていましたが、今は社団法人となったサツキ協会は、様々な難関をクリアーして、
上野公園の誰も使用の許可が取れない噴水広場で見事な作品を披露しています。
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銘木の部・名花の部・共に 絢爛な花姿は息を飲む程でしたが、
それ以上に美しい花々を咲き誇させる培養の素晴らしさには頭が下がります。
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盆栽とサツキは別々の世界と捉われがちですが、多くの盆栽家・水石家が、
サツキを趣味とした所から 始めたと言います。サツキは私達の趣味の登竜門なのです。
初めて見る新花の美しさは60歳を間近にした今、「またサツキをやってみようか?」と心動かされる想いを持ちました。
素直に「綺麗だなあ」と思う自分がそこに居ました!

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本格座敷飾りの準備『玄虹会』

サツキの花咲く今ですが、すぐ足元に「初夏」の兆しが感じられます。
庭の「岩がらみ」の盆栽が見どころとなったので、床飾りをしてみました。
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清冽な瀑布を僅かな筆さばきで描いたのは、大家 菊池契月。
瀧を描くのではなく、それ以外の部分を描くことで、瀧を表現する腕は、流石に名筆!
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飛沫をあげる深山の崖には、蝶が飛び交うような花姿(正確には花ではありませんが)をみせる岩がらみ。
瀧を水墨で合わせる事で、岩がらみの葉の美しさが際立ちます。

もうひとつ、まもなく京都山科の里深くに構える数奇屋名亭・わらびの里『霞中庵』で開催される
「第10回 玄虹会展」の 出陳席の席割りと飾り構成に 知恵熱を出している中で、
本格文人盆栽飾りの “古武士的”な 席が出来たので、ご紹介します。
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赤松名樹「観月」。
 大宮盆栽美術館蔵の「帰去来」と共に、盆栽界に現存する赤松文人樹の雄として名高いものです。
大家小泉薫先生の旧蔵でしたが、
縁あって数年前に西宮に住する現蔵者の愛樹となりました。
取合せた掛物は、文人趣味的古画を愛する蔵者の大切なコレクション・池 大雅 の名筆。
「水流心不競 雲在意俱遅」その意は、
“ 川の水の流れのままに 心をまかせ 雲と同じに
気持ちをのんびりとさせる"
中国唐代の詩人 杜甫が遺した『江亭』の一文です。
脇飾りは、天龍川の古石「南山」まさに南画の中から出て来たような姿のこの石は、
煎茶の本山と言える黄檗山萬福寺の由来を秘めた 本邦初公開の賓石です。
文人盆栽と言えば、細身で飄々としたイメージですが、真の文人盆栽とは 
“ 静けさの中に心で捉える凛とした厳しさと古厳と言うべき 老感を持った格調高き盆栽 ”です。
力強い大型名木の数々を有した 小泉薫先生 唯一の文人盆栽だったと言えます。
今回の「玄虹会展」は、季節を考慮した このような “目利き唸る席 ”が数多く出陳されます。
僅か二日間の展覧ですが、日本盆栽界の未来の姿は、こんな樹達と展示会に あると思います

【五葉松終了から黒松へ!】

毎年行われる200~300点の春の植替えは、モミジやカエデなど雑木盆栽を2~3月に終えると、五葉松に移ります。
ゴールデンウィークまでこれを続けて、ひと段落の間もなく、真柏・杜松・黒松・赤松となります。
普通盆栽園では 自園の盆栽50から多くても100点、お客様への“出仕事”で50点くらいなのですが、
私どもは 年間で500~800点の盆栽が動き、昨年手入れをして植替えをした樹は、50点程しか残りません。
新しく“羽生の家族”となった樹は、どうしても手入れや植替えが必要なものが多く、
他の仕事をこなしながらも、みんなで夜半まで頑張る日が続きます。
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先日最後となる五葉松の植替えを終了して、いよいよ黒松類に入りました!
杜松の文人樹の作出をして、立ち姿を安定させる為に、“根締め”をしました。
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しっかりとさせる為に「四方竹留め」というプロ仕様の施術で行いました。
四国で以前から予約していた黒松の「秘蔵の逸材」を運び、植替えに入ります。
この樹達もいずれは名木として盆栽界に残る樹にしたいと思います。
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昨年より日本に勉強に来ている中国西安の若者達も、いつのまにか 植替えの助手を出来るようになりました!
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この子達も「名木」にして生まれ故郷で立派な盆栽家になってくれることを願うばかりです!

【『春花園 盆栽美術館』】

今年の明治神宮「第58回 日本水石名品展」の 審査選考と図録撮影の為、
久しぶりに理事長宅でもある「春花園盆栽美術館」に赴きました。
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皐月盆栽の花が咲き始めた邸内は、所狭しと名木群がズラリ! 
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しかもよく見れば 殆どの樹が以前見た時からの手入れによって、少しずつ樹相を変えていました。
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「古希を迎えて 今は樹を作ることが何よりも楽しい時間なんだよ」と 盆栽作家である理事長の偽らざる気持ちのようです。
潤いのある庭と空気、2代目の若き美術館 館長となった神君達スタッフも
盆栽のように少しずつ、成長していることが、心地よい時間でした。
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【現存する樹齢250年の祖樹!】

昨春 『世界盆栽大会inさいたま』で公開して3点1億円の展示でマスコミを賑わした、
絶滅したと言われていた五葉松「祖母五葉(地元では矮鶏五葉松)」。
鋏造りで百年を超える枝持込は、“ 環境の変化に耐えられるか?”との声もありましたが、
羽生に残した祖樹クラス2点は、1年半を過ぎる中、とても元気にしています。
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芽吹の季節を迎えても、僅か5㎜程しか芽も伸びず、“やはり四国産の宮島五葉松とはまったく違う品種”である事がよく分かります。
九州で苦難の愛育によってこの祖樹群を守り続けた田中家にも顔向けが出来ます!
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