いつの間にか、新緑に目も慣れた今、雨竹亭の応接室も季節の雰囲気が変わってきます。
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日本人は歳時記に謳われているように、春夏秋冬の四季から、12ヶ月の暦、そして二十四節気の移ろい、
果てには日々の日射しや気を敏感に捉えた七十二候(およそ5日ごとに変化してゆく自然観)など、まさに自然と共に自然の中に生活を営んでいます。
私達盆栽家も、日々の手入れや商売に追われながらも、日本人として盆栽人として、
お越しくださる(今はコロナで殆ど誰も来ませんが!)皆様に盆栽・水石・山野草・の美しさ、素晴らしさをお見せする役目を忘れずに努めたいと思っています。

菖蒲の花が咲き始めました。
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端午の節句に剣に見立てた菖蒲を飾り「菖蒲湯」に浸かる。
江戸の昔から続く風俗文化です。
この菖蒲は鉢で4~5年持ち込んだもので、締まった姿に仕上がりました。
この持ち込んだ姿は今年が見頃。
ここまで根が締まってきたら、植替えが必要です。
また数年の培養で、勿論毎年楽しませてくれますが、本当に美しさを見せてくれるのは、その中で植替え前の最後の1回です。
山野草はどちらかと言えば、盆栽と比べて低く見られがちですが、
奥の深いもので、人の手が過度に加えられない事が、審美の心を駆り立ててくれます。
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掛軸は、戦前の名筆・田中以知庵の「飛燕図」つがいで飛び交う姿は、この季節に巣作りに励む燕そのものの風景です。
脇床には安部川石の清冽な滝石。
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水を打った古銅水盤に瑞々しい涼景を見せる石は、立夏を迎えた“先取りの飾り”の好機と言えます。
床飾りの側面棚には、ヤマコウバシの寄せ植え。
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新緑が映える高原の林間が優しく映し出されています。このヤマコウバシは、先日惜しまれながら天国に逝った勝俣先生の作品です。
野山にあるヤマコウバシを寄植え盆栽の代表的な美へと導いた盆栽界の恩人です。
鉢に入れると数十年を経ても太らない、切返しでの造りを嫌うヤマコウバシは、雑木盆栽の“優しい美”をとても良く表現してくれます。
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足下の菖蒲・仰ぐ山々の中にある滝・その向こうの山中の高原の林間。
ひとつひとつが奏でる美が、共鳴して日本の四季の「今」を室に醸し出しています。