3月2日~3日僅か2日間、京都名刹 大徳寺の中の芳春院で開催された『第11回玄虹会展』。
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特に別室床飾りで披露された寺内幸夫氏の展示は、盆栽趣味の文化的な真髄を物語るものでした。
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主木の黒松は、名人会田一松翁が最後まで愛した名樹として名高いもの。
「盆栽とは肥培するものではなく、枯淡の風趣を枝ひとつの中にも醸し出されたものが肝要」
という名言を残した翁。
若き栽匠として注目される神奈川県秦野市 宝樹園 椎野健太郎氏の所で 絶妙な管理をされたこの樹を、
席主は松を使った飾りの季節としては難しいとされる三月初旬に見事な設えをされた。
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掛け軸は 田中日華 筆「雪月花」通常の掛け軸と違い、表装部分も画家がすべて書き込んだもの。
画中の外から降る雪、この雪に混ざって僅かに散る桜の花びら。
朧の半月と共に幽玄な世界を表現しています。
特に注目するのは、月や雪そして花びらは、画中の下では消えていることです。
目に見える月も雪も花びらも、悟りの境地に言う「一切は空なり」の空。
つまり 世の現世に見えるものは、一刻の儚い夢、そこに齢を重ねてなお厳とした姿を見せる松。
生きる盆栽の姿と空蝉の画中世界が共鳴しあい、松際立つ気韻を見事に描き出されている盆栽飾りの真骨頂を捉えた名席と言えます。
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加えて脇床に置かれた馬蹄石の雅石。
石中に立つ姿が明王や菩薩にも見立てられるこの石は、本床に広がる幽玄の世界を、更に深い響きへと導く仏性観と言えます。

盆栽は 庭や棚で その姿を観賞するだけのものではありません。
本席が描き出す精神性は、盆栽を主軸にして 自然や哲学的な美意識を、
学識の裏付けを加えて どこまでも広がる人間美へと昇華させています。
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世界に盆栽文化が広がる中、技術や価値観ばかりが 評価される中、先人達が 百年以上の時をかけて完成させてきた 真の盆栽世界を 再認識させてくれる 鑑と言うべき一席です。