冬至を迎え、ゆく歳を振り返る中、盆栽の床の間飾りに1番苦労する季節です。
色鮮やかな“秋景色“の記憶、その後に訪れる暮の静寂。
新年を前に“色“を抑えた“冬姿“を、席中に表現してみました。

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主木は五葉松の古樹。
盆栽界の歴史にその樹相を残す名樹。


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サバ状の幹は徐々に懸垂しながらも、雲間の景のように、枝々を配らせています。


配する掛軸は、大家横山大観の師匠筋でもあった、明治画壇の名筆、今尾景年の「寒中月」

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深々と降り始めた雪が、冬空の半月に映されて、寂たる世界を醸し出しています。


脇には、古谷石の古石。


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﨟たけた石肌は、百年を優に超える愛玩が創り出した古感。

凍てつく程の冷気の中、葉色を変えながらも、常盤の翠を湛える松。
あくまでも静かに降りゆく雪と中天の月。
五葉松の樹相と溶け合う“厳なる姿“を持つ古谷石。
余分な景色を省いた、“水墨世界“を、席中に醸し出した「師走の盆栽飾り」です。
“何処かに季節、されど過ぎぬよう”・・飾りの難しさとは、尽きぬものです。