【「涙藤」と名付けて】

外出自粛令の中、雨竹亭の庭は陽春の麗かな花物盆栽達が、競うように年に一度の絢爛を見せています。
普段の年ならこの季節『春の観賞会』と銘打って、一般の方々、お得意様達、同業の盆栽園の方、盆栽作家等々、
対応に追われる日々の中に居ますが、今年は庭の盆栽達を守るスタッフと私だけです。
「誰も来ないのだから、作業に専念すればいい」と、応接室などの飾りを控えても同じなのですが、
若い頃から「盆栽園は訪れる方々に盆栽の素晴らしさ・美しさをお見せするのも大切な役目」と思って過ごしてきました。
ウィルスの為にどれだけの人々が苦しんでいるのか!
辛く心が締め付けられるようです。
私は、誰も訪れない中でも、出来る限り普段通りの盆栽園の姿を守ろうと思っています。
それが、1年間一生懸命管理してきた季節の盆栽達の「晴れ姿」なら、せめて舞台を作ってちゃんと飾ってあげたいのです。
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先日も早めの藤の盆栽の飾りを紹介しましたが、今回は別の樹で、趣向を変えた飾りを作ってみました。
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五月雨のように咲き下がる美しい花姿。
掛軸には明治の名筆・今尾景年の「月にほととぎす」
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藤の盆栽の合わせ掛物は、4~5月の季節ものですが、前回の「揚げひばり」の軸ですと、
里山のどちらかと言えば、“人の住む世界の近く”の景となりました。
今回は霧煙る山々にスーッと翔ぶほととぎすとひと声の響く鳴き声。
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花下には、水を湛えた安部川の溜り石。
水盤は涼やかな季節に古渡の炉鈞窯の名器。
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そして琵琶床に木彫の「浮見堂」※田中一光作。
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朧の月の下、藤の花は満開に咲き誇り、足元には石清水を湛えた石。
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遠く山々の向こうに“有るであろう”湖水に見える浮見堂。
季節の盆栽も周りの道具立によって、浮かび上がる景色は限りがありません。
誰も観る人のいない季節盆栽の飾り。
咲く藤の花に“涙”を感じるくらいです。
あえて勝手に席題を付ければ『涙藤』と言いたいです。