暦の上では、もう立冬。
暮らしのまわりにも“過ぎゆく秋”が感じられます。
夏の終わり頃に手に入れた柿の盆栽が、ようやく飾れる時になりました。

IMG_0477
スタッフ達は、“間もなく実も終わりますが“、とずっと言っていましたが、
私は柿の盆栽に求めるのは、たわわの実なりが過ぎて、僅かに残った葉の実の風情こそが、柿に描きたい世界だと思っています。

飾る当日、残された葉の半分を取る、この時、“自然に落ちてゆく葉姿“を心に浮かべて、
人間がいかにも“わざとらしく少なくした“感じが出ないように心がけました。

IMG_0478
IMG_0479
鉢も今まで白い丸鉢に入っていたものを、“侘びた風情“が一層となるように、丹波焼の古鉢に、根を痛めないようにそっと植え替えました。

取り合わせた掛物は、田中訥言の「時雨の散り紅葉」。

IMG_0480

霜月の山風に葉を散らしてゆくもみじ。淡彩で描かれているので、柿の実の色を殺さず、溶けあってくれました。

添えには、木彫の茅屋。


IMG_0481
山里の晩秋の景色が、席中に表現出来たかなと思います。

この柿の見頃は、僅かに5~7日程です。
でも、季節の移ろいとは、そんな具合が丁度良いです。
その1週間の為に、1年の培養を続ける。
こんな贅沢こそが、盆栽趣味の醍醐味だと思っています。
さり気無い柿の盆栽。
国風展などに出品される老名樹とは違いますが、心に沁みる点では、些かも負けていません。
そこに込められたそれまでの時間、想い、
盆栽飾りは、これでいいと言うものがなく、奥が深く、私もまだまだ樹に教えてもらう事ばかりです。