【掛軸を使った黄木瓜バラの席飾り】

日本全土にコロナウィルスの災禍が人々の生活に苦渋の刻をかける今、こんな刻だからこそ、
ご自宅の盆栽達とせめて豊かな刻を過ごして頂きたいものです。
季節より少し早めに咲き始めた「黄木瓜バラ」の古樹、これだけでも充分楽しませてくれますが、
道具立てを取り合わせる事で、そこに広がる景色は大きく広がります。
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季節の花物盆栽は、可憐な花姿を愛でる“身近な世界観”となりがちですが、
盆栽の幹や枝に鉢持ち込みでしか現出しない“古趣”つまり厳しい刻を重ねた樹にしか見られない味わいがあるものは、もっと深い景趣世界を設えてみたいものです。
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今回は霞む山と一羽のほととぎすの掛軸を取り合わせてみました。
中型の盆栽に掛物を合わせる時、できれば樹が小さく見えないように、縦長の掛け軸よりも、横物の少し小ぶりな軸を使いたいものです。
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山里の麓に生きた木瓜バラの古樹。
老樹でありながら霧煙る季節には可憐な花姿が枝先に。
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遠くを仰げば芽吹に萌える山姿。
そこに一羽のほととぎすが一声鳴いて一閃。
自然の移ろい、静けさの中の盆栽の色彩、「樹画一体」の境趣です。
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添えの飾りに山裾に流れる川面の舟。
“静けさと“動”。
この時に船の材質も考慮したいものです。
主たる盆栽が花物ですので、唐金や古銅などの鋳金ものよりも、陶製や木製、つまり“堅くない存在感”に努めたいですね。
添景である舟も出来るだけ小さめ、大きくなると景色が“目の前”で強く余韻が無くなってしまいます。
床の間が無くても、添景や色紙掛けなどで、お部屋の中に盆栽が主人公の別世界が浮き上がります。
皆さんもお手持ちの盆栽でご自分の「心の中の自然」を楽しんで下さい。