二十代の頃からお世話になってきた趣味家の方、八十路を前に体調を崩され、
半年以上にわたるリハビリで、ようやくご本宅に戻られましたが、半身不随となり、お見舞いに伺った時は「盆栽のすべての処理を頼む」の弁。
日本を代表する企業の重役に、高卒でなられた立派な方。
愛好家としても、季節を楽しみ、飾りを楽しまれる生粋の趣味者。
“たとえ10点でも残されて、お楽しみになって“とご子息と説得の結果、30点を残されて100を超える蔵樹を放出されることになりました。


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よく盆栽業では“旦那さんが止める時は、自分の退職金”などと、まるで自身の儲けのような事を言う人達がいますが、私は昔から苦手です。
勿論商売はしたいですが、そのお客様と歩んだ永い年月、ひとつひとつの盆栽への思い出と、愛された持ち主の気持ちを思うと、
“こんな時こそ、出入方として、これが最善の姿、という扱いでいたい”と、ガラにもなく思うのです。
同じ愛好家として私のまわりで朋友と言える程のお付き合いをされてきた皆さんに、お声かけをして
“後日、全国の盆栽業者が集う交換会に○○さんの放出品を出します。事前に集まって頂き、ご希望があるものを優先して受け継いで下さい”
と申し上げました。
約20点の盆栽が、蔵者の友人達へ継承されます。勿論私は10%の手数料を頂きます。

この中には、旧高木コレクションのものもあり、特に高木さんが財団を興した時に日本橋三越で開催した記念式典「悠久のコレクション」の図録に収録されている五葉松名樹「稲取」もありました。

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バブル期を挟んでの愛好人生。
家一軒分に等しい対価が注ぎ込まれたでしょうが、盆栽は手入状態、時勢での評価、などで、手放す時は“今いくらするか”が基本となります。
たとえ100万出した事を知っていても、プロとして今が30万なら、
蔵者のご友人に「30万はありますのでお願いします」と伝えるのが、私の役目と思っています。
半世紀近い出入方として、自分で儲かりそうなものを先に買うことも出来ますが、
他を捌いて、良いものだけ自分が、と言うのはどうも出来ません(笑)。
それでも数人の友人達で400万ほど、盆栽達の“嫁ぎ先“が決まりました。
あとは、3月1日に開催される「天地会オークション」に全品出品して、キレイに伝票でご報告することにしています。
救いは、ご本人がこの形を喜んでいる事、そして30点のご自身で選んだ盆栽達がある事です。

たとえ半身が不自由となられても、まだまだ楽しんでほしいです。
失礼を顧みず申し上げました。
「○○さん、これだけのご苦労ご苦難をされた方にしか見えないものが、きっとあると思います。ここから見える盆栽の素晴らしさを楽しんで下さい」と。

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1日は、各盆栽業者の皆さんが、“お金にならない”と、競りで声をかけない樹達を、私の役目として、一生懸命買ってみます。