【漢"おとこ"達が 夢見た 緑豊かな開発】

エスキューブ中国盆栽輸送の最大協力者、王 永康 先生からの"貴州へ飛んでほしい"の言葉で、
私と白石・伊吹の3人は、中国南西部遥か遠くの貴州省 銅仁市へ初めて辿り着きました。

訪れてまず驚いたのは、空気が美味しく、山蒼く、水清く、
まるで "ここは日本の何処か?"と思う程の風光明媚な地。
王さんの友人であり、現地の"聖地"梵淨山へ続く山村を、僅か3年で中国を代表する一大観光地に変貌させている 楊 栄寧 さん。

同地の市街に生まれ、徒手空拳の身から 貴重な自然地域の保護と近隣の観光開発をする名手は、
5年前、他の仕事をすべて投げ捨て、故郷 銅仁・江口地区 を "仏の山"梵淨山へ続く入り口として
この地の「自然融合型」の開発に着手された。
王さんは、盆栽家として中国の"NHK"つまりCCTVにもドキュメンタリー番組が放送された著名人だが、
作庭設計の分野においても力量の高さが評価されていて、楊さんの依頼で2年前からこの開発に協力されている。
「森前さん、この140mの観光玄関口に"日本"ならではの庭園を設計してほしい」
江戸初期からの家脈の歴史を持ちながら、盆栽家の道を選んだ私は
"18代目 植七 当主"と言う、名目だけと思っていた己の血が、日本から遠くのこの地で 試されるとは思ってもいませんでした。

夕食が済んで夜10時、昼間見たあのがれ地の様な場所の記憶から構想を練り、
紙の上に構想略図を書き始めて、何とか想いを纏められたのが、朝食前の朝8時。
楊さんに図面を見せて私の考え"東国の夢・仏と悟りの旅"の意味を伝えると、
手を握り「早速着手します。森前さんの図面通りに必ず造ります!」と私の拙い一夜の拙案を即決された。

"ああ、この人は仕事と言う自分の夢と戦っているんだな"と自分に重ねて生き方を感じました。
ここ銅仁市へ来る道中には、昨年 福山雅治さんが旅して話題を集めた
中国「苗族・ミャオ族」の村落がありました。楊さんの一族も元はミャオ族出身だそうです。
盆栽を通じて信頼を深めた中国、世界大会にも王さんと来日される楊さんは
「この地に盆栽のテーマ庭園も造りたい・約2万坪」とも仰っています。
15才で盆栽の道に入った愚凡な私が、こうして海の彼方で心を同じくする"熱き男達"と出会う。
この仕事をして良かった・有難い と本当に思います。
それにしても"仏の山・梵淨山"は凄いです!
頂上のお堂で願いを祈ると叶うと言う伝説は、中国の国家主席・周 近平 氏が 就任前に参詣祈願 したことで、有名になったそうです。
今度訪れた時は、私も盆栽家としての夢を祈願しに 天空の堂宇へ登ろうと思います。