【今は亡き加藤三郎先生の遺作を前にして】

業界の中では日々仕事を供にする蔓青園5代目 加藤崇寿氏。
先日この蔓青園に久しぶりに伺いました。
名樹の数々は相変わらずです! 
庭の一角に 蝦夷松の大型寄植え石附が大切に管理されています。
これは 日本の盆栽界の現代の姿を築いて下さった、蔓青園3代目故加藤三郎先生の遺作群です。
人が天寿を全うしても、その作品は受け継がれた人達の愛情で次の時代へ残されてゆきます。
あまり語ることはしませんでしたが、三郎先生は私にとって特別な存在なのです。
勿論、協会理事長職や名声を思えば不遜な事かもしれませんが、17年前の出来事は今も鮮明に覚えています。
銀座の店を開いて数年、事業資金などに行き詰まって店の存続を悩んでいた時がありました。
業界内での面倒臭い慣習や、業者同士のレベル低い脚の引っ張り合いなど、本当に嫌になっている時でした。
商用で三郎先生の所にお伺いした時、先生は当時の私の胸の内を察してか、
「森前君はあまり業界の事は考えなくていいんだよ。君は"銀座"に盆栽店を持ったんだよ。
この店を1日でも長く頑張る事が盆栽界にとってどれほどありがたいものか、それこそが君にしかできない事なんだよ」と。 
誰からも無理と言われた銀座の店、その店で頑張る勇気を先生は私に教えて下さったのです。
偶然ですが、銀座の店は開店日が5月15日、奇しくも三郎先生誕生日。
目の前の先生の作品を見て、私がやるべき事を改めて思う刻でした。