雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2016年10月


【添景で浮かび出る 常盤柿の盆栽】

両手に乗る常盤柿の盆栽、橙色の実姿はこの季節嬉しいものです。

先日、小品盆栽専門家より可愛らしい小道具を入手したので、この樹と合わせてみました。
二人の子供がハシゴを使って柿の実を取ろうとしています!

盆栽だけで楽しむ観賞、そしてこの様に添景によって情感と景色を広げる方法、
人それぞれの感性が、ひとつの盆栽に様々な世界を作り出せるのも、盆栽趣味の楽しさです。
身近な小物で空想の自然に挑戦してみて下さい!

 
【400年の古刹で来月盆栽水石の至高の展覧】

臨済禅 大徳寺内にある 塔頭 芳春院は、戦国大名 前田利家の妻"おまつ"が建立した四百年の古刹です。

「日本の盆栽水石文化の正統を学び伝える」数寄者の集い「玄虹会」の年1回の展覧が行われています。
今年も京都の秋を彩る「日本盆栽大観展」と同じ11月19日から2日間
芳春院全室に"身が引き締まる"程の盆栽水石飾りがされます。 
私共エスキューブ雨竹亭も、初回より勉強を兼ねてお手伝いをしていますが、
盆栽水石の文化が世界規模に広がる中、歴史ある古刹の建築美の中で繰り広げられる"深奥の美"は、
日本が最も捉えるべき文化だと思っています。 

今回は会場の下見とご住職へのご挨拶に伺いましたが、いつ見ても素晴らしく、
禅寺として普段一切の拝観をさせない名刹(大徳寺塔頭の殆どが拝観禁止です)は、
しんと静けさの中にあり、心が洗われるようでした。 

ご住職の希望で"期間中盆栽水石を見たい方のみが良い"との考えで、
招待券持参の方のみが入れます。
ご希望の方は、雨竹亭までお申込み下さい。
券をお送りします。

 
【自然が創った造形「君はどうしてそんな姿でも生き続けるのか」 】


最近プロのオークションで手に入れた樹です。
この鉢古さから見て愛好家の庭に永くあったものでしょう。
幹は半分サバ(舎利)状になり、どの様にしたらこんなに捻転した姿になるものか? 
盆栽作家という言葉が巷に跋扈する現代ですが、結局は人のなせる業など
自然界から見れば取るに足らないものだと思い知らされます。 
半懸崖の樹相は、その流れの先にある"見えない空間"をとても感じさせてくれます。 

眼下に岩窟のような石をおけば、仰ぎ見る天界への絶壁に生きる姿、
砂苔に社塔をあしらった草物に変えれば、どこか厳しさが和らいで"松の美しさ"に目が動く・・・
飾り方ひとつで盆栽は色々な表情を見せてくれます。
この「主」と「従」の組合せこそが、盆栽趣味を幅広く奥深くします。
皆さんもお手持ちの盆栽で挑戦してみて下さい。 
分からないことや、行き詰まってお悩みの時は、いつでも"雨竹亭"に連絡して下さい。 

 
【若きアーティストの卵達との煌めくひととき! 】

私が顧問を務める武蔵野美術大学盆栽部の特別講演が8日同大学にて開かれました。 

学部を問わず部活のひとつとして、100人近いメンバーがいることを聞いてびっくり! 
美術を志す若い方々が盆栽に対して深く興味を抱いてくれる事は何よりも嬉しいものです。 
完成名木の展示・観賞・解説。
そして真柏を教材にしての学生とプロの競演。
何よりも伝えたかったのが、日本の美の源流が、自然や千年の時をかけて育まれた"用の美"にあること、
そしてこれからの日本を作られていく皆さんに"日本人が持つ繊細な感性こそが、
次の時代に世界に対して最も大切なもの"である事を伝えたかったのです。 

担当の原 教授から「美大も女性が過半数」で、盆栽部も参加者の7割が女性だった事に、
驚きと共にこれからの私共盆栽界が考えるべき「社会に広げる盆栽の多様性」を改めて考えさせられる刻となりました。 
でも、やっぱり若さというものは素晴らしいですね。
何ものにもとらわれないみずみずしい感性、そして汚れのない素直な表情の煌めき、
何か自然な若葉を見ているようで、私自身心が洗われる楽しい講演でした。 

 
【秋の盆栽展のさきがけ! 木村正彦先生の作品に感動! 】

東京の秋の盆栽展の第一弾として、上野グリーンクラブで開催された「東京展」「瑞祥展」に伺いました。

久しぶりに拝見する瑞祥展は、ひとつの樹種で行われる盆栽展という
他には例を見ない樹形の多様性の楽しみがありました。

同時に開催された東京支部主催の「東京展」は
さすが帝都の長い盆栽趣味の歴史を思わせる幅広い展示で、
"愛好家と出入り方専業者"のあり方に感心させられるものがありました。 
びっくりしたのは名匠木村正彦先生が、東京展にご自分の作品を自身の出品として参加されていたことです。
最近は私共との交流や国風展などの扱い手入れがほとんどで、
公の場に作品出品をされることが少ない先生です。
齢を重ねての作品作りに取り組む姿勢に頭が下がります。 

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